やはり俺の仮想世界は間違っている。   作:なしゅう

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エイトマンvsクライン

大会の司会を務めるのはカーレンではないようだ。カーレンのギルドの仲間か何かだろうか?

カーレンはキリトとアスナの戦いを遠目から見ている。

俺は気づかれないように隠蔽スキルを使いながらカーレンの近くに行く。

 

「へぇ、あんな戦い方なんだね……」

 

ブツブツ呟いていて気持ち悪いが、今のところ何も変なところはないな。

やはり考えすぎだったのか?

そんなことを思った刹那。

突如湧き上がった不安感。

 

「ーーーーーー!?」

 

すぐに近くの物陰に隠れる俺。

心臓がバクバク鳴る。

俺の索敵が全力で警報を鳴らしたような気がした。

そっと、影からカーレンを覗き見る。

息が止まった。

 

「どうだ、攻略組の、戦いは」

「そうだねぇ、まだキリトとアスナだけだけど実にいい観戦所だよ」

「ボス、からの、伝言、だ。『攻略組の特徴を詳しく伝えろ』」

「わかってますよ、安心してください」

「なら、いい」

 

ーーーーーーはぁっ、まじかよ。

あの喋り方……あいつ、ラフィンコフィンのザザじゃないのか?

なんでこんな所に……いや、あの話を聞いた今じゃわかるか。

攻略組のPKを狙ってるってことか。

 

「ーーーーーーッ!?」

「見て、いたな」

 

先程受けた不安感、その正体が背後に迫ってきたのがわかった。

咄嗟に刀を抜刀し、振り抜かれたエストックを弾く。

圏内だから死なないが、咄嗟に動いてしまったものは仕方ない。

 

「……はは、何のことかわかんねぇよ。急に襲いやがって」

 

やばい、やばい。この場面は非常にまずい。

 

1体1なら負ける気などさらさら無いが、こいつだけがここにいるってのは考えづらいな。

恐らくだが、他のラフコフメンバーもいるはず。

一番やばいのは、カーレンを追っていたことをカーレン自身にバレることだ。

だが、その心配は杞憂に終わった。

 

「まあ、いい、どうせ、後で、わかる、ことだ」

 

ザザはエストックをしまい、俺に背を向けて去っていく。

俺は刀を納刀した。ザザからはもう敵意な見受けられなかった。

 

「ーーーーーーふぅ。こりゃ面倒なことになりそうだ」

 

記録結晶でも持ってくるべきだったな、それがありゃ一発でカーレンを牢獄に送れるってのに。

 

とりあえずは、この大会を無事終わらせるべきだな。

攻略組の戦い方とか言ってたな……つまりこれから先、攻略組狩りでもあるっていうのか。

…………今度ヒースクリフに伝えておくか。

 

ーーーー

 

大会に戻ると既にキリトvsアスナの試合は終わっていた。

なかなかの接戦だったようだがキリトが先にアスナのHPバーを黄色にさせたのでキリトの勝利だ。てかかすり傷は初撃に入らないのね……。

 

「……」

 

側でアスナがズーン、と落ち込んでいる。「おい」と話しかけても返事がない……ただのしかばねのようだ。

 

「キリト君……二刀流使わなかったな……私、手を抜かれて負けちゃったんだ……」

 

ブツブツ呟いている、アスナさんがそうなってるのすごい怖いです。

怖い助けてキリえもん。

 

「二刀流は奥の手だ、そんな安々と見せないだろ」

 

一応考えつく中の最も最適だと思われる慰めの言葉をかけたが、反応なし。

俺の声届いてないか、俺が死んでるのかもしれない。

 

「エイトマン、次の試合お前だぞ」

「二回戦は俺か」

「は? いや、四回戦目だぞ……」

「えっ?」

 

アスナvsキリト、それが今終わったんじゃないのか?

俺があの場を離れてたからまだ数十分だがその間に他の試合も終わるとか早すぎるだろ。

 

「俺とアスナの試合以外は速攻で終わったからな、まあ相手がヒースクリフとディアベルだとそれもそうか」

「ああ…………御愁傷様だな。さて、リングに上がるか」

 

てか俺の対戦相手は誰だよ。

スクリーンをチラリと見るとよく見知った顔がデカデカと映っていた。

oh......こいつはあの武士野郎じゃねぇか。

 

「よーう! 相手があのエイトマンだからって容赦はしねぇぞ?」

「あー……はいはい。なんでこう刀同士で戦わせるのかなぁ」

 

刀スキル知ってる相手じゃねぇか……。

えー、抜刀術使わなきゃダメなのかこれ。

 

リングに上がる。

準備体操をしているクラインを横目に考える。

刀スキル使い同士の戦い、抜刀術使えば楽だろうが……。

 

「お二人方、準備はいいですね。では、始め!」

 

気づいたら始まっていた。

 

その合図と共にさっきまで飄々としていたクラインが一瞬で間合いを詰めてくる。

おちゃらけてた癖になんなんだいきなり……。

このくらいのスピードならぜんぜん余裕で避けられる。

 

ーーーーーーと思っていたら刀スキルを準備していたみたいだ、避けた先にいる俺を刀が捉えている。

ふむ、《旋車》か。範囲攻撃だから当てられるってことだろうか。

 

「もらったぜ!」

「そんなわけないだろ」

 

アシストスキルでスピードを上げ、攻撃範囲から逃れる。

すかさずクラインが次の攻撃動作を始めているが、その一瞬で隠蔽スキルを使い、クラインの視界から消える。

 

俺が消えたとわかり、慌てて索敵スキルを展開しようとするがーーーーーー遅いな。

 

首元に刀を当てる。

 

クラインの顔から血の気が引いたような気がしたが、まあいい。

 

「俺の勝ちだな、降参しろ」

「…………ま、参った……」

 

「うおおおおお!」とここまで聞こえる歓声、危険を冒してまでここに来て観戦する人の声援が混じり大合唱となった。

 

「流石だなエイトマン……抜刀術は使わないのか?」

「お前と同じ理由、だ」

 

なるほど、と理解したキリト。

俺の妙なプライドだ、チンケなプライドとか言うなよ。

 

ラフコフのことを言おうかと思ったが、まあそれは大会が終わってからでいい。

戦い方とか言ってるが、あの様子じゃもう攻略組内にスパイでも入れてるはず。

この大会はそのスパイから得た情報の再確認のために開かれたみたいなものだろうな。

だから今更何かしたって遅い。やるならこの大会が終わってからだ。

 

と、ディスプレイの画像が切り替わる。

映し出されたのはーーーーーー俺とキリトだ。

 

「……次はキリトか」

「エイトマンとやるのは、初めてかもな」

 

いつもの子供っぽい笑顔を見せてきたあと、ボス攻略の度に見せてくる顔に切り替わった。

 

「全力で行くぞ」

 

勘弁してください……。

俺のプライドが邪魔して、わざと負けるなんて行動取れないんだから。




クラインは噛ませ犬系武士男です

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