やはり俺の仮想世界は間違っている。   作:なしゅう

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タイタンズハンド

待ち合わせ場所に到着。

ーーーーーーが、索敵に誰かが引っかかる。

 

「出てこい、場合によっちゃ刀を抜くぞ」

「そんな怖いこと言うのはおよし、私だよ、ロザリア」

「何の真似だ、俺を仲間に入れておいて暗殺でもする気か」

「いや、単に実力試験だよ。私の隠蔽を見破れるならかなりの実力者だね」

 

隠蔽スキル低すぎるだろ。

なんの待ち伏せ場所かーーーーーータイタンズハンドの集会場だ。

 

今回の俺への依頼は、クラン:タイタンズハンドのメンバーを牢獄エリアにぶち込むことだ。

依頼人は仲間をこいつらに殺された。……つまり、タイタンズハンドはオレンジギルドだ。

だが、確定証拠がないため捕まえられない、だから証拠を目の前で叩きつけて牢獄にぶち込む。

だから、まずは潜入だ。

 

「他のやつも出てきな」

 

ゾロゾロと他のメンバーも木の影などから出てくる。なに? それで隠れてたつもりなの? 隠蔽も使わず何してるんだ……。

 

「あんたがどこの馬の骨か知らないけど、使えるもんは使っていくよ」

「……おう」

 

どこの馬の骨……ねぇ……。攻略組に疎い連中はキリトとかアスナとか知らないみたいだな。

俺の存在自体知らない奴も多そうだが。

 

 

ーーーー

 

 

何故こうなった。

 

俺は

タイタンズハンドの内部を調べるために潜入したんだ。

 

なのに、なんでーーーーーーなんで、47層の思い出の丘にいるんだッッ!! 答えろッッ!!

…………という茶番やめにして、どうやら今回は思い出の丘のレアアイテムを取りに来たらしい。

 

「ロザリア、どうやって取るんだ?」

「まあ見てな」

 

丘の頂上へと歩く二人組がいる。ほうほう……あいつらから奪うってわけですね。

……ん? なんか見たことあるなあいつ……。

 

黒ずくめで盾なしの片手剣使い……それと小柄などう見てもJCの……アカン。

 

そういえばキリト達も47層来てるんだった……まずい、このままだと……。

 

「よし、アイテム取ったみたいだね! 行くよお前達!」

「「おうっ!」」

 

遅かったああああ!!!

 

「あら、シリカじゃないの? 次はその男を魅力でもして仲間にした?」

「あなたには関係ないでしょう! そこをどいて下さい!」

「そうはいかないね、そのレアアイテム、どうしても欲しいんだよねぇ」

「っ! わ、渡しませんよ! これは!」

 

あれが復活アイテムか……キリトが面倒くさそうな顔をしている。まああいつらじゃキリトには勝てないだろうし、キリトも楽勝だもんな……。

 

「それで? あんた達はどうするんだ?」

「決まってるさ、あんた達! やりな!」

 

ロザリアの一声で男達がキリトを囲む。

 

「死にたくなかったら、アイテムを渡しな」

「……はぁ、シリカ、ちょっと下がってて」

「は、はい……大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、安心してくれ」

 

そう言って、キリトが前に出る。

男達も警戒する。

 

「やりなっ!」

「「うおおおおおっ!!」」

 

キリトに切りかかる。

キリトはそれらを全て避けずに受ける。

……まあ、自然回復がなぁ……。

 

「お前たちじゃ、いつまで経っても俺を倒せないよ」

「黒ずくめの装備に、盾なしの片手直剣……ロザリアさん! こいつ攻略組トップの、《黒の剣士》だ!」

「攻略組トップがこんなところにいるはずがないだろう! こうなったら、こっちだって最終兵器を出すわよ! 出てきな!」

 

呼ばないでぇぇ……。最終兵器とかそんなかっこよくないから……。

 

「最終兵器……? 索敵には誰も……」

「俺だよ、キリト」

 

隠蔽スキルを解除し、現れる。

俺も覚悟を決めた。キリトと一戦交える覚悟、だ。

 

「なんで、エイトマンが……」

「エイトマンさん……!? なんで……」

「俺が何やろうと、俺の勝手だろ。……行くぞ」

「待て、エイトマンーーーーーーッ!」

 

俺の速度に反応できるのは、恐らくキリトだけ。

そんなキリトを倒すには……いや、倒す必要は無いな。

ここでロザリア達を捕まえることも出来るが、キリトやシリカに心配はかけたくない。

なら、俺がやるべき事は……!

 

「ロザリアと他のやつら、先に帰ってろ。すぐ追いつく」

「……いいんだね、任せても」

「早く行け……ッ!」

 

キリトが攻めてくる、剣をいなして交わす。

 

「行ったか……。……よし」

「なんでだ、エイトマン。なんで……」

「さっきも言っただろ。……俺の勝手だ」

 

納刀している刀に手をかけ、一気に抜き放つ。

《鎌鼬(カマイタチ)》刀カテゴリーの技だ。

衝撃波を飛ばす、遠距離系の攻撃だ。

キリトが仰け反る、今だっ!

 

「くっ……エイトマンっ!」

「悪いなキリト、初めからお前を倒すつもりなんて、ない」

「えっ……? きゃぁっ!」

 

シリカが手に持っていたアイテムも奪い取る。

そして、そのまま転移結晶を使う。

 

「待て! エイトマーーーーーー」

「転移!」

 

ーーーー

 

「やれたのかい!?」

 

転移が終わった瞬間、ロザリアが問いかけてくる。

 

「……ああ、アイテムはここに」

 

シリカから取ったアイテムを見せる。プネウマの花だ。

 

「流石だね! あんた、もっといい報酬をーーーーーー」

 

そこまで言った辺りで、ロザリアの首元に刀を当てる。

その動作が見えなかったのか、一瞬固まるロザリア。

 

「……!? な、何を……」

「黙れ、今から俺は本当の依頼内容をこなすだけだ」

 

首元の刀を、カチャリと動かす。

後ろにいる他のメンバーも急な出来事に動けずに固まっている。

 

転移結晶を後ろの奴らの足元に投げる。

 

「それでさっさと牢屋へ飛べ。さもないと、全員殺す。……ああ、抵抗はやめておけよ、一応俺は攻略組トッププレイヤーの《紫色の影》だ。PvPでは最強とも言われている」

 

最後は少し盛ったが、まあこれくらい言っとかないとな。

全員飛んだのを確認して、ロザリアの首元から刀を離す。

 

「お前も、さっさと飛べ」

「…………あんた、一生恨むよ」

「俺から言うことは一つだ、簡単に人を信じんな」

 

ロザリアが牢獄へと飛んだの見届けたあと、俺はキリトへメッセージを送った。

 

ーーーー

 

「何のようだ、オレンジギルドのメンバー」

「……シリカは連れてきてないな。ほらよ」

 

キリトにプネウマの花を渡す。

キリトは怪訝そうな顔をしてそれを受け取る。

そして、俺のオレンジカーソルに気づいたようだ。

 

「お前……まさか」

「タイタンズハンドのやつらなら全員牢獄だ。……それが依頼だったからな」

「……汚れ役は全部自分が引き受けます、ってことか?」

「違ぇよ、胸糞悪かっただけだ」

 

オレンジギルド、レッドギルドなんて、吐き気がする。

 

「これが、俺のやり方だ、他人に指図はされたくない」

「他人……じゃない。友達だからだ」

「はっ……」

 

半開きの口から笑いとも取れるような息を吐く。

 

「誰も傷つかない世界の完成だ、簡単だろ」

「そんなことないですよ!」

 

なんでシリカが……。

キリトを睨む。ーーーーーーキリトも驚いていた。

 

「シリカ……ついてくるなって……」

「だって……キリトさんが行くところにエイトマンさんが来る気がしたんです」

「……これはシリカの夢だ、いい子はもう寝ている、だからこれは夢だからなシリカ」

「お子様扱いやめてください! 誰も傷つかない世界なんて完成してませんよ! だって、私や、キリトさんが傷ついてるんですから!」

 

……そう言われると、言い返しづらい。

 

「会って1日の俺のことで傷つくのか、どんだけ感情豊かなんだ」

「エイトマンさんだって、会って1分以内の私を助けてくれました! 更にはピナを生き返させてくれる手段を考えてくれましたよ!」

 

まずい、論破された気がする。

 

「あはは……諦めろよエイトマン」

「はぁ…………まあ、これからはこういうのは控えることにする」

「控えるんじゃなくて! やめるんです!」

「善処する」

「むむ……まあいいです!」

 

ぷいっ、とそっぽを向くシリカ。なんかところどころ小町に似ているような……。

 

「エイトマン、ラフィンコフィンって知ってるか?」

「ああ? レッドギルドだろ。それがどうした」

「タイタンズハンドの後ろ盾にはラフィンコフィンがいる。気をつけろ」

「…………常時隠蔽使うか」

「もう認識されなくなるぞ、それ。……近々ラフィンコフィンと戦うことになる、それだけだ」

「…………わかった」

 

ラフィンコフィン、レッドギルドか。

本当、聞いてるだけで胸糞悪いな。

シリカとキリトに別れを告げて、俺は家に帰った。


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