偽者のキセキ   作:ツルギ剣

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64階層/シェオール 死合

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 剣と剣が弾け合う。金属の硬質な音色が響き渡る。

 

 アスナに匹敵するほどの高速の連撃、くわえて一撃一撃に殺意が込められている。まるで針の壁だ。

 主導権を取られんと攻めていくも、一進一退。いや、守勢に回らされていた。オールマイティな片手剣ゆえだろう、あるいは斬撃主体の大味な戦い方に慣れていたからか。回転率の早い突き主体の相手では、持ち前のスピードを活かせない。小さいながらも、切り傷が刻まれていく。

 さらに、詰将棋に追い込まれているようで、焦らされた。正確に確実に、こちらの逃げ道を封じ囲んでくる。無理やりザザのリズムに合わせられ、誘導させられる。体力も気力も十分なのに、処刑台を登らされているような錯覚に襲われる。何か一つでも間違えれば即座に刺殺される、そんな恐怖に侵食されていった。

 隙を見つけては、ジョニーを払い除け/カインズを助けて逃げるつもりだった。殺し合いなど真っ平御免だ。しかし、そんな余地などなかった。戦いに集中させられる。

 

『―――どうした? お前の力は、この程度、だったか?』

 

 鋭い突きを打ち込み続けながら、煽ってきた。

 途端に、負けん気が起きた。それまで余裕などなかったが、それこそ錯覚だった。

 なので―――賭けに出ることにした。

 

「……お前こそ、そんな爪楊枝みたいな刺突じゃ、いくらやってもオレは倒せない―――ぜッ!」

 

 混ぜっ返すと同時に、無理矢理パリィさせた。

 キイィン―――ザザの剣が跳ね上がる。攻撃が止む。

 だけど、オレも懐が空いた。動けない。

 

 この場合、武器の特性上/刺突メインのザザの方が立ち直りは早い。オレは手痛いダメージを食らうことになるだろう。

 セオリー通り、ザザはすぐに手元に剣を引き戻した。オレよりも早い。そして、無防備を晒しているオレへ突き込んでこようとした。

 だが寸前―――オレは剣を手放していた。

 

『ッ!?』

 

 驚かれるもつかの間、いち早く空いていたザザの懐に踏み込んだ。体をすべり込ませる。

 そして、その無防備な懐に掌底を添えると……叩き込んだ。

 

「ハッ―――!!」

 

 小さな気合と同時に、雷鳴が鳴り響いた。

 直後、ザザはたまらず体をくの字に曲げられると、吹き飛んだ。

 

 【体術】単発重攻撃《獅子戦吼》―――。互いに組み合うほどの、超接近戦用のソードスキル。触れた掌底へ全身の力を集中させ、爆発させる。

 体格が違いすぎる巨人や獣型その他のモンスター相手では、使いどころが難しい。対人型の技。ただしこの世界では、誰もが少なかれ武器を持って使いこなせてもいる。懐になど入り込ませないし、踏み込むには勇気がいる。誰も好んでは使わない格闘術だ。

 しかし/ゆえに、奇襲になる。それまで武器を印象づけていれば、なおさらだ。

 

 普通なら、これでダウン。運がよければ【気絶】も入るカウンター、勝負すら決まりだ。

 しかし―――

 

(ッ!? 浅いか!)

 

 打ち込んだ感触で、異常に気づかされた。

 衝突の直前、ザザは瞬時に切り替えた。後ろに飛んだ。カウンターにはならず、さらにバックステップ中でもあったので、見込んだダメージの半分以下まで緩和された。加えて、衝撃も拡散させられた。

 ザザは壁に叩きつけられることなく。そのまま地面を踏ん張りきってしまう……

 

(なら―――)

 

 システムにより硬直させられてしまう寸前、無理やり体を動かした。別の技/【投剣】の初動モーションをとる。

 【剣技連結(スキルコネクト)】―――。システム外スキル、瞬時に別のソードスキルへ移行させることで、本来ソードスキル使用後に起きるリキャストタイムを先送りする。ただし、高位の連撃技との連結はタイミングがシビア過ぎる。ここぞという時には使えない。

 

 振りかぶりながら、袖口に仕込んでいた改造クナイを取り出し/掴んだ。ワンモーションに集約するためのバネ仕掛け。通常なら、持っている武器以外不可能だった【投剣】との連結を可能にした。

 発現させると、そのまま投げた。

 【投剣】単発射撃《スパイラルシュート》―――。メジャーリーグの名投手さながら。手から弾丸のように、射出した。

 吹き飛ばしたザザの顔面/被っている仮面を狙って―――

 

(アレを破壊すれば、奴は行動不能になるはず)

 

 仕組みは全くわからないが、あの仮面が重要な役割をしているはず。外すか壊してしまえば、操られていたNPCは解放されるはず。すくなくとも、何か変化/今のオレに利する何かが起こるはずだ。

 

 クナイが、ザザの仮面へとぶつかる/壊す。仰け反らされる―――その寸前、ザザも同じ事してきた。

 【投剣】単発射撃《スワローシュート》―――。吹き飛ばされながら、空いた片手を振り上げながらの投擲。

 白いナイフのような刃が、飛んでくる―――

 

『ッ!? ―――』

「ッ!? ―――」

 

 まさかの追撃/反撃。互いに驚愕する。

 

 『コネクト』後による硬直時間、身動きがとれない。下半身が石化したように固まっていた。……避けるには間に合わない。

 

 なので―――グサッ、防御力の薄い/利き手の二の腕に刺さった。痛みに歯を食い縛る。

 しかし同時に―――パキぃッ、ザザも仮面を撃たれた。頭を仰け反らされる。

 

 

 

(……痛み分けか)

 

 刺さったナイフはそのまま、視線だけザザからジョニーへ向けた。来るであろう奇襲に備える。

 しかし……恐れていた攻撃はこなかった。

 

 なぜ撃ってこない? ……訝しる。

 ジョニーに限って、タイミングを逸したのではないだろう。この手の嗅覚と行動力は恐ろしいほど冴え渡っている奴だ。なので、ただ約束通りにしただけ、なのだろう。それに、ザザが/兄貴が致命傷を受けたとは思っていない、のかもしれない。

 

 再度ザザが接敵する前に、急いで落とした剣の下まで退いた。

 視線はそのまま/臨戦態勢は怠らず、足と爪先で器用に跳ね上げ、拾い上げた。……粗末な扱いは嫌だが、今は仕方がない。

 刺さったナイフも、一気に抜く―――

 

「―――つぅッ!?」

 

 思わず、痛みに呻いた。

 刺さっていたのは、獣の牙を削ったかのような刃。ギザギザとし過ぎているので、ナイフとしては使えないだろう。

 しかし/やはり、【貫通継続ダメージ】があった。さらに、抜いた拍子にギザギザが幾つか欠けていた。腕の中に残ってしまったのだろう、本体を抜いたのにまだ【貫通】の表示がHPバーに貼り付いていた。……最悪だ、イイ趣味をしている。

 

(……ほかにも、毒が塗られているかもしれないな)

 

 焦りを抑えながらも、警戒していると、

 

『―――ふっふ、ふはははッ!

 やはり、お前は、いい。いいぞ! こうでなくては、なッ!』

 

 狂気じみた高笑いを上げていると、ぽろぽろ―――顔から破片がこぼれ落ちた。

 割れた仮面の奥から、ザザの悦しそうな笑が見えた。

 

 思わずゾッと……させられた。

 狂気に侵食されそうになる。その毒々しいまでに真っ赤な視線に、オレの『何か』が射抜かれたかのようで、竦まされる。後ずさりしそうになった。

 

 嗤いを収めると、ザザは何事も無かったかのように立っていた。オレへのさらなる戦意を滾らせながら。

 そこでようやく、気づいた。

 

(やっぱりアイツは……本人だったのか?)

 

 人形なのかと疑うも、本人だろうとは思っていた。ザザの性格上でも、自信満々にオレと対峙したのでも。

 ただし、本当かどうかは、まだわからない。あの仮面は関係なかっただけだったのかもしれない。洗脳だか憑依を強化/補助する装置でしかなかったのか。もしくは、無くても動かせる特別製だったのかも。……今は仮説の域を出ない、調べようもない。

 胸の内で舌打ちした。このままでは飲まれる一方だ……奴のペースから外れなければ。

 なので無理やり、話題を変えた。

 

「グリムロックは、お前らは何をするつもりなんだ?」

 

 先に聞きそびれた問い。尋ねてみると、驚かれた。目を丸くさせられる。

 続いて訝しり、何の意図があるのか探られ……ようやく答えた。

 

『……まさか、知らずにここまで、来たのか?』

「あいにくと、調べる時間も惜しかったんでな」

 

 肩をすくめながらも、正直に教えた。……強がってもよかったが、なぜか嘘をつくのはためらわれた。

 ソレが功を奏したのか。また疑られるも、すぐに本当だと察せられた。

 

『アハッハッハッハ! うそだろ、マジありえねぇ……』

 

 オレ達の会話を聞いてたのか、ジョニーが笑い声を上げた。愉快そうに/腹を抱えながら笑っている。

 

『……あぁ~あ! なんて様だよ、全く♪』

 

 馬鹿にされたのかと顔をしかめるも、一人腹を抱える姿を見せられると、自嘲しているようにも感じた。

 さらに困惑させられていると、急に態度を変えてきた。

 

『―――止めたやめだ! ボクちゃん一抜けた、もう退散しまぁす♪』

 

 そう言うと、降参とばかりにハンズアップまでしてきた。

 何のパフォーマンスだと、今度はオレが訝されていると、ザザまで同意してきた。

 

『そうだな。少し、興が冷めた。……どうせもう、終わってること、だしな。

 それに―――』

 

 時間も頃合だろう……。そう言うと、剣まで引いてきた。鞘に収めてもしまう。

 そしてくるりと、踵まで返した。

 

 突然の戦闘中断/退散に、呆然とさせられると、

 

『この先に、行けば、わかる。……自分の目で、確かめると、いい』

 

 そう言い残すと、そのまま転移してしまった。ジョニーともども、《転移結晶》を発動させる。

 待て―――。追いすがろうとしたが、やめた。帰ってくれるぶんにはありがたい/わざわざ危険を背負い込みたくない。それに『答え』も、教えられたとおり行けばわかることだ。

 転移の光の中に消える二人を、見送った。

 

 

 

 

 

 ◆   ◆   ◆

 

 

 

 完全にいなくなるのを確認すると、ようやく剣を収めた。

 途端にドッと、緊張が抜けた。疲れが噴き出してくる。

 

 いったい、何だって突然……。先ほどの不可解な行動。吐息を一つ漏らすと、落ち着けた。

 切り替えると、解放されたカインズの下へ向かった。

 

「……カインズさん、だよな。これで二度目だけど……わかるか?」

 

 簡単な自己紹介に、頷きで答えられた。……やっぱり知ってたんだ。

 解放されたのに、倒れたままのカインズ。口には猿轡が巻かれていた。

 状態を診ると―――【麻痺】。

 もうしばらく時間を置けば、自然回復するだろうが……その時間はない。

 

 メニューを展開、《解毒ポーション》を取り出した。

 

「【麻痺】用の解毒薬だ。飲めばすぐに治る」

 

 説明し頷かれると、猿轡を外した。代わりに瓶の先を突っ込む。

 【麻痺】した仲間を回復させるには、振りかけるのが常道。本人だけでは飲めないし、まともに振りかけもできない。しかし、飲ませた方が効き目は速い。……やってもらうには少々、信頼関係が必要だけど。

 

 ゴクゴク―――体に染み渡っていくと、【麻痺】が解けた。

 ようやく完全に解放された。

 

「―――あ、ありがとう、ございました」

「礼にはまだ早い。ヨルコさんを助けないと」

「え……あ!?

 そ、そうだ、早く行かないと―――」

 

 慌てて立ち上がると、奥へと急いだ。

 呼び止めて、ザザに聞きかけた答えを貰おうとしたが……やめた。

 

(この先に行けば、否が応でも分かるはずだ)

 

 少なくとも、あまり愉快な答えではないだろう……。ゲンナリさせられるのは、今じゃなくてもいい。

 もう、さすがにいないだろう敵を警戒しながらも、カインズの行く手を護衛していった。

 

 

 

 

 

 ―――そして、洞穴の奥までたどりついた。

 

 そこには、グリムロックと二つの石の祭壇。その上に横たわらされているのは……二人の女性。

 一人はヨルコさん、もう一人は……見知らぬ女性だ。耳の尖りや肌の白さ、何より人間離れした美形から、エルフ族のNPCだと判断できる。

 二人は今、同じようなヘルメットを被せられていた。どこかで見たような形だが、刺のような電極が伸びており、そこから幾つもあるコードで繋げられているのが違っている。さらに、頭頂部あたりから、太い銀色のホースのようなコードが伸び、二人の間にある巨大なシリンダーへと繋がれていた。

 赤みを帯びた液体に満たされたシリンダー、ブーンという小さな機械音を鳴り響かせ、時折ゴボゴボと泡が舞う。その中身を見て―――固まってしまった。

 

(な、なんだアレは……?)

「グリムロックゥ―――ッ!」

 

 カインズの怒りの雄叫びで、疑問が吹き飛ばされた。

 突然の/いるはずのないオレ達の登場にグリムロックは、振り返させられた。 

 

「ッ!? ど、どうして?」

 

 な、なぜここに―――。驚愕の表情を浮かべる。

 一目散にカインズは、駆け込んでいった。前しか/グリムロックしか見えていない。

 

 しかし、今にも殴りかかろうとする寸前―――邪魔するように立ちふさがってきた。

 黒のコートに身を包んだ/フードを目深にかぶった誰か、レッドの一味なのかもしれない。

 死角から現れ、カインズへと急襲しようとするのが見えた―――

 

「ッ!? 下がれカインズ!」

「え? なにをぉ―――ぅッ!?」

 

 警告やむなく、吹き飛ばされた。

 慌てて受け止める。

 

「―――つぅ……ッ」

 

 痛みに呻くカインズ/オレも受け止めてダメージを軽減させた反動に呻いた。

 受け止め切ると、瞬時に見上げた。確認する―――

 

 襲ってきたのは、スラリとした長身の女性だった。

 黒の目隠しの布越し、微かに垣間見える顔は、女性を思わせる柔らかな輪郭だった。中性的な美青年という選択肢もあるが、黒いコート越しではあるが、胸の部分が盛り上がっているが見えた。フードからこぼれている艶やかな髪の筋や丸みを帯びた体のラインも、女性であることをうかがわせるものだった。それも、少女ではなく大人の女性を。

 

 長剣らしき鋒を向けてくる『彼女』。しかし、敵意を表しているのに意思を感じさせない無機質さ。

 なので一瞬、戸惑わされた。反応が遅れる……。

 その隙に彼女は、さらなる追撃を浴びせようとした。足に力を込め、ふみこんでくる―――

 

「下がれ【エイリス】! ……そこまででいい」

 

 寸前、グリムロックからの指示が飛ぶと、彼女/エイリスの動きも止まった。

 そして急に、態度を変更した。命じられたとおりそのまま、オレ達へ警戒態勢を維持するのみ。

 

 突然の出来事に混乱させられるも、この一時危機は去った。

 背中の愛剣に伸ばした手を戻すと、慎重に尋ねた。

 

「ヨルコさんは無事なのか?」

「……この通り、傷一つないよ」

 

 そう言うと、寝かされたヨルコさんを見せてくるも……どう判断したらいいのかわからない。

 確かに傷一つない、ただ眠っているだけにしかみえない。しかし、本当に無事なのか、確信を持て無かった。

 

「カインズには、傷つけるつもりなんてないと、教えたはずだが……」

「ふざけんなッ! 同じことだろうがッ!!」

 

 カインズはいきなり激昴すると、ふたたびグリムロックの下へ殴り込もうとした。

 

「おっと! それ以上は近づかないでくれ」

 

 グリムロックの制止に、エイリスが反応した。カインズとの間に割って入る。そして、それ以上近づいたら斬ると、威圧してきた。

 先ほどの一撃で思い知ったのか、カインズは体を竦ませた。勢いを/足を止められてしまった。……ギリリと、歯噛む音が聞こえてきた。

 

「準備はもう済んでるんだよ。あとは、この―――ボタンを押すだけだ」

 

 そう言うとグリムロックは、シリンダーに付属しているコンソールらしき機械に、その中央にあるボタンに手を乗せた。

 これで動けまい……。脅しは効果的だった。カインズは顔を青ざめさせた。

 

「そう邪険にするなよ。ヨルコにとってもきっと、幸せなはずさ。……『彼女』の方が優れてることは、ヨルコが一番理解しているからね」

「そんなの!? だからって……あり得ないッ!」

「証明してあげることはできるよ。これから、すぐにね」

 

 ボタンに乗せた手に力を込めようとすると、「やめてくれ!」―――

 カインズが全身で懇願した。

 その願いを聞き届けるようにグリムロックは、「冗談だよ」とばかりに力を込めるのをやめた。

 

 二人の、真剣を越えて切実までの空気から、置いてけぼり。何が起きているのか、何が起きようとしているのかもわかっていない。

 なので今一度、尋ねた。

 

「―――何をやらかすつもりだ、グリムロック?」

 

 予想はつきそうだったので、幾分か声は低めに、脅すような声音で言った。

 しかし返答は、苛立ち混じりの非難だった。

 

「君こそ、何のつもりなんだ?」

「……なに?」

「何故首を突っ込んできた? なぜこんな場所にまできた!?

 君らさえいなければもっと、完璧な形になれたのに……」

 

 どうして放っておいてくれなかった、どうして関わったりしたんだ。どうしてなんで、部外者のお前が―――。腹の奥底からにじみ出てきたような怨嗟。まるで全ての責任はオレにあると、恨みがましそうに睨んできた。

 心当たりなどさっぱりない。どころか、どんな『罪』を犯したのすらわかっていない。ソレを訊きたいのに……。

 

 顔をしかめる、腹が立ってきた。何だコイツの態度は……。もう真相などどうでもよくなった。

 おもむろに、カインズを脇に寄せた。そのままズカズカ、愛剣も引き抜きながら、グリムロックの元まで歩いていく―――

 

「―――う、動くなと言ったはずだ!?」

 

 オレの激怒に気圧されたのか、グリムロックは声を裏返させた。先ほどのボタンにも手を乗せる。

 しかし……オレには関係ない。何が起きるのかも知らない。なので/当然、全ての責任はグリムロックにある。

 やるならやれよ、何をするつもりか知らないけど―――。脅しを無視して、そのまま護衛のエイリスごと、グリムロックを叩き切ろうとした。

 

「き、キリトさん……お願いです」

 

 どうか、言うとおりにしてください……。寸前、カインズが止めてきた。縋り付くように……。

 その必死かつ底深い悔しさに、怒りを収めた。収めざるを得ない……。

 シュミットにも言ったばかりのことだ。この事件の主役は、オレではなく彼らだと。

 

 剣を収め足も止めると、気持ちも鎮ませた。そして、改めて尋ねた。

 

「……もう一度だけ聞く。何をするつもりなんだ?」

 

 最終警告だ……。カインズが止めたとしても、返答次第では爆発させる。そんな威圧感を込めて問い詰めた。

 オレが止まって安堵したのか、ホッと胸を撫で下ろすと、自慢げに答えてきた。

 

 

 

「ヨルコを【ユウコ】に、私の最愛の妻に書き換えるのさ」

 

 

 

 高らかにも告げられた真相。書き換える……?

 そのとんでもなさに一瞬、呆然としてしまった。

 

 

 

 

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 長々とご視聴、ありがとうございました。

 感想・批評・誤字脱字のしてき、お待ちしております。

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