やはり俺の仮想世界は間違っている。   作:なしゅう

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もしかして、前書きとかって書いた方がいいんですかね?
具体的に何書けばいいかわからないですけど……。


年越し

 

「新年、あけましておめでとう!」

「おめでとう!」

 

新年早々うるさいな、ゆっくりさせてくれ。

 

SAOが始まってからだいたい1年が経った。

攻略は現在52層まで進んだ。

 

22層の多分織田信長や25層の大きいコウモリなどの強敵はいたが、それ以降はこれらに匹敵するようなボスはなかなか出なかった。

まあ炎で囲ったり固めてきたりするボスが頻繁に出てきたらそれはそれで迷惑だが。

特に25層のコウモリの集団攻撃、吸収、巨大化や50層のティアマトのブレス攻撃など、異彩を放つ強力なボスはいた。

だが、それ以外の階層はそれほど強くはないボスだった。ってことは25の倍数の階層のボスは強いってことだろうか。

 

ギルドも強力なのが一つ、結成された。

ヒースクリフを団長に、アスナを副団長とする"血盟騎士団"だ。

俺も何回か誘われたが全て華麗にスルー、キリトは黒猫団にいるので誘われてないらしい。

 

…………まあ、それはともかく。

 

「なんでここにいるんだよ……」

「いいじゃないかエイトマン。ほら、家買ったならやっぱパーティーしないとな!」

 

そう、俺比企谷八幡はこの度、マイホーム……家を買ったのである。

夢のマイホーム! キャッシュ一括! 働かなくてもいい! すごい、はちまんすごい。

でも結局働かされる、黒いなぁこの世界は。

 

「私の家よりは小さいわね……」

「そりゃ副団長様と比べればな、てか帰れ」

「何よ、私たちがいたら悪いの?」

「悪いって言ったら帰るか?」

「帰らないわ」

 

ですよねー、キリトは自分で買ったチキンをがぶがぶ食ってるし、いや今日はクリスマスじゃないですよ?

 

「ほら、年の計は元旦? にあるとか言うだろ?」

 

チキンを食べるのをやめて俺に言うキリト。

それに対して俺はため息を一つ。

訂正箇所を伝える。

 

「それを言うなら"一年の計は元旦にあり"だ」

「そうそう! だから元旦の日にエイトマンと一緒に入れたら来年までずっと一緒だな、って思って」

 

…………なんだよ、キリトが可愛く見えてきたぞ!

 

「……その前にゲーム終わらせてやる」

「この捻デレが」

 

ここでも浸透してるんですねその造語。本当に誰が作り出したんだが……。

と、キリトと談笑しているとインターホンが鳴った。

え、まだ誰か呼んでるの?

 

「はーい」

 

おい待て、なんでアスナが我が物顔で開けに行くんだ。

ここ俺の家だよね?

 

「失礼する」

「お邪魔するね」

 

入ってきたのは血盟騎士団団長さんと軍のリーダー……ヒースクリフとディアベルだ。

な、なんで……。

 

「アスナ君に誘われたのだ、エイトマン君の家には少し興味があったからな」

「キリトが呼んでくれたんだ、新年だし一緒に過ごそう、って」

 

勝手に呼ぶなよ!

3日前、俺の家にストーカーして付いてきた2人を無理矢理でも撒くべきだったと今更後悔。

 

そんな後悔の最中、メッセージが届く。

お相手はアルゴ、メール内容……『今すぐ隣の部屋に来イ』

 

 

ーーーー

 

 

「何の用だアルゴ……飯でも欲しくなったか」

「違ウ! キー坊とアスナだけが来るんじゃなかったのカ!?」

「そもそも2人が来ることも知らなかったわ」

 

アスナとキリトが到着する30分前、こいつはいきなり俺の家に来た。

なんで場所わかった、と聞いても「情報屋だから」としか返答が……いや、もういい……。

嘆く俺を放置してアルゴが熱くなる。

 

「まさカ、攻略組トップ5が揃い踏みだなんテ……これは一大ニュースだナ!」

 

興奮するな静かにしろバレちゃうだろ。

 

「おーい、エイトマン? なんかアルゴの声が聞こえるんだけど」

 

ほら見ろ。

バレちゃっただろ。

 

「お、俺っちのことは言わないでくレ! 頼ム!」

「そんな事言われてもなぁ……」

 

と、背後からドアの開く音がした。

キリトが見に来たのか?

 

「どうしたエイトマン? 1人で立ってて」

「は? あー……いや、何でもない」

 

目の前にアルゴはいなかった。

一瞬だけ索敵したら真上に反応が……屋根裏か?

よくもまあ俊敏に動けるな、流石鼠。

 

「戻るか」

「皆待ってるぞ……ん? 何か音がしないか?」

「音?」

 

……耳を澄ますと、ギシギシという音が聞こえる。きゃー卑猥ー!

なんて冗談はいらない。……そういえばここの屋根裏の木材、耐久値大丈夫だったかなー。

安かったしそこら辺まずいんじゃないかなー、あれれー……さっき誰か上に登ったよね?

しっかりとフラグを建てる俺、さて、あとは回収するだけだ。

 

バキバキ、ドン! と屋根裏が突き抜けた。

 

「…………」

 

キリトが冷めた目で見ている。

その目を見て、アルゴはまずいと思ったのか、まさかの行動に出た。

 

「……ちゅ、チュー」

 

わー、大きい鼠だなー(白目)

キリトの目はさらに冷めていた。

 

ーーーー

 

「面目なイ……」

 

しょんぼりしているアルゴは部屋の隅でちょこーんと座っている。左手にはしっかりチキンを持っているあたりふてぶてしい。

 

「ほう、鼠か。君の情報は頼りになる、これからも頼むぞ」

「はは、任せておケ」

 

控えめな胸を大きく張るアルゴ。

無い胸は張れない……。

 

「それよりアルゴは何しに来たんだ? エイトマンを襲いにでも来たか?」

「おい、なんで意図的に俺を襲わせる発言するんだ。全力で逃げるぞ」

「エイトマン襲うなら全力で私たちがサポートするわ。いつも速すぎて全然捕まらないもの」

「本気で泣くぞ」

「エイトマン 号泣。攻略組トップの裏で何が……! って見出し付けるカ」

「やっぱ嘘ですすみません」

 

情報屋怖い、ほんと怖い。

情報って何よりも武器になるんだな。

 

「情報屋さん、せっかくだし何か情報屋らしいことしなよ」

 

ディアベルが意見を出す。

その言葉にアルゴは目を輝かせた。

 

「いいのカ!? なら早速質問コーナーに出すための情報を……ハッ」

 

思わず熱くなったアルゴは、辛うじて理性で抑えた。いや抑えられてなかったな前半。

 

「ははは、まあ良いだろう。普段から頼りにさせてもらっているのだし、礼も必要だろう」

「ヒースクリフ……いや、でもなぁ」

「いいじゃない、たまには答えてあげても」

「そうだぞエイトマン、諦めろ」

 

なんで俺が攻められてるのさ。

やっぱりこの世は理不尽で不条理だ。抗議するぞ!

そんな俺の心の中の抗議(総勢八万人)もむなしく、アルゴの質問コーナーが始まった。

 

「《神聖剣》ヒースクリフ、《軍の頭》ディアベルに《黒の剣士》キリト、《閃光》アスナ……あわわわ……こんな面子に質問が出来るなんテ、なかなか記事に出来なかったからこれはすごいことになるゾ!」

「いいから早く質問しろ、……って俺の通り名はないのかよ」

「《紫色の影》エイトマンってなんかしっくり来ないかラ、《影》って皆呼んでるゾ」

「知りたくなかった事実……」

 

俺だけなんか長いもんな……もっとこう、短くてカッコイイのなかったのん?

短く略されてるのもそれはそれでアリだけどな。……って中二病じゃねーよ。

 

「さ、早速質問ヲ……す、好きな食べ物や飲み物はなんダ?」

 

割と普通な質問だ。

ヒースクリフに質問することってあんまりないからこんなもんなのか?

 

「ふむ、特に好き嫌いは余りないが強いて言うならば、甘いものだな」

「その心ハ?」

「やはり、頭を使うと糖分が欲しくなるからな、そして甘いものを食べた後はコーヒーを飲む。これで脳がしっかり活性化するのだ」

 

なんかの科学者並の考え方だな、損得で考えたら人生つまらないぞ。楽するために考えた方が楽しいに決まってる、俺は楽してダラダラ暮らしたい。

 

その後もアルゴの質問は続いた。

どんな武器を使っているのか、この中で最強なら誰か、PvPをしたら誰が勝つか、などなど。

途中、俺がヒースクリフに皆の前で血盟騎士団に勧誘されるなどのハプニングもあった。

まあ俺はソロプレイだからな、皆の前でもしっかり断ったぞ。あ、ここオフレコで。

しっかりアルゴに口止め、団長直々のお誘いを断るなんて他のメンバーに喧嘩を売ってると思われたくはない。

 

全てが終わったあとアルゴは恍惚とした表情をして呟いた。

 

「ハハ……記事にしないとナ」

 

こんな仕事人間にはなりたくないなぁ……。

 

 




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