六道の神殺し   作:リセット

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いつの間にかお気に入りがめっちゃ増えてる。評価者も増えてる。感想も増えてる。何があったし?


8話 ~最古と最新~

祐理と休日に出かける約束をした翌日、夢の中にいた護堂が飛び起きる。そして何かを探すように首を振り、辺りを見回す。

 

 

(何だ、今の感じ?大きな呪力を感じたが)

 

 

護堂の普段は無意識下にある呪力感知に、大きな反応があった。その反応が間違いではないかを確認する為に、目を瞑り意識を集中する。

 

 

(やっぱりだ、この町に巨大な力の持ち主がいる)

 

 

まつろわぬ神程ではない。しかし、明らかに魔術師の呪力量を遥かに逸脱している。そしてこの大きさに、護堂は覚えがあった。

 

 

(ドニの奴に近い。あいつこの町に来てるのか?)

 

 

ドニだとすると何の為にこの町に来ているのか。いや、ドニ以外の神殺しかもしれない。

もし本当に神殺しなら、何の為に日本に来ているのか確認する必要がある。そんな思考が護堂の今日の行動を決める。

 

 

(エリカに連絡をしておくべきか?)

 

 

一瞬そう考えたが、この時間ならエリカや万里谷も寝ているだろうと思い止める。そもそも護堂の勘違いの可能性もあるのだ。まずは、この呪力を感じる場所を探しどうするかを判断しよう。

そう考え、念の為にいくつかの札をポケットに入れた護堂は、まだ太陽が上りきっていない時間に家を後にするのだった。

 

 

 

 

 

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家を出てから既に数時間、日も昇りきり本来なら学校に向かっている頃に、護堂はようやく呪力の反応を最も強く感じる場所にたどり着いていた。

そこは日本人なら一度は聞いたことがあるほど有名なホテルだ。御三家に数えられるホテル、この中から禍々しい力を護堂は感じている。その凶悪さはドニの呪力とは似ても似つかない。そして護堂はこの段階で気づいていた。

 

ここからは生者の反応がたった2つしか感じないことに。だが臆する護堂ではない。躊躇いもなくホテルの中に入っていく。

 

ホテルに入った護堂を迎えたのは、あまりにも活気のないロビーと人の形をした白い塊達であった。その人塊に近づく。少し触れる。手に感じるのはざらざらした感触。

 

 

(…これは石か?…いや、違うな。これは…塩?)

 

 

護堂が触った人型の白い結晶。それは塩の塊だった。それらが護堂が前にエリカから聞いた、とある魔王の権能を思い出させる。

 

そんな護堂の後ろに不意に人の気配が現れる。護堂の背後を取った人影はボロボロの西洋甲冑を着込んでいた。甲冑を着た騎士が背を向けたままの護堂に向かってその手に持っていた大剣ークレイモアを上段から振り下ろす。

 

だがクレイモアが護堂の頭にたどり着くことはなかった。騎士が振り下ろした瞬間に振り返った護堂が、紫電を纏った手刀でクレイモアを半ばから切断したからだ。そこで護堂は止まらない。騎士に向かって肩口からぶつかる。

 

シェルダータックルを喰らった騎士は壁まで吹き飛び、皹を入れた後地面に落ちピクリとも動かなくなった。

しかし甲冑の騎士を倒したのに護堂は警戒を解いていない。

 

なぜ警戒を解いていないのか答えはすぐに分かった。先ほどの騎士のように次々と何もない場所から人影が湧き出しているのだ。その人影たちは各々が違う格好をしていた。

 

甲冑の騎士もいれば絵本の魔女のような帽子とコートを着た少女、フードを顔が隠れるまで被った腰の曲がった者、中には軍服を着た青年までいる。だが彼らには一つの共通点があった。全員着ている服がボロボロなのだ。人によっては服からチラリと見える足や腕から骨が見えている。

 

そんな彼らが護堂を取り囲む。その数実に二十。それだけの人数が武器を持ち護堂に向かって殺到してくる。その光景を見て、護堂はいきなり襲われた事に対しての怒りではなく憐憫を覚えていた。

 

 

(この人たち、恐らく穢土転生に近い権能で魂を縛られて操られている。惨い事を)

 

 

護堂が憐憫を覚えたのは、彼らが自ら護堂を攻撃していないのがすぐに分かったからだ。護堂の使える術の中に死者を蘇らせ、彼らの思考・思想に関らず己の駒にする術がある。それと似たことが、この死者達に施されているのがこの現象に近しいことを護堂が

出来るがゆえに嫌でも理解させる。しかしこの感情は、護堂の反撃の手を緩めない。動けないようにすることこそが、望まぬ行為を強制させられている彼らに対する救いになるからだ。

 

護堂に一番最初にたどり着いたのは先ほど壁に叩きつけられた騎士と同じような格好をした2m近い大柄な騎士。それを見て取るや、護堂はポケットから1枚の札を取り出す。その札が煙を上げ3尺ほどの大太刀に変わる。

 

その大太刀で突き出された槍を弾く。弾かれ体勢の崩れた騎士に接近。がら空きになった胴に向かって横に一閃。しかし騎士もさるもの、すぐさま槍を戻し防御する。だがその程度で防げる護堂の攻撃ではない。止められたと見るや、護堂の太刀にクレイモアを切断した時と同じ紫電が宿る。槍ごと騎士の体を分断。

 

 

(まず一人!)

 

 

騎士を二つに分けた護堂はそのまま太刀を床に突き刺す。床に突き刺さった太刀から辺りの地面に向かって、雷が撒き散らされる。雷撃がナイフを持ち近づいていた軍服の青年とレイピアのような細身の剣を持っていた少女、そしてエリカのようなケープを身に纏った男性を瞬時に沸騰させる。

 

 

(これで四!)

 

 

護堂は全く止まらない。太刀は地面に残し、天井に向かって跳躍、そのまま蜘蛛の様に足だけで天井に張りつく。その護堂を追って四人ほど天井近くまで跳躍し、剣と槍で刺し貫こうとする。その脅威に対して護堂も防御をする。紫電が今度は護堂の体全体を覆う。

 

纏った雷が護堂の体に武器が触れる前に消滅させる。またこの雷の鎧は防御に使えるだけではない。護堂の姿が消え、追ってきた四人がいきなり空中で爆散する。もちろんやったのは護堂だ。この鎧を纏った護堂は神経伝達速度が上昇する。その速度は音を越える。

そのせいで消えたように余人の目には映るのだ。更に地面にいた数人が同じように爆散。

 

 

(後六!)

 

 

そんな速度で動く護堂が見えているのか、弓矢を撃たれる。しかし当たる前に鎧が阻む。その矢を射た妙齢の女性に護堂の手から黒い雷が放たれた。雷を避けれるわけもなく、あっさりと黒こげになる。

 

 

(残り五!)

 

 

残っていた魔女の格好をした少女や腰の曲がったフード達は、一心不乱になにかを唱える。呪文だ。呪文が唱え終わると同時、雷を放ち動きの止まった護堂に炎や人に触れるだけで脳味噌を腐らせる霧などが飛んでいく。

 

だが雷の鎧に当たる前に掻き消える。この結果は当たり前だ、護堂の呪力耐性は物によっては権能すら完全に防ぐ。たかだか人間の魔術如きが通るわけがない。

護堂はすぐさま手を地面に付ける。途端魔女達の地面が隆起し、棘状になる。それらに串刺しにされ、全員が動きを止めるのだった。

 

 

 

 

 

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瞬く間に二十人の襲撃者を葬った護堂。だがその顔には何の喜びもない。あるのは虚しさだけ。その思いもすぐに消し護堂はエレベーターに乗り、上階を目指す。

 

 

(…生物を塩の塊に変える『ソドムの瞳』、死者を己の元に縛りつけ使役する『死せる従僕の檻』、か。この上にいる奴の呪力が禍々しいわけだ。エリカから聞いた事が本当なら最悪の相手だ。ここにエリカたちを呼ぶわけにはいかないな)

 

 

そうこうしている内に目的の階に到着する。待ち伏せがないか警戒し降りる。ゆっくりと歩いて行く。そして

 

 

(ここだな、鬼が出るか蛇が出るか。ええい、ままよ!)

 

 

扉を開く。そこに銀髪の少女とスーツ姿の老人が待っていた。

 

 

 

 

 

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「我が下僕達を簡単に壊滅させたか。その上なにやら胡乱な術を使ったようだな」

「…すまないな手癖が悪くて。急に襲撃されたもんだから手加減できなかった」

「かまわんよ、あの程度の輩ならいくらでもいる。それよりもだ少年、君の名を聞いておこうか。いやなに、君は私の名を知っているのかも知れないが、私は君の名を知らないものでね。名乗り給え」

「……草薙護堂だ。ついこの間カンピオーネなんて呼ばれるようになった。そういうあんたはヴォバン侯爵でいいんだよな?」

「やはり私の名を知っていたか。そして君がクラニチャールの言っていたこの国の王だな。ずいぶんと若いな」

「あんたと違って戦歴の浅い身なんでな。…ここに座っても?」

 

 

そう尋ねた護堂に対して鷹揚に頷く。それを受けた護堂はヴォバンの対面に座る。座った護堂はヴォバンに率直に尋ねる。

 

 

「ヴォバンさん、単刀直入に尋ねます。日本に何の用で?」

「ああ、君の所領に無断で入り込んだことは詫びよう。なに、ただの探し物さ」

「探し物?」

「私は今とある儀式の為に一人の巫女を探していてね。その少女がこの国にいるのだよ」

「…その儀式とやらについては特に何も聞かないよ、ろくでもなさそうだし。それよりもたった一人の女の子を、ね。それってまさか無理矢理捕えるなんて言わないよな?」

「彼女が私の要請を拒むのであれば、それもやむをえないな。ところで少年、君はその巫女を知らないだろうか。名を万里谷祐理というのだが」

 

 

この言葉にほんのわずかに護堂の眉が動く。そしてヴォバンはそれを見逃さない。

 

 

「その反応、知っているようだな。どこにいるのか教えてもらえるな」

「…教えるとでも思うか?それよりさ、一つ良いかな。さっき儀式に関しては何も聞かないって言ったけど、訂正させてもらう。その儀式とやらは何をするんだ?」

「君が喋らない以上、私に応じる義務はないな」

 

 

そう言ってヴォバンがここに来て口をつぐむ。

そんな中護堂の質問に答えたのは、先ほどからヴォバンと護堂のやり取りをただ聞くだけだった銀髪の少女だった。

 

 

「お初にお目にかかります、草薙護堂よ。僭越ながら私の方から説明させて頂きます」

「君は?」

「リリアナ・クラニチャールと申します。お見知りおき下さい。…先ほど候の仰られた儀式なのですが、まつろわぬ神を招来する為の物です」

「…神をこの世に降臨させるのか。…………クラニチャールさん、それほどの術となると術者に相当の負担がかかると思うんだけど、危険はないのかな?」

「…御身の憂慮通りです。恐らく儀式後には万里谷祐理の命はないものかと」

「……そっか、ありがとう」

 

 

護堂への質問に答え終わったところで、リリアナはヴォバンに対して頭を下げる。そんなリリアナにヴォバンは今日中に巫女を探し出せば、命は助けると言い探索に向かわせた。

 

 

「全くクラニチャールめ、出過ぎた真似をするわ」

「…俺としては助かったけどな。そして彼女の話で決心したよ。死ぬかもしれないのに万里谷の身柄を差し出すなんて真似は俺には出来ない。大人しく諦めて帰ってくれないか?」

「それは無理だな、少年。…ところでその娘は君の何なのだね?家族か妻か、それとも愛人か?先ほどからの君の反応はずいぶんと入れ込んでいるように見えるのだが」

 

 

この言葉に護堂は友達だと即答しようとした。しかし、と考える。本当にそれだけなのだろうか。先ほど万里谷の命が亡くなると聞いたとき、何故か護堂はそれだけは絶対にさせないと思ったのだ。そして護堂の脳裏によぎるのは万里谷との記憶。

初めて会った時護堂のトラップで彼女に怖い思いをさせてしまった。あれは焦ったなと感想を零す。そして次に思い出すのは己の精神世界に招いた時の事。まさか本当に申し出を受けてくれるとは思っていなかったのだ。それだけにあれは楽しかった。

 

次に思い出すのはエリカとのあれこれで怒る彼女。これは本当に申し訳ない。そこからも様々は記憶が溢れる。体育で疲れたのか妙に青い顔をしていた万里谷。ふとした拍子にみせるきれいな表情。そして最後に出てきたのは昨日のとびっきりの笑顔。

そこまで考えた所で、とある結論が護堂の中で出る。その結論に護堂自身困惑する。その困惑が思わず口に出る。

 

 

「…まさかこんな思いが俺の中にあったとは。俺も草薙一族ってことかね。…エリカのやつは怒るだろうし、万里谷も軽蔑するか呆れるか…」

「さっきから何をぶつぶつ言っているのだ」

「ああ、いや、万里谷が俺にとって何なのかだったな。あんたのおかげで俺の中でも答えが出たよ。…………絶対に守りたいって思うくらいに愛しい子だ!」

 

 

力強く宣言する。そして口に強く出したことで、己の中の気持ちもはっきりとした形になる。妙な清清しさを覚えるくらいだ。

 

 

「そういうわけでだ、やっぱり帰ってくれないか。もしあんたがそれでも万里谷を強引に攫うなら、俺は全力で邪魔をするぞ」

「…それは私と争うということかね?まだ二柱しか屠っていない身で、このヴォバンと本当に戦うというのかね?そうなれば、君はこのヴォバンの生涯の敵として人生をおくることになる。

いや、明日の朝日を拝む事もできないかもしれない。それでも、私に挑むかね?」

 

 

先ほどまでの知的な老教授のような雰囲気が消える。現れたのは獰猛な獣の如き気配。その変わり身に護堂も驚く。

 

 

「…それがあんたの本性か。噂どおりの暴君ってわけだ。…確かに俺は戦闘経験があんたに比べたら少ないさ、ただ性能なら負けていないぞ」

「…良かろう、私が巫女を手に入れるにはまず貴様を屠らねばならぬようだ。貴様を殺した後、その魂を縛り挑んだことを後悔させてやろう」

 

 

その言葉を最後にお互いが立ち上がり、距離をとる。先に動いたのは意外なことにもヴォバンであった。ヴォバンが手をかざす。その動きに合わせるように部屋中の窓が割れる。その割れた窓から台風の如き風が流れ込んでくる。

 

流れ込んだ大気がヴォバンの眼前に凝縮。大気が歪み護堂の方からだとヴォバンがぐんにゃりと曲がって見えるほどだ。

 

 

「景気の一発だ、これで死ぬなよ小僧。それでは興ざめだからな」

 

 

そんな言葉と共に護堂に向かって、風の玉が打ち出されたのだった。

 

 

 

 

 

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「あの小僧め、逃げたか」

 

 

そう呟くヴォバンの眼前に穴の開いた床がある。ヴォバンの大気弾によるものではない。護堂が破壊した後だ。ヴォバンの権能に蹂躙される前に下の階に逃げたのだろう。

 

 

「…まあよい、ゆるりと追い狩り尽くしてやろう」

 

 

狼の如き犬歯を覗かせ笑う。ヴォバンにとって獲物は活きがいいほど良い。逃げるならば追いかけるまで。そう思いヴォバンも自信の攻撃で吹き飛んだ壁から部屋を出るのだった。

 

 

 

 

 

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ヴォバンの権能を避けるために床を粉砕し、下の部屋に逃げた護堂はすぐに行動に移る。護堂はこんな都会の真ん中で神殺しと全力で戦う気はない。己の術だけでも間違いなく東京が壊滅する。そこにヴォバンの権能が加わればなおさら酷いことになる。

 

 

(奴に俺を追わせてあの場所に誘導するしかない。頼むから俺を追わず、万里谷を先に探すのは止めてくれよ)

 

 

下の部屋の扉を床の時と同じ要領で粉砕した護堂は、廊下に出て疾走する。そんな護堂の背後から気配が複数現れる。そちらを振り返りもせずにエレベーターホールまで走り抜ける。エレベーターの止まっている階は護堂が上がる為に使ったせいか上の階。

降りてくるのを待っている暇はない。

 

護堂が手をエレベーターの扉に向かい振る。その動きに合わせて真空の刃がほとばしる。真空の刃を叩きつけられた扉は、豆腐の如く簡単に切断される。そうして壊れた扉からエレベーターシャフトに身を投げる。そんな護堂をヴォバンの従僕達が追いかけてくる。

 

そんな彼らに向かって、護堂の口から火が吹き出された。吹き出された火はシャフト内を溶鉱炉に変える。落ちるに任せる彼らにそれを避けれるわけもなく、重力によって自らその劫火に中に身をくべる結果となった。

 

護堂はその結果を見ることなく、シャフト途中の扉を入った時と同じ様に切断。シャフト内から下階の廊下に出る。そんな護堂の視線の先、廊下を巨大な狼達が護堂に向かって走ってくる。護堂がいきなり手を合わせる。その動きを真似るように廊下の壁が動く。

簡易なプレス機となった壁は容易く狼たちを押し潰した。護堂が手を開く動作にあわせ、閉じていた壁が元に戻る。

 

狼のいなくなった廊下を抜けようとする。だがそれを防ぐように別の狼達が曲がり角から駆けてくる。更にエレベーターホールの方からも次々と死体が降りてくる。挟み撃ち。護堂はすぐそばの部屋の扉をもぎ取る。そのまま部屋に侵入し、窓に向かって走る。その勢いのまま窓を突き破り、外に飛び出る。

 

そんな護堂と同じように次々と窓ガラスを割り、人影が飛び出てくる。降り注ぐガラスの破片。それらを避けるようにホテルの壁を蹴り、すぐそばのビルの屋上まで護堂は一気に移動。

護堂はそんな自分を追いかけてくるか振り返り確認する。百人以上の集団がいた。

 

 

(多いなおい。まああれだけ、追っ手を差し向けるってことはそれだけ俺を殺すのに本気ってことか。好都合だ)

 

 

きちんと追跡してくれていることを確認した護堂は携帯を取り出し、ビルの屋上から屋上に飛び移りながらある人物に電話をかけるのだった。

 

 

 

 

 

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いつも通り遅刻し、登校途中のエリカの携帯が震える。表示された名前は草薙護堂。すぐにエリカは電話に出る。

 

 

「どうしたの護堂、今日は迎えに来てくれないなんて。それともモーニングコールで済ますつもりだったのかしら。本来ならこんな電話で許してあげる気はないのだけど、一回くらいは許してあげるわ」

「おはようエリカ、悪い、今あんまり世間話をする余裕がなくてな。狼と死体の軍団に追われてるところなんだ」

「ちょっと待ちなさい護堂、あなた今なんて言った?狼と死体ですって」

 

 

まだ余り頭の回っていないエリカに、いきなり言葉のフックが突き刺さる。いきなり何をいっているのだこの男は!モーニングコールにしてはあんまりな内容にエリカが携帯を落としそうになる。

 

 

「ああ、ちょっと日本に来てたヴォバン侯爵と揉めてな。それで今どこにいる?万里谷を通して委員会に伝えたいことがあるんだ」

「…なんでそんなことになっているのかは後で聞かせてもらうわよ。それよりも伝言の内容は何かしら?」

 

 

護堂から伝言を聞いたエリカは思わずため息が出そうになる。

 

 

「…そんなところを戦いの場所にするということは本気でやるつもりね。正史編纂委員会も大変ね、業務内容に地図の書き換えが追加されるのだから」

「この近くで俺とあの爺さんがやりあっても大丈夫そうなのが、そこぐらいしか思いつかなくてな。悪いとは思うが、東京で全力全開を出すよりはましだろ」

 

 

確かに護堂のいうとおりではあるが。ともあれ伝言役をやるのはかまわないが、ただ使い走りをするのは性に合わない。

 

 

「ところで護堂、あなた言いつけを守った臣下に対して王として、どんな褒美をくれるのかしら?」

「今までの後でを全部だ」

 

 

大盤振る舞いな返答にエリカは満足する。ならば後は護堂の伝言を伝えるのみ。護堂との通話を終えたエリカは魔術で運動能力を底上げし、すぐに学校に向かうのだった。

 

 

 

 

 

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学校に着いたエリカは祐理を呼び出し、護堂からの言葉を伝えた。祐理は最初は戸惑っていたが、エリカのそんなに時間がないと言う叱責でなんとか表面上は平静を取り戻す。祐理とエリカは学校を早退し、すぐに祐理を連れてエリカは正史

編纂委員会の東京赤坂分室に向かった。

いきなり少女二人に訪問された甘粕はそんな彼女達から伝えられた言葉に

 

 

「………………………はい?」

 

 

としか返事が出来なかった。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、祐理さんにエリカさん。どうして侯爵様が東京を訪れていて、しかも草薙護堂と戦争状態になっているんですかね!」

「私に聞かれても困るわ。護堂の方も大分余裕がなかったのか、詳しい内容は話さなかったもの。それよりも今話した場所をすぐに封鎖しなさい。護堂と候がそこにたどり着く前に避難勧告を出さないと、とんでもないことになるわよ」

「…やはり信じられませんよ。その伝言を聞いたのはエリカさんだけですよね?なら、あなたが嘘をついている可能性もありますよね」

「…いえ甘粕さん、エリカさんは嘘をついていません。私の直感もすぐそばに未曾有の大災害が迫っていると訴えてきます」

 

 

祐理の言葉に甘粕がうんざりしたような顔になる。確かに昨日草薙護堂の力が確認できたらとは言ったが、こんなに早く実現しなくてもいいではないか。だが祐理の、世界最高峰の霊視能力者の直感。無視するにはこの業界では大きすぎる。

 

すぐに上司である沙耶ノ宮馨に連絡を取り、避難勧告や周辺地域の封鎖が可能かどうかを確認する。結果は是。

 

正史編纂委員会は自衛隊や警察にも協力要請を出し、とある湖周辺の住民の避難やレジャー等で来ていた観光客の安全の確保、及びその湖につながる全道路を封鎖を呪術も使い急ピッチで行った。

 

護堂がヴォバンとの戦いに選んだ場所。それは茨城県南東部から千葉県北東部に広がる日本で二番目の広さを誇る関東最大の湖、霞ヶ浦であった。




戦闘描写難しい、そして原作最新刊の魔王たちの切り札や原作護堂さんの強化で魔王や神の強さ見直さなきゃいけないのがつらい。やつら惑星間戦闘もできるのかよ。やっぱ魔王たちもチートだった

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