艦これ Short Story改《完結》   作:室賀小史郎

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軽巡洋艦のみ。

キャラ崩壊、他作ネタ、独自設定。

いつもより長めです。

※少しだけ気分を害する表現が含まれます。読まれる際にはご注意ください。


艦これSS改17話

 

 鎮守府近隣の街、一三〇〇ーー

 

 本日、提督は愛刀を鍛えるためいつもの鍛冶屋に訪れていた。

 

夕張「うわ〜! このスプーンやフォークも全部店主さんが手がけた物なんですよね!?」キラキラ

由良「シックなのから可愛らしいのまで沢山……」ウワァ

五十鈴「ヤカンなんかまで作れるって凄いわね〜」シミジミ

 

 そして夕張達も提督のお伴してやってきていた。

 夕張は元々街に用事があったため提督に誘われるがままに付いてきて、由良は本日秘書艦、五十鈴は遠征での相方である由良が秘書艦なので手が空いていたから、というような経緯である。

 

提督「ここの店主さんは世界一の鍛冶職人だからな」

 

 提督の言葉に夕張達は驚いて「えぇ!?」と声を出してしまった。

 

店主「んな昔のこと話すんじゃねぇ」

 

 鍛冶場から戻ってきた店主は少し恥ずかしそうにしながら提督の尻を叩いた。

 

提督「ははは、事実なのですから良いではありませんか」

店主「お前さんが良くてもこっちは良くねぇんだよ。それより刀の件だが」

提督「はい、どうでした?」

店主「今回はちぃとばかり時間が掛かる。また無理させやがったな?」

提督「う……申し訳ありません」

店主「まぁ、いい。夕方になったらまた来い。それまでには元通り以上にしてやる」

提督「ありがとうございます」ペコリ

 

 すると提督は夕張が行く予定だった場所に行こうと、みんなと鍛冶屋を後にしようとすると、店主が提督だけを呼び止めた。

 

店主「最近この街で変なもんが出るって噂だ。憲兵隊が見回ってるが捕まらないらしい。注意だけはしとけ」

提督「分かりました。ご忠告ありがとうございます」

 

 提督が一礼すると店主は「おう」とだけ返し、また鍛冶場へ姿を消した。

 

 

 そして夕張が提督達を連れてやってきたのは、街のちょっと外れにある小さな工具店だった。

 

夕張「ここ月一でしか開かないんですけど、かなりいいお店なんですよ〜♪」

提督「ほぅ、かなり趣のある店だな」

 

 中に入ると様々な工具やらレトロな家電製品が並んでいる。そして店主の趣味なのか河童を模したぬいぐるみやら絵やらが飾られている。

 

五十鈴「色んな工具があるのね……明石さんとかが見たら天国なのかしら?」フフフ

由良「うわぁ、この河童ちゃんの工具箱可愛い〜♪」

 

「フッフッフ〜……お客さん、お目が高いね〜♪」

 

 すると店の奥から一人の少女が現れた。

 その少女を見た途端に夕張が「あ、店主さん♪」と言ったので、この少女が店主なのだろう。

 しかしその少女店主はウェーブ掛かった外ハネが特徴的な空色の髪を赤い珠の数珠のようなアクセサリーでツーサイドアップにしていて、緑の帽子を被っているという何とも可愛らしい店主だった。

 更には瞳の色が青色で、白いブラウスに、肩の部分にポケットが付いている水色の上着、そして裾に大量のポケットが付いた濃い青色のスカートを着用していて、靴は長靴のようなものを履いており、胸元には紐で固定された鍵がついている上、背中には大きいリュックを背負っているという何とも特徴的な店主である。

 

提督「どうもはじめまして。うちの娘がお世話になっております」ペコリ

 

 提督が挨拶すると続いて五十鈴と由良も挨拶をした。

 

店主「お〜、この人達がいつもバリちゃんが言ってる提督さんとお仲間さんだね♪」

夕張「うん、そうなの♪ たまたまタイミングが合ってね♪」

店主「お〜、そうかいそうかい♪ まぁ私のところは誰でも歓迎だからねぇ、存分に見ていきなよ♪」

提督「お心遣いありがとうございます」ニコッ

五・由『ありがとうございます』ニコッ

 

 それから提督達は店主から色々な工具のウンチクや発明品の話をこれでもかと聞かされ、更には夕張も趣味だからか工具談議に花が咲き、話が終わる頃には夕方になってしまった。

 

夕張「いやぁ、楽しかった〜♪ ちゃんと工具も買えたし♪」キラキラ

五十鈴「よ、良かったわね……」ニガワライ

由良「でも一式買ったのに安かったわね」

夕張「安いけど、お値段以上の品だからね〜♪」

提督「満足のいく買い物が出来たのなら良かった」ウンウン

 

 そんなことを話しながら小暗くなってしまった道を歩いて昼に行った鍛冶屋を目指していると、提督達の前に脇道からひとりの男が現れた。

 その男は不気味に笑い、見るからにヤバそうな雰囲気だった。

 男はゆっくりと提督達の方へ歩いてきたので、提督はさり気なく夕張達を庇うように前に立った。

 

 すると、

 

男「お前……海軍だよな?」

 

 男が提督に声をかけてきた。

 

提督「……そうだが?」

男「ひゃっひゃっひゃ! やっぱりな! その後ろにいる殺人兵器共を見りゃ分かるぜ!」

 

 男の言葉に夕張達は思わず表情が強張った。

 

提督「彼女達は兵器ではない。心を通わし、日々自分の命を懸けて人々を守っている」

男「偽善者が抜かしてんじゃねぇ! 毎日平気で引き金を引く人間モドキだろうが!」

 

 男はそう叫ぶと着ているコートの中から何かを取り出すと、その手には刃渡り四〇cmほどのナタを持っていた。

 それを見た提督は険しい顔付きに変わる。

 一方で夕張は恐怖のあまり「ひぃっ」と声が出てしまった。

 海の上ならばどうってことはないが、艤装も無い無防備な今では恐怖に感じるのは当然である。

 五十鈴と由良も声は出さなかったがその表情からは恐怖が伺える。

 

男「俺ぁよぉ〜……お前達が羨ましいんだよぉ。毎日毎日人を殺せてよぉ。俺にも刻ませろよぉ……どうせその兵器共は死なないんだからよぉ」

 

 ゆらりゆらりと距離を詰める男に対し、提督は手で夕張達に下がるように命じると、夕張達を安心させるように「ちょっと待ってなさい」と言っていつもと変わらぬ笑みを見せてから、自らスタスタと距離を縮めていった。

 

男「お前みてぇな、ただの人間に興味は無ぇんだよ!」

 

 男はそう叫ぶと提督へ向かってナタを振り下ろした。

 

夕張「提督!」

五十鈴「大丈夫よ、夕張♪」

由良「そうそう♪」

 

 悲痛な叫び声をあげてしまった夕張に対して、五十鈴と由良は何とも余裕だった。

 何故なら、

 

男「〜〜……」

 

 ナタを持っていた男は既に伸されていたからだ。

 

 提督は男がナタを大きく振り上げた隙に男の懐へ入り込むと、振り下ろす力を利用して男に一本背負を見舞ったのだ。

 更には投げたと同時に掴んでいた男の腕を離さず、流れるように男の右肩の骨を外し、更には勢いを殺さずに肘で喉元を潰し、トドメとばかりに肩を使って男の顎に強打を見舞った。

 ほんの一瞬での連撃に男は何が起こったのかも分からぬまま気絶したのだ。

 

提督「すまんな……私はただの人間ではなく、皆の命を預かる提督だ」

 

 聞こえてはいないだろうがな……と提督は付け加えると、立ち上がって制服の埃を払った。

 

夕張「提督〜! 良かった〜!」

 

 無事だった提督に夕張は思わず涙を流して抱きつくと、提督は「もう大丈夫だぞ」と言って夕張の頭を優しく撫でた。

 

夕張「本当に良かったですぅ〜」グスグス

提督「こんなにも心を通わせられるのに、殺人兵器だなどと……」ナデナデ

夕張「提督ぅ〜」エグエグ

提督「皆は兵器なんかじゃない。皆は私の誇りだ。胸を張りなさい」ニコッ

夕張「はい〜!」ボロボロ

 

五十鈴「(ちゃんとさっきの撮ったんでしょうね?)」

由良「(もちのロンロン♡ 動画でバッチリ撮ったわよ♡ 話も録音したしね♡)」

 

 余裕のLOVE勢達は内緒話が終わると、泣きじゃくる夕張の元に行って提督と共に夕張に寄り添うのだった。

 

 それから近所の住人からの通報で憲兵隊が駆け付け、男は伸びたまま連行された。

 なんでもこの男は元提督で自身の鎮守府にいた艦娘達を自分の欲望のままに傷付け、それがバレて逃走中の指名手配犯だったそうな。

 

 

 そしてーー

 

 鍛冶屋から無事に愛刀も受け取り、提督の運転で鎮守府へ帰っていた車内ではみんなでこの日の出来事の話題で持ちきりだった。

 

由良「今日はなんか色々と濃い一日だったわね〜」

五十鈴「夕張は泣いちゃうしね」

夕張「うぅ〜……どうせ私は泣き虫ですよ〜」

由良「私や五十鈴姉さんだって怖かったし、気持ちは十分分かるわよ」ナデナデ

夕張「うん……でも殺人兵器とか面と向かって言われるとは思わなかったな〜」

 

 夕張の言葉に提督が透かさず声を掛けようとしたが、

 

五十鈴「でもそこは私達の提督がしっかりと言い返してくれたからね♡」

 

 と助手席に座る五十鈴が言うと夕張や由良は満面の笑みで頷いた。

 

由良「そうそう♡ こう言ったらアレだけど、嬉しかった♡」

夕張「うん……提督が私達の提督で本当に良かったって思えた」ニコニコ

提督「私は思ったままを言っただけだ。そうもてはやさないでくれ」

 

 提督がそう返すと、夕張達は「分かってま〜す♪」と声を揃えて返すのだった。

 夕張達からすれば、提督が自分達をとても大切にしてくれていることを改めて実感出来た出来事だったので、悲しみよりも喜びの方が何倍も上回っていたーー。




 おまけーー

 その夜ーー

 軽巡洋艦寮、夕張の部屋ーー

夕張「…………寝れない……」

 いつもはもう寝ているはずの夕張は寝付けないでいた。
 何故なら瞼を閉じると提督の顔が浮かび、それによって胸が締め付けられるかのように苦しくなるのだ。
 しかしその苦しみは全く苦ではなく、どこか心地良い感じがした。

夕張「提督……////」

 ふと提督のことを口にすると、自身の胸が高鳴り、体も芯からポカポカとしてくる。

夕張「どうしよう……////」

 夕張はこの感覚を知っていた。

夕張(もしかして私……提督のことを好きになっちゃったのかな……////)

 そう考えると、それが本当だと言うように鼓動が早くなった。

夕張「んぁ〜!//// ヤバいヤバい!//// 明日から提督にどんな顔して会ったらいいのぉぉぉ!////」

 夕張はそう叫ぶと、掛け布団に潜り込み、落ち着きなくワチャワチャと暴れ、朝まで悶々とするのだった。
 しかし次の日に夕張が提督と廊下で鉢合わせると、夕張は素直に笑って自然と挨拶をすることが出来たため、何だかんだで自身の恋心を上手くコントロールすることに成功するのだったーー。

 ーーーーーー

はい、ということで今回は分かる人にしか分からない東の方のネタと胸糞悪い輩を成敗する提督にほの字になってしまった夕張さんという、スカッと爽快的な回になりました!
申し訳ない程度の戦闘シーンに関してはどうかご了承を。

ということで、此度も読んで頂き本当にありがとうございました♪

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