ヒースクリフにあのことを言ってから早数日。
攻略組約50人が、ラフィンコフィン討伐作戦のために集められた。
指揮を執るのはヒースクリフとディアベルのツートップだ。
「皆、そろそろラフィンコフィンのアジトだ。気を引き締めていこう」
ディアベルの声が、皆を落ち着かせる。
しかし、それでもこの心臓の音はなかなか鳴り止まない。
そりゃそうだ、一応予定としては転移結晶で牢獄エリアに飛ばすだけだが奴らが抵抗せずに行くはずがない。
最悪、殺し合いにーーーーーー……いや、やめよう。考えるのは。
PKされることによって、この世界から脱出する手立てが徐々に減っていく、それだけは避けなければならない。
それだけは、止めよう。
「最後の確認だ。ラフィンコフィンの人数は33人。これは鼠からの情報だ。人数的にはこちらが優っているが……奴らはレッドプレイヤー、恐らく全力でこちらを殺しにかかる、躊躇いはないだろう。だが、俺たちはあくまで捕縛を優先する、後味悪いのは、皆嫌だろう?」
綺麗な言葉だ。皆引き寄せられるような話し方だ。
「万が一、グリーンカーソルの奴らがいて、そいつらを…………攻撃してしまってオレンジカーソルになった場合も大丈夫だ。アフターケアはしっかり取る」
だが……今の言葉の裏には、「危なくなったら、殺せ。オレンジになっても大丈夫」という意味が含まれてるな。
皆もわかっているだろうが、それは口には出さない。
俺もあくまで捕獲に重きを置くつもりだ。
殺し殺されなんてまっぴらごめんだ、なんならここに参加したくないまでもある。
隣にいるキリトを見る。
キリトの性格は、お人好し、責任感が強い。まあこんなもんだろう。
こいつが人殺しをしたら、攻略組の中でも不信感、不安感などが渦巻くだろうな。
…………万が一の時は、腹括るしかねぇな。
「一人で行動は厳禁だ、行くぞ!」
ディアベルの合図と共に前進する。
ラフィンコフィンのアジトは圏内にはない、そのためモンスターもポップする。
俺たちはそのモンスターを蹴散らしながら進む。
アジトから2人、プレイヤーが姿を現した。
カーソルは……オレンジ。
「作戦……開始だ!」
現れた2人へと詰め寄る俺たち。
だがその最中、俺の索敵にモンスターではない何かが引っかかった。
これは、プレイヤー……!?
まさか……!
「罠だ!」
咄嗟に叫ぶが、前の方にいるプレイヤーの耳には届いていない。
上から何人かのプレイヤーが落下してくる。
そのまま前方にいたプレイヤーの内の何人かが攻撃をモロに受けた。
「くそっ、なんで上から……!?」
更に続けて5.6人ほどが現れる。
どれもが、猟奇的な笑みを浮かべていた。
その中の1人、俺が知っているやつがいた。
「カーレン……ッ!」
「ご無沙汰するよ、エイトマン君」
ニコリと笑いかけてくるカーレンの顔には、もうあの時に感じた雰囲気はなかった。
俺は刀に手をかける。
「イッツ・ショウ・タイム」
どこからか聞こえてきたその声が合図となり、攻略組vsラフィンコフィンの戦いは始まった。