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夜はまだまだ続く……。【マーテン】から一路、ヨルコさんからの自動返信メッセージの場所まで向かった。
転移門を抜け別のフロアへ、44階層【ラオール】へ―――。四十段ならば、まだ下層病も軽度だ。飴玉一つ/《兵糧丸》だけでやり過ごせる。ただ、シュミットのことがあったばかりだ。どうしても神経質になってしまう。門をくぐり抜ける前に各々、《呼吸器》を装着しておいた。
転移した先にあったのは、南国のリゾート地。文明化に汚されていない未開の生き生きとした美しい港町/【ラオール】、街から離れた場所に別荘でも持ちたくなる街だ。……お金さえあれば。
一夏のヴァカンスを楽しむのにはうってつけの街。だが、オレ達にとっては苦い思い出が詰まっている。ある『ナイト様』を助けるために奔走させられたフロア、文字通り必死になって隅々まで探索した。このフロアだけは攻略組によって全てが明らかにされた、地図も全て埋め尽くした、今でもほぼ鮮明に覚えているほどに。それでも―――。
今では懐かしさと共に思い出せる。だけど、もしもそうでなかったのなら、今どうなっていたのか……考えたくない。攻略組存亡の危機でもあった。ああなって本当に良かったと思う。
お互いに似たような感慨に浸らされながら、懐かしい街を抜けた。目的の座標まで進む―――。
「―――あそこが、メールの発信地点だ」
そして街の外れまで、オレが指さした先にあったのは……灯台と住居がミックスされた変わった邸宅。
ギリギリ気づかれないだろう位置の茂みに隠れ、様子を伺う。
「カインズさんか、グリムロックさんのホーム……かな?」
「だとしたら、グリムロックになるな。カインズのホームは、【軍】の管理下の土地にあるから、把握できてる」
ここは知らない……。シュミットの断定に、アスナと顔を見合わせた。今日何度かわからない驚きだ。
「……カインズさんのホーム知ってたの?」
「いや、【軍】の『不動産管理部』に問い合わせた。表の看板は偽名表記でも許しているんだが、戸籍にはしっかり本名を登録させている」
それに、ヨルコがあの階層でホームを見繕っているのに、カインズがこんな上層の物件を買うわけがない……。つけ足された推察に、おもわず納得してしまった。二人が友人以上の関係であることは、もう間違いないだろう。
(それにしても、【軍】は戸籍管理までしてるのか……)
恐ろしや……。その支配欲には、気持ち悪さを感じてしまう。自分が対象だったら、きっと耐えられなかっただろう/だからこそ前線で戦う矛盾を抱えている。だけど、ソレで助かっている人々がいるのは事実。『安全』のためには、プライバシーを犠牲にするのはやむ無い。了解を求めている暇はない、ズケズケと土足で踏み入っていくしかない。
「この日のために共同で借りた、にしては、少々値が張りすぎる。ここである必然性もないだろうし」
グリムロックで間違いなさそうだな……。視線でアスナに聞いてみるも、概ね肯定との頷きが帰ってきた。
第3の人物の可能性は、無くはない。もちろんそこには、レッドは含まれてはいない/奴らがこんな足がつくヘマをしてくれるわけがない、そもそもアドバイザー/ちょっかいを出しているだけだろう。考えられるのは、元【黄金林檎】のメンバーだ。だけど、グリセルダの死が事の発端である以上、グリムロック以上の動機を持っているメンバーがいるとは思えない。半年も前の事件など忘れる/風化するのに任せ、今とこれからを見据えたいと思うのが人情だ。……この計画は、三人だけで行われた可能性が高い。
「ただ……オシャレな建物よね。見晴らしも良さそうだし」
「……まぁ、そうだろうけど……今関係ある?」
「お金随分かかっただろうな、と思ってね。あの建物には鍛冶場なんてなかったはずだし。このフロアは、良い燃焼材とか金属が格安で大量に手に入るわけでもないし」
どうやって購入したのか、どうやって生計を立てているの? ……なるほど。指摘されると、確かにその通りだった/考えさせられる。
「グリムロックが、【軍】から金を借りたとか、鍛冶屋として専属契約を結んでいるとかは、無いんだよな?」
「……無いはずだ。
借金だけならともかく、鍛冶屋として関わっていたのなら、派遣遠征部隊の俺が知らないわけがない」
いちおう事務処理の人に確認を取ってもらいたいが、シュミットが言うのなら間違いはないだろう。【グリムロック】の名が気にならないわけがない。
一流の鍛冶屋では無い以上、攻略組相手に商売することは稀だ/【軍】以外に大物取引相手がいない。それと、借金と専属契約はほぼ同じことなので、やはり知られずにいられることはないだろう。
「アナタが【軍】の派遣部隊に加入できたのは、半年前の事件で何か……得たモノがあった、からよね? 特に、アナタだけが」
気を悪くしたらゴメンなさい……。いちおうは謝りを補足するも、随分と直裁的な質問だ。関係ないオレでもドキッとしてしまう、シュミットは顔をしかめざるを得なかった。
「……ソレだけじゃないが、キッカケには……なった」
「そいつは、ほかのメンバー達、特にカインズやヨルコさん達から半年間も疎まれてしまうほどのモノ、だったんだな?」
「ああ、そうだよ! そうですよ! 装備一新できて、しばらくはソロで活動できるほどだった」
この話はもう終いにしてくれ……。自棄っぱちになりながらも、何とか告白した。
(そうなると、宝クジに当たったでもなければ、スポンサーは……)
レッド達との繋がりが見えてきてしまった、奴ら以外にあり得ない。
だとすると、そこまでしてシュミットに復讐をしたかったのか……。にしては、少しばかりおかしい。危険すぎる、悪魔に魂を売るのと同じだ。何より回りくどい。犯人はシュミットだとわかっているようなものだから、『殺人の依頼』をすればいい、ついでに犯罪の証言を告白させるようにも依頼すればいい。……金さえ揃えれば、奴らは喜んで引き受ける。
順序が逆だ。レッド達を動かしたいのに、奴隷にさせられている現状。まるで、もう『依頼』が達成されてしまったかのようで―――。
導き出した仮説に眉を顰めていると、目の端でアスナも同じような顔をしているのが見えた。
(……嫌な予感がする)
この事件、思っていた以上に複雑なものだったかもしれない……。急いで深入りしすぎてるのかもしれない。
漠然とした不安を晴らすため、メニューを展開した。
「急にどうしたの?」
「いちおう、援軍を呼んでおこうと思ってね」
「……大丈夫、この時間よ?」
「大丈夫、夜型の奴らだから。ちょうど今頃、体が温まってピークになっているはずだ」
レッド達を討伐できるとわかってくれれば、応えてくれるはず……。オレも日陰の存在なので、陽が出ている時間帯よりも夜に活動することが多い。なので必然、『彼ら』との関わりも深い。
「夜型って、もしかして……【コドクの防人】の人たち!?」
「あの『虫野郎』達か!?」
「そうだ。ちなみにその言葉、本人たちの前ではあんまり言わないほうがいいぞ。喧嘩売ってきたと勘違いされたいのなら、かまわないけど」
「ちょっとキリト君、彼らに連絡するのはマズイわよ! レッド達が関わってるんだから、情報が漏れて―――」
最後まで言い切れず、飲み込んだ。……それ以上は禁句だった、彼女自身が嫌う差別につながる。
ギルド【コドクの防人】―――。攻略組の一角を占める有力ギルドだ。特徴は、主な活動の時間帯が夜であること、一つのパーティー/小隊を任されているリーダーのコードネームが『昆虫』の名前であること、そして多かれ少なかれ加入しているメンバーは『曰く』がついている。アウトローな風潮のギルドだ。
中層域からの成り上がり者/他の攻略組からあぶれた者達など、ほぼ無制限に受け入れ続けることで、巨大化していった。前線で戦えるだけの実力と意志を持っているか否か、それだけが選別理由だ、意志が強ければ実力は二の次でもいい。公助団体であり続けたことが発展の原動力となってきたが、同時に毒も引き寄せることになった。【軍】からの引き抜きと前線への足がかりにされたり、プレイヤーカーソルや過去すら気にしないので、レッド達の温床にもなっている……と言われている。
実際は、ただの風評被害だ。ギルドには加入していないが、関わりの深いオレから言わせれば、一番攻略組らしい攻略組だからだ。レッド達の動機から一番離れてる。確かに、少なからず潜り込んではいるのだろうが、ギルドの操縦権など持っていない/そもそもそんな権限など無い。入れ込み過ぎればこのギルド色に染まるか、耐え切れず出ていくことになる。そして何より、今後ともこのギルドの風潮を保ってくれるだろう、ギルドマスターへの信頼だ。
そして今回、そのマスターへと援軍のメールを送る。……何らかの良い返事が帰ってくるはずだ。
「【騎士団】か【軍】で、すぐに援軍来てくれそうな奴らは、いるか?」
「……2・3人は心当たりあるわ。けど、レッドを確実に捕らえるには3倍は欲しいわよね」
「俺の方は、残念ながら実力不足が問題だな。それに、この時間帯で活動している隊への命令権もない」
どちらも難しい……。消去法でも、【コドクの防人】しかない。
簡潔な檄文を書くと、クリック。送信した。
しばらく待つと、返事はすぐにきた。返信通知が視覚に舞い込んできた。
届いたメールを読むと……納得の内容だった。
「12人、2パーティーも送ってくれるらしいぞ。装備とアイテムを整えてからだから、あと20分ぐらいでココまで来てくれる」
「……信頼できる人たち、なんだよね?」
「実力は問題ない。それに、リーダーの二人は攻略会議にもよく顔を見せてる。アスナも知ってるはずだ」
悪い奴らじゃないよ……。ちょっと変わってるだけだ。少なくとも、レッドの一員であることはない。
名前と特徴を教えると、何とか納得してくれた。
「どうする、その援軍を待つか? それとも……確認するか?」
どうする……。二者択一で尋ねてくるも、シュミットの顔色は前者寄りだった。
嫌がらせではないが、オレの意見は後者だ。
「先に確認しよう。ただの杞憂かもしれないしな」
もしもその場合、逃げられる心配はある。だけど、人数が多ければ防げる問題でもない。障害物のない平原ならいざ知らず、狭い室内ではむしろ邪魔になってしまう。何より、直感以外の根拠のない不安が原因だったので、合流せずに終わらせるに越したことはない。
シュミットは渋い顔を作るも、全員の意見が一致。
茂みから抜け出て、グリムロックのモノらしき住居へと近づいった―――
扉の前につくとトントン、ノックした。
「夜分遅くすいませーん! 誰かいますかー!」
返事なし……。かなり不躾な大声だったから、聞こえていないはずがない。居留守を使われている。
しかし、【索敵】の《音波探索》を発動していた。声とノック音でソナーのように中の状況を『視れる』。
基本建物は、防音処置が施されている。壁や窓を叩こうが《音波探索》で中の様子を探ることはできない、プレイヤーのホームとなった建物ならさらに処置が強くなる。他人のプライバシーを守るためだと思われる。しかし、何事にも例外はある。ソレがドアだ。声やノックをすれば住人に聞こえる、唯一外界と接点を保ち続けなければならない箇所であるために。なので、《音波探索》が使えてしまう。……ただし、他は防音されているので、【索敵】や感覚値を鍛えてないと探りきれない。
耳を澄ませていると……扉の近く/玄関で、息を潜めている男が一人見えた。背丈はオレより高くシュミット並、ただし装備を含めてもオレ並の軽さだ。カインズの重量は知っている、おそらくはグリムロックだろう。
さらに、澄ませると……もう一人の生体反応が見えた。奥の部屋にいるらしいので、外からでは詳しく読み取れきれない/ぼんやりとした形しか見えない。ヨルコさんだろうが……確信を持てない。
二人に合図で、そのことを伝えた。
居留守は看破したので、さらに突っ込んだ。今度はドンドンと叩きながら、借金取りをイメージしながら。
「ここ【グリムロック】さんのホームですよね。【グリセルダ】さんのことでお話があるので、開けてもらいませんか?」
また無視……。《音波探索》では、このままやり過ごそうと息を潜めているのが見え見えだった。
仕方がない。強行突破するか……。背中の愛剣に手を伸ばすと、シュミットが手で制してきた。
「グリムロック、俺だ、シュミットだ! お前らの望み通り来てやったぞ!」
シュミットが叫ぶと、ようやく返事が帰ってきた。
「―――何の用だい?」
聞こえてきたのは、柔和そうな男の声音。警戒してるのだろう、若干低く抑えられていた。
グリムロックだろう。シュミットに確認すると、頷いた。
「久しぶりに、昔の仲間同士で話がしたくてな」
「なら、後ろの二人は?」
警戒が露な質問に、軽口混ざりな返事で答えた。
「お節介焼きだよ。偶然目撃したことから、首を突っ込ませてもらった。
そのついでに、あんたらの話し合いを仲裁しようと思ってる、これ以上こじれ過ぎないようにな」
自分でも迷惑千万な奴だと思うが、お節介焼きとはそういう者だ。それに目の前で、何らかのトリックとは言え殺人紛いなことが行われたのだ。見過ごせるほど情のない人間じゃない。
無言を帰されるところを見ると……残念ながら、伝わってくれなかったのだろう。続いてアスナが、説得してくれた。
「グリムロックさん。あなた方の事情は、こちらも大体把握しています。調べさせてもらいました。
どうか、彼の話を聞いてやってくれませんか? あなた方の誤解も解けるはずです」
丁寧ながらも問答無用に納得させてくるような説得、他人には/オレには真似できそうにない力強さだ。
さぁ、これで答えざるを得ないだろう……。期待して返事を待っていると、
「―――いいでしょう、わかりました。
少しだけ、そこで待っていてください。ヨルコとカインズにも話しますので」
そう一旦断ると、グリムロックの気配が消えた。《音波探索》でも、奥へと歩いていくのが確認できた。
これでようやく、事件解決だな……。シュミットにとってはこれからだが、オレ達の役目はほぼ終わりだ。
アスナ共々、ほっと一息、安堵をこぼしそうになった。後はお前次第だと、シュミットの尻を叩いてやろうかとした時―――気づいた。
(……おかしい、何か変だ)
頭の片隅に、言い知れぬ違和感が掠めた。
悩まされると……気づけた。
なぜ奴は、ここにいないはずの人間と話しなどするのか?
直感がもたらした戦慄のまま、【索敵】を再展開/全開。感覚を研ぎ澄まし全てを見通す。
(―――ッ!? あの野郎!)
確認するとすかさず、愛剣を抜き放った。
「ちょッ、キリト君!? いきなり何―――」
「どいてろッ! 突き破る―――」
驚く二人をそのまま、剣を身構えた。ソードスキルを発動させる。オレが今持ち得る最大の重単発攻撃、《ヴォーパルストライク》。
ライトエフェクトを煌めかせると同時に、発射した。システム外スキル【加速】も付加した最大火力、全身の力を伸ばした鋒に込めた。ドアの鍵穴を目掛けて―――
強烈な打撃音/金属音に次いで、破砕音。木製と思わしきドアは、過重な攻撃に耐え切れず粉砕。幾つもの破片に裂かれながら、吹き飛んだ。
他人のホームへの強制侵入方法の一つ、ドアの破壊。
ただ、建物自体はほぼ壊せないオブジェクト、ドアの大部分もその範疇に含まれている。しかし、鍵穴とドアノブは違う。そこだけは別の役割を担っているためか、強度が脆い。ピンポイントで狙い打てば破壊することは可能、そこが壊れればドア自体も壊れてしまう。
しかし……副作用はある。明確な犯罪行為、オレのプレイヤーカーソルはイエローに染まってしまった。この街や関わりの深い街では、ペナルティを受ける事になる。
しかし、これで中に入れる。
急いで建物の中に侵入、グリムロックが逃げたと思わしき奥へと走った。
しかし……遅かった。
奥の書斎らしき扉の前に来た時、【索敵】で捉え続けていた二人が消えた。
舌打ちしながらも、扉を蹴破った。綺麗に整頓された、隠居した紳士を思わせる書斎。
しかしそこには、似つかわしくないモノがあった。人型大のブラックホール―――【転移門】が開いていた。
《回廊結晶》によるポータルポイント……。その先が、どこへ通じているのかはわからない。だが、奴が通ってしまったということは、もはや用済みだろう。すぐにでも閉じられてしまうかもしれない。
その恐れの通り、縮み始めようとしていた。
「キリト君、グリムロックは!?」
「追いかける!」
躊躇している暇はない―――。そのまま飛び込んだ
入ると同時に、視界がぐにゃりと歪んだ。
転移特有の異質な空間蝕。視界だけでなく体までも歪みに歪み、どこかへと吸い込まれていく―――……
ポータルエリアを抜け出る寸前、グリムロックの慌てた声が聞こえた。
「このポータルは閉じてくださいッ!」
誰かに懇願していた。
しかし、そのポータルから飛び出した―――
抜け出た先は……常夏のリゾート地、とは真逆の場所だった。
地底に作られた古代の洞窟、あるいは先住民の黒ミサでも行いそうな祭祀場だ。暗くジメジメと、おどろおどろしい雰囲気に思わず顔をしかめた。匂いも、没薬と思わしき骨を犯すような異臭で、気持ち悪い。
いきなり現れたオレを見て、グリムロックは瞠目。驚きのあまり腰まで抜かしていた。
傍に目を向けると、ホームにいたもう一人の人物。ヨルコさん……ではなく男。おそらくはカインズだろう。【麻痺】なのか【睡眠】なのか、自力では動けない状態。【寝袋】に包んでグリムロックが運んでいる。
ひと目見て、状況はわかった。……最悪だ。
これは一体、どういうつもりだ……。グリムロックに問い詰めようとした瞬間、全身が総毛立った。
【索敵】が表示してくれる前に、体が動いていた。反射的に利き腕が動く―――
そこへ―――キイィッ! 強烈な刺突がぶつけられた。ギリギリ刺し貫かれる寸前。
しかし、態勢があまりにも崩れていた。体が動かされる、足が宙に浮く。
受け止められずそのまま―――押し飛ばされた。
「ぐぅおッ―――!?」
吹き飛ばされながら、その敵の姿を見た。
深々と被った黒のフードで顔は見えない。だが、それでも垣間見えた真っ赤な瞳。まるで死霊のような、禍々しい煌き。そして、オレに突き出してきた鋭利な刺突剣。アスナの細剣とは真逆な凶器だが、モノの質だけは肩を並べられるかもしれない代物だ。
(『赤目のザザ』ッ!?)
まさか奴までも、絡んでいるなんて……。最悪のさらに先があった。
吹き飛ばされた勢いの先は、ポータルだ。踏みとどまれない、押し戻される―――。
しかし寸前、何かに衝突した。
「―――えッ? て……きゃぁッ!?」
「何? て、うおぉッ―――!?」
駆けつけてくれたアスナ達に、ぶつかった。抜け出た矢先、飛んできたオレの背中をモロに受けてしまった。
玉突き事故。オレはなんとか内側に留まれた。しかし彼女たちは、ポータルの外へと押し戻されてしまった。
突然の衝突事故で受身を取れず、叩きつけられた形だ。地面に頭から倒されると、瞬時には動けない状態へ。呻く……。
揺れる視界の中、それでも反射的に身構えた。くるだろう追撃に備える。
しかし……いくら待っても、やってこなかった。
訝しんで敵を見据えていると、代わりに、背後のポータルが閉じた。
しまった―――。焦る、何てポカをしたんだ。
これで援軍なし。敵陣にたった一人になった。
『―――やはり、ヘッドの判断は、正しかった』
見据えた敵から、特徴的な重々しい言葉遣いが響いてきた。
ソレは、実に残念なことに、頭に刻み込んでいた声音そのものだった。……ザザで間違いなかった。
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長々とご視聴、ありがとうございました。
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