偽者のキセキ   作:ツルギ剣

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66階層/樹楽宮 夕暮れの狭間

 

 脳髄を揺さぶるような咆哮とともに、御簾を跳ね飛ばし奥から現れたのは―――、巨大な4本腕のゴリラだった。

 その外見は、野生のままの姿でもなかった。

 古代インド風の楔帷子を身にまとい、炎をまとった両刃直剣/黒色の荒縄の束/丸鋸のようなチャクラムに青色の巨大な杯のようなモノを装備してもいる。そして何より、その顔には、狂うほどの憤怒を示すかのような真っ赤な隈取が描かれていた。消して癒えない傷口のように、滲み続ける鮮血が焼き続けてるかのようで。

 不動明王___。初見に思い浮かんできた単語。

 毛もくジャラのゴリラであることが気にならないほど、むしろ本物よりも凶暴さが増しているように感じさせる。

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!」

 

 

 ふたたびの威嚇に、ハッと我に返れた。

 

「な……な、何なんですかコイツはッ!?」

「さあな―――」

 

 戦慄している/警戒が外れたエイジを他所に、間に落としたフィリア弟の生首をサッと、拾い直した。

 さらに、ようやく気づいて振り向くエイジ/でもまだ無防備な背中に、回し蹴りを叩き込もうとした。あのゴリラ明王の下へ、蹴り飛ばす―――、囮にするために。

 

 

 やろうと足に力も込めたが……寸前、躊躇った。

 遅れて、エイジと目があった。

 何をされようとしたのか、その邂逅で悟れたのだろう。一瞬真っ白になるも、すぐに思い至り、青ざめていた。

 

 そんな怯えたエイジに、ただニヤリと、歪んでるだろう嗤いを返すのみ。

 そして、未遂の言い訳の代わりに、

 

「―――よそ見するな、構えてろ!」

「え? あ……は、はい!?」

 

 警告してやると、後ろでゴリラ明王が、背後から生えてる手のチャクラムを―――ブンッと、投げてきた。

 

 とてつもない威力。一目見ただけでも「ヤバい」と直感できる、戦車砲のような爆撃。……おそらく、直撃すればHPの3分の1は喰われるはず。

 けど、あさっての方向だった。

 チャクラムはオレ達からかなり離れた横の壁へと投げられ、巨大な穴を抉り広げて通過していく。……断面は削れてるというより、高熱で溶けているかのよう。ドラゴンのブレス攻撃の破壊痕によく似ていた。

 建物オブジェクトの破壊―――。この仮想世界において大体が『破壊不能』となっているソレが、いとも容易く破壊されていた。

 

 

 ターゲットが合っていないかった。いや、合わせることができてない……。両眼と額/鼻部分、顔の中心部分に十字の穴が空いていることが、原因だろう。

 ちらりとエイジを見ると、チャクラムの威力に戦慄しながらも、同じく敵の状況を把握していたのが伺えた。

 

(このままゆっくり、後退するぞ)

 

 喋らずの手話指示するとコクり、ともに後退する。

 一歩一歩慎重、音たてないように後退していった。背後の出入り口まで―――

 

 

 パキリッ……なんていう不幸なミスはせず、なんとか扉の前まで戻れた。

 あとは気づかれても、ダッシュすれば逃げ切れるはず……。だけど、コイツをこのままにしておくわけにはいかない。

 

(どうしたものか……)

 

 倒すにしても二人では自殺行為だ。そもそも、このエイジを/お互いに信用もできていないから、なおのこと。

 すでに撤退しようと構えているエイジ。止めるかどうするか、もう決断を迫られている。常道として正しい彼を止める決定的な何かが、無いのならば―――

 

 ブルリと突然、耳の奥辺りが振動した。……顎の付け根まで響いて、少々気持ち悪い。

 他プレイヤーからの着信の合図だ。それも、予め設定しておいた特別な相手からの。

 すかさず、指で耳を触れた。通話開始の合図。

 

『―――キリト、今話せるかな?』

「……ちょうどいいところだ」

 

 いつもながらの見計らったようなタイミングに、今だけは苦笑するだけに留めた。

 訝しむ/早く逃げようと焦るエイジに、手話で「今大事な話をしてる」と教えた/足止めさせた。

 

()()()の潜伏場所がわかった。マーキングした地図を送信したので、向かってくれ』

 

 メニューを展開して、送信された地図を確認した。

 

「……意外と近かったな」

『この都市を維持するためだろう。ソコならうってつけの場所だ』

 

 なるほど……。NPCを操作するだけなら、遠隔地からでもできるのだろう。けど、都市そのものをリアルタイムで運営するとなれば、話は違ってくるはず。中心核となるポイントに居なければ、務まらない。

 そしてその場所は、目の前のゴリラ明王が鎮座していたココ、この都市の中心地である総督府から、そう離れた場所では無いとも。

 

 周辺地理と所定ポイント/ルートを脳みそに焼き付ける。わざわざ展開して再確認しなくて良いように、体中にも浸透させた。……ココで今日まで生き抜く上で、自然と身に付いた瞬間記憶術。

 

『邪魔は入らない。存分に処理してくれ』

 

 そう言い切るや、一方的に通話が切れた。

 

 

 相変わらず、不気味な優秀さだ……。もう2年の付き合いになるのに、今だによくわからない男だ。

 今は「頼りになる」ので、それでいい。それだけでいい。

 

「…………何の話ですか?」

「これから俺達が向かう場所だ」

 

 付き合ってもらうぞ―――。そう命じると同時、足のポーチからピックを取り出し、投擲した。

 ゴリラ明王の足元へ―――カンッと、音を立てて刺さった。

 

 直後、明王が振り向いた。視覚も嗅覚も無いだろうが、耳は健在/聴覚は機能している。

 先の一撃で仕留めたと向けていた注意を、すかさず戻してきた。まだオレ達はココに生存してると、教えてやった。

 

「ッ!? 

 なんでこっちに向かわせ―――」

「コイツも連れて行く」

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!」

 

 

 再び咆哮を轟かすと、投げて空手になっていた腕に、先のチャクラムを発生させた。

 始まりは旋風のように、すぐさま竜巻のような空気の歪みをつくり、ヂヂヂと焼き軋ませる擦過音を鳴り響かせた。……本能からも、危機感を掻き立ててくる暴力の塊。

 だが、二度目なことが幸い。恐怖で金縛りに遭う前に動いた、通過するだろう軌道からわずかでも横に離れるように―――

 

 突然、音が止んだ。この場のあらゆるモノが静止した。

 明王の豪腕だけがその中で、動いた。手のひらで発生させた暴力の塊を、投げつけるために―――

 再び、巨大なチャクラム竜巻が、オレ達の真横を走り抜けていった。

 

 

 破砕音は僅かに遅れて、耳に届いた。……あまりの爆音に、鼓膜が破れてしまうほど。

 だけど、直撃もしなければカスリもしていない。無傷なまま、やり過ごすことはできた。

 目の前には、先にできた大穴と同じものが、できあがってもいる。

 

「……ちょうどいい穴を開けてくれたぞ!」

 

 あそこから飛び降りるぞ―――。すかさずそこに向かった/駆け出した。『例の男』が潜んでいるだろうポイントへの最短ルート。

 

「ちょ、まッ!?

 ここの高さから飛び降りれば、ただじゃ済まな―――いぃッ!?」

 

 ブゥンッ―――と、明王の巨大直剣がエイジの横に振り落とされた。

 鋒/刃を壊れるはずのない床に喰い込ませると、纏っていた炎がわずかに遅れて振り落ち、周囲に小さな爆発をも引き起こした。

 

 視界の隅で確認すると、ゴクリと唾を飲み込まされた。……紙一重で躱すことを許さない、爆炎の追加効果の斬撃。初見だったらほぼ必ず痛恨の一撃に繋げられたはず。

 幸いなことに、エイジは無傷だった。ダメージ範囲から離れた場所に振り落とされたらしい。……だけど、メンタルまで無傷ではいられなかった。

 

 もう飛び降りるしかない……。黙って確信/共有。

 すぐさま切り替えると、息を合わせて―――ダッシュ。

 二人飛び込むように、駆け抜けていき―――、飛び降りた。

 ソレを捕まえるよう、ゴリラ明王も突進してくる―――

 

 

 二人空中に身を投げ出すと、隣で声なき悲鳴をあげるエイジ。なんとか冷静さを保って、すぐに来る落下の衝撃に備えようと必死。……この高さの落下ダメージをまともに受けたら、HP0は無いだろうが致命傷は確実だ。

 そんな彼の腕を固く掴むと、コチラに気づかせた。

 キュルキュルきゅるきゅると、摩擦音を鳴り響かせている自分のベルト/改造バックル部分。そして、落ちてきた上空に伸びている、細いけど強靭な一本のワイヤーを―――

 

 グンッ―――と、いっきに止まった。急に落下が止まり/重圧が片腕をおもいきり引っ張り、ワイヤーに吊るされた。

 直後、振り子の要領、飛び降りた建物の壁へと振られて―――、衝突した。

 

 背中と足を使って、衝撃を緩和。

 けど、ハンマーで殴られたような圧力に、「うぐぅッ!?」うめき声が漏れてしまう。

 拍子にエイジを落としそうになったけど、ギリギリ保てた。

 

 さらに直後、つづいて落下していたゴリラ明王の巨体が、通り過ぎていった。……地面がなくなっていたことに気づかず、そのまま突進してしまったのだろう。

 何の命綱もつけていない奴はそのまま、頭から地面に叩きつけられた。

 地鳴りのような轟音が、あたり一面に響き渡る―――

 

 

 

「―――や、やった……のか?」

「いや、まだだ」

 

 そんな柔じゃ困る―――。オレの【鑑定】の未熟さゆえだろう、まだHPバーは見抜けていないけど、0になっていないのは肌でわかった。それも、半減域すら達していない軽傷だということも。……不完全とはいえ、さすがの化物ぶりだ。

 だけど、しばらく【気絶】気味なのは良いことだ。この落下衝撃をうけて/受け身も取らずの直撃からすぐさま攻勢に移れるほど、システム異常な存在じゃなかった。

 

「ワイヤーを戻す。

 何処か掴むか、壁に剣を突き立てるかしてくれ」

「へ……ちょッ!?

 そのままワイヤー伸ばして、地面に降りればいいじゃないですかッ!?」

「落下攻撃したいんだよ、アイツに」

 

 ついでに、『首輪』をつける―――。ニヤリと不敵な笑みを向けると、なぜか青ざめた顔をされた。

 承服しかねるけど、全権は今オレにあるとは理解。……ガンッと、剣を壁につきたてた。「…いつでもいいですよ」

 

「俺が落ちたら、伸縮性があって切れづらい縄の束、落としてくれたら助かる―――」

 

 そう言うや、壁に喰い込ませていたワイヤーの先端を外した。

 

 ふわりと、しばしの浮遊感の後に―――、急速落下。

 全身が風に叩きつけられながら、背中の愛剣を抜き出し両手で握り締めた。そして、全体重に落下ベクトルの全てを鋒の一点へと収束していった。一本の長槍のごとく―――

 

 狙いは一点、巨人の首筋だ。死角にしておそらく弱点。

 受身を取れない恐怖を圧殺しながら/それすら鋒に集中させるよう、鼓舞する雄叫びも風切り音も消え視界すらも狭まっていき―――、その一点へ。

 今にも起き上がろうとする巨人へ、追撃の落下攻撃を―――グサリと、深々と貫いた。

 

 

 巨人は殺意の落下物を避けきれず/堪えきることもできず、持ち上げようとしていた頭部をふたたび地面に強打した。

 その衝撃は俺にも伝わった。

 痺れてしまう前、ギリギリ切り替えた。落下重力にペシャンコにされる寸前、地面と平行方向へと強制ベクトル変更―――、そのまま全身を投げ飛ばした。

 

 ゴロゴロ―――と、しばらく落下の衝撃を散らす。転がるがままにしてから、一気に/その勢いを借りて立ち上がった。……全身土砂まみれだ。

 あらかじめ愛剣に巻きつけておいたワイヤーは、片手にある。……作戦成功、簡易首輪はできた。

 

 

 もう少し補強しようと、せめて首を一回りはさせるかと足を踏み出そうとして……、気づいた。ずっと持っていた『頭部』がなくなっていたことに。……落下の衝撃の際に手放してしまった。

 急いで辺りを見回すと……、幸いなことにすぐに発見できた。

 【気絶】してる巨人から少し離れた地面、すぐに拾える位置だ。落下攻撃の衝撃じゃなく、転がっている最中に落としてしまったのだろう。……巨人の口元じゃなくて、本当に幸いだった。

 

 巻きなおすのは後、拾い直すのが最優先だ―――。即座に行動、巨人が目を覚まさないうちに確保しておかなければ。

 頭部を拾おうと、そこへと歩いていくと、

 

 

「―――キリトさん、危ないッ!!」

 

 

 エイジからの警告とほぼ同時、【索敵】が強烈なアラームをがなり立ててきた。……脳震盪でも起こしていたかのようにはんばボンヤリしていた頭を、一瞬で目覚めさせてくれるほどに。

 けど……、遅かった。ずっと酷使し続けたためか、いつものように反射神経も働かない。

 どうにか顔を上げて、ソレを目に写した―――直後、顔と胸に『強烈な打撃』が叩きつけられていた。

 

 

 不意の襲撃―――。全くの無防備だったので、その打撃で背後へと吹っ飛ばされてしまった。

 仰け反らされる、そのまま背中に倒れてしまう―――ギリギリ、ズズズと両足で踏ん張って何とか【転倒】は耐えた。

 

 痛み/ダメージを堪えながら、のけぞっていた上体を無理やりにも正面に向き直らせた。

 そしてすぐさま、頭部を拾おうと駆ける―――

 彼我の間にまた、『鞭撃』が放たれた。

 

 今度は正面からの打撃ではなく、横薙ぎの巻撃。……長々と切り裂くソレに、近づけない。

 近づけず、その場で足止めされた。舌打ちしながらも、襲撃者へと顔を向ける。

 そこには―――

 

 

 

「―――これ以上、その穢い手で彼に触れないで」

 

 

 

 騙し打ちして無力化したはずの女/【フィリア】が、殺意と怒気で真っ黒になってる瞳を俺に向けていた。

 

 あまりの驚愕に、一瞬頭が真っ白になった。……なぜ今、ここにいる?

 けどすぐ、頭をフル回転させた。

 絶体絶命なこの状況、困惑し続けてなどいられない。見て取れる情報をかき集める、現状を把握し打開策へとつなぐ。いつものように、ビーターに相応しい答えは―――

 

「―――取引だ。

 全てが終わったら、俺をアンタの気が済むようにしていい。だから今は、『彼』を持って俺に付いて来い」

 

 強気な交渉。けど中身は、彼女に譲歩しまくった降参だ。

 彼女の『手』にその頭部が握られている現状で、オレにできるのはコレしかない。……コレ以外に、今の彼女が耳を傾けることは無いだろう。

 オレに切断された両腕の代わり、主武装の()()()()()()()()()しているその異様な姿に届く言葉は、あまりにも少ない。

 

 今出せる渾身の答え。届くはずだけど……、反応は無し。

 不安に/訝しんで、言葉を重ねるも、

 

「俺の他にも『殺したい奴』がいるだろ? 俺は今、そいつを処分しにいく最中だから―――」

「アナタはもう、信用に値しない」

 

 バッサリと、拒絶してきた。……交渉は、はじめから不可能だった。

 

 

(……バカ野郎が)

 

 沸き起こる激情に歯を食いしばっていると、フィリアは【気絶】中のゴリラ明王を妖しく見つめながら、

 

 

「彼を今、私の使い魔(モノ)にする。……協力してもらうわ」

 

 

 自らの狂気に、オレを/皆を巻き添えにしようとした。

 彼女は今、『レッドライン』を超えてしまった。オレが/プレイヤー皆が定義している、殺人集団(レッドプレイヤー)の一員になった。……彼女はもう、排除対象だ。

 

 理解してしまうと、カチリと切り替わった。心が真逆に変わる。……少なくとも表層上は。

 変わってしまえば、やることは一つだけ。―――切り捨てるだけだ。

 

「……そんなこと―――

 

 すかさず/ほぼワンモーションで、ピックを取り出し&投擲した。彼女が大事に抱えている『頭部』を狙って―――

 

 ―――ゴメンだね」

 

 けど直後―――パチンッ、弾かれた。……彼女に読まれていた。

 けど構わない。同時に背中の剣を掴み/抜く。彼女ごと両断する勢いに―――、すかさず追撃の鞭。 

 

 エクストラスキル【抜刀術】___。鞘と体を透過しての抜刀。

 現実ではありえない最短軌道にて、鞭撃に応戦/弾き断った。

 

 

 けど……あちらも仮想ならではだ。

 本物の鞭ではなく、実体をもたない鞭撃の塊の一つ。断たれて手元に戻されても、本物には傷一つついていない。【鞭】スキルならではの超現象だ。……限りなく【武器破壊】が困難だ。

 

 だけど、関係ない。

 その時にはもう、駆け出していたから。

 手元に戻されるのに合わせて、一足飛びにて間合いを詰める―――

 女は、避けられないと判断したのだろう、背後へバックステップした。オレの方をしっかり向きながら、次の一足飛びがきたらすぐに鞭で弾き飛ばす構えだ。

 

 思わず、嗤いが浮かんだ。

 ()()()()()()()()()()だったから。彼の頭部を投げつけてくれなくて/守ろうと執着してくれて、本当に良かった。

 

 ―――本当に、最後まで愚かで……

 

 跳んだ全身の勢いをそのまま、腰だめの剣の刃に収束して―――、投擲した。

 

 プレイヤースキル【擬似投槍】___。本来【投槍】でしか投擲できない武器を、突進攻撃に合わせての投擲で再現する。

 彼女の胸部へ、必ずどこかに突き刺さるだろう必中の一撃を、放った。

 狙いはあやまたず/真っ直ぐ、彼女の胸を貫いていく―――

 

 驚愕しながらも、反射でガード。今日まで培ってきた戦闘経験値からの直感/即断。

 しかし、肝心のその防御の腕は……()()

 切り落とされていたことに、気づいて改めようとするも―――、遅かった。

 グサリッ―――と、投擲されたオレの愛剣が、その胸を貫いていたから。

 

 

 

 ぶつかった衝撃/自分でパックした勢いもあって、そのままガクンッとノックバック。

 はるか背後へ吹っ飛ばされると、受身も取れずに【転倒】させられていた。……その拍子に、大事に抱えていた頭部を手放しながら。

 

 スキル後硬直が解けるやいなや、落とされた頭部の下へ走り、拾い直した。

 そして、【転倒】と愛剣による地面縫い付けで動けなくなって/苦しんでいる彼女を見ると、ふと、

 

 

「―――悪いな、こいつは俺の使い魔(モノ)にするよ」

 

 

 そう吐きつけていた。……言葉にしてから、自分でも驚かされる。

 

 システムに止められているはずの彼女の口から、怨嗟の叫びが聞こえたような気がした。地獄の底から噴き出してくるかのような呪いの言葉。

 架空のソレに痺れてしまう前、走り去っていった。……もう振り返ることなく。

 

 

 

 

_




長々とご視聴、ありがとうございました。

感想・批評・誤字脱字のしてき、お待ちしております。

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