Double Servant -Poetry of Brimir-   作:ねずみ一家

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第七十話  来訪者たち

夜明けを過ぎ、トリスタニア郊外に展開していたトリステイン軍の本営は慌ただしく動き回っていた。

偵察の竜騎士からアルビオン軍の動きが伝えられ、決戦の時刻は刻一刻と近付いてきている。

 

それでも、本営を駆けまわる兵士達の顔には悲壮感など欠片も存在していなかった。

つい先程トリステイン軍総司令官としてのアンリエッタ姫の言葉が、トリステイン軍の兵士達全員の前で伝えられていたためである。

 

多くの兵士達はこの国を守るためにこそ動き回っており、その士気は非常に高いまま維持されていた。

その中で今現在、最も士気が高い状態にあるのは、本陣において強固な布陣を引かれている一つの天幕だった。

 

 

「お疲れでございますな。先程の演説、実にお見事でございましたぞ」

 

その広い天幕の中では多くの高名な貴族達が決戦に向けて駆け回っていた。

その奥の方、即席の椅子に腰かけていたアンリエッタは静かにマザリーニへと向き直った。

 

「上手く話せたようで、わたくしも安心しました。ですが・・・、緊張してしまって・・・」

 

マザリーニへ薄く笑いかけたアンリエッタの顔には疲れがにじみ出ている。しかし、それは仕方のないことだった。

何せアンリエッタは戦の経験が無いのである。

その上でこの危機の中、戦の要となる兵士達の士気はこの年若いアンリエッタの双肩にかかっていたのだから。

 

マザリーニは姫の体調を気遣いながら、演説の最中に届いた報告を口にしていた。

 

「姫殿下。一つ、朗報でございますぞ。トリステイン魔法学院を襲っていた巡洋艦が撤退した模様です」

 

アンリエッタは目を見開いた。

そしてマザリーニの顔をまじまじと見つめてから、ほうっと息をついて椅子に深く座り込む。

 

 

「・・・よかった」

 

 

その呟きを耳にしながら、マザリーニは力が抜けたように安堵する姫を見つめ、その行く末を案じていた。

 

アンリエッタ姫殿下は、余りにも優しすぎた。

それがアンリエッタ姫の求心力を生んでいるのも事実であり、この慈愛こそアンリエッタ姫をアンリエッタ姫として足らしめている要因なのだ。

 

しかし、この優しさこそが・・・、アンリエッタ姫殿下を強く苦しめる要因にもなりうるのだ。

 

 

「ヴァリエール公爵、ご到着!!」

 

 

兵士の叫びと共に天幕の入り口が揺れた。天幕の中にいた貴族逹がざわめきと共に視線を向けていく。

マザリーニとアンリエッタも入り口へ目を向けると、そこには白くなりかけた金髪を湛え、立派な口髭を湛えた老年の貴族の姿があった。

 

左目にはめたモノクルがきらりと光り、その貴族はつかつかとアンリエッタの前へと歩み寄っていく。

そしてばさりとヴァリエール家を象徴する貴族のマントを翻しながら、アンリエッタへと臣下の礼を取った。

 

「殿下、ご機嫌麗しゅう」

「・・・ヴァリエール公爵、貴方までが」

 

驚きの表情と共にアンリエッタが呟くと、公爵は臣下の礼を取ったまま厳かな声を上げた。

 

「国家存亡の危機において、殿下の元に馳せ参じぬ理由がどこにありましょうや。

それに先程の演説・・・、この老いた胸の内すらも強く揺れ動かしましたぞ」

 

「公爵、ありがとうございます・・・。どうか、お顔をお上げください」

 

アンリエッタの言葉に、ヴァリエール公爵はゆっくりと立ち上がった。

そしてアンリエッタの横に佇むマザリーニへとその視線を向ける。

 

 

「久方ぶりですな、公爵」

 

「マザリーニ殿も、お変わりがなさそうですな」

 

 

ほんの少し彼らの間に緊張感があるのをアンリエッタは感じていた。

しかし二人はくっくと笑い合い、その内に笑い声が大きくなっていく。

 

「何、私に出来ることはこの老骨を更に『鳥の骨』へと近付かせることのみ。カリーヌ殿はお元気ですかな?」

「我が妻は今領地にて憤慨していることでしょう。最後まで私が出陣することへぶちぶちと文句を言っていましたからなあ」

「それは、カリーヌ殿らしい。戦の後には土産を買っておく必要がありますな」

 

くつくつと笑い合う二人に、アンリエッタはぽかんとした顔のままである。

 

「ここに来る途中、グラモン元帥とも話しましてな。あやつはアンリエッタ姫殿下の御言葉に強く感銘を受けていたようでした。そのまま一人で勝手に突撃してしまいそうな勢いでしたぞ」

「次会った際、あやつには功を焦り過ぎないようにと忠告しておかなければなりませんな。殿下の御前で格好つけるのも程々にしておけと」

 

わっはっは、と二人して笑い合っている。

その姿を天幕にいた多くの貴族もぽかんと見つめていたが、その内の一人がヴァリエール公爵へと近付いていく。

 

 

「ヴァリエール公爵。お久しぶりでございます」

 

 

その貴族は地を響かせるような低い声と共に、その巨体を跪かせていた。

 

「おお、これはゼッサールくん。久方ぶりだな、元気にしていたか?」

「勿論でございます。まさかヴァリエール公爵までいらっしゃるとは・・・。このゼッサール、感激に打ち震えて・・・」

 

「君は随分と立派になったものだが、私にまであんまり気を使わんでいい。カリーヌにしごかれていた時など必死の形相で私の後ろへ隠れようとしていたではないか」

 

その言葉に、ぱっと顔を上げたゼッサール卿が慌てた様子で声を上げる。

 

「こ、公爵、お止めください! 殿下の御前で・・・!」

 

焦るゼッサール卿がその強面の顔を赤くしていく中、ヴァリエール公爵は心底懐かしそうに気品溢れる笑みを浮かべていた。

 

 

「して、公爵。今回の戦における作戦については知っておりますかな?」

 

 

マザリーニがヴァリエール公爵へと問いかけると、公爵は口髭をいじりながら口を開いた。

 

「グラモンから滔々と聞かされましたぞ。いや、あれしか無いでしょうな。単純ではありますがそれ故に効果的でしょう」

 

 

トリステイン軍の作戦はこうである。

 

アルビオン軍の進軍に合わせ、トリステイン軍は『陸軍のみ』でアルビオン陸軍へと防御主体のまま突撃すること。

空軍や竜騎士はトリスタニアへの空路を制限するようにアルビオン空軍への挑発じみた攻撃を繰り返し、一定の距離を保ちながら陸軍の動きを補佐すること。

 

この作戦の肝は、両陸軍による混戦を引き起こすことだった。

 

制空権を握られている以上、空軍同士の衝突は得策ではなく、そうである場合は空からの砲撃を停止せざるを得ない位置までトリステイン陸軍が近付く必要がある。

あくまでトリステイン空軍の目的は王都トリスタニアの防衛であり、陸軍の目的はあくまでゲリラ的にアルビオン陸軍の力を削ることなのだ。

 

ラ・ロシェールでの戦いであるなら無意味に近しい作戦だが、ここトリスタニア郊外での戦いであるなら非常に効果的な作戦だと言えた。

アルビオン軍にはゲルマニアの援軍という時間的な制約があり、トリステイン軍には王都トリスタニアを背にしているという地の利が大きく存在しているからだ。

 

最大の懸念材料は数で劣る兵士達が各々の士気を維持できるかだったが、先程のアンリエッタの演説により、その懸念はもはや解決したと言ってもいいだろう。

 

 

「ヴァリエール公爵にそう言って頂けるのなら心強いですな」

「あまりに無謀な作戦であるなら踵を返すところでしたが、そうはならずに内心安堵しておりますぞ」

 

マザリーニとヴァリエール公爵は冗談混じりに笑い合っていたが、彼らの会話において、ある事柄については全く触れられていなかった。

 

この作戦は・・・余りにも多くの死傷者を出す。

作戦が成功し、ゲルマニアの援軍が間に合ったとしても・・・。最悪の場合、三千名近くにもなる陸軍は文字通り全滅する可能性すらあった。

 

それを、今から戦いに赴く兵士達にまで心を削ってしまう、この心優しい殿下の前で言う訳にはいかないのだ。

 

 

「それに、今の私には引く訳にはいかない理由が新たに出来ましたからな。この老い先短い命を賭して、アルビオン軍を喰い止めることに致しましょう」

 

 

アンリエッタはその言葉に顔を上げ、ヴァリエール公爵の顔を見つめることしか出来なかった。

そのアンリエッタの表情に気付いた公爵は、アンリエッタへと小さく笑いかけている。

 

「殿下が気に病むことではありませぬ。ルイズは、強い子ですからな」

 

にこりと微笑む皺の刻まれた顔にアンリエッタは思わず俯いてしまいそうになるが、それでもヴァリエール公爵の顔を見つめたまま、こくりと頷いた。

 

「ルイズは私にとって、我が身を投げ打ってでも救わなければならない、とても大切な友人です。彼女のためにも・・・、貴方様の活躍を心より願っております」

 

公爵はアンリエッタへと深く礼を返し、満足げに笑みを浮かべながら口を開く。

 

「殿下の御心遣い、この身体を命の尽きる最後まで支えることとなりましょう。

しかし、今の御言葉はルイズにも聞かせたかったですな。あの子もきっと喜ぶでしょう」

 

そのまま公爵はマザリーニ、そしてゼッサールへと目を向けていった。

 

 

「お二方とも、殿下を頼みましたぞ。・・・さて、私は我が軍の元へ戻るとしますかな」

 

「公爵。御武運を・・・」

 

 

マザリーニが短く答え、ゼッサールが礼を返そうとした、その時。

 

次々に降り立つかのような足音が、すぐ近くから聞こえてきた。

 

 

「な・・・!」

 

 

天幕にいた貴族たちが声を上げる。

その足音の方向へとその場の全員が目を向けた時・・・、彼らは目を見開き、一切の躊躇もなく杖へと手を伸ばしていた。

 

 

 

「何者だっ!!!」

 

 

 

天幕の中、突然現れた六名の男女が真紅の瞳を輝かせながら、アンリエッタへと歩を進めている。

天幕にいた全ての貴族達はその謎の一団へと杖を即座に引き抜いていた。

 

しかしその瞬間、何かの黒い影によって彼らの杖が次々に弾き飛ばされていく。

 

 

「で、殿下・・・っ!!」

 

 

マザリーニがアンリエッタの前に立ちふさがり、その二人の壁となって即座に臨戦態勢となったヴァリエール公爵とゼッサール卿は、その黒い影の斬撃を何とか長剣状の杖で受け止めていた。

 

天幕を一瞬の内に駆け巡った何者かの影。

凝縮されたような意識の只中で、かすかに眼に写った、痩せぎすの男の赤い瞳・・・。

 

影が通り過ぎると同時に甲高い金属音が鳴り響き、体勢を立て直しながらも公爵とゼッサール卿がルーンを紡ぎ始めた瞬間。

 

二人に向けて、鋼鉄の塊が撃ち降ろされていた。

 

 

「ッ!」

 

 

一瞬の内に撃ち降ろされた大剣と、大斧。

 

二人は決して油断などしていなかった。

しかし瞬きよりも短い一瞬の内に接近され、降り下ろされていた鋼鉄の塊に、二人は息を飲み・・・。

 

撃ち降ろされたそれらは風を斬る轟音と共に、二人の顔の前でびたりと止まっていた。

 

二人が目前で止められた鉄塊を信じられないように見つめている中、それを手にしていた赤い瞳の男達が静かにその武器を引き、二人の目前で肩に担いでいった。

 

 

静まり返った天幕の中で、その赤い瞳の一団がアンリエッタの元へと歩み寄っていく。

 

その一団は、まるで空気を歪ませるかのような、余りにも異常な雰囲気を纏っていた。

 

 

ゼッサール卿の目の前に立つ、銀髪の騎士。

ヴァリエール公爵の目の前に立つ、大斧を手にした短髪の青年。

 

異常な雰囲気はこの二人だけでなく、一団を率いているような、クリーム色の短い髪を湛えた幼い少女も。

 

まるで少女を守るように傍らに立っている、礼装姿をした金髪の女性も。

 

そして離れた位置から周囲を警戒する、黒い服を身に纏った痩せぎすの男も。

 

一団の背後を隙一つなく見つめている、淡黄色の長い髪を湛えた、大弓を手にした女性も。

 

 

彼らが赤い瞳を持っているからではない。

各々の、その存在の全てが・・・、正に異様としか言うことの出来ない空気を纏っていた。

 

 

ヴァリエール公爵は静かに長剣を構えたまま、未だ信じられないといった表情で目の前に佇む大斧を担いだ青年を見つめていた。

 

 

「動くな。アンタも分かっているだろうけどな」

 

 

小さく告げられた言葉と共に、その青年は赤い瞳を輝かせながらかすかな笑みを浮かべていた。

その佇まいには欠片ほどの隙も無く、一度でも動いてしまえば最後、自身の首を一瞬の内に叩き落とされることが容易に想像できる程のものだった。

 

ヴァリエール公爵の頬を一筋の汗が流れていく。

自分の無力を呪ったことは今まで数えきれない程に経験してきたが・・・、目の前の存在は、自分の無力などという言葉だけで到底片付けられるものではない。

 

この一団は・・・。たとえ、我が妻・・・、カリーヌですらが抑え切れるかどうか・・・。

 

 

一方、赤いマントを纏った銀髪の騎士は何も言わず、余りにも巨大な、人間程もある大剣を肩に預けながら、真紅の双眸でド・ゼッサール卿をじっと見つめ続けている。

 

 

(何だ・・・この男は・・・っ!!)

 

 

ゼッサール卿は震撼していた。

長剣を握る手の平にじわりと汗が浮かんでくる。

 

自分は、今までの人生のほとんどを軍の中で過ごしてきた。

他国に名だたる豪傑達から母国トリステインの英雄までも、その数多くをこの目で見てきたのだ。

 

その中においても、目の前にいる男を止められる人物は数えられる程度しかいないと断言できる。

 

 

(有り得ぬ・・・! こやつらは決して亜人などではない! そうだ、まるで・・・!)

 

 

自分の全身へ広がる悪寒のようなものに、ゼッサール卿は覚えがあった。

 

かつてのマンティコア隊、その精鋭部隊が反乱軍を相手にした時の・・・、狂ったドラゴンの群れを相手にした時の・・・。

ただ一人で敵の群れを薙ぎ倒していく、かつてのマンティコア隊、隊長。

ハルケギニアの歴史においても最強の騎士と目される、母国の英雄・・・。

 

 

あの・・・、『烈風』のカリンを前にしているかのような・・・。

 

 

しかしゼッサール卿はその考えを即座に振り払いながら、今自分らが置かれている状況を静かに分析していく。

 

これ程の者がトリステインにいたなぞ聞いたことがない。

しかも目の前にいるのはこの男だけではなかった。

 

目の前の男と同じような、明らかに異常な雰囲気を纏った存在が、あと五人もいるのだ。

 

確実に守りきれない、ゼッサール卿はそう確信していた。

となれば我らの命に代えても殿下や枢機卿を逃がすしかない。

 

奴らが、殿下に襲い掛かるのであれば・・・。

 

 

「・・・あなたが、アンリエッタ?」

 

 

赤い瞳の一団を率いていた少女が、静かに歩を進め始めた。

その視線はマザリーニの背後、青ざめながら緊張した様子のアンリエッタへと向けられている。

 

ヴァリエール公爵、そしてゼッサール卿は長剣を構えたまま彼らの動きをつぶさに観察していた。

 

 

もし、彼らが攻撃を仕掛ける素振りを一度でも見せたなら・・・、我が身を盾にしてでも・・・。

 

 

「動かないでくれ。御二方の忠義が深いことと、望みの無い賭けに出ることは意味が違う。

 我々は、貴方達へ剣を向けることを望んでいない」

 

 

二人を見つめながら、銀髪の騎士がそう口を開いた。

その涼やかに響いた声はゼッサール卿と公爵の耳に残り、それ故に、その違和感を更に浮き彫りにさせていた。

 

 

ただ一言でも分かる程に、彼は稀有な剣士としての高貴さと、英雄じみた魅力や資質をその身から放っていた。

 

しかしそれと同時に・・・、余りにも禍々しい、息が詰まる程の存在感をも放っているのだ。

 

 

 

「貴方たちは・・・、何者なのですか・・・?」

 

 

マザリーニの脇を抜け、一歩前に踏み出したアンリエッタを、一団から離れた目の前の少女がじっと見つめてくる。

 

その濃い赤色の瞳にアンリエッタは思わずたじろぎそうになるが、それでも一歩も引かずに堂々と返答を待ち続けた。

 

周りの貴族たちが息を飲む中、赤い瞳の少女は静かに口を開いた。

 

 

「・・・私たちは、あの軍隊を止めるために来た」

 

 

マザリーニはその短い言葉に意図を計りかねていた。

少女へと問いかけようとしたマザリーニを、アンリエッタが手で制する。

 

 

「・・・レコン・キスタに関わる者ですか? 我々に、降伏勧告でも行なおうと・・・?」

 

「違う」

 

即座に少女が否定する。

 

 

「あなた達を守る」

 

 

短く伝えられた言葉に、アンリエッタもマザリーニも、誰しもが言葉を失っていた。

 

「敵は私たちが止める。大軍で向かえば、あの艦隊からの砲撃を受ける。食い止めるには少数じゃなくちゃいけない。あなた達には、出来る限り死なないようにしていてほしい」

 

ほんの少し、天幕に沈黙が降りる。

ハッと我に返ったアンリエッタが、慌てて口を開いた。

 

「で、ですが、それからどうすると言うのです? たった数人であの軍団を倒すなど、出来るはずがありません」

 

少女は静かに、首を横へ振った。

 

 

「最後はあなた達が戦うけど、その前に合図が来る」

 

 

アンリエッタが小さく息を飲んだ。

 

 

「合図・・・?」

 

「あの艦隊は全て落ちる。そうしたら、次はあなた達が戦う番」

 

 

意味が分からなかった。

トリステイン空軍を容易く打ち破ったあの艦隊を、どうやって・・・?

 

 

話は終わりとばかりに、少女が天幕の中からレコン・キスタの軍勢のいる方角へと顔を向ける。

しかし困惑するアンリエッタの背後から静かに声が発せられた。

 

 

「ひとつだけお聞かせ願いたい」

 

 

彼らの異様な雰囲気を感じながらも、マザリーニは恐れることもなく、厳しい瞳で目の前の一団を見つめていた。

 

本当にあのアルビオン艦隊を、かつてアルビオンの旗艦だった『ロイヤル・ソヴリン』号を落とせると言うのなら、これから山のような他国の軍艦がやってくるはずだ。

 

ありえないとしか思えない話ではあるが、もし本当であるならこれだけは聞いておかなければならない。

 

 

「貴方達を遣わせた人物は、誰なのですか」

 

 

その言葉に少女がゆっくりと振り向いた。

 

その少し悩んだような、困ったような顔は、まるで年相応の少女のようだったが・・・。

彼女はすぐさま答えを得たかのように、赤い瞳をマザリーニに向けた。

 

 

 

「・・・ブリミル」

 

 

 

その場にいた者達、全員が凍りついたように目の前の少女を見つめていた。

 

しかし少女が小さく何かを呟くと、その瞬間に彼らの足元へ光り輝く魔法陣が浮かび上がり・・・、彼らは一瞬の内にその姿を消した。

 

まるで、その場にいた全員が幻でも見ていたかのように・・・。

 

 

「・・・始祖の・・・使い・・・?」

 

 

そのマザリーニの呟きは、直後に遠く鳴り響いたレコン・キスタ達の歓声によって掻き消されていった。

 

 

 








今年の更新はここまでとなります。
読んでくださいましてありがとうございました。

来年以降の更新は多少遅くなるかもしれません。
申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

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