英雄達の王   作:げこくじょー

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神の天敵

「はっはー!いいねぇ!いい具合にあったまってきたぜぇ!」

 

子フェンリルを相手に獰猛な笑みを浮かべて対峙するのはヘラクレス。

 

人間がなんの武器も防具も装備せずに闘おうなど自殺行為も甚だしいが、ことヘラクレスに限っては問題ない。

 

彼にとっては拳こそが武器であり、鋼の肉体こそが防具である。

 

子フェンリルの顎に拳が打ち込まれると途端爆発を起こす。

 

これこそがヘラクレスの神器。巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)である。

 

ただでさえ放たれる拳打は強力。そこに神器まで含まれればとてつもない破壊力を生み出す。

 

事実、子フェンリルは攻撃を受けると吹き飛ばされる。

 

親のような強靭さは持たないとはいえ、フェンリルはフェンリル。それに対してギルガメッシュの連れてきたキメラとともに相手を平然とこなすヘラクレスはおよそ人間とは呼び難いほどの強さを誇っていた。

 

……もっとも、見た目からして人間とは呼び難いのだが。

 

吹き飛ばされた子フェンリルにキメラたちが追い打ちをかけるように炎弾を浴びせかける。大ダメージ、とは言わないまでも確実に子フェンリルに対してダメージは通っているのは見て取れた。

 

(レオナルドのお気に入り、ねぇ。結構強えじゃねえか)

 

神器所有者の成長によって、神器の力も変化する。

 

特にレオナルドの神器は所有者の成長や経験によって左右される代物だ。戦闘経験さえ積めば、もっと強い魔獣を生み出すことは可能になるだろう。それこそ禁手に至ればフェンリルに匹敵する魔獣を生み出すことも。

 

「っと、今考え事すんのはマズいな」

 

炎弾をかいくぐって子フェンリルがヘラクレスへと仕掛ける。

 

キメラたちに目もくれないのは子フェンリルの本能がヘラクレスを排除することを優先させているのか、はたまた彼の魂の波動を感じ取っているのか。

 

どちらにせよ、子フェンリルにはヘラクレスしか映っていない。ある意味都合が良かった。

 

「レオナルドの『お気に入り』を死なせちまうと後で王様に怒られっからな。そのまま俺だけ狙ってこいやぁ!」

 

子フェンリルを迎え撃つ。

 

鋭い爪の一撃を神器の爆発を利用して拳で弾き、側面に回り込む。

 

「そら、このままくたばっちまいな!」

 

子フェンリルは反応するが遅い。

 

巨体に似つかわしく無い程の速さで放たれた拳打は離れる寸前に十数発、隙だらけの脇腹に打ち込まれていた。

 

子フェンリルは苦悶の声を上げ、たたらを踏む。

 

蓄積されたダメージに今の攻撃によるダメージが子フェンリルの動きを止めたのだ。

 

「ちっ。しぶてえな」

 

とはいえ、今の一撃で戦闘不能に持ち込むつもりだったヘラクレスは舌打ちをする。

 

子どもとはいえ伝説級の怪物(モンスター)だ。そんな相手と戦えることには文句どころか、感謝したいほどなのだが、それはここにギルガメッシュがいない場合の話である。

 

離れた場所から轟音が聞こえる。

 

十中八九、ギルガメッシュとロキの戦闘によるものだ。悪魔、天使、堕天使の混戦チームと化した本来のロキ討伐組も子フェンリルと量産型ミドガルズオルムの軍団と戦っているが、比較にならない。

 

何せ、神話の戦いが今あそこで行われているのだ。

 

ここでギルガメッシュではなく、ロキに対して善戦しているという感想が浮かぶのは英雄派内では当たり前のことなのだろう。

 

ギルガメッシュが戦う意志を見せた以上、勝敗は決まっているのだ。

 

ただ、ここで一つだけ問題が生じる。

 

確かにギルガメッシュの勝ちは決まったも同然だ。相手がなんであろうとギルガメッシュの勝利は揺るがない。

 

だが相手が強くなるにつれ、戦いは苛烈さを増していく。そして苛烈さが増していけば、自然周囲への影響も増していく。どれだけギルガメッシュが気を使ったとしても、相手も気を使うとは限らない。

 

つまり、ヘラクレスが早く決着をつけたがっているのは、ギルガメッシュとロキの戦闘に巻き込まれないようにするためだった。

 

「意思疎通ができりゃ、場所も変えられるってのに」

 

相手が獣であるがゆえの欠点だ。高い知性は有しているだろうが、言葉を交わさなければ意味がない。

 

睨み合っていても仕方ないとヘラクレスが仕掛ける。

 

拳を大きく振りかぶり、子フェンリルの左頬に向けて打ち込むが、それはすんでのところで子フェンリルが後ろに跳躍したことで掠める程度に留まった。

 

今まで後退することのなかった子フェンリルが、初めて後ろに跳躍したことに僅かに疑問を感じたが、その理由がすぐにわかった。

 

「っ……やべ。あの犬っころ。王様の方に狙い変えやがった!」

 

より強い神性に惹かれるように子フェンリルが標的を変えたのだ。

 

もしもヘラクレスが魂を継いだ者でなく、当人ならば切り替わることはなかっただろう。

 

だが、今のヘラクレスは当人ではない。故にギルガメッシュの方が神性が高いのだ。

 

「やめろ、バカヤロウ!」

 

それに気づいたヘラクレスは地面を蹴る。レオナルドのキメラたちもまた子フェンリルに殺到する。

 

しかし、僅かに遅かった。

 

ヘラクレスたちの攻撃が当たるより先に子フェンリルがギルガメッシュに向けて飛びーー

 

直後、凄まじい速さでヘラクレスたちの間を通過していった。

 

突然の方向転換。それはいくら並みの獣でないとはいえ生物ができる動きではない。

 

それが指し示す答えは一つだった。

 

「はぁ……だからやめろっつったのによ」

 

額に槍が突き刺さった子フェンリルの姿があった。

 

当然の末路だ。ギルガメッシュは人間以外に殺意を持って挑んでくる相手に容赦はしない。問答無用で命を刈り取る。

 

故に子フェンリルが辛うじて生きているのはギルガメッシュの慈悲ではない。強い生命力とロキとの戦闘によるものだ。

 

「ちっ。あっけねえな」

 

拍子抜けする終わり方に肩を落とし、ヘラクレスは子フェンリルに歩み寄る。

 

目前まで近づいても低く唸るだけで襲ってくる気配はない。

 

(……いや、動かねえようにされてんのか)

 

よく見れば致命傷は避けているものの、子フェンリルの体には呪詛のようなものが浮かび上がっている。

 

あの一瞬で子フェンリルを一撃の元に無力化したギルガメッシュにヘラクレスは口笛を吹く。毎度のことであるが、一人だけ次元が違いすぎる。

 

「んでもって、『動けねえようにした』ってことは後は好きにしろっつーことだよな」

 

追撃しなかったというのはつまりそういうことなのだろう。

 

煮るなり焼くなり殴殺するなり爆殺するなりヘラクレスの自由だ。

 

ヘラクレスは軽く手を払うと子フェンリルの腹部に潜り込むとそのまま()()()()()

 

自分の何倍もの巨体を誇る子フェンリルを軽々しく持ち上げるヘラクレス。この辺りもヘラクレスが人間なのかと疑問視される所以でもある。ただの筋肉バカでもここまで行きすぎていない。

 

そして持ち上げたのは空中に放り投げるためでも、何処かに投げつけるわけでもない。

 

「死ななかったのが幸いだったぜ。レオナルドの礼はこいつにしとくか」

 

持って帰るのである。

 

他の幹部が聞けば間違いなく反対するだろうが、ギルガメッシュがヘラクレスに処断を任せたのだ。ともすれば、ヘラクレスの決定こそギルガメッシュの決定となる。

 

「後は王様と北欧の悪神サマの戦いの見物でもさせてもらうか」

 

ある程度距離をとったヘラクレスは一旦子フェンリルを下ろし、自身の仕える主へと目を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー◇◆◇ー

 

轟音に空気が震え、それが肌に伝わってくる。

 

正直祭りでもしているのではないかと思えるほどの音のせいで耳が変な感じになってる。

 

暴れてもいい場所で戦っているとはいえ、この辺が修復不可能なほど荒れ果てた土地にならないよう一度に展開する宝具は五十に抑えているのだが撃ち放った宝具は優に五千は超えてると思われる。五十程度って言ってもぶっ放す速度と回数を考えたらそんなものだと思う。

 

これで戦いはじめて十分も経ってないんだから、やっぱり神って凄いと思う。こんなにバビロンぶっ放しても大して傷つけられないし。

 

バビロンブッパでは、の話だけども。

 

バビロンから引っ張り出してきた鎌でロキに地味にダメージを与えている。セイバーさんの鎧を貫通してダメージを与えたアレである。

 

アレはどうにも刃先が空間転移しているらしく、離れていても狙える上、防御魔法陣も貫通する。つまり魔法陣防御しかしないロキに防げる道理はない。はっはっは。

 

俺?そりゃ宝具が超一級ですからね。無傷ですよ。プレイヤーが雑魚でも装備が最強なら負けないんだ……あ、ついに肩に刺さった。

 

「ぐっ……おのれぇ……出来損ないの分際で……っ!」

 

手のひらから放たれた魔力が雷撃によって撃ち落とされる。うーん、この鉄壁。一瞬ひやっとするものの、撃ち落とし漏らすことはない。

 

「はっ。ではその出来損ないに倒される貴様はそれ以下ということになるな?」

 

本家ギルガメッシュならこんな生温い攻撃じゃ済まないぞ。だって周りの被害なんて気にしないだろうしな!

 

本当なら俺だってバビロン竜巻アタックで倒してやりたいさ。でもね、後で「直すの手伝え」とか言われるの嫌だし。

 

「ほざけ!貴様ごときが我を倒そうなどと!」

 

防御魔法陣を大量に展開するとロキはこちらに突っ込んできた。

 

バビロンから放たれた宝具と周囲に展開した迎撃宝具で撃ち落とそうとするが……なるほど、今までより随分気合の入った守りだ。撃ち落とすのは無理っぽい。

 

じゃあ、こいつで。

 

鎌を振るうと刃先のみが空間を転移し、ロキの喉笛に……。

 

「読めているぞ!」

 

刺さる前に右腕で塞がれた。どうやら露骨すぎたらしい。

 

「この距離ならば貴様とて!」

 

目前まで来たロキは魔法陣の隙間からこちらに手を向ける。

 

なるほど。近距離なら数の暴力には訴えられないこと、あとガチガチに固めれば迎撃宝具でもっても大した邪魔にはならない。おまけに鎌を抜いて振り上げるのも間に合わない。うん、確かに魔法陣をぶち抜く頃には俺が消し飛んでるな。ギルガメッシュのスペックとはいえ、耐久値が高いわけでもないし、火力はともかく耐久値に関してはこの世界の上位者に数段劣る。英霊って言っても人間だもの。

 

まぁ、魔法陣の上からならの話だけども。

 

「がはっ!」

 

防御魔法陣とロキの隙間。

 

そこへバビロンを展開してぶっ放した。魔力の弾も撃たれると厄介なので手ごとぶち抜いた。

 

「ば、馬鹿な……貴様……展開できるのは自身の周囲だけではないのか……?」

 

「誰もそんなことは言っていないが?」

 

単に近くに味方がいるんで囲み撃ちしなかっただけです。流れ弾ならぬ流れ宝具とか危ないから。さっきだってロキが変に軌道をずらしたせいで明後日の方向に飛んでったんだから。ヘラクレスは大丈夫としてグレモリー眷属に当たった日には即死かもしれないんだぞ。原作キャラ死んだら責任取れんのか。

 

魔法陣の内側に展開しなかったのはロキが動き回ってたから。回避先を読むなんて芸当俺にはできないし。

 

……そういえば、こっちの戦闘が止まった途端静かになったな。他のところも終わったってことか?

 

「まあいい。貴様を屠れば片がつく」

 

「くっ……我がこのようなところで滅ぶわけには!」

 

ロキが俺から距離を取ると、魔法陣を展開した。

 

すると光がロキを包み込んだ。

 

「勝負は一旦預ける!此度は遅れを取ることになったが、しかし!次に会うときは必ずーー」

 

「前口上が長すぎる」

 

膝の辺りまで魔法陣の向こう側に消えていたロキに黄金の鎖が絡みついた。

 

途端、ロキの転移が強制的に中断された。

 

「逃げるならばくだらぬ戯言を吐いている場合ではないだろう」

 

悪役って強くなればなるほど台詞が多いのは何故なのか。そして主人公側も間髪入れず攻撃すればいいのに待つのは何故なのか。相手弱ってるんだからさっさとトドメさせばいいのに。

 

「な、なんだこれは!?」

 

「天の鎖。貴様ら神を律する鎖だ。神性の高いモノ……貴様のように神そのものでは破壊することはおろか抜け出すことも出来ん」

 

「世迷言を……っ!?」

 

必死に抜け出そうと試みるロキ。

 

一瞬抜け出せそうな空気を出したものの、流石は英雄王のトモダチ。びくともしていないようだ。神特攻流石です。

 

「さて、あまり時間をかけるのも俺の趣味ではない。確実に塵一つ残さぬ故、遺言があるならば今のうちに吐いておけ」

 

ロキを包み込むように隙間なくバビロンを展開する。三百くらい。

 

やる時はちゃんとやらないとな。やったか?とか言って反撃されるようなヘマはしないのだよ。

 

今度こそロキの顔から余裕は消え失せ、焦燥感に包まれた表情になる。心なしか青ざめている気がしなくもない。

 

「なぜだ……なぜ我が出来損ない風情にーー」

 

「もっとも、待つつもりもないのだがな」

 

有無を言わさずぶっ放す。

 

全方位から宝具の一斉掃射を浴びたロキは断末魔の悲鳴をあげる事さえも許されず、轟音の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しまった。神様って殺してもいいのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー◇◆◇ー

 

「……終わったみたいだな」

 

ロキが無数の宝具に貫かれ、灰燼と化す瞬間を遠方より確認したアザゼルがぽつりと呟いた。

 

こうなることはわかっていた……わけではない。

 

ギルガメッシュは圧倒的な強さを誇るがそれでも相手は神だ。この場にいる面々にとっては地力に天と地ほどの差がある。魔術のレベルも高い上、フェンリルもいる。

 

ヴァーリチームやたまたま助っ人参戦することになったヘラクレスがいるにも関わらず、誰が死んでもおかしくはない死線になるはずだった。

 

しかし、結果を見れば誰一人命を落としていないどころか、深手を負ったのは朱乃を庇ったバラキエルのみで他は軽傷にとどまっている。

 

その最たる理由はギルガメッシュのロキをも上回る強さである。

 

北欧の神を相手に互角どころか余裕ある戦いを演じ、剰え一芝居打つことでロキに決定的な隙を作らせた。時間をかけていてもギルガメッシュの勝利は揺るがなかったかもしれないが。

 

「悪神ロキ……私達が手も足も出なかった相手をああも簡単に葬るなんて……」

 

リアスは味方であるはずのギルガメッシュに畏れを抱かずにはいられなかった。

 

いや、リアスだけではない。大なり小なり、この場にいる者達全員がそれを感じていた。

 

次元が違いすぎる。ギルガメッシュがあっさりと倒してしまったロキでさえリアス達が勝てる確率はかなり低い。ならば、そのロキよりも圧倒的に強いギルガメッシュに勝てる可能性はあるのか……あるはずがない。

 

心の底から、ギルガメッシュが敵対者でないことに安堵するばかりである。

 

ロキを葬ったギルガメッシュが、悠然とした足取りで歩いてくる。

 

当然のように空中歩行を行っていることは気にしてはいけない。

 

リアス達の元まで来ると、ギルガメッシュは溜息を吐いた。

 

「まったく……いくら戦力不足とはいえ、魔王の一人でも引っ張り出せなかったのか。アザゼル」

 

「……そいつを言われると耳が痛えな」

 

今回の一件。およそ若手悪魔にどうにか出来る案件ではない。三大勢力が精鋭を集めて当たらなければならないレベルの案件だった。

 

そこを突かれるとぐうの音も出ない。とアザゼルは肩をすくめた。

 

「まぁ、ロキに本気を出させない(・・・・・・・・・・・)という意味では最善ではあったのだろうがな。ましてあらかた片付けたとはいえ、禍の団の残党もいる以上、俺もそちらの方針をとやかく言うつもりはない。それに……」

 

ギルガメッシュが紅い双眸でイッセーを見る。

 

それだけでとてつもない威圧感を感じたイッセーはびくりと体を震わせた。

 

「な、んだ………じゃなくて、ですか?」

 

「いや、貴様も災難よな。悪魔になったはいいが、よもやここまで荒事の連続では素直に願いを叶えることもできぬだろう」

 

「そうなん……じゃなくて、別に俺は……」

 

ハーレム王の夢はまだ捨てていないイッセーは力強く頷きかけて、我に帰る。流石のイッセーもこの場でそう答えるべきでないことぐらいは弁えているし、何より大切な人や仲間を守ることもイッセーにとってはハーレム王に負けないぐらいの願望なのだから。

 

「言わずともよい。それと……姫島朱乃、だったな?」

 

「っ……なんでしょう?」

 

ギルガメッシュに名前を呼ばれ、無意識のうちに警戒心を露わにしてしまう。

 

それが無礼であるとわかっているのにそうせざるを得ないのはやはりギルガメッシュであるからだろう。

 

「その様を見るに、『過去』を克服したようだが……努忘れるな。己が心の脆さを。でなければその力が必要になった時、貴様には立ち上がる気力さえ残っていないやもしれんぞ」

 

「……はい。その言葉、深く心に刻んでおきます」

 

朱乃は噛みしめるようにそう言った。

 

自覚はある。父であるバラキエルを拒絶したことも、堕天使の血が受け入れられなかったことも、自分の心が弱かったことが原因であることも。いずれ克服しなければいけないことも。

 

「俺から言うことはもう無いと言いたいところだがな。アザゼル」

 

「ん、なんだ。今回はエラくお節介が多いな」

 

空気を和ませようと戯けた口調で言うアザゼル。

 

ギルガメッシュは目を細めて、じろりとアザゼルの方を見た。空気を和ませるどころか、余計にハラハラしたのは言うまでもない。

 

「たわけ。ただの言伝だ。ロキは確かに葬った(・・・)。そちらの神話に何か影響があるようなら多少は助力するとな」

 

「あー……そうだな。一応伝えておく」

 

オーディンに言うまでもなく、その答えは分かりきっているところだ。

 

ただの社交辞令であることぐらい。

 

「では、帰るぞヘラクレス」

 

「おうよ」

 

「……待て。何故さも当然のように子フェンリルを担いでいる?」

 

「あん?いや、レオナルドの神器にゃ助けられてっからよ。土産にこいつを連れて帰ってやろうと思って。俺らは無理かもしれねえけど、大抵の獣はレオナルドに懐くだろうしよ」

 

能天気な様子のヘラクレスにギルガメッシュが額に手を当て頭を振る。

 

こればかりは周囲もギルガメッシュに同情するが、当のヘラクレスだけは首を傾げているのだった。

 

 


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