由比ヶ浜結衣の消失   作:ぼつちやん

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まちがっていた始まり

テレビを観てみる。

「本日4月〇日の最高気温は20度くらいで、平年並みの心地よい春の陽気に包まれるでしょう」

お天気お姉さんが笑顔で言った。

「ろ、録画かもしれん。そうだ新聞だ新聞ならわざわざ過去のものを取っておいたりはしないだろ…」

-四月〇日 △▽新聞-

「あっれれ〜おかしいぞぉ〜過去の記事を取ってる人はいるかもだけど新聞丸々取ってる人なんてなかなかいないのに〜なんでかな〜?」

「お兄ちゃん、正直それ男子高校生がやるとキモいていうかお兄ちゃん補正がかかって更にキモいコナン君に謝って」

前半ジト目で最後のは真顔で言われた。

「コナン君には謝るがお前には謝らんむしろ謝れ。俺に謝れ。お前は全俺を傷つけたのだか」

「あ、お兄ちゃん、はやくしないと入学式遅れちゃうよ?ささっ食べちゃって食べちゃって!」

途中で切られたし、今度はとびきりの営業スマイルで言われた。

「器用なやっちゃなお前…」

朝から何面相なの?な小町に促され朝食を取ろうとする前に時計を確認してみる。

「悪い小町、あんま時間ねぇみたいだから帰ってきてから食べるわ」

「え?いやまだ全然時間ある…ってお兄ちゃん!?」

「いってくる」

そう告げてリビングを後にした。なんか小町がぶーぶー文句言ってた気がする。あとで謝っとこう。

急いで自室へと向かい、ピカピカの制服に着替える。念のため荷物も持って、俺は学校へ、正確にはあの場所へと向かった。

 

***

 

さて、俺が何故最愛の妹の手料理を一旦投げてまで家を飛び出したのか。

それは、記憶によると俺はあの日あの時間にはもう既に家を出ていたからだ。

本当は認めたくないのだけれど、いや、ホントマジ嫌なのだけれど、こんなにけれどけれどって雪ノ下でも言わないと思うけれど、多分こんなにけれどけれど言うのは俺と髪型がよく似た彼だけなんだけれど…

もし今日が本当に「あの日」だというのなら、「あの事故」がもうすぐ起こることになる。

記憶よりも数分遅れて家を出たので全速力で自転車をこぐ。

犬を助けることは絶対、可能なら俺の怪我も回避したいところだが…とにかく犬優先。

いやいや、なんならやっぱり今日は十二月でっていう可能性もあるよね!

とはいえ、不安な気持ちが強いので、自転車のスピードを緩めずあの場所へと向かった。

 

***

 

「お、あの犬と…ん?」

犬は発見した。だが飼い主が俺の思う人物とはかけ離れている。もっとこうイマドキのギャルって感じじゃないのん?

今思えば、俺に飼い主の記憶まではない。飼い主が誰かは知っている。だが、現場にいた時の飼い主がどのような人物だったか、というのは覚えていない。いや、ホント痛くて…

結論から言うと間に合った。だが確信が持てなかった。

「さて、どうしたもんかねぇ…」

確かあの時は俺と犬と犬の飼い主とあの車しかいなかったはずだ。だから彼女に違いないのだが…

人違いとかチョー恥ずくね?

また黒歴史とかトラウマ増えんのかよ…

いや、今更一つや二つ増えたところで…

と、考えれば考えるほど余計なことばかりが浮かんでくる。ったく、今日だけは恨むぜこのトラウマ回避体質。

「こうなりゃヤケクソだ…ハァ…」

とりあえず、犬の飼い主さんに話しかけてみることにした。

 

***

 

「お、おはようごじゃましゅっ!」

「!?」

盛大に噛んだしキョドったせいで飼い主さん、かなりビックリなさってますね。

「お、おはようございます…」

小さくて聞き取りにくかったが、この声は間違いない。由比ヶ浜結衣だ。

目当ての人物だったということと、今日は本当にあの日なんだという二つの確信を得られた所でさらに続ける。

「か、可愛い犬ですね。少し撫でさせてもらったりしてもいいですか?」

オッケー、最初よりは平常心戻ってきた。

由比ヶ浜(クマさんパジャマ。黒髪でメイクはおそらくなし)は少し訝しなげ視線を向けながらも

「は、はい。ど、どうぞ…」

リードを俺に預けてくれた。

「ありがとうございます」

おー、カマクラと違って素直な子だ。初対面のはずなのに大人しい。俺は何回か会ってるけど。

犬も近くで見られたことで更に確信を得る。

名前なんだっけ?サラブレッドだっけ?一応聞いてみようかと口を開くが

「「あの」」

向こうとタイミングが重なってしまった。

「さ、先にどうぞ!」

さすが空気を読んで生きてきただけのことはあるな。気遣いがはやい。

「じゃ、じゃあ俺から…この子、名前なんて言うんですか?」

「えっと、サブレっていいます」

そうだったそうだったサブローでもサラブレッドでもサラブレードでもなくサブレねよし覚えた覚えた。

「へー、か、可愛い名前ですね…」

「ありがとうございます」

1年にも満たないとはいえほぼ毎日顔を合わせていたお陰か、俺にしちゃなかなか気の利いたひとことだったんじゃないだろうか。

それに、さっきよりも由比ヶ浜の警戒心が薄れているようにも感じた。

「今度はあたしから、いいですか?」

「お、おう。なんでも言ってくれ」

そう言ってからしまった!こいつキモいですとかなんとか言ってくる可能性あるじゃん!とか思ったが、彼女の興味は俺、ではなくこのピカピカの制服だったらしく、

「その制服、総武高ですよね?」

「そうですね」

「へぇー、頭、良いんですね」

「いやいや、中学はぼっちだったから中学の連中が誰も来ないような所を目指したらここだったってだけですよ」

「そんな理由!?なんかすごく負けた気分…あたしもそこ目指してたんだけどなぁ…」

ブツブツ言いながらあからさまに落ち込む由比ヶ浜。何か言ってやるべきかと思っていると、一羽の蝶が俺のそばへ飛んできた。

「ひゃんひゃんっ!」

サブレが暴れだした。好奇心の強いやっちゃ。

サーーーー…

と、今度は遠くで車の音がしてきた。そろそろ時間か…

あの車が通過するまでサブレを拘束してればいいだけの話だ。

ザーーーー…

だんだん近づいてきたな、と思ったその時、サブレは身をよじり、俺の手からスルッと抜け出た。クソッ、毛並み良すぎんだよキューティクルかよ、などと思っている暇もないようだ。

サブレは俺の手から抜け出たあと、さっきの蝶を追いかけ車道へと飛び出していた。

「サブレ!」

由比ヶ浜が叫ぶ。

ズーーーー…

車はどんどん近づいてくる。

「おい!」

俺はサブレの後を追う。

-クラクションが鳴った-

-サブレを掴んだ-

-由比ヶ浜の方へ投げ-

-…-

そこから少しの間の、病院で目が覚めるまでの間の記憶はなかった。

 




おー、まだ今のところ1日1話で更新できてますね〜…というのも、なんと!お気に入りが10件超えましたー!おめでとうワタシ!
少しやる気が出たんですかね?一話の時は正直気まぐれに更新していこう…くらいだったのですが。
ていうかこのお話自体が気まぐれだしなんなら書いていることも全て気まぐれな気がする…(´・ω・`)
そのうちボロが出て設定に矛盾など生じてしまうかもしれません…そのときはすみません!
今でもちょくちょく修正加えたりはしていますがまだ修正の効く範囲なので大丈夫なのですが、ストーリー丸々改変しなきゃとかなるともう…想像したくないなぁ…
さて、タイトルに名前がありながらも今回で初めて登場した彼女、由比ヶ浜結衣。いかがでしたか?高校生なりたてのガハマさんの情報はほとんどアニメでも原作でもなくて難しかったですが、まあ中身はそんなに変わらないだろうということで口調だけは気をつけたつもりです。
何か違和感、修正すべき語、設定、感想などございましたら感想の方へよろしくお願いします!
ではまた!
P.S.前書き邪魔そうなので今回はこっちでまとめてみました。お気づきいただけたでしょうか?壁|ω・`)チラッ?

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