Double Servant -Poetry of Brimir-   作:ねずみ一家

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第二十六話 かつての夢 4つ目

ルイズは夢を見る。

 

 

ここはどこかの宿屋の中だろうか。

真白い壁に木でしつらえた家具が立ち並び、簡素ながらも上品な雰囲気を醸し出している。

その部屋の片隅にある鏡の向こうから、虚ろな顔をした、やせこけた少女がこちらをじっと見つめていた。

 

薄桃色の長い髪は今さっき湯あみを終えたように濡れている。

しかしそれでも所々がしわくちゃになっていて、今までろくに手入れもしていなかったように見えた。

 

ルイズはその姿に、心臓が強く握りしめられたような感覚を覚えていた。

 

(リ、リウス・・・、よね・・・?)

 

着ている服は小奇麗で可愛らしい寝巻のようであったが、その表情は何の生気もない、まさに死人のような顔つきだった。

 

ルイズがそんな姿から目を離せないでいると、耳元でかすかな声が聞こえてくる。

 

「・・・運命は、いつも、私といる。だったら・・・女神さまは、何のつもりで・・・」

 

そう呟く鏡の中の少女は虚ろな顔をしたままだったが、その目は凍りつくかのような怒りの感情を湛えているように見えた。

その視線は、そのまま強く自分自身へと向けられている。

 

ふと、鏡に映った部屋の扉ががちゃりと開き、背の高い白髪の老人が姿を現わした。

少女の姿を見ると目を細め、ゆっくりと近付いてくる。

 

「・・・そんな髪のままでいたら、病気が長引いてしまうじゃろうが」

 

その手には柔らかいふわふわのタオルが握られていた。

それを少女の頭に被せると、ゆっくりと頭を拭いていく。

タオルの向こうから、とても優しげで大きな手の感触が伝わってくる。

 

そして綺麗なクシで少女の髪を優しく整えると、老人は鏡へ向いたまま青い瞳を鏡のリウスへと向けた。

 

「体調が良くなったら、君の要望通り魔法を教える。そして、それをどう使おうが君の自由とする。

あとはよく食べて、よく寝ることじゃな。まだ薬は効き始めたばかりじゃ」

 

老人が少女の手をそっと持つ。

そのまま部屋のベッドまで連れてくると、ほこりを払うようにばさばさと布団をはたいた。

 

「もう寝なさい。体に響くよ」

 

少女がゆっくりと布団に入っていく。

それを見届けた老人が部屋にあったランプの灯を消すと、老人は部屋を出てゆっくりと扉を閉めた。

 

「おやすみ、リウスくん」

 

ぱたんと閉じられた部屋は真っ暗になったが、カーテンの隙間からはほのかな月明かりが差し込んでいる。

その月明かりを少女はじっと見つめたまま、いつまでも目を閉じようとしないでいた。

 

 

 

突然、場面が変わる。

 

先ほどと同じ部屋の中、椅子に座っていた少女が目の前のテーブルに置かれたスープを静かに啜っていた。

 

「だいぶ食べられるようになったようじゃな」

 

目の前の椅子に座って本を読んでいた老人が、ぱたんと本を閉じる。

少女は何も答えないまま、木のスプーンでもう一度スープをすくった。

 

「ほれ、今日の薬じゃ。ちゃんと飲むんじゃぞ。夜には戻る」

 

ことん、と目の前のテーブルに青い小瓶を置いてから、椅子にかけてあった紫色のローブを羽織った老人が細長い杖を手に部屋の扉を開けようとする。

 

すると、とても小さな声で少女が口を開いた。

 

「・・・魔法は?」

「うん?」

 

老人が振り返ってこちらを見る。

 

「・・・魔法は、いつ?」

「驚いた。ここに来てから、喋ってくれたのは初めてじゃの」

 

ふむ、と老人は長く伸ばした白いひげを撫でると、静かに声を出した。

 

「魔法はまだ早いよ。まずは身体を治しなさい」

 

それじゃあの、と老人は扉を開けて部屋を出て行ってしまった。

 

 

 

さっと場面が変わる。

 

そこはどこかの店のようだった。

棚に数多くの服やローブがしまわれている一方で、壁には様々な形の杖が飾られており、そこには数多くのローブを着た人々がうろついている。

 

「ほれ、これなんかどうじゃ」

 

隣に立っていた白髪の老人がいくつかの服を手渡してきた。

それと一緒に、青いローブに短い杖。

少女は何も言わずに、山のように抱えた服や杖をじっと見つめている。

 

「どれもひらひらしていて、今の流行はよく分からんの。まあ使ってみてからじゃな、それらはいったん買うとしよう。君は何か欲しい物があるかね?」

 

老人は微かな微笑みを浮かべながら、こちらへ語りかけてくる。

 

「・・・杖」

「その杖だと不満かね」

「・・・お母さんの使ってた杖はあるの?」

 

老人がううむ、と唸った。

 

「儂の家にあるが、あれはウィザードクラスでないと扱えないよ。杖に負けてしまう。君にはまだ無理じゃな」

「・・・そうなの。じゃあ、これでいい」

 

その言葉に少女の頭を優しく撫でると、老人は少女が抱えていた服や杖を手に取ってから中年の店員に声を掛けた。

老人の姿を見た中年の店員が驚いた顔をする。

 

「あれ、先生。珍しいですね」

「なんじゃ、元教え子のところに儂が来たら不満かね」

「そんな滅相もない。おや、この子はどうしたんです?」

 

店員がにこやかにそう言うと、何かを思い出すかのように首をひねっている。

 

「親戚の子じゃ。余計な詮索はせんでくれ」

「はいはい、承知しましたよっと。すぐ会計しますんで」

 

店員はそう言ってこちらをちらっと見てから手早く会計を済ませると、大きめの皮袋を老人へ手渡した。

 

店を出ると少し遠目に大きな噴水があった。

その更に先には、天を突くかのような巨大な塔が立っている。

 

「さて、リウスくん。これから君はマジシャンとなる。このゲフェンで魔法を扱う以上、儂は君を一人のマジシャンとして扱う。覚悟しておくようにの」

 

 

 

また、場面が変わった。

 

そこはどこかの泉の近くで、泉の中から大きくはみ出ている石がぷすぷすと煙を上げていた。

 

少女の声が聞こえてくる。

ゆっくり、慎重に呪文を唱え続け、ようやく呪文を終えた瞬間に勢いよく杖を振り下ろした。

 

「ファイアーボルト!」

 

ほんの小さな火の矢が泉の石に向けて飛んでいく。

ぽすん、という音と共に石へぶつかると、わずかな煙を上げただけで火の矢はたやすく消えてしまった。

 

「ちみっこいのう。それでマジシャンが務まるのかね」

 

ぐっと唇を噛みしめて、少女はもう一度呪文を唱え始めた。

「コールドボルト!」と叫んで杖を大きく振り下ろす。

今度は小さな氷の矢が石に当たって、かきんと澄んだ音を鳴らした。

 

「これじゃあ、マジシャンギルドで馬鹿にされるのも当然じゃな。ギルドで教えられたじゃろうが。

自分の心臓から運ばれる血液をしっかりと感じなさい。それらが通る流れに沿って身体の端々から魔力を凝縮させ続け、その魔力を大気中へと放出する。放出先の一点へ向けて、魔力が八方から交わるように集中させるのじゃよ。

その魔力の通り道にある大気中の成分に、呪文を通して魔力反応を引き起こすのじゃ。そして、反応させた一つ一つの現象を積み重ねて大きな反応へと変える」

 

「儂の頭上を見ておれ」と老人が付け加えると、呪文を静かに唱えていく。

 

すぐさま老人の頭上に小さく浮かびあがった十個の小さな氷の欠片が、みるみる内に大きくなっていった。

 

老人の言うように八方から小さな氷がくっつきながら、内側からもめきめきと氷は成長を続け、まるで圧縮するかのように中央が潰れていくと氷の端が徐々に鋭さを増していく。

 

最後には、大人程もある十本の巨大な氷の矢が老人の頭上に浮かんでいた。

 

「コールドボルト」

 

ゴウッ、と風切り音が響いたかと思うと、一瞬の内に十本の巨大な氷の矢が大きな音を出して石の周囲に突き刺さった。

 

辺りに巻き上げられた水しぶきが舞っている中、老人は泉の石を眺めながら口を開いた。

 

「次は早くするぞ」

 

老人の頭上に、今度は十個ばかりの小さな火の粉が現れた。

しかしまばたき程の間に、それらは燃え盛る巨大な炎の矢へと姿を変える。

 

「ファイアーボルト」

 

頭上に浮かんだ十本の炎の矢が尾を引いて、泉に突き刺さる氷の矢の元へ飛んでいく。

それらがぶつかった瞬間、大きな爆音と共に泉の岩の周囲に炎が巻き起こった。

 

辺りが霧のような水蒸気に包まれていく。

 

「練習を続けなさい。では、儂は二、三日ジュノーへ向かう」

「・・・」

 

少女は、あまりにも自分と違う魔法に俯いたまま杖を握りしめていた。

 

「・・・わからない」

 

誰にも聞こえない程の小ささで少女がひとり呟いた。

老人にもこの声は聞こえていなかったようだが、持ってきた荷物袋へいくつかの本を入れ終わると、老人は少女の近くへ歩いてくる。

 

「そうじゃな、視野を広く持ちなさい」

 

少女が老人を見上げる。

その老人の眼を見たルイズは、まるで全てを見透かされるような感覚を覚えながらも、それと同時にほっとするような優しさを強く感じていた。

これは、この少女、リウスの感覚なのだろうか。

 

「正解を求めるのは当然じゃ。ギルドで教えられる理論も一般的な正解として見なされておる。しかし、儂のはちょっと違う」

 

老人は悪戯そうな微笑みを浮かべると、膝をついて少女へ語りかける。

 

「儂はの、小さな小さな鳥をイメージしておる。自分の身体から浮かび上がった小さな鳥たちが、空中に交じり合っていくのを杖でまとめているのじゃ。無論、これは勝手な儂のイメージじゃが、決して間違いではない」

 

「・・・難しいわ」

「じゃろうな。正解を求め、正しいと思ったことに固執してしまうのは仕方のないこと。しかし、それは君が思考を止める理由にはならない。

自分がどうしたいのかを、視野を広く持ちながら常に考えなさい。その答えは君自身が知っているはずじゃよ」

 

老人は立ち上がって荷物袋を背負うと、少女の頭をくしゃくしゃと撫でた。

 

「あ、あの」

 

それを見上げながら、少女がはっきりと声を出した。

 

「お母さんは、どんな人だったの?」

 

老人はすっと目を細めると、昔を思い出すかのようにしばらく黙り込んだ。

 

「あの子は、儂の自慢じゃったよ。リウスくん。君と同じようにの」

 

そう言ってにこりと微笑んでから、じゃあ行ってくる、と老人は立ち去っていく。

その後ろ姿を見つめていた少女が、ぐっと口元を結んでから叫んだ。

 

「先生!」

 

老人がこちらを振り向く。

 

「魔法を教えてくれて、ありがとうございます!」

 

老人はにこやかに笑うと同時に、意地悪そうな顔をした。

 

「どういたしまして。しかし、先生ってのは何じゃ。もう引退しとると言ったじゃろうが」

 

「先生は、先生です!」

 

老人は、はっはと笑うと少女へと手を振った。

 

「君は、お母さんと本当によく似ているね。数日したら戻るよ」

 

 

歩いて行く老人が小さくなるまで、少女はその後ろ姿を見つめていた。

やがてその姿が見えなくなると、少女は深呼吸をしてから自分の両頬をぱちんと叩く。

 

「よし」

 

そして、少女の魔法の練習はそのまま日が暮れるまで続いたのだった・・・。

 

 

 

 

ラ・ロシェールで一番上等な宿というだけあって、ルイズとリウスの部屋もまた非常に立派なつくりとなっていた。

 

ベッドは天蓋付きの大きなものであり、飾りとしてレースのカーテンも付いていた。

テーブルや椅子ひとつ取っても、とてもきめ細やかな最高級の木材を使っているようである。

 

この街に到着した翌日の朝、いち早く起きていたリウスは部屋の中を見て回っていた。

別にこういった家具にはそんなに興味もないが、かといってルイズをほったらかしにして一階に下りていくのも後ろ髪が引かれてしまう。

 

そこそこ日も昇ってきているが、まだルイズはぐっすりと眠ったままだった。

その様子を見たリウスは微笑みを浮かべながらベッドのカーテンをそっと閉めて、また部屋の中を見回し始めた。

要するに、暇なのである。

 

すると、扉をコンコンとノックする音が聞こえた。

 

「おはよう、良い天気だね。ミス・リウス」

 

扉を開けると、羽帽子を被ったワルドがリウスを見下ろしていた。

 

「おはようございます、ワルドさん。こんな朝早くにどうしました?」

「ああ、ルイズは起きているかな?」

「まだ寝てますよ。起きたら声をかけましょうか?」

「そうか。いやなに、実は君に用があってね」

 

リウスはきょとんとしてワルドを見る。

 

「ミス・リウス。昨日ルイズと話していて驚いたんだが、君は『ガンダールヴ』なんだろう?」

 

リウスは頭の奥が急速に冷えていくのを感じていた。

ルイズが彼に漏らしたのだろうか?

 

「・・・さあ、何のことでしょうか」

「ああ、そんなに警戒しないでくれたまえ。『土くれ』のフーケの件は魔法衛士隊にも伝わってきていてね」

 

ワルドはにっこりと笑いながら説明を続けていく。

 

「ルイズが関わっていたから僕も興味を持っていたんだが、そこで昨日の襲撃の時だ。僕は君の左手のルーンが光輝いていたのに気付いたのさ。そして僕が助けに行ったとき、もしや、と思ったんだ」

 

何が言いたいのか、といった顔でリウスはワルドの言葉を待つ。

 

「君は飛んでくる矢が見えていただろう?」

 

「・・・」

「月明かりがあるとはいえ暗闇であることには変わりはない。あんな暗闇にいて、飛んでくる矢が見えていたなんて信じられないことだ。恥ずかしい話だがこの僕でさえなかなかに難しい・・・、空気の動きから矢の軌道を予測することは簡単なんだがね。

僕は歴史と兵に興味があって、前に王立図書館で始祖とその使い魔について調べたことがある。そこに、そのルーンと同じ模様、『ガンダールヴ』のルーンがあったのさ」

 

リウスの左手を指差したワルドは早口に話し続けていく。

 

ワルドの言い分は違和感こそあるものの有り得ない話ではなかったが・・・。

リウスにはわざわざそれを伝えに来たワルドの思惑がいまいち掴めずにいた。

 

「あの『土くれ』のフーケを捕らえたってことも、そう考えれば納得もいく。どうかな、間違ってるかい?」

「・・・ガンダールヴって名前は初めて聞きましたが、信じてはもらえなさそうですね。それで、どうするんですか?」

 

ワルドは意を得たかのように嬉しそうな顔をしながら、「ああ、これは失礼」と大げさな身振りをする。

 

「昨夜、ギーシュ君から学院の決闘の話も聞いてね。君はずいぶん強いようじゃないか。そこでちょっと、これをね」

 

ワルドは腰に差したレイピア状の魔法の杖へ手をかける。

 

「立ち合いでも?」

「いいだろう? 『ガンダールヴ』の伝承に興味があるんだ。それとも今は都合が悪かったかな?」

 

そう言うワルドの視線がリウスの後ろへと移った。

リウスがその視線の先へ振り返ると、寝ぼけ眼を擦るルイズの姿があった。

 

「・・・ワルド? どうしたの、こんな時間に・・・」

「ああ、これはよかった。ルイズ、実は君の使い魔くんに手合わせを頼んでいたのだが、どうも乗り気になってくれなくてね」

 

ルイズだけでなく、リウスも困った顔になった。

ルイズまで巻き込んで、この男は一体どういうつもりなのか。

 

「ワルド、そんなバカなことはやめて! ケガでもしたらどうするつもりなのよ! そもそもそういうことをやってる場合じゃないでしょう?」

「もちろん、こんなか弱い女性を傷つけるような真似はしないよ。でも、貴族という人種は厄介なものでね。強いか弱いか、それが気になるといてもたってもいられなくなるのさ」

 

うーむ、とリウスは内心唸っていた。

ワルドが急にこんな態度を取り始めた理由のこともそうだが、『ガンダールヴ』の件といい、何が思惑なのかいまいち分からない。

 

ワルドの言い分を信用して立ち合いをすることで、彼の思惑を掴めるかもしれない。

しかし真意が分からない以上、無策でそれに乗っかってしまう方が後々危険なのかもしれないのだ。

 

少しの間悩んだリウスは、ワルドへ正直に問いかけてみることにした。

 

「なぜ、今なのですか? この旅の目的は違うでしょう?」

「いや、今だからこそ必要なことなのさ。君はルイズの使い魔だからこそ、ここにいる。しかし実力は分からないだろう? 昨日のことで戦い慣れているのは分かったが、今後のためにも君の実力がどの程度のものなのか、推し測っておくのは重要なことなのさ」

「それは否定しませんが・・・」

「僕はルイズが心配なんだ。僕が守ればいいだけの話だが、そうはいってられなくなる場合があるかもしれない。どちらがルイズを守るのかは決めておく必要がある」

 

そのワルドの言葉に、リウスは眉根を寄せた。

 

「今どちらがルイズを守るのかなんて、決めることじゃないでしょう。違いますか?」

「・・・いいかい、使い魔くん。ルイズは僕よりも君を信頼しているのかもしれないが、ルイズを守れるのは君ではなく、僕だ」

 

ルイズは、昨日ワルドに何を言ったのだろうか。

明らかにワルドはこちらにただならぬ感情を持っているようだ。

 

だからこそなのか、何を言っても折れてくれそうにない。

実力を知っておかなければならない、というワルドの言葉にも確かに一理あるのだが・・・。

そう思ったリウスは仕方なく曖昧に頷いた。

 

「そこまで言うのなら・・・。ケガをさせたくないので、魔法は」

「構わない。全力できてくれたまえ」

 

リウスの言葉を喰い気味にワルドがそう宣言する。

そう言われても、とリウスは困った表情をしたが、しょうがないとばかりに溜め息を吐いた。

ルイズはというと唖然とした表情を浮かべたままである。

 

「じゃあ、訓練ってことで。場所はどこでやるんですか?」

「この宿は昔、アルビオンからの侵攻に備える為の砦だったんだ。中庭に練兵場がある、そこに来てくれ。ルイズ、君には介添え人になってもらいたい」

「ちょ、ちょっと! いきなり何を言い出してるのよ! リウス、あなたもやめなさいよ!」

「・・・まぁ、ワルドさんの実力を見たいってのもあるし。訓練よ、訓練」

「なっ!」

 

リウスはいつの間にか自分が少し乗り気になってきているのに気付いていたが、別にいいかと思い始めていた。

ワルドの実力を知ることは、私にとってもそこまで悪いことではないのだ。

 

リウスの言葉を聞いたワルドは面白そうににやりと笑っている。

 

「その調子だ。じゃあ、中庭で待っているよ」

 

そう言うと、ワルドはマントを翻してさっさと立ち去っていくのだった。

 

 


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