やはり俺の仮想世界は間違っている。   作:なしゅう

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前回の話、タイトルつけるの忘れてたので急遽つけました。
ずっと考えてたタイトルだったのに付け忘れるとは……。


スカウト

 

絶望に瀕していた中、アスナに助けてもらった俺。

あの後、攻略組のメンバーからの目は相変わらず辛く、人殺しが何故ここに……といった目は無くなりはしなかった。当然だろう。俺も無関心ではいられない……と思う。

 

だが、キリトやクライン、シリカ、エギルなど……俺と交流が……いや、アスナと交流があった者は比較的簡単に受け入れてくれた。

俺がやったことは許されることではない。

だが、それ以上に、誰かを救ったことでもあるということがよくわかった。

 

だからと言って、この事を俺は忘れはしないだろう。

 

さて、そんなこんなである日。

まだ75層のボス部屋は発見されてないこの日。

キリトに呼ばれ、俺は急遽出向くことになった。

どうやら、かなり重要な話らしい。

 

貸切状態の酒屋、そこまでして他の人には聞かれたくない話。

……それは一体何なのか。

 

「アスナを……黒猫団に引き抜きたい」

「…………は?」

 

おっと、流石に「は?」はないな。

ここはオブラートに包んで「イミワカンナイ」だな。大して変わらねぇ。

 

「エイトマンは知らないだろうけど、一度、アスナの護衛と会った」

「護衛ねぇ……えっ? 護衛? あいつに護衛必要なの? する側じゃなくて?」

「エイトマン、茶化さないでくれ。真剣なんだ」

 

結構真剣なんだが……。

 

「アスナをあんなところに居させたくない……!」

 

ギリギリ歯軋りするキリト。

おお……アツアツですね……。

 

「でも無理だろ、仮にも副団長だ。はいどうぞ、って易々とオーケーするわけない」

「ああ、だけど一度話をしてみる」

「話……」

「ヒースクリフに直接、だ」

 

こいつ……行動派イケメンか!

なんて冗談はやめよう、キリトは本気だ。

ラフコフ討伐作戦から今日まで一ヶ月程だが、その間になにかあったのか……?

俺は心の中のものを洗いざらい吐き出して、流石に疲れたから前線には積極的に出てないが……。

 

 

「それで、何で俺に相談した?」

「……エイトマン、アスナとなんかあったろ」

 

ギクリ。

い、いや別に何もありましぇんけど?

ていうかなぜ分かった。

目でそう訴えかけるとキリトはため息混じりに答えた。

 

「あれから、妙にアスナとの関係がギクシャクしてるというか近づいたというか……」

「気のせいだろ」

「だからエイトマンから意見を聞きたかった」

 

話を聞け。

意見って言ってもな……。

 

「本気なら、いいんじゃねぇの」

 

とりあえずアリがちな言葉を投げかけると、キリトは立ち上がる。

やめろよ、急に音を立てるなよ、怖いだろ。

 

「そうだよな、やってやる……!」

 

アツアツで燃え燃えですね……。

まあこれでこの話も終わりか。

俺も席を立ち上がる。

帰る支度をすると、キリトが俺の背中に向けて言ってきた。

 

「相談に乗ってくれてありがとう。必ず、やってみせるよ」

「…………リア充爆発しろ」

「んなっ!?」

 

冗談吐いて、俺は立ち去った。

リア充爆発しろとは思うが、キリトとアスナは例外だ。

せいぜい仲良くしろよ。

 

ーーーー

 

キリトの野郎……マジでやりやがった。

 

俺の手には1枚のチラシが握られている。

そこに書かれていることをもう一度確認しよう。

 

『《神聖剣》vs《二刀流》再び!』

 

……何があったんだ……。

 

話をするんじゃなかったのかよ、これ実力行使じゃねぇか。

てかこれ絶対負けた時のペナルティもあるよな? 大方、血盟騎士団に入団しろとかそんな感じだろ?

いいのかよ……大会で一回負けてただろ……。

 

流石にこれには俺も予想外。普段よりも腐った目で前の男を睨む。

黒の服を着込んだ男ーーーーーーキリトにチラシを叩きつける。

ビクッ、とキリトが動く。

 

「…………説明を要求してもいいか?」

「…………アスナを奪うのなら私に勝て、と煽られました。反省はしてない」

「バッカお前、一回負けてるだろ」

「愛があれば何でもできるんだよ!」

 

あっ、これダメなキリト状態だ。ダメキリトだ。略してダメリトかダメトだな。

こめかみを抑える、頭が痛い。

まあいい、俺には被害はないだろう。なら俺が取るべき行動って何だ?

…………あれ? 被害がないなら別にいいんじゃね?

理解した途端、何かどうでもよくなってきた。

 

「まあ頑張れ、攻略に支障がなければ俺はいい」

「冷めてるなぁ、エイトマンは」

 

この状態で俺にどうしろと。

一応心配はしてる。一回負けてるし。

 

「勝負は明日だろ、大丈夫なのか?」

「何だ、心配してくれてるのか?」

「よし帰れ」

「わぁーっ! 待て待て、ちょっと茶化しただけだ」

 

テーブルの紅茶のカップなどを片付けようとした俺を引き止める。何だよ邪魔だぞ。

この前は茶化すなと俺は怒られたってのに……。

 

真剣な表情になるキリト。俺を真っ直ぐ見つめてくる。

真剣な表情になったら何でも許されると思ってるんじゃないのか。

 

「俺はこの勝負で、ヒースクリフに勝つ。絶対だ」

 

割と真面目な話だった。

俺も居住まいを正して耳を傾ける。

 

「そして、勝ったらアスナを貰う。負けるわけには行かない」

 

……おい、キリト。それって……いや、よそう。

死亡フラグだなんて言っちゃダメだよな(フラグ)

 

「長居して悪かった、明日へ備えて俺はもう帰るよ」

 

席を立つとキリトは俺の家から出ていった。

真剣そのもの、ガチだあいつ。

でもフラグビンビンですよ……。

 

…………一応、試合見に行くか。




捻くれながらもしっかり応援したり試合見に行く捻デレさんです。

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