フーカ「この声は……グレートサイヤマン!」   作:ルシエド

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●フィーネ・エレシーヌ・リンネ
 ジークリンデと同じ遺跡で発見された少女。その正体はかつてゲスザウラーによって滅ぼされた古代ゾイド人の生き残りで、ジークの体内に自らの記憶を封じ込めてカプセルの中で眠っていた。「フィーネ」という名前以外の一切の記憶を失っており、旅の中で甦った記憶「クリスマスイヴ(あと四日)」という言葉を頼りに自分の過去を探し求め、その旅を続ける事で、少しずつ記憶を取り戻していく。

 Wikipediaから抜粋

 ちなみにアニメ一話でシールドライガー・ジーク・フィーネ等が居た砂漠の名前はエレミア砂漠といいます。


ボクらの太陽の紹介はオミットされました

 意外なことに、ニンテンドー64には麻雀ゲームも多い。

 ライとフーカは目を瞑ってカセットボックスに手を突っ込み、適当に引き抜いたゲームをやるという遊びをして、幸か不幸か麻雀ゲーを引き当ててしまっていた。

 麻雀のルールは複雑な上、フーカは頭がよろしくないので、ライがいくら手加減しようともフーカに勝ち目はない、と思われたが。

 

「……なんでそんなにウラカン(槓ウラのドラのローカル呼称)乗るの?」

 

「ワシに聞かれても困る」

 

 なんと、フーカは結構善戦していた。

 麻雀では槓というアクションを行うと、ローカルルールによって(カン)ウラというものが乗る。球技で決めた得点にボーナスが乗る、みたいなものをイメージすればいい。

 フーカは下手くそで雑、考えも足りていないが、一撃の威力だけはあるタイプだった。

 

「ウラカンが毎回乗ってる」

 

「ウラカンが無きゃ火力しょぼいしのう」

 

「ウラカンに何か縁が?」

 

「思い当たるフシはないのう、ウラカンじゃろ?」

 

 そんなバカ話をした翌日の朝。

 フーカがドローン家における、神谷活心流道場の緋村剣心のような存在になってから数日後。

 家主のライに見送られ、クマの無職(プー)さんは仕事探しに出るのであった。

 

「いってらっしゃい」

 

「行ってきます!」

 

 面接の通知を受け取る住所と戸籍カードさえあれば、就職斡旋所にちょっと申請をしておくだけで、職場の要望とフーカの要望がマッチした場合の通知が来るようになっている。

 要望が中々マッチせず、南光太郎並のブラックぶりを誇るブラック企業を回避している内に面接できる企業がなくなっていたり。

 面接に行ったが、即落とされたり。

 

 学歴無し、技能無し、資格無し。ワーキングプアの進化系であるワーキングベアとしての腕力くらいしか取り柄がない、孤児院出の魔力持ち少女。

 これでは中々、まともな職にもありつけないというものだ。

 

「むぅ」

 

 新しい求人が出るのを待つため、フーカは日雇いの仕事を請け負い、頑丈な骨格と魔力パワーでガテン系のオッサン集団の中に平然と混じっていく。

 と、いうか。

 フーカの声は可愛いが、喋り方はそんじょそこらのオッサンよりオッサンくさかった。

 午前中の労働が終わり、フーカは昼休みにライが持たせてくれた弁当を広げる。

 一緒に働いていたムーミンみたいな顔をしたオッサンが、その弁当を見て小さく声を漏らした。

 

「お、いい弁当だな」

 

「これですか? ワシの友人が作ってくれまして」

 

「弁当見りゃ、分かるやつは分かる。

 それは晩御飯にリクエストされたもんを作ってる家庭の弁当だ。

 前日の飯の残りを上手く使って、バランス良くかつ上手い弁当を作る料理上手の技だぜ」

 

「へぇ……」

 

「お前と同年代ってんなら、親からよく学んでたやつなんだろうよ、そいつは」

 

 弁当を食べ終わり、スナフキンみたいな顔のオッサン(現場リーダー)の掛け声で昼休みが終わる。跳ねるように動き回り、重機のようなパワーを発揮しつつ、フーカは先程食べた弁当の美味さを思い返していた。

 

(昔からワシも

 『女らしさをリンネに吸収されてる』

 って散々言われたもんじゃが……

 ライとリンネのいいとこをかけ合わせたら、最強の嫁ができるんじゃなかろうか)

 

 そんなこんなで、日当をゲットしたフーカはドローン家に帰宅した。

 

「ただいまー」

 

「おかえり」

 

「すまん、飯の前に風呂入ってええか?」

 

「どうぞ」

 

「ありがとさんっ」

 

 夕飯は出来かけ、風呂は既に沸いている。フーカは嬉々として風呂に入って行った。

 いってらっしゃいを言うために、少しだけ遅く家を出るようにする。

 おかえりを言うために早く帰り、同居人が帰る前に家事をする。

 家に他人が一人入るだけで自然とそうしようとするのが、ライ・ドローンという少年だった。

 

「……これは、友達の友達の厚意に甘えてるだけの人間が享受してええ環境じゃない!」

 

 風呂に浸かっていたフーカが猛然と立ち上がり、湯が流れ出る。

 ぷかぷか浮かんでいたDASH村の村長(ミッド出張版)も流れ出る。

 フーカは長い髪から水分を抜くのにちょっと時間を取られてから、三食宿付きの居候の宿賃としてはちょっと安い日当を差し出していた。

 

「と、いうわけで。今日もワシの稼ぎを受け取ってくれ」

 

「いらない」

 

「こんぐらいは受け取って貰わんと、ワシの気が済まんのじゃ!」

 

「……そこまで言うなら、受け取るけど」

 

 ライは親思いの子供から送られて来る仕送りを丸々貯金しておく親のような表情で、それを受け取っていた。金に困っていない彼は、受け取った金を懐に入れる気があからさまにない。

 

「あ、そういえば……

 今日帰りにリンネに会ったんじゃ、家族と一緒に飯食いに行ってたようじゃった」

 

「!」

 

「おお、反応が露骨……」

 

「……」

 

「睨むな睨むな」

 

「何か話した?」

 

「えー、あー、まー、うん」

 

 口ごもるフーカ。

 

「ちょっと最近のことを話したんじゃが、

 『えぇー、フーちゃんグレートサイヤマンの正体が分からないの? 鈍感さん、にぶいっー』

 とか目一杯煽られたんじゃが。ガキの頃みたいな笑い方しとったぞ」

 

「……」

 

 どの口でそんなこと言ってんだ、と少年は思ったが、口には出さなかった。

 

「リンネがこう言うということはな、ワシの知り合いってことじゃ。

 あの優しいにぶちんがここぞという場面で察しの良さを発揮できるわけがない。

 絶対に誰か、リンネに何か真実を語ったやつが居るはずじゃ。……分かるじゃろ?」

 

「……知らない」

 

「ふーん……ふーん……」

 

「……」

 

 リンネに対しては、流石の理解といったところか。

 フーカはライの得意魔法を知らない。

 知らないから気付いてないが、フーカはリンネほど鈍くない。

 何かの拍子に気付いてもおかしくはなかった。

 

「晩御飯にしようか」

 

「! そうじゃな!」

 

 だが、食うことが結構好きなフーカに対し、話題を逸らすことは非常に楽なことであった。

 

 本日の献立は分厚く柔らかいハンバーグ、添えられたポテト、パプリカ・レタス・ニンジンのシーザーサラダ風サラダに、わかめスープというラインナップである。

 朝の内に食べたいものを言っておけば、夕飯の時間にはそれを並べてくれるだけの甲斐性が、ライにはあった。

 

「ハムッ、ハフハフ、ハフッ! おかわり!」

 

「どうぞ」

 

 風呂、飯、とくれば、次は当然寝るまでの時間を潰すゲームの時間。

 

「今日は64の次の世代のハードをやろう」

 

「おお、新世代機なんじゃな」

 

「いやもう新世代ってほどじゃ……まあいいか。『ゲームキューブ』です」

 

 ゲームキューブ……それは、64の後を継いだ、伝説の任天堂据え置き機の一角である。

 64が信長、Wiiが家康であるのなら、ゲームキューブは秀吉にあたる。

 「これ持ち手を持ったら普通に人殺せる鈍器にならね?」と言われたゲームキューブは、その圧倒的破壊力をもって当時の戦国時代もかくやという据え置き機の激烈な競争を制し、そこから『ゲハで永遠に続く関ヶ原』とも言われる、ソニーと任天堂の戦いの下地を作ったのである。

 

「そして本日のソフトがこれ。『ZOIDS VS.シリーズ』。基本は三作目」

 

 ゾイドVSシリーズ。

 2002年に初作が発売され、2004年に最終作が発売され、今なおゾイドファンに続編を根強く望まれている陰の名作である。

 機体数、自由度、多様性においてこのゲームを超えるゾイドゲーは無い、と言う者が居るほどの作品だ。

 全ての機体に差を作らないようなバランスを作り、やり込みと技術の向上をプレイヤーに求めるような格ゲーのファンには受けが悪いが、プレイしていて実に楽しいゲームである。

 

「ゾイド?」

 

「こういうの」

 

 ライが私物の簡易デバイスをピッピッと操作すると、ZOIDSを題材とした『ゾイド新世紀スラッシュゼロ』というアニメの映像が音声付きで流れ始める。

 

『踏み込みと、間合いと、気合いだ!』

 

「ふむふむ、成程。ロボット動物が戦う感じなんじゃな」

 

「そう」

 

 フーカは説明書を読み、64より洗練された――各キーが無駄にならないデザイン――GCコントローラーを握って、あぐらをかいて画面に向かう。

 ライも正座し、その隣に座った。

 

「よし、ワシはまずゴジュラスとやらを使ってみよう」

 

「僕はアイアンコング」

 

「ゴリラのロボット? なるほどなるほど。ゴリラは敵じゃ。破壊する」

 

「えっ」

 

 思わぬ反応。

 そして開戦。

 残当な勝利。

 

「くぅ、負けたぁ!

 いかん、こんなではドンキーコングにリベンジも叶わん……!」

 

(ゴリラ特攻でも目指してるのかな)

 

 ゴジュラスVSアイアンコングはアイアンコングの勝利。その後は豹のゾイドに心惹かれたフーカがライトニングサイクスを使い、ライトニングサイクスVSシャドーフォックスとなったり。

 ジェノブレイカーVSバーサークフューラーや、シールドライガーVSセイバータイガーといった戦いが繰り広げられるのであった。

 

 二人はゲームの中で喋るキャラや、横で適当に流されているゾイドアニメの音声を聞き流しつつ、まったり喋る。

 

「このゲームは、ゾイドだけじゃなくて使うパイロットも選べる」

 

『俺の名はハリー・チャンプ。王者となるべくして生まれて来た男……』

 

「かといってそのキャラ、いくらなんでもかませ臭がしすぎだと思うんじゃが」

 

 ここには居ないある少女の名はアインハルト。ハルー・チャンプ。王者となるべくして生まれてきた女……

 略してハルチャンとお呼び下さい。

 

「よし行くんじゃライガーゼロ! ストライクレーザー……あれ?」

 

「ゾイドバーサスのストライクレーザークローは当てにくい。

 ジャンプして、固定距離をジャンプで移動しながら爪を振り下ろす。

 そのせいで、距離の目算を間違えると当たらない。

 敵が動いても当たらない。

 攻撃範囲も狭い。

 多少の補正はあるけど、それだけじゃどうにもならないくらい使いにくい」

 

「……ライ、お前さんがライガーゼロシュナイダー使っとるのは……」

 

「ストライクレーザークロー系は不遇。

 でもブレード系はめっぽう強い。

 ブレード系は当たり判定が強い。

 体当りする感覚で当たってもダメージが入る。

 だから、適当にやっててもとても強い武器なんだ」

 

「先に言わんかい!」

 

 このゲームにも不遇・優遇はある。

 基本的にはアニメの主役級、コマンドウルフからバーサークフューラーサイズのゾイドが強く、大型すぎたり小型すぎたりするゾイドはデフォルトだと少し弱い扱いになっている。

 強さは微妙にアニメ基準というわけだ。

 デスザウラーが油断すると即死させられるバ火力と、デカいだけのただの的という属性を併せ持つ原作再現がなされていたりする。

 

 なのだが、例外もある。

 バーサークフューラーの爪は強い。ジェノブレイカーの爪も強い。ブレードライガーのブレードも強い。

 なのに、ストライクレーザークロー主武装のライガーゼロは微妙に弱い。

 "ストライクレーザークローかっこええのう"と感覚的にライガーゼロを選んだフーカは、思わぬ落とし穴にはまってしまっていた。

 

 ヴィヴィッドストライクレーザークローへの道は遠い。

 

「はぁ、練習しても中々当たらんのう、ストライクレーザークロー」

 

「そういうもの」

 

「……ん? あれ、アニメが変なことやっとるけえ」

 

「名シーン。父さんが好きだったシーン。

 ブレードライガーのブレードが、ジェノザウラーの荷電粒子砲を切るシーン」

 

「は? ブレードで荷電粒子砲が切れるわけないじゃろ、何バカなこと言ってんじゃ」

 

 唐突なマジレス。

 

「そっか、レヴェントンさんはアニメ見てないから……

 そこにはちゃんと理屈もある。

 横に付いてるブレードの向きを変えて、こう、添えるように」

 

「いやいやいや、横に付いとるブレードは防御に使えんじゃろ。

 頭とか胴体とか一直線に撃ち抜かれて終わりじゃあないんか?

 というか、なんで開発者はブレードを前の方に付けなかったんじゃ」

 

「それは……ええと……

 正面の敵は牙と爪で片付けるから。

 左右に避けた敵を、ブレードで切るんだよ」

 

「おお、成程。で、荷電粒子はどう弾いて……」

 

「ブレードパワーです(適当)」

 

「ほう、ブレードパワー! ゾイドは奥が深いんじゃな」

 

 荷電粒子の細かい仕組み、ブレードのエネルギーが興す電子振動とその干渉、及び『フィクションにおいて許される設定の塩梅』等を説明する労力を考え、ライは説明を放棄した。

 その説明で、自分が苦しむからではない。

 フーカが苦しむからである。

 

「ワシはこのゾイドとやらを見たことがないが、面白いのうこれ」

 

「これはある意味でファン向けゲームの完成形。

 原作を知ってると楽しめる。原作の再現もしやすい。

 でも、原作を知らなくても面白い。単純に出来がいい。

 原作でなかった夢の対決や、ドリームチームも出来たりする」

 

「ほー」

 

「やり込み要素が楽しいタイプじゃなく、サクッと簡単に楽しめるゲーム。

 何も知らないレヴェントンさんでも結構楽しめると思った」

 

 事実、フーカは結構ハマっている。

 このゲームは、ゲーム単体で購入者を原作へと導けるだけのパワーを持つファンゲーであり、キャラゲーであった。

 原作再現はもちろんのこと、ゾイドを好みに合わせて改造する要素もあり、レブラプターで高層ビルを飛び移るようなプレイも可能。

 

 そんなこんなで、彼と彼女はあっというまに十数戦もこなしてしまう。

 

「さて、ウォーミングアップも終了じゃ。

 すまんがライ、グレートサイヤマンを呼んでくれんか」

 

「わかった」

 

 一通り技術と経験を積み重ねたフーカは、ここでグレートサイヤマンに挑戦状を叩きつけるべく動き始めた。

 "またか"といった表情で、少年は部屋の外に出て行く。

 そして入れ替わりに、グレートサイヤマンが参上した。

 

「グレート……サイヤマン! お呼びとあらば即参上!」

 

 グレートサイヤマン、参上。天幻星・大五だけに許された決めポーズをやたらとキレッキレに決める。この衣装を纏いし者は、登場時に己の理想を形にした決めポーズを以下略。

 

「来たようじゃな、仮面男!」

 

「この前のスマブラのリベンジというわけか。受けて立とう」

 

「……それもある。じゃが、それだけじゃない」

 

「?」

 

「ここで数日過ごした。数日泊めてもらった。

 ライには感謝しとる。

 じゃが……いくらなんでも、こんなに家族が帰って来ないわけないじゃろうが」

 

「……」

 

 一日泊まっただけなら、見過ごせる違和感。

 けれども数日泊まってしまえば、見逃せない違和感になる。

 

「他人なら良いんじゃ、他人なら。

 他人の家庭の事情に踏み込もうとは思わん。

 じゃが、ワシはもう、ライを他人のようには思えん」

 

「お節介なことだ」

 

「お節介で結構。無神経と言われるのは慣れとるけえの。

 まずはお前に聞く。お前から情報を得て、足がかりにする」

 

「それで勝負、というわけだ」

 

「じゃけえ、ワシが一度でも勝ったら、教えろ。

 お前がライについて知る限りの全てを、ワシに教えろ」

 

「いいだろう。勝てば教えてあげよう。ま、勝てないだろうけどね」

 

 今日始めたばかりの初心者に負けるわけがない。そういう、至極妥当な考えが、グレートサイヤマンにはあった。

 

「僕はブレードライガー」

 

「ワシはライガーゼロ」

 

(一回勝てればそれでいい、だから初戦は捨てる作戦か?)

 

 だが、至極妥当な考えは、必ずしも正解には繋がらない。

 

 対戦が始まってから一分と経たずに、彼はそれを思い知ることになった。

 

「踏み込み、間合い、気合い」

 

 たん、たん、たん、とリズムを取るフーカ。

 彼女が操るライガーゼロは、小気味いいテンポで距離を詰め、ブレードライガーによる迎撃をするすると回避し、巧みにいい位置を取り。

 

「踏み込みと! 間合いと! 気合いじゃああああああっ!」

 

 敵の攻撃命中より先んじて、ストライクレーザークローをぶち当てて来た。

 

 撃ち抜くストライク、否、切り裂くストライクレーザークロー。

 心の壁を撃ち抜く拳ではない、心の壁を切り裂く一撃。

 フーカの意地の一撃だった。

 

「なっ……!?」

 

 このゲームのストライクレーザークローは使いにくい。

 射程に融通は利かず、距離を詰めなければ使えず、敵の微妙な動きに合わせて打たなければ当たらない。

 例えるならばそれは、『特定のモーションでしか使えない必殺パンチ』のようなものだ。

 特定のモーションでしか使えない必殺パンチを、現実の格闘技で自由自在に打てるような人間でもなければ、この技は熟練者にまず当てられない。

 

 だがフーカには、イメージ通りの動作を形にするセンスがあった。

 間合いの測り方も上手く、()()()も並外れて強かった。

 そして何より、『勝つべき時に勝つ』勝負強さがあった。

 それゆえ、当たる。

 グレートサイヤマン相手でも、当たる。

 

 成長に必要な道のりを一瞬にして駆け抜ける。

 人、それを『天才』と呼ぶ。

 ストライクを当て、ストライクを当てられる状況を作り、的確に削り……なんとフーカは、初戦にてグレートサイヤマンに勝利していた。

 

「……本気を出して、負けるとは」

 

「よしっ!」

 

 ゲームの世界の勝負はあっさりと勝負がつきやすい。

 片方の予想が完全に覆されたなら、なおのことだ。

 画面の中で、ライガーゼロが吠えている。

 

 勝敗は決したが、これは序幕だ。ただのスタートラインに過ぎない。

 フーカが話したいこと、聞きたいこと、したいことはこの先にある。

 本番はここからなのだ。

 

「さあ、聞かせてもらおうか! グレートサイヤマン!」

 

「……ふぅ。参った、初心者にここまでの気合いを見せられたら、答えない方が不誠実だ」

 

 熱意と気合い。ライと本気で向き合おうとする心の姿勢。

 それがゲームの経験値という差を埋めて、フーカを勝利に導いた。

 彼女の心が、グレートサイヤマンの心を動かしたようだ。

 グレートサイヤマンはどこか言いづらそうにしながら、ぽつぽつと語り始める。

 

「JS事件を知っているかな」

 

「そりゃ、知らんもんの方が少ないじゃろ。

 ジェイル・スカリエッティによるミッドチルダ襲撃事件。

 一つ間違えば最悪全世界が数百年前の治安に逆行してたとか。

 間違いなく新暦最大級の大事件、歴史に残る事件じゃしな」

 

 それは、五年前に起きたとある大事件の話。

 

「彼の家族はその時に事件に巻き込まれ、彼は両親と妹を亡くした。

 ドローン家の一人息子だった彼は、文字通りの"一人"息子になったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家族が居なくなって、誰も居ない寂しい部屋で、僕はただ時間を浪費していた。

 遊ぶ玩具はある。

 遊ぶゲームはある。

 でも、一緒に遊ぶ家族(あいて)が居ない。

 ただそれだけで、僕の家はとても寂しいものになってしまっていた。

 

 一ヶ月は、何も考えられなかった。

 この時期、親切な親戚の人が色々してくれていたことを、後々知った。

 悲しむことさえ無い一ヶ月だった。

 ショックが抜けて、悲しむ余裕ができた。

 そこからは、悲しむだけの一ヶ月。

 家族のことを思い出して泣いた。

 家族の想い出を思い返す度、泣いた。

 家に居ると、そこかしこに家族との記憶があって、泣いた。

 一ヶ月泣いて、ようやく泣かないで一日を過ごせるようになった頃、僕は気付いた。

 

 家族の死を毎日想っていたのに、僕はいつの間にか、その原因となるスカリエッティの事件のことを、すっかり忘れてしまっていたことに。

 

 僕にとって一番大きな事件は、家族が死んでしまったことだった。

 それに比べれば、スカリエッティが起こした事件なんて、忘れてしまえるくらいに小さなことだった。

 

 僕が感じた一番大きな感情は、家族を失った悲しみだった。

 家族を奪われた憎しみや恨みも、少しはあったかもしれない。

 けれど、それが飲み込まれて消えてしまうくらいに、悲しみが大きかった。

 

 家族への感情が大きすぎて、家族だけを想っていて。

 スカリエッティも戦闘機人も、どうでもよかった。

 

 どうでもよかったんだ。

 どうでもよかった。

 家族を死なせた事件も、家族を殺した人も、どうでもよかった。

 ただ、大好きな父さんが、大好きな母さんが、大好きな妹が、死んでしまったことが、もう会えないことが、悲しかった。

 "誰かのせい"にしたって、皆は絶対に帰って来ないんだ。

 

 一ヶ月、何も考えられなくて。

 一ヶ月、ずっと悲しんでいて。

 そんな二ヶ月が終わった後には、憎しみも恨みもなくて、悲しみだけがあった。

 

 大人の真似ができるようになった。

 親戚の人が最初はよく面倒を見てくれるようになったけど、僕が「大丈夫」と言ったら、少し心配そうな顔をしたけど、僕がこの家で一人で暮らすことを認めてくれた。

 そうして、僕の家には僕と想い出だけが住むようになった。

 

 いつしか、僕は。

 

 僕と違って家族と一緒に居られる人を、家族を喪う前の僕よりも家族を愛している人を、心の中で特別扱いするようになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼の家族はその時に事件に巻き込まれ、彼は両親と妹を亡くした。

 ドローン家の一人息子だった彼は、文字通りの"一人"息子になったんだ」

 

 グレートサイヤマンは、五年前に起きた事件と、それがライの人生に与えた影響をかいつまんで話す。感情的にならないよう努めて話し、極めて事務的に事柄だけを話すようにしている。

 

 だがフーカは、そこから言葉以上の何かを感じ取っているようだ。

 

「……復讐でも、考えてたりせんじゃろうな」

 

「まさか。彼は誰も恨んではいないよ。それは本当だ」

 

「……」

 

「そして、何をする勇気も持てずに居る。これも本当だ。

 許す勇気もなく、許すと公言することもできず。

 許さない勇気も持てず、許さないと公言することもできず。

 誰も恨んでは居ないが、誰も許しては居ない。自分も含めて」

 

 リンネの父、ダン・ベルリネッタは言った。

 

 仮面を被らなければ、勇気を出せない人間も居る。

 仮面がなければ、誰かの味方になれない人間も居る。

 仮面越しでなければ、伝えられない言葉というものもある、と。

 

 仮面越しにしか、語れないことがある。

 

「あいつは、ライは、今でも苦しんどるんじゃないんか」

 

「気楽に生きては居ない。けれど苦しんでも居ない。

 苦しんでは居ないが……苦しみを見過ごせなくはなった」

 

「見過ごせない?」

 

「彼は、あの日から。

 泣いている人を見ると……

 それが、鏡の向こうの自分に見えるようになったそうだ。

 望んだ救いを何も得られず、ずっと家で泣いたまま過ごしていた自分に」

 

 サラは言っていた。ライやリンネが通っているかの学校、そこには、困っている人が居るとそれをすぐさま助けようとする、仮面の男が居るのだと。

 仮面の男は、ライの学校で頻繁に人助けをする姿を見られていた。

 

「なんてことはない。

 彼は泣いている自分(たにん)を助けている誰かを見ていたいだけだ。

 泣いている他人(じぶん)を、大人が助けているのを見ていたいんだ。

 自分一人で何かに立ち向かう勇気もないまま。

 格好付けた大人が、過去の泣いている自分を救っている光景を見たがっている」

 

 『自分(じぶん)』が勇気を出さないまま、泣いている『自分(たにん)』が助かる結果を欲しがっている。

 自分じゃない誰かが、困っている誰かを助ける光景を求める。

 少なくとも、グレートサイヤマンは、ライの本質がそういうものであると思っている。

 

「お前が"その役"だったりするんか、グレートサイヤマン」

 

「さあ、どうだろうかね。だとしたら、情けない話さ」

 

「何?」

 

「君のそのコントローラー、彼の妹のものなんだよ。

 両親の想い出に触れている時だけ、彼は大人のように振る舞える。

 妹の想い出に触れている時だけ、彼は女の子に優しく振る舞える」

 

 彼はどういう想いで、自分では使おうとさえ思わない妹のコントローラーを、フーカに貸していたのか。善意か、過去を振り切りたいのか、妹の投影か、想い出の再現か、あるいはその全てか。

 

「家族の想い出に触れていなければ、何もできない。

 好きな人がいじめられていても、その大半を見過ごした。

 臆病者だ。ライ・ドローンは、勇気の無い臆病者なんだよ」

 

 グレートサイヤマンの言葉に、つい熱がこもる。

 ライをなじる声色になる。

 その言葉を、フーカは忌々しそうに否定した。

 

「もういい、お前の口を通して聞いたのが間違いじゃった。お前、阿呆じゃな」

 

「え?」

 

「『お前』は、ライのことを肝心なことは何も知らんということじゃ」

 

 フーカはコントローラーを床に置き、自分が座っている座布団にそっと触れる。

 その座布団は、フーカに対するライの気遣いそのものだった。

 

「リンネが言っとった。

 ライは、身一つでいじめっ子に立ち向かってくれたこともあったと。

 ワシはこの目で見とる。

 リンネを小馬鹿にするポスターの落書きだけを理由に、不良に喧嘩売ったバカの姿を」

 

「……!」

 

「何もできない? 見過ごした? 笑わせるな。

 勇気がない? 上等じゃ。

 なら勇気の無い人間が、無い勇気振り絞って立ち向かったってことじゃろうが」

 

 グレートサイヤマンのライへの評価を、フーカは一から十まで否定する。

 

「臆病者にも勇気はある。

 臆病者に勇気がないと思っとるのは、お前だけじゃろう」

 

「―――」

 

 勇気が無いと彼は言い、お前が無いと思っているだけだと彼女は言う。

 

「あいつの勇気は、他の誰が見てなくても、ワシがちゃんと見とる。

 『お前』がライの性格を語るんじゃあない。

 『お前』がライを歪んでいるかのように語るんじゃない。

 あいつは自分が思ってる以上に、他人が思ってる以上に、いいやつなんじゃ」

 

 自分で思っている以上にあの少年はいいやつで、グレートサイヤマンが思っている以上にライはいいやつで、そしてそんなライ以上に、フーカ・レヴェントンはいいやつだった。

 

「……君は、いい人だな」

 

「んなこと滅多に言われんから鳥肌立つわ、やめい」

 

 フーカが照れ臭そうに顔を背けて手を振る。

 仮面越しにも、グレートサイヤマンの嬉しそうで暖かな視線が目に見えるようだ。

 声色からも、グレートサイヤマンの心情は伝わってくる。

 

「グレートサイヤマン、ライ呼んで来い」

 

「おや、もう聞きたいことはいいのかな」

 

「もうええ。ここからは、お前じゃなくライに聞くべきことじゃ」

 

「そうか。では今日は、さよならだね」

 

 用済みと言われたはずのグレートサイヤマンが、どこか満足した様子で部屋を出て行く。

 入れ替わりに戻って来たライの両手の中には、湯気を漂わせるマグカップと、その中に満たされた薄い琥珀色の液体があった。

 

「それ、なんじゃ?」

 

「柚子蜜茶、砂糖と蜂蜜で味付けした柚子をお湯で溶かしたもの」

 

「なんじゃそれ美味そう」

 

 ライからそれを受け取って、フーカが口をつける。

 料理で味を引き締めるために時々投入される柚子の切片が嫌いな人でも、美味しく思える塩梅の柚子風味だ。

 今日の晩の飲み物に限って妙に手が込んでる気がするのは、気のせいだろうか。

 

「レヴェントンさん、その……」

 

「フーカじゃ」

 

「……リンネさんみたいなことを言う」

 

「ええじゃろ別に。今のままじゃ、ダチにもなった気がせんわい」

 

「フーカさん」

 

「フーカ」

 

「……フーカさん」

 

「フーカ」

 

「……………………………………フーカ」

 

「それでええんじゃ、この強情っ張りめ。ほれ、握手握手」

 

「強引」

 

「よう言われる」

 

 茶髪が金髪を先に名前で呼び、自分も名前で呼ぶよう求める。

 手を差し出して、友達になりたいのだと告げる。

 これが『リリカルなのは』だ。

 

「話そう、ライ。寝るまで思いっきり、ありったけ話すんじゃ」

 

 フーカが自分の隣の床をバンバンと叩き、グレートサイヤマンが座っていた場所にライを座らせる。コントローラーも握らされ、二人の対戦がまた始まった。

 

「想い出は水と同じじゃ。

 悪い想い出は腐った水みたいなもんじゃと、ワシは思う。

 悪いもんが混ざったまま放っておくと腐ってしまう。

 適度に外に出さんと、想い出が心まで腐らせてしまいかねん」

 

 対戦しながら、フーカはニカッと笑って、ライにひたすら話しかける。

 ライが話し、自分が聞く、そういう構図を成立させるために。

 

「腐った水を元の水に戻すのは難しい。

 悪い想い出をいい想い出にするのも同じじゃ。

 変えられないなら、まずは吐き出すしかない。そうは思わんか?」

 

 もうフーカとライは他人ではない。友達なのだ。

 

 友達だったら、何かをしてやりたい。フーカは素直にそう思う。

 

「吐き出せ吐き出せ。

 ワシはどうせこんな性格じゃ。

 細かいことは気にせんし、弱みを見せて困るタイプでもない。

 気楽に何も考えず話すには気楽なタイプだと思うんじゃ、なはは」

 

 見ている方が明るい気持ちになってしまうような笑顔。自分で言っていることが恥ずかしくなってきたのか、フーカの笑顔にはちょっとした照れも見える。

 

「……」

 

 ライは目を閉じて、深く息を吸い、吐く。そして目を開き、フーカをまっすぐに見た。

 

「気楽に話せないタイプの人は居ても、気楽に話せるタイプなんて人は居ないと思う」

 

「うっ」

 

「でも君は、気楽に話せるタイプじゃないけど、信頼はできるタイプだと思う」

 

「!」

 

 ライの視線が前に向く。

 フーカの視線も前に向く。

 二人は並んで座ったまま、画面を見たまま、ゲームをしたまま、目も合わせずに会話を始めた。

 

「父さんは、遊ぶことが好きだった。

 遊びがない人生が地獄で、その逆が天国だって言ってた。

 この家にある娯楽やホビーやゲームは、だいたい父さんの遺品だ」

 

「ほう、面白い人じゃったんじゃな」

 

「母さんは引っ込み思案な人だった。

 でも大事な時には我を通す、芯の強い人だった」

 

「なるほど、ライは母親似だったんじゃな」

 

「妹は筋肉モリモリのマッチョだった」

 

「へえ筋肉モリモ……ん?」

 

 ライは頭に思い浮かんだ想い出を、一つ一つ口にしていく。

 ぽつりぽつりと語っていく。

 そのせいで話があっちへ行ったりこっちへ行ったりと、話についていくのが大変なことになっているが、フーカはその一つ一つに自分なりの反応を返す。

 ゲームをしながら、ライは語り、フーカはそれに応じていた。

 

「悲しかった」

 

「そうか」

 

「うん、そうだ、悲しかったんだ」

 

「無理もない。実の親も知らないワシは、分かるとは言えんがな」

 

「いいよ。ありがとう」

 

 そうやって、何時間話しただろうか。

 話し続けて、喉が渇いて、柚子蜜茶を入れ直して、また話し始めて話し続けて。

 

「悪い想い出もあった。でも、いい想い出もあった」

 

「全部言ってしまえ。起きてる内はワシもリアクションを……ふわぁ……」

 

 フーカは頑張って起きていたが、肉体労働で体力を消耗した日の夜だ。

 年齢のこともあり、いつまでも起きてはいられない。

 気合いで何とか踏ん張っていたものの、夜の三時を過ぎたあたりで限界が訪れる。

 

 コツン、と彼女の手から滑り落ちたコントローラーが、床とぶつかり小さな音を立てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「子供を笑顔にする」

 

「ホビー、ゲーム、遊び道具。これらは……。

 ただそれだけのために、いい歳こいた大人が頑張って作り上げた物の数々」

 

「素敵だとは思わない?」

 

「玩具やゲームがどこかの子供を笑顔にして、他の子供も笑顔にしていく」

 

「親が子に買い、子が親に感謝し、子は友達と一緒に遊んで笑顔になって……

 それはとても素敵なことだと、僕は思う。これらの物を作った人達は―――」

 

「―――戦闘機人や聖王のゆりかごを作った人よりも、ずっと偉大な人達だ」

 

「その人達は、何かを壊すためじゃなく、誰かを笑顔にするために物を作っていたんだから」

 

「だから、僕の父さんは……こういうゲームやホビーが、大好きだったんだ」

 

 

 

 

 

 寝る前に、ライが何か、いいことを言っていた気がする。

 そんなことを思いながら、フーカは目を覚ました。

 寝落ちする直前、何か暖かいものに寄りかかっていた記憶がフーカにはあったが、何に寄りかかっていたかも思い出せず、彼女はいつの間にかベッドの中に居た。

 

「……しまった。あんだけ言って途中で寝てしまうとは……幻滅されとるかもしれん」

 

 フーカは二階の部屋から一階の居間に降りて、ライがもう学校に行っている時間であることを確認する。

 

「ね、寝坊じゃぁ……」

 

 何故くかーと寝てしまったのか。あんなにぐっすり寝てしまったのか。

 フーカは激しく後悔していた。これでは起きてすぐに謝ることもできやしない。

 居間のテーブルの上を見ると、ラップがかけられた皿や茶碗が一人分並べられている。

 手前にはメモがあり、『チンして食べて』という短い文章が書かれていた。

 

「あいつも夜更かしした後で眠かったろうに、作り置きしておいてくれたんか」

 

 ライ作の朝食をレンジに入れ、フーカはそこでメモの裏側に気付く。

 メモの裏側には『仕事探し頑張って』という文章と、『ありがとう』という一言がしっかりとした字体で書かれていた。

 フーカは起きてすぐに会って謝ろうとしていたが、どうやらライは起きてすぐに顔を合わせたくないくらいに、恥ずかしい気持ちで居たらしい。

 まず最初に文で気持ちを伝えようとしているところからも、それは窺える。

 

「……どんだけシャイなんじゃ、あいつ」

 

 玄関に向かうと、そこにはライがフーカ用に残していった弁当と、物質操作魔法で創られたと思われるこの家の合鍵が置いてあった。

 仕事が見つかってこの家を出て行った後でも、いつでも来ていい、ということだろう。

 確かな信頼と友情が感じられる。

 昨晩のやり取りは、フーカが思っている以上にクリティカルな結果をもたらしていたようだ。

 

「……どんだけチョロいんじゃ、あいつ」

 

 ビット・クラウドはカッコイイが、ニート・食人(くらうど)はかっこ悪い。

 ライガーゼロのアーマーは無色の白だが、無職はかっこ悪い。

 クマの無職(プー)さんは、今日も就職活動に勤しむのであった。

 

 

 




・妹さん
 柔軟性のある筋肉を付ける筋トレが好きだった少女。享年六歳。
 一人称は我。二人称はうぬ。
 幼少期には兄に絡む不審者を血祭りに上げ、JS事件時には家族とはぐれた後に聖王教会の孤児院を守るため拳一つでガジェットドローンに戦いを挑み、相打ちに。
 「我が生涯に一片の悔い無し」と言葉を残し散る。

 目元が少しフーカに似ている。
 物を殴っている時の雰囲気が少しリンネに似ている。
 アルトリア顔のラオウ。六歳で腹筋がバキバキだった。近寄ると凄く汗臭い。

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