ソードアート・オンライン Escape from Real 作:日昇 光
※誤字修正致しました。
生徒会選挙が終わった。「会長に当選させないでほしい」という依頼をしたはずの一色いろはをうまいことその気にさせて、結局は彼女を生徒会長にしてしまったわけだが、細かいことを気にしなければ結果としてはまあ良かったのかもしれない。小町に理由をもらったおかげで俺は、奉仕部を壊さずに済んだ。済んだはずだったのだが、それは表面的なことでしかない。
修学旅行の後から何とも言えない空気になっていた俺たちだが、由比ヶ浜とはある程度和解できたつもりだ。しかし、雪ノ下とはどうだ。あいつはまだ、俺に、由比ヶ浜に、笑顔を繕い続けている。いつも通りにふるまおうとして、表情こそ違うが、俺と同じ様に。取り繕った馴れ合いなんてものは、俺たちが一番嫌っていたもので、俺たちの唯一の共通した価値観だったのに。
では、いま俺と雪ノ下との間にあるものは何なのか。もう何もないのか。
「…何考えてんだろうな、俺は」
柄でもなく人との関係なんて考えていたら、逆に何も見えなくなった。残念ながら今までに経験がないため、ここでどうする事が正解なのか、俺には分からない。なんとなく心臓のあたりを締め付けるような感覚の正体さえ、自分の身体なのに分からない。疲れているのだろうか、なんて考えてみる。実際に今回の依頼を遂行するのにそれなりに労力を費やしたのだから、疲れているのは当然だろう。だから俺は今こうして自室のベッドに横たわって、真っ白な天井を眺めているのだ。
いや、もう一つ理由があった。疲れているのはもちろんだが、それは今問題ではない。俺の頭は、黒い流線型の機械に埋まっている。
《ナーヴギア》
それがこのヘルメットのような機械の名だ。これは脳から身体に送られる信号の全てを電気信号に変換し、逆に電気信号を脳へ直接送ることが出来る機械で、要は仮想現実の世界──いわゆるVR世界──の中に完全に入り込めるのだ。これを《フルダイブ》というらしい。
なぜ俺がこんなものを使っているのかというと、それは先日発売されたあるものが起因である。
《ソードアート•オンライン》
茅場晶彦。天才科学者と呼ばれる彼が手がけたMMOゲームで、初期ロットは限定一万本という恐ろしくレアな代物だ。オンラインゲームにどちらかというと馴染みのある俺からしては、興味をそそられる物だった。発売が公表されたその日からあらゆる物への出費を抑え、ハードもろとも何とか買うことができたのだが、いま思うと俺はよくあんな長蛇の列に並ぶことが出来たものだ。まあ、その時は材木座もいたからさほど退屈では無かったが。
そして今日、あと五分ほどでその正式サービスが始めまる。このゲームはいわゆる冒険ものの作品だが、その世界観は独特なもので、プレイヤーに与えられた攻撃手段は名前の通り剣のみである。よくある魔法などは一切存在しないのだ。なんとも思い切った設定だが、一人の健全な男子として、剣だけで戦うというのには惹かれるものがある。正確には槍やハンマーなどといった武器も存在するが、メインは剣だ。
どんな武器を使おうか、などと考えていると、もうあと三十秒で運命の時間がやって来る。小町の作ってくれた昼飯も食べて、学校の課題は早めに終わらせていた俺は、万全の状態だ。
いや、万全ではないか。だからあんな事を考えていたのだ。うまくいったようでそうでもない現実に、俺はまだ戸惑い続けている。このゲーム、と言うよりこのVRMMOに俺が惹かれたのは、この現実から逃れたい気持ちが少しでもあるからなのだろうか。
心の整理がまだ微妙についていないが、ナーヴギアのバイザーに表示された時刻は、たった今始まりの時を迎えた。俺は未知の世界に足を踏み入れるべく、静かにそのための呪文を唱える。
「…リンクスタート」
俺自身を長い眠りにつかせる、呪いの呪文を。
これが文章力たったの5の人間の力です。ぐだぐだです。
八幡特有の心理描写とか正直書けるかどうか不安です…
みんな、オラに文章力を分けてくれ!