少し真面目なシーン、キャラ崩壊、独自設定、独自解釈含みます。
○○鎮守府、一二〇〇過ぎーー
埠頭ーー
提督「全員、黙祷!」
提督の号令で埠頭に集まった者達は一斉に海へ黙祷を始める。
瑞穂「………………」
中でも瑞穂は両手を合わせ、真摯に黙祷を捧げていた。
それもそのはず、今日は瑞穂にとって特別な日だから。
一九四二年、五月一日の二三〇〇頃。水上機母艦『瑞穂』は柱島泊地へ単独回航途中、アメリカ潜水艦『ドラム』による雷撃を受けて沈んでしまったのだ。
瑞穂は魚雷を左舷機械室と発電機室の中間に一本受け、それが大火災を引き起こし、被雷して数分後には左傾斜二十度以上となった。
それでも瑞穂の乗組員達は注水作業で艦の傾斜復元に努め、火災も鎮火見込みのため曳航も検討されたが、浸水は止まらず、浮力を失っては打つ手なしと日付けを跨いだ同月二日の〇三三〇に総員退去が命じられた。
この時、瑞穂の乗組員達を救助したのは瑞穂と同じように桂島泊地へ向かうことになっていた高雄型重巡洋艦の『高雄』と『摩耶』だった。
正確には高雄が乗組員を救助をし、摩耶が周辺海面の警戒にあたった。
そして〇四一六。高雄、摩耶の乗組員、そして瑞穂の乗組員達が敬礼する中、瑞穂は艦尾からその身を海へと沈めていったという。
瑞穂は太平洋戦争勃発後、日本では初の戦没艦となったことに加え、日本海軍にとっては実に二十八年振りとなる「撃沈された艦」となってしまった。
瑞穂が沈んで日本海軍は主要艦船回航の際、出来るだけ護衛艦をつけるようになったという。
瑞穂「………………」
黙祷を終え、瑞穂は静かに水平線の彼方へその眼を向けた。
あの日と同じ日……しかし、艦娘となり過ごしている今日はとても穏やかだった。
瑞穂(どうしてあの時も今のような時が過ぎなかったのでしょう……)
瑞穂はあの日に亡くなってしまった乗組員達の顔を思い浮かべ、ついそんなことを考えてしまう。
もしあの日こうしていれば、ああしていたら……と、瑞穂は何度も何度も思いを巡らせた。
瑞穂(今は……艦娘となった今だからこそ、今お守り出来る人々を精一杯お守りしなくては)
タラレバをあげたらキリがない……そう自分に言い聞かせ、力強く空を見上げた瑞穂。
しかし、その空は歪んでいた。何故なら瑞穂は知らぬうちにその力強い瞳に、涙を溜めていたから。
ひとつ、またひとつと、瑞穂の目からこぼれ落ちる大粒の涙。その涙が頬を伝う感覚で、瑞穂はようやく自分が涙を流していることに気がつき、空から思わず顔を伏せてしまう。
このような泣き顔をあの日の英霊の方々が見ては心配させてしまう……そう思っての行動だった。
すると、瑞穂の視界がふと暗くなる。瑞穂は突然のことで少し驚いたが、上げた視線の先に提督の姿が見えた。
提督が瑞穂の頭に自身の軍帽を深く被せていたのだ。
瑞穂「てい、とく……?」
瑞穂の言葉に提督は何も言わず、ただニッコリと笑顔を返して軍帽の上から瑞穂の頭をポンポンと叩くように撫でる。
すると瑞穂は先程までの涙がスッと止まり、提督に釣られるように自身も笑みを浮かべることが出来た。
秋津洲「瑞穂は笑ってる方がいいよ♪」
テスト「そうね……それに笑っている方が女の子はより美しく見えるわ」ニッコリ
高雄「あの日の皆さんも綺麗に生まれ変わった瑞穂さんの笑顔をみたいと思ってますよ、きっと」フフ
摩耶「泣きたい時は泣いてもいいけどよ、やっぱ最後は最高の笑顔で締めくくらないとな♪」
千歳「涙を拭いたら顔を見せてあげなさい」ニコッ
千代田「みんなに素敵な笑顔見せてあげなきゃね」ニシシ
今を共に過ごす心強い仲間、あの日に乗組員の人々を救ってくれた仲間、そして頼れる提督に見守られる中、瑞穂は涙を拭き、今度こそ力強く、更には満面の笑みで空を見上げることが出来た。
千歳「ふふふ、去年同様、瑞穂はまた泣いちゃったわね♪」
瑞穂「お恥ずかしいです……////」ハゥ
提督「恥ずかしがることはない。あの日の方々を忘れていないという証でもあるのだからな」ニコッ
瑞穂「そう言って頂けると少し軽くなります……////」
千代田「あはは、瑞穂は感動屋さんだからつい泣いちゃうんだよね〜♪」ナデナデ
瑞穂「うぅ〜……////」
いつものお淑やかな瑞穂とは違い、顔を真っ赤にする瑞穂。提督から借りている軍帽をまた深く被り、今度は赤くなった顔を隠す。
秋津洲「二人共、瑞穂をいじめちゃダメ!」
高雄「そうですよ。こういう日は誰しも思うことがあるのですから」
摩耶「そうだそうだ! もっと提督みたいに優しくしてやれ!」
そんな瑞穂を庇う三人。瑞穂は嬉しかったが、これはこれで慣れていないので恥ずかしかった。何せ三人共が自分をギュッと抱きしめてくれているから。
テスト「ふふ、瑞穂は幸せね♪ みんなから愛されて♪」
テストの言葉に瑞穂は「……はい////」とハニカミながらもしっかりと返事をした。
みんながみんな、自分のことを思っての言葉は本当に嬉しかったからだ。
テスト「でもいつまでも提督の軍帽を借りてる訳にもいかないから、私の軍帽を貸しましょうか?」ニヤニヤ
千代田「テストの軍帽の方が大きいから顔覆いやすいと思うよ〜?」ニヤニヤ
千歳「いっそのこと暫く筑摩さんのお面でも被る〜?」ニヤニヤ
瑞穂「? …………はわ〜!//// も、申し訳ございません!//// 私ったらいつまでも提督のお帽子を!////」アセアセ
提督「ははは、そう慌てなくていい。私から貸したのだからな」ナデナデ
瑞穂「で、ですがいつまでもお借りしている訳には……!////」
提督「瑞穂は相変わらず真面目だな♪」ハッハッハ
提督が呑気に笑って返すと、瑞穂は「そういう問題じゃないんです〜!////」と言い返した。
それからテストだけでなく、高雄や摩耶からも軍帽を差し出された瑞穂は、
瑞穂「皆さんのお気持ちだけ受け取ります!////」
と返し、提督と秋津洲の背中に隠れてしまった。
これには流石にやり過ぎたと反省したみんなが瑞穂へ謝罪すると、瑞穂は提督と秋津洲の間から顔だけを出して「怒ってませんよ〜♪」と、少しお茶目な仕返しをした。
それからみんなで食堂に向かったが、その時の瑞穂はちゃんと心からの笑みを浮かべていたーー。
今日は本編に書いた通り、瑞穂さんが沈んでしまった日です。
正確には五月二日ですが、敢えてこの日に書きました。ご了承お願い致します。
本編内の情報はWikipediaから得ました。
この日の深夜から朝方にかけて沈んでしまった水上機母艦『瑞穂』と救助されずに亡くなってしまった英霊の方々、そして搬送された先で亡くなってしまった英霊の方々に心からお祈りします。
読んで頂き本当にありがとうございました!