DSフリードの非日常   作:ミスター超合金

14 / 50
life.14 少女

 翌日。一同は新たにエクスカリバー研究の第一人者、バルパー・ガリレイを仲間に加えた。性格こそ歪んでいるが今回の作戦に欠かせない人物だとコカビエルは言う。詳しい事情は聞いていないが、悪魔以外に手を出さないと約束させた以上はフリードにとって誰でも良かった。寧ろ仲間が増えて心強い。

 教会から事前に強奪した三振りの聖剣(エクスカリバー)を統合し、その時に放出される聖なる波動で町の悪魔達を全滅させる。結果として悪魔との戦争を始められると彼は語った。だがそうするには先ず天界勢力からの追手が邪魔だった。

 

 

「堕天使コカビエル、それに異端者フリード・セルゼン! 神の名において断罪してくれる!!」

 

 

 目の前に現れた二人組の悪魔祓い(エクソシスト)が正しくそれだ。面倒そうにフリードは息を吐いた。相手を見た目で判断するな、とは言うが本当に身の程を知らなさそうだ。先の三大勢力戦争を生き残ったコカビエル相手に、年若い少女が二人だけ。自分達としては楽な話だが天界は果たして本当にエクスカリバーを取り返す気があるのだろうか。

 そんな彼等の心中を悟ったのか、一人が声を荒げた。

 

 

「貴様ら、武器を取れ! それとも臆したのか!」

 

 

 青い髪をした少女、ゼノヴィアが背負っていた大剣を構えた。同時にフリード達は気付く。あのオーラはエクスカリバーだと。これで殺さない理由は無くなってしまった。無表情を繕ってフリードは光の剣を取り出し、真横に軽くずらした。更に一撃、二撃。三、四、五。文字を描くかのように剣先をなぞらせていくと、光を消して柄だけとなった剣を懐に閉まった。

 一連の動作に首を傾げていた彼女は、ふざけているのかと言おうとした。が、ゼノヴィアが口を開く事は無かった。

 

 

 最初は視界が斜めにずらされた。次に痛みが同じ場所を迸った。彼が何をしたのか全く解らないまま、頭を押さえようとした腕までもが細切れになった。バラバラに崩壊していく。隣に立つツインテールの少女が何かを叫んでいるが、それすらも聞こえない。数秒後には剣だけが地面に突き刺されていた。

 さて、とフリードはもう一人を睨んだ。

 

 

「……覚悟は良いんだろうな?」

 

 

「……ッ!?」

 

 

 冷たすぎる眼差しに少女は動けない。ましてや、ついさっき相棒が殺された光景をまともにみているのだから。まだ死にたくない。生きたい。貪欲なまでの想いは何もかもを折られた彼女をある行為に走らせた。

 

 

「ど、どうか見逃して下さい!」

 

 

 命乞いだ。誇り(エクスカリバー)を捨て去り、ひたすらに頭を擦り付けた。求められれば何でもするつもりだった。靴を舐めようが、犬の真似事をしようが。神に捧げた肉体すら利用する魂胆だ。

 人間としてのプライドを放棄する少女、イリナ。土下座を繰り返す彼女の視界には映らない。フリード達が何れだけ冷たい視線を浴びせているのか。鼻を鳴らしてコカビエルは一歩近付いた。

 

 

「……エクスカリバーを寄越せ。そうすれば命だけは助けてやる」

 

 

「は、はい!」

 

 

 即座に起き上がると、ゼノヴィアの分も含めて剣を二振り差し出してきた。受け取ったのを確認すると後ろも振り返らずに一目散に逃げていく。ミッテルトが不満げな顔で洩らした。

 

 

「良かったんスか? ウチらは兎も角、戦闘狂のコカビエルさんからすれば、ああいう輩は忌むべきものかと」

 

 

「敵に命乞いをして、おまけに大切な聖剣を進んで渡したんだ。もう奴に帰る場所は無い」

 

 

 知った事ではないと、コカビエルは合計五本となったエクスカリバーを眺める。思わぬところで獲物が転がり込んだ。計画を最終段階に移行させるべく、彼等は歩き始めた。

 狙うは駒王町を任された悪魔であり、魔王セラフォルーの実妹。ソーナ・シトリーだ。

 

 




誠意と品物。それさえ欠けなければ良い


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。