やはり俺の仮想世界は間違っている。   作:なしゅう

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ちょっとリアルでやばいです。
宿題が……更新続けられるように頑張ります。
オリジナル要素含みます


ディアベルと迷宮で

ーーーーーー攻略組。

それはこの世界から脱出するために結成された、迷宮攻略、ボス討伐を行う者達。

そんな選りすぐりのメンバーの中にも、序列というものが存在する。

いや、序列とは少し違うか、わかりやすく言うならば……強者だな。

 

そして今日は、そんな強者が2人も攻略組を抜けてしまった日だ。

 

キリトとアスナ。

黒の剣士で知られる二刀流使いのキリト。

閃光のアスナとして知られている、血盟騎士団副団長。

 

この2人が、攻略組を抜けてしまったのだ。

 

「……はぁ」

 

短いため息が出た。

やる気が出ない

そりゃそうだ。俺にしては深く関わってきた奴が2人も最前線から遠のいたんだ。

キリトとアスナは現在、血盟騎士団を抜けて黒猫団に身を置いている。

だが、実際はどこかの層で2人仲良く暮らしているみたいだ。

隠居ってやつだろうか。中睦まじいことだ……俺が知らないところでどんな関係だったんだろうか。

いや、キリトを見ればわかるな、あいついつもアスナにデレデレだし、アスナのことになったら本気になるからな。

俺の思考はループしていた。さっきからずっとこんなことを考えている。

これも全て、隣にいるやつのことを忘れるためだ……。

 

「どうしたんだエイトマン君? ため息なんかついて」

 

俺が聞きたいわ。

なんで俺はディアベルと一緒に攻略してるんだよ。

なんで攻略しに迷宮に来たら、ディアベルもたまたま1人で攻略していて、一緒に攻略してるんだよ。

 

「キリト君とアスナさんが抜けたのは確かに残念だけど、僕達だけでも出来ることはあるよ」

 

こいつなら何言ってもかっこよく聞こえるなぁ……。

君の瞳に乾杯とか言って口説いたりしそう。

ナルシスト入ってたら、君の瞳に写った僕に乾杯って言ってるかもな。残念ながらイケメンなだけでナルシストではないが。

 

「話聞いてるかい?」

「ん……あぁ、聞いてる」

 

相槌を返すのを忘れていた。

元来、俺は友人と話す体質ではなかったからな。キリトやアスナは別だが……。

奉仕部でも静かな空間でお茶飲みながら本読んでるだけの毎日がほとんどだったし……たまに由比ヶ浜に声をかけられるがあまり気にしてなかったな。

 

「本当はね、いつか君に感謝の言葉を伝えたかったんだ」

 

唐突に呟くディアベル。

感謝の言葉……記憶力がいい俺はわかったぞ。

だがあれは感謝されることじゃないな。

 

「今、2人きりだね」

 

そういう路線に走られるとちょっとエビエビな人が怖くなるのでやめてください。

俺は女の子が好きだ。年上も年下もバッチコイ。だが喋る勇気は出ない。

 

「あの時、1層の時、僕を助けてくれてありがとう。もし君の行動がなかったら、今頃僕は……」

「やめろ。お前が生きてなかったらまずいと思った結果の行動だからな。

お前が別に死んでても構わなかったら俺は助けてなかった。そんな俺に感謝を伝える意味なんかない」

「そうかもしれない。だけど、助けてくれたのは事実だ。だから……ありがとう」

 

面と向かって言われると恥ずかしい。

ディアベルは真摯な目で見てくる。

わかった、わかったからもうやめてくれ。

 

「…………感謝はありがたく受け取っておくわ」

「僕的には素直に受け取って欲しかったな」

 

はは、と爽やかな笑みを浮かべるディアベル。

子供っぽいキリトとは違った笑いだ。

ふと、思い出す。

この前の……クラディールって言ったか。

あいつへの、突然湧いた殺意だ。

 

「……ディアベル、一つ聞きたいんだが」

「何かな? 僕で答えられることならなんでもいいよ」

 

こんなことを人に聞くのはおかしいと思う。

だけど、聞かずにはいられない。

 

「人を……殺したくなることとか、あるか?」

 

ディアベルが驚いた表情になる。

一瞬、考え込む姿を見せる。

 

「………………ある、って言ったら?」

「俺もだ、って答える」

 

クスリと笑うディアベル。

 

「僕達だって人間だしね、そういうことに一つや二つ、あると思うな」

「……でも、実際実行に移そうとしてしまう場合は」

 

ゾクリとした。

もしあの時、クラディールを殺していたら、俺は再び一人になっていたんじゃないのか?

 

「この世界じゃ、殺人は簡単に出来てしまう。それを理由の一つなんだろうね」

 

こんな相談したら、やっぱりすぐわかるか。

 

「ここに長くいたせいで、感覚が少しおかしくなってるのかもしれない。でも、大丈夫だよ」

 

なんだか、重かった肩の荷が落ちた気がする。

この世界から出たあとも、この殺意があったらそりゃ危ないが……。

この世界にいる限りは皆、多少そういうことを考えてしまうのが大半なのか?

 

ーーーー

 

そんなこんなでディアベルと攻略を続けていると、明らかに雰囲気が違う場所にたどり着いた。

緊張感が走る。

 

「おい、ディアベル……」

「……ボス部屋が近いの、かな」

「慎重に行くぞ……」

 

ここは75層、もうターニングポイントだ。

何があるかわからない。

トラップの危険もある。

 

「ここかな? ボス部屋は」

 

大きな扉がある部屋を見つけた。

扉に手を触れる、鍵はかかっていない、ボス部屋か?

 

「どうする。戻る?」

「……ボスを一回確認してみた方がいいんじゃないのか?」

「そうだね……そっちの方が攻略もやりやすそうだ」

「じゃあボスの姿を見たらすぐに引き返すか」

 

コクリと頷くディアベル。

俺はゆっくりと扉を開けた。

ギギ、ギ、と錆びた様な音が迷宮を反響する。

 

中に入ると部屋の蝋燭に、青い光が灯された。

奥にいるボスの姿が目に映る。

 

「ムカデ……?」

 

ムカデは、玉座に座っていた。いや、座っているというより、乗っているという方が近いか。

その姿を理解すると同時に、後ろの扉が動く。

 

「扉が……!?」

「嘘だろ、おい」

 

ガチャン、と大きな音を立てて扉は閉まった。

目の前には大きなムカデ。こいつがボスか?

 

「転移結晶は……使えないか」

 

ディアベルがすぐに確認する。

やはり、無理か。

 

「こんなギミック、聞いてないぞ……」

 

内心かなり焦ってる。

だってボスに2人で挑むなんておかしいに決まってる、しかもターニングポイントだぞ。

 

「エイトマン君、奥のあれ……」

「あ? ボスがどうした」

「いや、その後ろ」

 

言われた通り、ボスの後ろの存在を確認する。

玉座……いや、更にその後ろ?

……扉?

まさか、これって……。

 

「中ボス、的な?」

「多分、そうだと思う……でも、どう? これなら勝てる気もしないかい?」

「ははは……元から負ける気もねぇよ」

 

やることは決まった。

こいつをぶっ殺して、奥のボス部屋を開ける。

 


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