二勢力の和平を内外に示すべく、アザゼルとミカエルは首脳会談を行うと宣言した。それは様子を見守っている他神話に、そして何より相手に深い恨みを持つ部下に対してである。悪魔も交えた三大勢力は戦争をしていた。当然肉親や恋人が殺害された者も居た。コカビエルを筆頭に『
和平しますと言ったところで素直に聞けない者達も必ず居る筈だ。もしかすれば小競り合いも起きるかもしれない。それを防ぐ為の和平宣言、同盟だ。即ち敵は悪魔である、と。
日程は三日後。本当ならもう少し猶予が欲しいところだが、長引くと悪魔に隙を突かれる恐れもある。
フリードにミッテルト、上司であるコカビエルを呼び出しアザゼルは淡々と語った。護衛に連れていくとの事だ。
「和平云々には反対する輩も出てくる。となれば襲撃される危険性がある訳だ。一応説き伏せるつもりだが……」
続きは敢えて言わなかったが、皆が無言で頷いた。誰もが緊張している。アザゼルも満足そうに確認すると不意に術式を展開した。小声で話している辺り、誰かに連絡しているようだ。やがて会話を終えるとメンバー、特にフリードに向き直った。
「もう一人、護衛が顔合わせに来る。……ただ、強く言っておくが決して攻撃を加えるな」
その言葉でコカビエルは察したのか、何処か焦ったような顔をしている。訳が解らないと首を傾げるフリードだが、直後警戒体勢をとった。扉に魔力を感じたのだ。しかも因縁深い悪魔特有の物。懐に閉まっている柄を手に取りながら、執務室に入ってくる影を睨んだ。
やって来たのは銀髪の青年だ。楽しそうな笑みを浮かべて、アザゼルの隣に立つ。彼が何かを言う前に嬉々として告げた。
「君が今度加入したフリードか。噂は聞いているよ。……俺はヴァーリ・ルシファー。『白龍皇』だ」
白龍皇。そう彼は言った。フリードが宿すドライグと対になる存在で、二天龍の一角。ヴァーリの背中から威厳ある声が響く。
『……久しいな、ドライグ。お前の宿主の話は聞いた。随分と悪魔を嫌っているじゃないか』
『アルビオンよ、俺と宿主は悪魔への憎悪で繋がっている。故に居心地が良い。……お前とは違ってな』
それだけ話すとドライグの反応は消えた。疑問に思い、幾ら問いかけても答えは返らない。結局その流れで解散となりフリードは仕方無しにミッテルトと食堂に向かった。コカビエルも部屋を出ていき、後に残ったヴァーリは大胆不敵に笑う。会談の日が楽しみだと言う風に。
思い悩むアルビオンに気付けないまま、彼もまた執務室を後にした。
かつてライバルだった