更新途絶えないように頑張ります。
「始め!」
その合図と共にキリトが一瞬で間合いを詰める、クラインよりも速い。
だが俺に比べると、遅い。
カウンターを合わせようと刀を抜刀し、振り抜く。
しかし、刀に手応えはない。空を斬った。
「ーーーーーー後ろかっ!」
「はぁっ!」
回避行動で前へと転がる。間一髪避けられた。
しかし一撃で終わるほどキリトは甘くない。
続けて、二撃、三撃が繰り出される。
それらを全て避けつつ、距離を取る。
ギリギリ、キリトの剣が届かない位置まで離れ、納刀して息を整える。
納刀したのは抜刀術をいざという時に使うためだ。
「息をつく暇もくれないな、どんだけ攻めるんだーーーーーーって、うおい!」
気がつくと剣が目の前に、即座にいっぽさがるあと凄まじい速度で鼻の先を、空を切っていた。
「エイトマン相手に距離を取らせたら、負けるからーーーーーーなっ!」
「何でそんな俺対策してるんだよ……」
当てられはしないが攻めることが出来ない、刀のリーチの中に入られては抜刀が出来ない。
「やっぱり、速いな!」
「当たらないと思うなら攻撃やめてくれませんかね」
「そうもいかない、エイトマンとはいずれにせよ決着をつけたかったからな」
そう言うとキリトは一歩、二歩と後ろへバックステップを踏む。
やっと距離が離れたか……反撃タイムだ。
ゆっくりと抜刀する。
斜線上にいるキリトに刀の先を突きつける。
「行くぞ」
刀スキル《絶剣》
キリトに向かって最速で刺突を繰り出す。
キリトの剣によって弾かれるが、続けて範囲攻撃スキル《旋車》
これでキリトの身体を浮かせて、次のスキルで。
「うおっ!?」
「くっ、当たらないかっ!」
気がついたらもう1本、キリトは剣を握っていた。
さっき下がった時か!
その剣が振り抜かれる瞬間、《瞬間瞬足》のスキルで急いで距離を取る。
何だかんだ言ってこのスキルには助けられている。
「ふぅーーーーーーっ……二刀流か」
「出し惜しみして負けたら、死んでも死にきれない」
「なんだよ、小言弾でも撃たれたのか?」
「こごと……えっ、なんだって?」
「なんでもない」
まあいい、キリトが二刀流を使うってことは、つまりは全力をを出すってことだ。
ならーーーーーー俺もそれ相応の態度を見せなきゃな。
「…………納刀したな」
「お前こそ、2本、剣握ったな」
周りが静寂に包まれる。
今、俺の世界には、2本の剣と1本の刀、目前に1人の男がいるだけ。
そいつの一挙一動に合わせて、俺も動く。
神経が限界まで敏感になる。
開始の合図は、審判の合図などいらない。
ーーーーーーーーーーーー!
「はぁっ!!」
「らぁっ!!」
***
激しい攻防が続いた。
「試合、終了ーーーーーー!!」
一瞬でも気を抜いた方が負ける試合だった。
「激しい試合でした! 勝者はーーーーーー」
だから、この結果には満足している。
「勝者、《黒の剣士》キリトーーーーーー!!」
俺はーーーーーー負けた。
ーーーー
「お疲れ様、エイト君」
「勝ったキリトを褒めてやれよ」
控え席に戻ると、アスナに話しかけられる。
軽くあしらって自分の席へと座る。一足遅れてキリトが現れる。
「俺の勝ちだな」
にひっ、とピースサインを俺に向けてくるキリト。
守りたい、この笑顔ーーーーーーじゃなくて。
「ああ、おめでとさん」
「…………あれが本当の殺し合……戦いだったら俺は負けてたけどな」
「どういうことだよ」
「最後の一撃、俺が一瞬速くエイトマンの頬を掠らせてHPを黄色にしたが、《初撃決着モード》じゃなかったらあの後に繰り出されてるエイトマンの攻撃で俺は負けてた」
剣先のスピードは、二刀流を使ったキリトの方が僅かに速かった。
だから、最後の攻撃はキリトの方がギリギリ速く、俺を掠めてHPを黄色にした。
もしあれが《完全決着モード》だったら俺の方が速く削っていただろう。
ーーーーーーだが
「そうかよ、でも負けは負けだ」
そうだ、負けは負け。どれだけ「もしも」の話をしてもそれは架空の話だ。
「……わかった」
キリトもわかったのか、一つ頷くともうこの話題には触れなくなった。
アスナが俺達が喧嘩をしていると勘違いしたのかオロオロしてるが、まあ放っておこう。
「次はディアベルとヒースクリフの戦いだ。見とけよキリト」
「ああ……ここまで来たら優勝したいからな」
もう俺の目的は達せられた。
なら、ここに居座る必要はないな。
「俺は先に戻る、あとで結果だけでも教えてくれ」
「優勝トロフィー持って行ってやるよ」
「期待しとくわ」
アスナがこちらを見ていたので会釈だけ返して俺は会場をあとにした。
その際、カーレンとすれ違ったが、特に何も言われはしなかった。
気づいていないのか……?
ーーーー
「まあ、いい、どうせ、後で、わかる、ことだ」
ーーーー
ザザの言葉が頭をよぎる。
…………嫌な予感がするな。