「……条件がある」
計画参加についてフリード達が提示した唯一の条件。それは悪魔以外の種族をなるべく殺さない事である。フリードとミッテルトが悪魔を殺害して回っているのは、前世界での悪魔の所業を目の当たりにしてきたからだ。なので正当防衛等を除いて他種族を抹殺する事は決して無い。
レイナーレの件は襲ってきたのを返り討ちにしたからノーカウントだと頭の片隅で考えているミッテルトを他所に、コカビエルは即座にその条件を呑んだ。
「良いだろう。働いて貰うぞ」
「交渉成立、だな……」
どうせ悪魔も抹殺対象に入っているのだ。天使に手を出せないのは残念だが、その分を余計に殺せば良い。これは力強い手駒を得た。笑いながら彼等はコカビエルが宿泊しているホテルへ向かった。暖かなワインを肴に、今後の作戦を話し合う為に。
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そもそも『
悪魔達を殺害している犯人を探し出せ。何時になく真剣な表情のアザゼルに、コカビエルは首を傾げた。
「……駒王町を縄張りとするリアス・グレモリー達が襲撃された。犠牲者として、調査すべく訪れたフェニックスの三男坊やリアスの眷属二名等が死亡した」
「その話は既に聞いた。悪魔に恨みを持つ者の仕業だと噂されているが、俺達に関係無いだろう?」
彼は堕天使としてのプライドが高く、悪魔云々の事件に面白い顔をしなかった。アザゼルがそんな話をする事さえ憎々しげだ。だがコカビエルがそう言い出すだろうとは彼も予想していたようで、構わずに話を続けた。
「我々堕天使は残る二勢力と和平を結ぶつもりだ。その為には下手人が邪魔になる」
「……ッ!!」
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その時の激情は決して忘れないだろう。先の戦争でコカビエルは失った。部下、戦友。愛する者。自分一人が生き残ってしまった事さえ悔いているのにそれを忘れろと、しかも親友に言われたのだ。我慢など出来はしなかった。
故に今回の騒動を起こしたと、親睦を深めるべく彼は語る。相手の信用を得るには此方の事情をある程度話すべきと考えたのだ。
似たような過去を持つフリード達は何も喋らずに黙っていた。結局は何処も同じだった。前の悪魔世界も、この世界も。自分達のやるべき仕事は変わらない。
ウォッカを煽るとコカビエルは寝室に消えた。残された二人は黙々とテレビを眺める。やがてコテンとミッテルトが頭を預けてきた。酒の酔いもあって、早々に潰れたようだ。少しだけ微笑むと彼はグラスを傾ける。
「……悪魔が存在しない世界を願おう」
忘れてはならない