とあるカルデアでの、もしかしたらあるかもしれない、なんでもない出来事。

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思いついた事を書いただけなので、出来の悪さに自信ニキなんじゃよ(いつもの

ウチのナイチンゲールはきっと狂化ランクが下がってるんや(

なお、ナイチンゲールはマイカルデアに未だに来てくれません。


わらべうたとてんしのうたと

「ねぇ、私、お歌を歌ってほしいのだわ!」

「お断りします」

 

人理定礎の復元を目的とし、世界を救う為に行動しているカルデア。とは言え、普段から常に殺伐とした組織では無い。寧ろ、特異点に出撃している以外の待機時間は、カルデアに召喚されたサーヴァント、そのマスターである自分、そして、未熟なマスターである自分を先輩、或いはマスターと呼び、手を貸してくれるマシュ共々、各々好きな事をしている事が殆どと言っていいほどだ。

 

 これは、そんな自由時間の一幕。

 

「お願い!」

「お断りします」

 

談話室を通りがかった所で話し声が聞こえ、のぞいてみると、今までで一度も見た事の無い組み合わせの二人が目に入った。

片やキラキラとした笑顔でお願いを繰り返す黒いロリータ調のドレスを纏う小柄な少女。

片や興味も無い、と言った態度で即座にそのお願いを切り捨てる、世界大戦中に英国陸軍の制服であった赤い制服を身にまとった、妙齢の女性。

 

 ナーサリーライムというおとぎ話、わらべ歌という概念が『子供たちの英雄』として形を取ったサーヴァントの少女と、クリミアの天使、ランプの貴婦人、小陸軍省と呼ばれた看護婦、フローレンス・ナイチンゲールである。

 

「お願い!きっと、貴女はお歌が上手なのだわ!」

「そういった根拠の無い決めつけは止めてください」

 

 なんで、歌なのだろうか。と、そう考えた所で、更に続いたナーサリーライムの言葉を聞いて納得した。

 

「だって、貴女はナイチンゲール(・・・・・・・)なんだもの!」

 

フローレンス・ナイチンゲールとナーサリーライムという存在の間には、これ、と言った共通項は無い。だが、ナイチンゲールという名とナーサリーライムの間には存在する。

 

 

――――『さよなきどり(ナイチンゲール)』

 

 

 童話作家として著名な、ハンス・クリスチャン・アンデルセンが書いた童話の一つである。

 

 

 このカルデアにもサーヴァントとして召喚され、三流を自称する彼は、体つきは少年ながら精神と声はまるで壮年の男性という、何とも某名探偵を彷彿とさせる姿で性格はひねくれており、倫敦に発生した特異点で初めて出会った時には何とも言えない感想を抱いたのを覚えている。

 

 『さよなきどり』は、アンデルセン童話において少数派の、ハッピーエンドに終わる作品だ。そういえばナーサリーライムも、「こんなおはなしばっかりならよかったのに、なんで人魚姫はあんなに意地悪な終わりなのかしら!」と、この前誘われたお茶会で絵本の話になった時に頬を膨らませながら言っていたな、と思い出す。

 

「私のナイチンゲールは姓であって名ではありません」

「でも、歌は苦手ではないんじゃない?」

「・・・・・・貴方ですか、司令官」

「や、ナイチンゲール婦長。貴女が談話室に居るなんて珍しいね」

「彼女に引っ張られまして。私は来るつもりはありませんでしたが」

 

談話室に足を踏み入れて声を掛けると、ナイチンゲールはこちらに向き直し、いつも通りの鉄面皮――いや、いつもよりは心なしか困ったような、面倒臭がっているような様子で返事をよこした。

 

「苦手ではない、とはどういう事でしょうか」

「貴女のお父上はとても立派なジェントリで、貴女にも様々な教育を施したと聞いていたからね。音楽もきっとその中の一つにあるだろ?

なら、少なくとも苦手とまででは無いんじゃないかな、と思ってさ」

「否定はしません。得意かどうかも、歌うかどうかも別の話ですが」

 

 区切りが良い、と判断したのか、では失礼します、と言い残して談話室を出ようとしたナイチンゲールの背後に、ぷぅ、と頬を膨らませ、「あなたも一緒にお願いして欲しいかしら!」と言わんばかりの表情のナーサリーライムの姿が眼に入る。

 

――――これは、無視すると後が大変そうだなぁ・・・・・・

 

「あー、ナイチンゲールさん?」

 

呼びかけを聞き、ぴたりと足を止めて振り向いた彼女の顔は、

 

――――うわぁ・・・・・・凄く余計な事をって顔してる・・・・・・

 

呼び止めた事に対し、ナーサリーライムは対照的に嬉しそうな笑顔を浮かべる。あちらを立てればこちらが立たぬ、ってやつかぁ、と内心溜め息をつきながら、先程よりもわずかながら明確に機嫌が悪そうにしているナイチンゲールを説得する為の言葉を何とかひねり出す。

 

「えーと、だな?ナーサリーライムがこれだけお願いしてるんだし、ちょっとくらい歌ってあげてもいいんじゃないか、と思ったり・・・・・・ね?」

 

 ちょっとだけ!ちょっとだけだから!と傍から見ると中々にアレな頼み方をしてはみるものの、反応はあまり変わらない。それどころか、また入り口に向かって歩き出そうとしたので、

 

――――こうなれば・・・・・・!

 

 対ナイチンゲール依頼方法最終手段・・・・・・!!

 

んんっ、と軽く咳払いをし、

 

「ナーサリーライムは少しだけ精神的に昂ってるみたいだから、治療として(・・・・・)、気持ちを落ち着けるために少し静かな歌でも歌ってあげて貰えるとありがたいなぁ・・・・・・」

 

――――必殺、治療行為にこじつける・・・・・・!!

 

効果は覿面だったのか、最早ホラーじみた勢いでぐるり、と真面目な表情になったナイチンゲールが振り返り、

 

「患者と言うなら話は別です。精神安定剤を処方しますので、私の部屋に来なさい」

 

――――そっち行ったかぁ・・・・・・!!

 

 最近本職の方の仕事が碌に出来ていないロマンが、いざと言う時に医療班スタッフ以外にも動けるように、とナイチンゲールにもカルデアにある医療機器や薬物の説明をし、効果が強すぎない程度の薬を持たせていたのを完全に失念していた。

 

「あー、でも、ほら。薬じゃない方が体に影響無いし、歌だけで症状が快復するならそれに越したことは無いと思わない?ほら、歌なら副作用なんて無いしさ」

「・・・・・・なるほど、一理あります。では、まず精神を無駄に昂らせないよう、静かに横になれる医務室へと向かうとしましょう」

「私、医務室は嫌なのだわ!!」

「では、貴女の部屋に。何を歌うか少し考えますので、彼女を興奮させないように部屋で待機していて下さい」

 

それでは、とナイチンゲールが立ち去るのを見て、取り敢えず一件落着か、と安堵の溜め息をこぼしながら振り返ると、ナーサリーライムが弾けんばかりの笑顔で飛び跳ねながらはしゃいでいた。

 

「やったのだわ、マスター!これでお歌が」

「お  静  か  に  お願いします」

「・・・・・・はーい」

 

 が、何時も通りの鉄面皮で再び扉から顔を覗かせたナイチンゲールの言葉に、押し黙る事となった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 ――――歌、ですか。

 

 先程、ナーサリーライムの治療行為として歌う事になった事を思いながら、何を歌えば良いのかと考える。歌は親から施された教育の中の一つとして学び、子供の頃は母と共に歌いはしたものの、特に得意な歌が有る訳でも無ければ、好きな歌が有る訳でも――――

 

――――――。

 

『彼』の声が聞こえた気がして、振り返る。

勿論、カルデアに彼が居るわけが無い。彼が居るとするなら、英国の伝統ある劇場――ドルーリー・レーン劇場なのだろうから。

人理が焼失した今、彼はどうしているのだろう、と思いを馳せ、

 

「・・・・・・あの歌にしますか」

 

歌としては短いので、他にも用意する必要はあるでしょうね、と独り言ちながら、止めていた足を再び動かし、準備の為に向かっていた自室へと歩き始める。

 

――――まあ、こういうのも偶には良いでしょう。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

「お待たせしました」

 

 ナーサリーライムの部屋で一足先に二人で待っていると、ほどなくしてナイチンゲールがやって来た。

彼女を見たナーサリーライムが足をぷらぷらとさせて腰かけていたベッドからぴょんと飛び降り、笑顔で駆け出したところを脇下からすい、とナイチンゲールに抱えられる。

 

「安静に。私が理由でこれ以上興奮されたのでは本末転倒ですので」

 

床に下ろされ、ちらり、とナイチンゲールが何時も肩に掛けているバッグから錠剤の入った瓶を見えるように取り出したのを見て、ナーサリーライムが大人しく元の位置に戻るのを確認し、声を掛ける。

 

「ナイチンゲール婦長、準備の方はどう?歌は決まった?」

「ええ、いくつか選んで来ました。貴女には聞き飽きたものかも知れませんが――――

『お気に召さずば ただ夢を見たと思ってお許しを』」

 

 ナイチンゲールは、すぅ、と軽く息をして、眼を閉じながら口を開く。

 

 

 

    something old,

 

     something new,

 

      something borrowed,

       something blue,

        a sixpence in her shoe.

 

 

 

 それは、とても短い歌だった。

何の歌かは知らなかったけれど、歌っているナイチンゲールの姿は、普段の健康に対して苛烈かつ熱心なイメージとは違い、とても静かで、ただの心優しい一人の女性に見えて。

 

 楽しみにしていたナーサリーライムはどう感じているのだろう、とちらりと視線を向けると、なにやら驚いているようにも嬉しそうにも見える表情をしていた。

 

「・・・・・・サムシングフォー。少し、びっくりしたのだわ」

「そうですか」

「あなたは、身に着けたかった?」

 

 いつもの見た目相応の少女のような振る舞いでは無く、何処か大人びた表情で、ナーサリーライムは訊ねる。

 

「私の人生に、悔いはありません」

「・・・・・・そう」

「ええ。

 それに、一応私は生涯独身でしたがサムシングフォーを頂いた事があります。あの馬鹿者に納得はしていませんが、悔い自体は残っていません」

「・・・・・・サムシングフォーを送ったのに、結婚は出来なかったなんてかわいそうに」

「出来なかったのは私ですが」

「いやいや待って待って、これって結婚の歌だったの!?」

 

 色々聞き捨てならないと言うか信じられないワードが出て来て、思わず会話に入り込む。

 

「サムシングフォーを貰ったって、つまり結婚を申し込まれたって事!?ナイチンゲールが!?」

「お静かに。

一応、そうなるのでしょうか」

「誰に!?というか、そもそもそんな話聞いたこと無いんだけど!」

「そういう可能性もあった、というだけの話です。これ以上、私は詳しく話すつもりはありません」

 

ですが、と区切り、

 

「その話を聞きたければ、デオンにでも聞いてみると良いでしょう。私が言った、とでも言えば恐らくある程度は教えてくれるはずです」

「そっか、じゃあ今度デオンに―――――んん?」

 

何故、時代も国も違うデオンが、と尋ねようとしたところで、ナーサリーライムが飛びついてくる。

 

「はやくお歌の続き!私も一緒に歌うのだわ!」

 

先程までの雰囲気は鳴りを潜め、普段のような見た目相応の振る舞いに戻ったナーサリーライムを、ナイチンゲールは部屋に入って来た時同様に持ち上げてベッドに戻す。

 

「静かに、と言っているのですが」

 

じゃら、と再び鞄から錠剤の音をさせて大人しくさせ、再びナイチンゲールが目を閉じ、静かに口を開く。

 

 

      Hush a bye baby, on the tree top,

 

   When the wind blows the cradle will rock,

 

    When the blow breaks, the cradle will fall,

 

     And down will come baby, cradle and all.

 

 

 恐らくは、子守歌なのだろうゆったりとした歌が終わると、静かに聞き入るようにしていたナーサリーライムが同じ歌を歌い、それに合わせるようにナイチンゲールももう一度歌う。続いて、今度は先に違う歌をナーサリーライムが歌い、ナイチンゲールが合わせる。それを何度か続けたところで、示し合わせたように二人とも歌い終わる。

 

「やっぱり、貴女は歌が上手だったのだわ」

「そうですか」

 

 短く返し、ナイチンゲールは静かに立ち上がる。

 

「落ち着いたようですので、私は失礼します。何かあれば、薬を出しますので私の部屋までお願いします、司令官」

「あー・・・・・・うん、分かった。有難う、ナイチンゲール婦長」

「いえ」

 

 切り替え早いなぁ、と思いながら扉から出るのを見送り、先程までの二人の様子を思い出す。

二人とも髪の色が少し似ているし、親子に見えなくも無かった。ナイチンゲールが子供を産んだとしたら、あんな感じになるのだろうか?

 

「ナーサリーライム、満足した?」

「ええ、とっても!そうだわ!今度、お礼にナイチンゲールをお茶会に誘うのだわ!」

 

 両手を上げてくるくると楽しそうに回っているナーサリーライムにじゃあ、と声を掛け、貴重な体験だったなぁ、と思い返しながら部屋を出る。

 

 次に向かうのは、シュヴァリエ・デオンの部屋だ――――――

 




おや、マスター。私に何か用かな?

・・・・・・フローの生前の話?何で私に訊くんだい?

フローが私に、か・・・・・・あてつけのつもりなのかな・・・・・・

まぁ、いいさ。負い目が無いでも無いし、私が知ってる限りの彼女の話を教えよう。

演劇好きの亡霊と、ランプの淑女――――ゴーストアンドレディの物語を。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 涎垂らしながら書きたいように書いてたらこうなった(^q^)

 本当は、『さよなきどり』絡みでアンデルセンにも御登場願った方が面白いのではと思いはしたけれども、
やっぱいいや(ぽいー
したのは内緒だゾ

ナーサリーライムは、子供と同じ視点と大人の様な視点の二つで子供達を見守ってたりするんじゃないのかしらんと個人的に思ってるけどどうなのやら
extraは会話殆ど覚えて無いし、マテリアルは持って無いしなのよなー、と。

 感想は常に募集、批判は改善点を分かりやすくしてもらえるとありがたいデス

最後に。

ゴーストアンドレディは良いぞ


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