艦これ Short Story改《完結》   作:室賀小史郎

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陽炎型駆逐艦メイン。

少し真面目なシーン、キャラ崩壊、ネタ、独自解釈含みます。


艦これSS改87話

 

 ○○鎮守府、一〇〇〇ーー

 

 執務室ーー

 

秋雲「ほら提督〜、モデルなんだから少しは笑って笑って〜」カキカキ

提督「こうかな?」ニコッ

秋雲「お〜、いいよいいよ〜♪ んじゃとりあえずそのまんまでお願いね〜♪」スラスラ

 

夕雲「秋雲さんたら」クスッ

巻雲「秋雲はブレませんね〜」ニガワライ

 

 秋雲は執務室で提督をモデルにデッサンしていた。

 本日秘書艦の夕雲とその補佐である巻雲は、その光景を書類整理しながら眺めている。

 

 いつもならば注意しているはずのところをどうして許しているのかというと、提督が秋雲の申し出を許可したからだ。

 

 今日は秋雲の進水日と同時に秋雲がインドネシア・ザンボアンガ近海でアメリカ潜水艦『レッドフィン』からの雷撃を受けて沈んでしまった日。

 なので提督は今日だけは秋雲がしたいことをさせてあげようと、モデルを引き受けたのだ。

 

 艦時代の駆逐艦『秋雲』は空母『隼鷹』が大破させ、放棄されたアメリカ空母『ホーネット』の写真を撮ることを命じられたが、それは夜で困難であったため突如電探を照射して大破したホーネットのスケッチを始めた。

そんな秋雲の行動を見て巻雲からは「如何セシヤ」と発光信号が送られるほど。

 そんな仰天エピソードが秋雲では有名である。

 

 しかし秋雲は「ガダルカナル島撤退作戦」や「キスカ島撤退作戦」、「セ号作戦」(コロンバンガラ島からの撤退)と南方から北方で任務をこなし、過去の功績や性能の高さから「セ号作戦」では旗艦を任され、秋雲は一万人以上の兵士を救い出すことに成功している功労艦。

 駆逐艦『夕雲』の最期となった「第二次ベララベラ海戦」でも秋雲は旗艦としてアメリカ駆逐艦『シャヴァリア・セルフリッジ』を大破させ、さらに本来の目的であるベララベラ島の陸軍兵士の救助も達成させた。

 秋雲は多くの兵士達を死地から救い出すことに成功している誉れ高い駆逐艦なのだ。

 

 その後、秋雲は一九四三年末から翌年にかけて整備を行い(この際に二番砲塔撤去及び機銃増設が行われたとされている)、護衛任務や輸送任務を任され各地を転々とした。

 

 そして運命の一九四四年の四月十一日。特設水上機母艦『聖川丸』の護衛中に秋雲はレッドフィンの魚雷を三発被雷。

 瞬く間に傾き始めた秋雲は数分で沈没してしまい、撤退作戦において類まれなる成果を残してきた秋雲は、ここで一生を終えることとなった。

 

 「陽炎型」なのか「夕雲型」なのかという話や上記のような「ホーネット」の話が多く語られる秋雲ではあるが、その功績はとても輝かしいものだ。

 

秋雲「あ〜い、次は書類書いてるとこ描きたいから執務しながらでいいよ〜」

提督「ん、了解だ」

 

巻雲「まだやらせるんですね」ニガワライ

夕雲「まあまあ、巻雲さん」フフフ

 

 今でこそ好きなことに没頭している秋雲だが、本人の口からは自分の功績をひけらかすようなことを聞いたことはない。

 それは秋雲が、

 

『あの結果は全部、乗組員のみんなが頑張った結果だからね。それがたまたま秋雲だっただけだよ♪』

 

 と言っていて、こうしたことを平然と言えてしまうのが秋雲の強さなのだ。

 

提督「なぁ、秋雲」

秋雲「ん? な〜に、お花摘み?」

提督「いや、そうではない。素朴な疑問があってな」

 

 提督がそう言うと、秋雲は「なになに〜?」と手を休めずに訊いた。

 

提督「このような普段の私を描くだけでいいのか、と思ってしまってね」

秋雲「普段の方がいいの。秋雲が描きたいのはいつものみんななんだから♪ 堅苦しいのは写真で十分っしょ〜?」

提督「そうか……秋雲がそれでいいというのなら、私からは何もない。好きに描いて、穏やかに過ごしてほしい」

 

 提督が真っ直ぐな気持ちを秋雲に伝えると、秋雲は「言われなくてもそ〜するよん♪」と返してから、ニコッと提督に向かって笑みを飛ばす。

 それを見た提督も秋雲に笑みを返し、また書類に目を向けるのだった。

 

 そんなことをしていると、ドアをノックする音がした。

 その音に提督が「入りなさい」と返すと、開いたドアから第四駆逐隊と風雲が入ってくる。

 

提督「みんな揃ってどうかしたのか?」

風雲「急に来てごめんね、提督。秋雲に用事があるのよ」ニコッ

 

秋雲「え〜、秋雲に何の用?」

 

野分「今日は秋雲にとってどんな日なのか、十分理解しています」ニッコリ

嵐「でもどうしても言いたいことがあるんだよ」ニコニコ

萩・舞『ね〜♪』ニコニコ

 

 みんなそう言って笑っているがオーラが凄く冷たいと提督や夕雲達は感じた。

 そして秋雲は何かを思い出したかのようにハッとすると、乾いた笑みを浮かべて提督の背後へと避難した。

 

提督「?」 

秋雲「あ、あのさ提督〜、ちょっといい?」

提督「何かな?」

秋雲「デッサンに夢中で風雲達と部屋で映画のDVD観る約束すっぽかしちゃったんだけど〜……どうしたらいいと思う?」

提督「秋雲……」

 

 冷や汗をダラダラと流して訊いてきた秋雲に、提督は思わずこめかみら辺を押さえた。それを聞いていた夕雲はクスリと笑い、巻雲に至ってはヤレヤレと肩をすくめている。

 

野・嵐・萩・舞・風「あ〜き〜ぐ〜も〜?」ニッコニコ

 

秋雲「て、提督〜、秋雲の身がDanger zoneなんだけど!?」ガクブル

提督「素直に謝りなさい」

秋雲「ひど! 提督ひっど! 赤城さんとかは擁護するくせに〜!」テシテシ

 

 秋雲の猛抗議に提督は「ぬぅ」と思わず唸り声をもらす。しかしもう秋雲の背後には風雲と野分の手が掛かっていた。

 

秋雲「あ、あはははは〜、スケッチに夢中でつい……」ニガワライ

 

五人『つい?』ニッコニコ

 

秋雲「忘れちゃってました、サーセン!」フカブカ

 

五人『………………』

 

提督「その……元はと言えば私が秋雲に「何かしてほしいことはあるか?」と訊ねたのがきっかけで今に至るんだ。どうか秋雲を許してやってほしい」

 

 提督はそういうと「この通りだ」と野分達に頭を下げる。

 

風雲「はぁ〜……提督の顔を立てて、今回は許してあげるわよ」ヤレヤレ

野分「でも野分達は秋雲のことを思って約束したのだから、その辺のことはちゃんと反省してね?」ジトーッ

秋雲「は〜い」ニガワライ

提督「良かったな、秋雲」ナデナデ

秋雲「うん♪」

 

舞風「それじゃ早速♪」ガシッ

萩風「DVD観よっか♪」ガシッ

秋雲「(´□`; 三 ;´□`)」エェ!?

嵐「すっげぇ怖い映画見つけたんだ♪ ホラー映画を観てみんなで絶叫しようぜ♪」

 

 こうして秋雲は野分達に引きずられるように執務室をあとにした。

 

巻雲「秋雲、本当はホラー映画になるの分かっててすっぽかしたんですかね〜?」

夕雲「秋雲さんはああ見えてホラー映画は苦手ですからね〜」ニガワライ

提督「あとで様子を見に行こう」

 

 その後、提督達が様子を見に行くとホラー映画鑑賞ではなく、野分達が秋雲へ手作りケーキをご馳走していたため、最悪の事態には至っていなかった。

 野分達曰く「いつも振り回されてるから、ちょっとお返しした♪」とのこと。

 

 ともあれ鎮守府は今日もとても穏やかだったーー。




今日は秋雲ちゃんの特別な日ですが、秋雲ちゃんらしくちょっと笑いを交えたお話にしました!

この日に沈んでしまった駆逐艦「秋雲」と英霊の方々に心からお祈りします。
そして何とも複雑ですが、今日は秋雲ちゃんの進水日。
これはこれでおめでとうと送りましょう!

本編内の情報は『大日本帝国海軍 所属艦艇』より得ました。

読んで頂き本当にありがとうございました!

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