独自設定含みます。
○○鎮守府、一七〇〇ーー
執務室ーー
提督「よし、これで終わりだ。あとは五十鈴達の報告書を待つのみだな」フゥ
長良「お疲れ様です、提督♪」
由良「お疲れ様です♡ 今お茶をお淹れしますね♡」
本日も滞りなく執務を終えた提督。今日は長良が秘書艦であり、由良がそのお手伝いにきている。
由良を除く他の姉妹達は遠征や訓練の報告書をまとめている最中で、由良は抜かりなく愛する提督に甲斐甲斐しく世話を焼く。
提督「流石に今の時期は昼間が暖かいが、日が沈むと冷えるな」
長良「鎮守府は潮風もあるから余計ですよね……昼間は汗ばむくらい暖かい日もちらほらありますけど」ニガワライ
由良「すっかり春ですよね〜♪ 夜になると裏山では虫もジィ〜って鳴いてますし♪」
提督「キリギリスは夏の虫だが、キリギリス科でも春に鳴く種類はいるからな。桜だけでなく、春は色々な生物が活発化する」
長良「近くの池では蛙がグーグー鳴いてますよ♪」
由良「蛙ならゲコゲコじゃない?」ニガワライ
長良「え〜、あれはグーグーでしょ〜?」
由良「確かにそうだけど〜」コマリエガオ
そんな感じに雑談を楽しんでいると、執務室のドアがノックされた。
提督「入りなさい」
提督の声にドアがガチャリと開くと、ドアから那珂が「那珂ちゃん登場〜☆」と相変わらずキャピキャピして現れる。
那珂「あ、由良ちゃんもいる〜♪ やほ〜♪」ノシ
由良「やっほ〜、那珂ちゃん♪」ノシ
普段から仲良しの那珂と由良は両手を互いに振ってキャッキャしながら挨拶する。どうやらこれが二人のデフォなのだろう。
由良と挨拶を終えると、那珂は提督の机の前まで足取り軽くやってきた。
提督「何かご用かな?」ニコッ
那珂「うん♪ これ見て♪」つ紙
提督「どれどれ……」
那珂から一枚の紙を受け取った提督はその紙に書かれていることを確認していく。
A4サイズの紙の一番上には大きく『歌とダンスで楽しく訓練☆』と書いてあるが、その見出しとは裏腹に内容は事細く詳細が書かれている。
歌:歌うことで腹式呼吸が身に付き、腹筋の強化、劣勢時にも後ろ向きになることが減るので効果的。
ダンス:昔から武術でも差し足や抜き足は大切な動作であり、ダンスをすることでそのステップで回避力、更には小気味良い反撃にも転向可能。
と、この他にも那珂が戦闘で身につけた感覚や感性が記載されており、それは提督が思わずマジマジと熟読してしまう程であった。
由良「あれって全部那珂ちゃんが考えたの?」
提督が熟読する中、由良が那珂にそう訊ねると那珂は「ううん♪」と首を横に振る。
那珂「あれはね、私だけじゃなくてお姉ちゃん達とか、夕張ちゃん、明石さんの意見とデータもまとめてるから、正確には那珂ちゃん達の案かな♪」
由良「へぇ〜、やっぱり歌とかダンスをしてるのと、していないのでは違う?」
那珂「うん♪ データは殆ど演習でとったやつで、私がそのデータの元になったんだけどね……」
那珂「でもダンスのステップとか、好きな歌で自分を鼓舞したりするとやっぱりデータはかなり違ったんだよ♪」
長良「それは那珂ならではのデータなんじゃない? リズム感が悪い娘だっているし、歌があんまり得意じゃない娘からしたら嫌になっちゃうんじゃ……」
那珂「うん、それも考えたんだ〜。だから必須じゃなくてもいいの……ただ、これで少しでも怪我するのが減ったり、気が滅入っちゃうのが軽減出来るかなって思って」ニコッ
長良の問いに那珂はそう言って優しい笑みを浮かべた。
どんなに平穏な毎日を過ごせていても、自分達は戦場に身を投じなくてはならない。
そんな環境であれば、どんなに強い精神力を持ってても、知らず知らずのうちに気は滅入るもの……那珂は常々そう思っていたので、姉である川内達や分析力のある夕張や明石に協力をお願いし、こうして結晶として提出しに来た次第なのだ。
これが普段から艦隊のアイドルをする彼女の本当の姿……那珂の考えに長良も由良も『流石は那珂ちゃん』と言うように息を吐いた。
提督「…………ふむ、これは検討する価値があるな」
那珂「本当!?」
提督「あぁ、これだけのデータが提示しているんだからな」ニコッ
提督の言葉に那珂は緊張が解れ、「良かった〜」と言いながらソファーへ座り込む。
提督「ただ、那珂だけのデータではなく、他の者達のデータもとってみた方がいいだろう。舞風達とかは快く引き受けてくれるのではないか?」
那珂「そうかも♪ じゃあ、あとでお願いしてみようかな♪」
提督「そうしてみるといい。ただ、データをとる時にはちゃんと危険性が及ばないようにしてほしい。危険を伴うのならば許可は出来ない」
那珂「危険性はちゃんと考えてやるから安心して。私はみんなを危険に晒したくて提案してるんじゃないもん」
那珂の返事に提督は「それならばいい」と返し、ニッコリと笑った。
すると那珂もニッコリと笑みを浮かべ、白い歯を提督に見せる。
長良「那珂はやっぱりアイドルというか、努力家だよね。感心するよ」ウンウン
由良「いつも明るくしてても、陰ではしっかりとみんなのことを考えてるもんね♪」
那珂「那珂ちゃんはアイドルなの〜!////」プンプン
二人に褒められたのが恥ずかしかったのか、那珂は両手を振って抗議する……がその顔は真っ赤だった。
提督「那珂は着任当初から真面目で努力家だった。そんな那珂だからこそ、みんなに慕われ、その笑顔に鼓舞されてきたのだろう」ニッコリ
那珂「て、提督までやめてよ〜!////」
提督にまで褒められた那珂は耳まで顔を真っ赤にし、「じゃ、じゃあ舞風ちゃん達に今の話ししてくる!////」と言い捨てて、逃げるように執務室を去っていった。
すると那珂と入れ替わるように木曾が入室してくる。
木曾「なんだ、今の那珂は? 顔真っ赤だったが?」
提督「艦隊のアイドルに相応しいと褒めていただけだ」フフ
由良「そうそう♪ 那珂ちゃんは素敵よねって言ってたの♪」
長良「そうしたら照れて逃げちゃったって感じ」ニガワライ
提督達の返しに木曾は「あんまからかうなよ?」と注意しつつ、今日の出撃の報告書を提出。提督がその報告書を確認していると、五十鈴達もやってきて執務室はまた別の賑わいをみせるのだった。
後日、那珂が提案した『歌とダンス』を訓練に取り入れる試みが試験的に始まり、それは訓練中でも楽しいと好評だったので希望者のみという形であるが、正式に取り入れることとなったそうなーー。
今回は日常系と真面目系なお話にしました♪
というか、那珂ちゃんって実は凄いって感じを書きたくて書きました(^^;
ということで、此度も読んで頂き本当にありがとうございました!