会談の日、深夜。アザゼルは敢えて悪魔のお膝元である駒王学園を会談場所に指定した。わざわざ町の住民を催眠術式で事前に避難させ、何重にも結界を展開してまで行う事で、悪魔との敵対関係をより強調する狙いがあった。時間となり一同が学園の会議室に入る。
最初のアザゼルの宣言により会談は始まった。和平、次いで同盟。綿密な協力体制を敷こうと二人の首脳は真剣な表情で言葉を交わす。そこに何時ものふざけた姿勢は無く、あるのは遠い過去に失った愛する人との思い出のみ。
部屋の片隅で様子を見守る護衛達も何か思うところがあるのか、複雑な顔をしていた。今この時にも反対派に襲撃されるかもしれないのだ。自然と緊張が場を支配する。
やがて安堵の息をアザゼルが吐いた。和平宣言書にペンを走らせるとミカエルもまた体勢を解した。どうやら無事に締結したらしい。
「……すまねぇな。巻き込んじまって」
「いえ、私達にも和平を結ぶべきという意見はありましたから。尤も思っていた展開と違いますが」
そう笑顔で皮肉った時、空に描かれていた結界術式が赤く染まった。非常事態を意味する色であり、つまり何者かが侵入したと告げている。会議室の床に転移魔法陣が展開された。レヴィアタンの紋章だ。
褐色の女が現れ、同時に次々と空から悪魔達が降ってくる。予想は当たった。
彼女は自信満々に何かを言おうとした。だが言えなかった。フリードが手足を斬り捨てたのだから。無表情のまま剣を懐に仕舞うと、達磨と化した女を捕縛する。その間、五秒。電光石火の早業に他のメンバーは驚愕していた。唯一ミッテルトのみが状況を的確に呑み込んでいた。
「侵入者は捕まえて、情報を吐かせる……。手慣れてるっスね」
「ミッテルトはこいつを『
了解、と転移魔法陣を操作する彼女を他所にフリードは飛び出す。
そして心配するそぶりすらしないミッテルトに、焦った声で援護を要請する。
馬鹿らしい。ミッテルトは言い捨てた。前の世界を知らない彼等からすれば、成程大した数と言えるのだろう。魔力から察するに上級悪魔も幾つか見られる。だから何だ。たかがその程度でフリードに挑む精神が彼女には解らない。
「単騎で悪魔の一軍を全滅させる事、だったりするんスよね」
まるで自分の事のようにミッテルトは呟いた。フリードもまた呼応するかのように一撃で全ての首を刈り取った。美しい白髪が血に染まり、やっと憎むべき敵が居ないと気付く彼をただ眺めた。
より強く