英雄達の王   作:げこくじょー

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英雄王と龍神

 

あの後、冥界から帰った俺を待ち受けていたのは、説教……というか、半ば曹操達からの懇願にも似たお願いだった。

 

唐突な出来事とはいえ、いくら強いとはいえ、お願いだから自分達にも何らかの形で連絡を送ってほしいと。シャルバの時はともかく、オーディンと話をしに行った事に関しては、黙っていた事を一応謝り、結果として今後は外出時においては必ず幹部が一人つく事になった。プライバシーも何もあったものではないが、こればかりは俺が悪い。

 

それから一月は大人しくしていた。一先ず拠点を大きくして、今後禍の団が攻めてきても問題ないように防衛策も講じた。なんだかんだ言って、対人外用に認識阻害をしていただけだからな。何かの間違いで入られていたらと思うと、結構防衛意識が薄かった。

 

因みに設計したのは俺じゃない。ギルガメッシュの宝具を手に入れ、ステータスもそのまま反映されているであろうが、頭脳や性格はその限りではない。そしておそらくはスキルも。

 

いや、黄金律的なものは働いている節があるので何とも言えないが、ギルガメッシュのような千里眼は持ち合わせていない。目は良いが、未来を見通す力は持っていない。

 

カリスマなんて絶対ない。だって担ぎ上げられてるだけだもの。慕ってくれてる人もいるけど、それは恩義を感じてだろうし。義理堅い部下達である。

 

他にも色々あるが、せいぜい機能しているのはコレクターぐらいだろうか、何はともあれ、なんか微妙なものしか機能していないような気がするが、元々ギルガメッシュはゲームで言うところの『レベルなんか1でも装備が最強なら関係ないよね?』だから、気にするだけ無駄だろう。

 

幸いにも設計も建築も、技能を持った人達がいたのでスムーズに進んだ。技術はもちろん、力仕事も神器を活かせば、普通にするのに比べて何倍も速い。

 

一月と少しで一回りは大きくなったと思う。頑張ってくれた人には感謝するばかりだが、このままだと小国家ぐらいになるかもしれないな。神器使いの他にも少なからず特異体質のものだったり、異能を持った人間、曹操達のように英雄の子孫である者達もあそこにはいる。

 

俺のいた世界では少なかったそれも、全部を合わせるとこの世界では千人に一人ぐらいはいるようで、既にここには割と多くの人々がいる。

 

理想なのは彼等が元の社会でも生きていける事だが、残念ながら現状は不可能に近い。力の制御を覚えて、暴走させる事こそ滅多にないが、彼等には一度能力や体質によって迫害されてしまったり、命を狙われた経験がある。それ故に普通の社会に帰る事を恐れている。当然と言えば当然だ。

 

そればかりはどうしようもない。ここを一つの国にする事も視野に入れなければならない。何も他の人間との関係を断絶しようなどとは考えていないが、神器所有者だけでなく、一般人の事も考えなければ、俺が死んだ後にでもまた差別が生まれてしまうかもしれない。自分たちを特別な存在であり、人の上位種だと宣う者さえ現れる可能性もある。優れている事を否定するつもりはないが、あくまでも人間である事を忘れてはいけない。

 

俺が元気なうちに何とかしないと。こういうファンタジーの世界だといつ何が起きるかわからないし。

 

そう。例えば、目の前にいきなり龍神が現れるとかさ。

 

「……」

 

「どうした?我の顔、何かついてる?」

 

なんなんだ、一体。俺は毎月必ず何処かの組織のトップと面談する予定でも入れられてるのか?聞いてないぞ。教えてくれと言った覚えもないし、是非ともお断りしたいが。

 

くっ……俺は拠点から外に出ると幸運値が最低ラインに下がるのか!?

 

「俺に何の用だ、オーフィス」

 

「我の望み。ギルガメッシュなら叶えられる」

 

オーフィスの望み……確か次元の狭間に戻る事だったか。その為には、そこにいるこの世界最強の存在を――グレートレッドを倒さなければいけないんだっけ。

 

無茶苦茶言うな。俺がグレートレッドに勝てるわけがないだろうに。

 

「はっ。何を言い出すかと思えば」

 

「知っている。ギルガメッシュ。人間じゃないもの嫌い。だから我を手伝いたくない」

 

いや、そういうわけじゃないんだけど……手伝いたくないのはあってる。触らぬ神に祟りなし。この世界最強存在を相手に喧嘩を売る気なんてさらさらない。

 

「その為にあのような連中に力を貸しているのか?呆れてものも言えんな。あの程度の者共ではグレートレッドには歯牙にもかけられんと理解しているはずだろうに」

 

「わかっている。でも、あの者達、約束してくれた。我に静寂をくれるって」

 

「……正気か、貴様」

 

思わず、そんな言葉を口にしていた。

 

確かに原作でもオーフィスは悪くないと言っていたが、どこまで純粋なんだこいつは。

 

ひょっとして、手伝うから縁を切れって言ったら、二つ返事で頷いてくれるんじゃないんだろうか。いや、ひょっとしたら、約束を守ると言って頷かないかもしれないが。

 

「ギルガメッシュ?」

 

「生憎だが、グレートレッドの排除は世の安寧を破壊する事と同義だ。お前の手伝いをしてやるわけにはいかない」

 

「そう……それはとても残念」

 

ぐっ……そんな露骨に落ち込むなよ。見た目幼女だから、罪悪感が半端ない。

 

ええい、本当はこれ。主人公の役目なんだけどなぁ。

 

「受け取れ」

 

宝物庫から一つ宝石を取り出し、オーフィスに手渡す。

 

すると、オーフィスはすんすんと宝石の匂いを嗅ぐ素振りを見せた。

 

「ギルガメッシュの匂いがする」

 

「無論だ。それには俺の魔力を込めてある」

 

他にも幾つか同じようにしているのがある。というのも――。

 

「オーフィス。貴様は確かに人間ではない。だがな、貴様ほど無害なやつもそういまい。故にそれを渡す。暇になったらいつでも来い。話し相手くらいにはなってやる。ただし、それを忘れるなよ?でなければ修羅場になる故な」

 

「話し相手?それは楽しい?」

 

「暇にはならん。ひょっとするとお前の次元の狭間(故郷)よりも良いところやもしれんぞ?」

 

「そう。それは楽しみ」

 

途端、オーフィスは目をキラキラさせ始めた。無表情なのに目だけが輝いてやがる……器用なやつだ。

 

仕方ない。ここでまた今度なんて言ったら、いくら何でも可哀想すぎるな。

 

………さて、今回はこっそり抜け出した事に対してどうやって言い訳しようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがギルガメッシュの国?」

 

「国、というには些か小さいがな。まぁ、概ね合っている」

 

結局オーフィスを連れて、帰ってくる事になった。

 

それだけ聞くと幼女誘拐犯だが、こいつ見た目幼女なだけで、実年齢俺の何千倍クラスだから。その辺はよく覚えておくように。

 

ふと、巡回していたであろう男が一人、俺を見つけると駆け寄ってきた。

 

「お帰りなさいませ、英雄王!そちらの子どもは?」

 

「客だ。基本的には無害な奴よ」

 

「英雄王のご友人であられましたか。それではどうぞ、ごゆっくり」

 

綺麗に礼をした後、また職務に戻っていく。うむ、仕事に真面目で何よりだ。

 

その後も、老若男女問わず、話しかけられる。感覚が鋭い者は既にオーフィスが人間ではない事に気づいているが、俺が『友人』と口にすると、全く敵意を見せずに話しかけていた。最も、多くの者は気づいていないが。

 

「皆、楽しそう」

 

「ああ。お前は楽しくないのか?」

 

「我?」

 

俺の問いにオーフィスが考える素振りを見せる。

 

悩みに悩んだ末ーー。

 

「わからない」

 

「……なんだ、それは」

 

楽しそうなのはわかって、自分が楽しいかはわからないとは、器用なようなはたまた不器用なような。

 

「今までなかった。我、こんな事、知らない」

 

無表情のオーフィスに僅かな寂しさが見えたような気がした。まぁ、元々は次元の狭間をただ泳いでいるだけのドラゴンだ。楽しいとか嬉しいとか、そういうものは一切ないんだろうな。

 

「そうか。ならば仕方ないな」

 

わからないのなら仕方ない。これからわからせてやるまでだ。

 

知らないなら教える。理解できないなら感じさせる。大体感情なんてものは心で感じるものだ。考えてわかるものではない。

 

相手は生まれてこのかた、それこそ何千年も生きてきたやつだが、あくまでそれは一人だったからだ。

 

ここで過ごしていれば、そのうちこいつにも感情というものが理解できるはずだ。ドラゴンとはいえ、ロボットではあるまいし。感情はあるはずだ。

 

少しばかりお節介な上にこれまた俺の役割ではないのだが、乗り掛かった船だ。多少はなんとかしよう。

 

「今日は特に魔剣が鳴いているかと思えば……これはまた凄い『友人』を連れてこられたようだ」

 

苦笑気味にそう言うのは、噂を聞きつけて駆けつけたであろうジークだった。

 

「さぞ名のある『龍』と見た……我が王。このご友人の名は?」

 

「オーフィスだ」

 

「なっ……!?」

 

これは流石にジークも想定外だったらしい。開いた口が塞がらないというのをリアルで初めて見た。

 

「外でばったり出くわしてな。互いに暇を持て余していた故、人の世界というものを見せに連れてきた」

 

ジークが頭に手を当てる。まあ、当然の反応だ。

 

「……この際、我等の誰も同伴させなかった事は目を瞑りましょう。ですが、この場に彼女を連れてくることはないでしょう。彼女はーー」

 

「わかっている。だが、こいつは別に実害があるわけでもない。いや、それどころか、こいつも救出した神器使い同様に利用されているだけに過ぎん。どうにも、なまじ強過ぎると利用されていると言う発想が浮かばんらしい」

 

横目でオーフィスを見ると、やはりというか、きょとんとしていた。

 

まぁ、そもそも利用しようなどとは思わないな。オーフィスが純粋でなければ、わかった途端に全滅させられるだろうに。そう思うと、まるであいつらは子どもを騙して悪事を働かせているタチの悪い大人のようだ。一部とはいえ、滅ぼしておいてよかった。

 

「……確かに。敵意は微塵も感じられない。とはいえ、彼女は『龍』。人ではありません。まして、本人にその気がないとしても、テロリストのボス。なんらかの形で下賤な輩に知られてしまっては元も子もありません」

 

「何、その時は俺が手ずから始末する。そうでなくとも、俺の臣下は一騎当千の強者揃い。陳腐な思想を持った者などに遅れは取るまい」

 

そう。俺は能力頼りも良いところだが、幹部全員超強い。だからこそ、下手に主人公勢にぶつけようものなら、力の差がありすぎて、運命力ガン無視で倒してしまうかもしれない。それはかなりマズイ。

 

俺の言葉にジークは観念したように息を吐いた。その割に嬉しそうなのは何故だろう。

 

「王にそこまで言われてしまうと、これ以上は信頼を損なう事になってしまう。……私はあくまでも反対ですが、我が王を信じ、無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィス。あなたの滞在を認めましょう。くれぐれも王に失礼なきよう。あなたの滞在は、他の幹部にも伝えておきます」

 

そう言うと、ジークは立ち去っていった。よし、一先ずジークからの理解は得た。あの様子だと他のメンツの説得もしてくれそうだし、手間が省けた。

 

「許可は得た。貴様が良いのなら、しばらくはここにいるといい。次元の狭間がどのような場かは知らぬが、静寂の中、ただ泳ぎ続けるよりもずっと良いはずだ」

 

「ギルガメッシュが言うなら、そうする」

 

むぅ……表情の変化が乏しいからか、いまいち乗り気なのかそうでないのかがわかり辛い。さっきはなんとなくわかったんだが、それも『気がした』だけだしなぁ。

 

まあ、それはそれで感情が豊かになれば分かり易くなるかもしれないって事でいいか。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーフィスが人の世界で生活を始めてひと月が経った頃。

 

既にオーフィスの存在は当たり前のものとなっていた。

 

元々、神器や特異体質などの理由から迫害され、社会からはじき出された彼等は人一倍情に厚かった。

 

素性を明かしていないということもあるかもしれないが、それでもオーフィスは当然のように受け入れられ、当然のように生活をしていた。それこそ、生まれた時からこの地にいたかのように。

 

もちろん、オーフィスにそれはない。

 

故郷は静寂に包まれた次元の狭間であるし、『馴染む』という感覚が理解できないのだ。

 

けれども、確かに。

 

禍の団にいた頃よりは余程良いということだけは理解していた。あの組織は決してこのように和やかでも、楽しげでもなかった。

 

今日も今日で屋根の上に登っては、好物の鯛焼きを頬張るオーフィス。

 

ここ最近はこればかり食べていて、栄養が偏ると少し叱られたりもしていた。

 

叱られるというのもオーフィスには新鮮なものだった。オーフィスよりも強い存在はただ一人。そしてその者は決して他者をしかりつける事などしないだろう。何故なら興味がないのだから。

 

オーフィスの正体と強さを知るのはギルガメッシュや幹部達のみ。その他はゲオルグの計らいによって、認識をずらされているために実力者であっても、オーフィスの強さを感じとれないでいた。

 

だからこそ、この街の人々は何の先入観も抱かずにオーフィスに接しているのだ。

 

とはいえ、一挙手一投足に無限の力が込められている以上、オーフィスも多少なり抑えている。彼女にとっては軽く小突いたつもりでも人間に当たれば木っ端微塵になりかねない。

 

「随分、ここに馴染んだものだな。無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)

 

「……誰?」

 

屋根の上に上がってきた男に首をかしげて問いかけると男は答える。

 

「曹操だ。英雄王の臣下の一人だよ」

 

「ギルガメッシュの?我に何か用?」

 

「いいや。ただ、偶然見かけたから声を掛けただけだ。用はない」

 

「そう」

 

話を区切ると、またオーフィスは鯛焼きを頬張る。その姿を見て、曹操は苦笑した。

 

美味しそうに、とは見えないが、それでもその光景は実に見慣れたものだ。ここにいる子ども達と何一つ違わない。曹操自身、話しかけたのは今回が初めてであったが、街の人間から既に話は聞いていて、まさしくその通りであることに拍子抜けしていた。

 

(いくら認識がずれていても、オーラがあると思ったんだけどな)

 

油断ならないのは確かだが、本当に欠片ほどの敵意はおろか、曹操に対してあまり興味を示していないのがすぐにわかった。おそらく、今ここで神器で攻撃したところでこの存在は歯牙にもかけず、ただ『お前では殺せない』という事実を突き付けてくるだろう。

 

もっとも、ギルガメッシュの連れてきた『客人』である以上、攻撃をする気などこちらも欠片も持ち合わせてはいないのだが。

 

「この街の人間、皆良い者達。我を見ても、恐れない」

 

「……そうだな」

 

ゲオルグのした事はオーフィスも理解しているはずだ。それでもなお、その言葉を告げた事に僅かに驚きつつも、曹操は相槌を打った。

 

「曹操も同じ。我を見て恐れない」

 

「残念ながら君より強い人間と共にいるんだ。恐れる道理がない」

 

「ギルガメッシュのこと?」

 

「ああ。でも、彼を恐れる理由もないか。彼は俺達の、いや人類の味方であり、絶対の王だ。人間に手を下す時は、それ相応の理由があるし、それも大抵の事は許される。まぁ、あまり優しすぎるのも困りものなんだがな」

 

思い出してみても、ギルガメッシュが本気で怒ったところを見たことがないというのが曹操の本音だった。初めて会った時、本気の一端を垣間見た時でさえも、決してギルガメッシュは()()()()いなかった。そして基本、ギルガメッシュは曹操達を諌める側だ。どれだけの無礼を働いたとしても、ただの一度もギルガメッシュは怒りを露わにしたことが無いのだ。

 

「だから、君をここに置いたのも、おそらく英雄王は君を脅威と見なしていないからだろう。俺でさえそう見えてしまうんだからな」

 

以前、ギルガメッシュと話したようにオーフィスは別段世界をどうこうしようなどという野望も野心も持ち合わせていない。それは曹操にもすぐわかった。

 

とはいえ、何をしでかすかわからないという疑念はあったために今まで警戒する事はあったものの、それもほとんど無くなっていた。

 

ついでに言ってしまえば、この様々な人間の集う場所において、曹操は人外によって不幸をもたらされていない人間だ。英雄派を作ろうと企てた理由が『人間の限界に挑む』というものなのだから、それは明らかであるが。

 

もちろん、人外が好きなわけでは無い。ここにいる多くの仲間(家族)は人外達によって人生を捻じ曲げられたり、望まぬ力によって人並みの生活すら送れなかった人間ばかり。自分で無いとしても、恨みつらみがあるのは当然だ。

 

それでも、まだ曹操は幾分か冷静にいられる余裕があるのも確かだった。

 

悪魔や堕天使ならいざ知らず、ドラゴンは基本的に人には干渉しない。故にオーフィスの事も、曹操自身に思うところはあまりなかった。

 

「まあ、この際だ。禍の団は捨てて、ここでーーん?」

 

懐に入れていた携帯電話が鳴り、曹操はその相手がギルガメッシュであると知るとさっきまでの弛んだ気を引き締める。

 

「どうしたんだい、我が王ギルガメッシュ」

 

『時は満ちた。奴らを一掃するぞ』

 

「奴ら?もしかしてーー」

 

『ああ。そろそろ奴等が総力を挙げて攻める頃だろう。なれば、一人残らず屠るまでだ』

 

あまりにも唐突にそう告げたギルガメッシュにも、曹操は別に驚く素振りを見せなかった。ギルガメッシュのこれはよくあることであるし、妄言でも何でも無い。今までもそうして幾度となく神器所有者を救い、その在り方を示してきた。

 

「しかし、彼等では現悪魔に勝てる道理が無い。このまま放っておいてもいいのでは?」

 

『かもしれぬな。だが、奴等のような存在は一人でも残せば何をしでかすかわからぬ。故に憂いは断つのが道理であろうよ』

 

「……現悪魔に被害を及ぼすだけならまだしも、こちらに何かされては厄介か……わかった。それで?どこに向かえばいい?」

 

『追って話す。既に現悪魔とぶつかっている最中だ。そこからの直接転移になるが、構わぬな」

 

「ああ。一向に構わない」

 

『ならば良い。ああ、それと。くれぐれも同盟相手には手を出さぬようにな』

 

「出さないさ。現状では一応味方だ」

 

そう言った後、曹操は携帯電話を切る。

 

普段なら何も言わずに向かっているギルガメッシュが、自分に頼んできたことが少しばかり気になったが、ギルガメッシュをして、面倒だなどという理由で任せることは決して無い。おそらくは自分が行かねばならない戦場であるということなのだろう。

 

しかし、そうなると気になるのはオーフィスだ。

 

仮に今が禍の団の総力を挙げて最後の作戦を仕掛けているということは、オーフィスにも声がかかっていてもおかしくは無い。ともすれば、曹操がここから離れた途端、オーフィスも行動を開始する可能性も少なからずあった。

 

そう思った時、ふとオーフィスが立ち上がる。

 

「何処へ行くつもりだ?」

 

まさかと思い、曹操は問いかける。

 

もしも、禍の団の長として動くというのであれば、即刻ギルガメッシュに伝えねばならない。

 

最大限の警戒を込めた問いかけに、オーフィスはただ一言。

 

「鯛焼きが無くなった。また買ってくる」

 

思わず、ズッコケそうになった曹操だった。




次回は曹操活躍……の予定。

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