PSO2 ~創造主の遺産~   作:野良犬タロ

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第十九章 ~馬鹿の償い~

 

~ラパン アークスシップ 研究室(七年前)~

 

「・・・。」

「!」

疑似生命体の身体のルナールがゆっくり目を開ける。

目を覚ました!

「?」

ルナールはキョロキョロと辺りを見渡す。

「ここ、どこ?」

「・・・。」

無理もないよね。

最後に居た場所が市街地だったもんね・・・。

説明してあげたいけど今は・・・!

「ルナール・・・!」

ただ、友達の名前を呼んで抱きしめる事しか出来ない・・・!

 

 

「それ、私の名前?」

 

 

「・・・!」

今、なんて・・・!

「私の名前、ルナール?」

「ルナール・・・!?」

途端にルナールから放れて肩を掴み、顔を合わせる。

「お姉ちゃん、だあれ?」

「・・・嘘。」

話が違う、だって、『記憶』も一緒だって・・・!

「すまない・・・。」

研究員の人は後ろから声をかける。

「ッ!」

研究員の人の服を掴む。

「謝って済むわけないッ!!」

服を叩く。

「返してよッ!!ルナールを返してよッ!!」

「すまない・・・。」

「許さないッ!!ルナールを・・・ッ!?」

足が何かに掴まれたような感じがして足元を見ていると、疑似生命体が私の足にしがみついていた。

「なにを・・・?」

「泣かないで・・・。」

「何言ってるの・・・?」

「あなたが悲しんでると、私も泣いちゃうよ・・・。」

「ッ!!」

頭の中で何かが切れた。

「ッ!!」

「わわッ!」

足を無理矢理動かして疑似生命体を蹴飛ばすように振り払う。

疑似生命体は装置に体を打ち付ける。

「馴れ馴れしくしないでッ!!私の友達は『ルナール』なのッ!!あんたじゃないッ!!」

走って部屋を出ていく。

「ハァ・・・ハァ・・・!」

廊下を必死に走る。

「出ていって・・・やる・・・!こんな所出ていってやる!!」

闇雲に走るが出口が分からない。

道が複雑に入り汲んでいてどうやったら出口に着けるか分からない。

それでもがむしゃらに走った。

「ッ!」

適当に選んで開けたドアを抜けると室内から外に出た。

「ここ・・・何処だろう・・・。」

なんだかいつかパパとママと言った百貨店の外観の様な場所だ。

「!」

人の気配がしてすぐに物陰に隠れる。

「・・・。」

隠れながら様子を見ると見たことのある戦闘服を着た男の人が二人、歩いてくる。

「お前次の任務は?」

「ナベリウスの警ら、お前は?」

「リリーパで地質調査。」

「うわ、それすげー地味でめんどくせーじゃん!」

「仕方ねぇだろ?」

「・・・。」

惑星の警ら・・・調査・・・間違いない、アークスだ。

と言うことは此処はアークスロビーみたいだ。

「子供がこんなところで何してる?」

「ひゃっ!!?」

突如後ろから声を掛けられ、変な声が出る。

っていうかマズイ!

見つかった!

「ッ!」

すぐに逃げようとするが・・・。

「おっと。」

すぐに首元の襟を掴まれ、捕まってしまう。

「ッ!放してッ!!」

咄嗟に抵抗するが私の襟を掴む手はびくともしない。

「無断でアークスロビーに入った一般人を見逃す訳ないだろう?それにその格好、保護された先のメディカルセンターか研究室から逃げてきたクチじゃないか?」

「・・・!」

抵抗する最中、相手を見て固まる。

その人はキャストの女性だった。

それに機械のフレームで作り込まれた青い髪、シャープな体型の黄色のフレームのボディに見覚えがあった。

「マリア・・・さん?」

本で見たことがある。

ルナールと最初に読んだアークスの冒険譚の実話のモデルになってた人だ!

「なんだいあんた。あたしのこと知ってんのかい?」

「本で見たことあって・・・その・・・友達があなたに憧れてアークスになりたがってて・・・。」

「本って、ああ、あの本かい?」

「私も本みてると、凄い人なんだなって・・・。」

「ははっ!よしとくれよ!あれは知り合いがあたしの任務に着いてきて見たものを大袈裟に誇張して書いた物さ!そんな大したものじゃないよあたしは。」

「でも、惑星アムドゥスキアで巨大な龍族相手に一歩も退かなかったって・・・。」

「たまたま前衛張れるのがあたしだけだったって話さ。それに、あの戦いは後衛のバックアップも頑張ってくれてたからあたしもちょっと張り切ってね。それが奴らには偶々そうみえたんだろうさ。」

「じゃあ、惑星リリーパでフードを被った謎の巨大生物の群れが襲いかかってきたとき、仲間を逃がすために一人残ったのに生き残ったっていうのは・・・。」

「ああ、あれは・・・。」

それから私はマリアさんと色々話をした。

どれもこれも色々と自分は大した事をしていないと言ってたけど、あの本の内容で嘘だった事は何一つなかった。

そもそもあの本は最初、作者がマリアさんに何の断りもなく出版したらしい。

何故そんな事をしたかと言うと、マリアさんが自分の自慢をするのを好まないので断られると分かっていたからだとか。

当然マリアさんは怒ったが、作者がマリアさんの戦う姿や仲間思いな姿に感動した事を本を通して伝えたいと言う熱意に押し負けて已む無く許可したみたいだ。

その他にも色々聞いてみて、どれもこれも面白い話だった。

「いやぁ、すっかり話し込んじゃったね。」

「すっごく面白かった!マリアさんの話!」

「そうかい?」

「・・・。」

「どうした?急に暗い顔して。」

「あ!なんでもないよ!」

「何か悩みがあるんなら言ってみな。」

「えっと・・・。」

話して良いのかな。

「この話、友達にも聞かせてあげたかったなって・・・。」

ルナールならきっと、マリアさんに会えたならどれだけ喜んでくれただろう。

「そうか、あんた・・・。」

マリアさんは目を細める。

言葉には出さないが察してくれたみたいだ。

でも、初めて会った人にこんな暗い話するのは・・・。

「ごめんなさい!暗い話しちゃって・・・。」

「いや、いいよ。それより、あんたも友達と同じようにアークスを目指していたクチかい?」

「あ、えっと・・・そう・・・だったっていうか・・・。」

「『だった』?今は違うのかい?」

「うん、元々自分は将来何になりたいとかなかったけど、初めて出来た友達が誘ってくれた夢だった。けど、その子がいなくなって分かった、『あの子がいないとアークスにはなれない』って・・・だから、今はアークスになろうなんて思えない。」

本心だった。

マリアさんはもしかしたらアークスを目指すことを薦めるつもりで言ったかもしれないけど、私はアークスになる気はない。

「・・・そうかい、それを聞いて安心したよ。」

「え?」

「あんたも見ただろう。『戦場』ってやつを・・・。」

「・・・。」

マリアさんの言葉で鮮明に頭の中に甦ってくる。

ダーカーに何度も襲われた。

ルナールが目の前で動かなくなったあの光景・・・。

「そう、あれは地獄だ。息をする間にも誰かが死ぬ場所さ。アークスになれば、あんたの命は保証されない。友達が出来てもいつまでも側にいる保証はない。カタギの世界で生きる余地があるなら、そっちに行くべきだ。」

「うん・・・。」

異論はない。

これ以上あんな辛い思いをしたら私もきっといつか壊れてしまいそうだから・・・。

「さあ、あんたを保護した連中も今頃探し回ってる頃だ。ついて行ってやるから戻りな。」

「い、いやいいよ!一人で戻る!マリアさんも忙しいかもしれないし!」

「さっき逃げようとしたじゃないか。見張りが要るだろ?」

「うぅ・・・!」

ぐうの音も出ない。

「ほら。」

「!」

マリアさんは私の手を握った。

 

 

『行こう!ラパン!』

 

 

「・・・!」

そう言えばルナールにこうやって手を繋がれたっけ。

「!」

目の前に一回り小さい見覚えのある小さい人影があった。

「あ・・・!」

あの疑似生命体だ。

「!」

こっちに気づいて走ってくるのを見て反射的に足を止め、手がマリアさんから離れる。

「あの・・・。」

「・・・。」

私を心配でもして来たんだろうか。

だけどこいつは『ルナール』なんかじゃない。

きっと関係ない第三者の視点で心配してるからだろう。

「なんだいあんた。その成り、人間じゃないね?」

マリアさんは目を丸くして疑似生命体を覗き込む。

「あの、えと、白い服の人達が『ぎじせーめーたい』って言ってた!」

「疑似生命体・・・なるほど、研究員の奴等また妙な物を作ったね。」

「それでね、そこのお姉ちゃんが私の事を知ってるみたいなの!」

「やめてッ!」

「!」

私の言葉に、場が静まり返る。

「あんたは私が知ってるルナールとは別なの・・・だから・・・!」

「話は聞いたよ?」

「!」

「・・・ごめんなさい。」

「え?」

「私、あなたの事を覚えてないといけなかったんだよね。だから、ごめんなさい。」

 

 

『私ね、色々怒られて分かったんだ。周りのこと考えてなかったなって。』

 

 

「・・・!」

ルナールの言葉を思い出す。

そうだった。

ルナールは色々他人のために一生懸命になって馬鹿な事をしでかすような子だったけど自分に非があればちゃんと認めて行動する子だった。

「・・・。」

 

 

『私、信じる・・・ルナールは、変わらずルナールのままだって・・・!』

 

 

あんな偉そうな事を言って馬鹿な事をしたな私・・・。

記憶が無くても、この子は・・・。

「?」

疑似生命体は戸惑う。

私が抱き締めたから。

「謝らないでよ・・・あんた、何も悪くないんだから・・・。」

涙が止まらなかった。

「ごめんね・・・さっき蹴飛ばして、痛かったよね・・・!」

「ううん、いいよ。」

「ごめんね・・・ごめんね・・・信じてあげられなくて・・・!」

「何?よく分かんないよ!」

「ううん、いいの・・・大丈夫だから・・・!」

この子は間違いなく『ルナール』そのものだった。

「あー、その、水を指す様で悪いけどね・・・。」

「!」

マリアさんの一言に気づいて慌てて涙を拭って向き直る。

「ごめんなさい!」

お辞儀をして謝る。

「その子も戻らないといけないんだろ?」

「うん!あ、でもその前に・・・。」

「なんだい?」

「此処、アークスエリアだけど、私でも来れる?」

「ん?ああ、このショップエリアとかなら申請とか手続きを取れば一般人でも来れるよ。流石にゲートエリアは無理だけどね。」

「じゃあ、此処に来たらマリアさんに会える?」

「まぁ、『かもしれない』ってぐらいかね、あたしも色々とシップを回ってる身だから。」

「また会えたら話色々聞かせて!今度はこの子と一緒に!」

「わわ!」

ルナールは抱き抱えられて戸惑うけど、マリアさんを見て目を輝かせる。

「ああ、お安いご用だ。あんた、名前は?」

「ラパン!この子はルナール!」

 

 

~ノワール アークスシップ メディカルセンター~

 

俺達の容疑は既にセトが晴らしたおかげでアークスシップに入っても捕まる事など無く、堂々と正面ゲートからアークスシップに入れた。

だがそんな状況に喜んでいる場合ではない。

「バイタル低下!」

「そっちでどうにか持たせて!こっちも危ない!」

「傷が浅い人は手伝って!」

医療スタッフの声が飛び交う。

余りにも怪我人が多く、手に負えない状況みたいだ。

フォースの人員もレスタを使って処置をしているが、傷が深すぎる者には応急措置程度にしかならない。

「酷い・・・!」

ラパンは思わず口許を手で覆う。

「私、手伝ってくる!ルナールもスタッフの人の補助をしてあげて!」

「うん!」

ラパンはルナールと共に治療の手伝いに行った。

「笑えよ、ノワール・・・。」

「あ?」

セトは皮肉混じりに不謹慎な台詞を吐く。

「奴の目的も阻めず、隊の奴等は愚か、一般のアークスにすらこんな目に合わせ、出来る事がこうやって仲間を呼んで連れてくるだけ・・・教導部附属の隊長が聞いて呆れるだろ?」

「・・・。」

掛けてやれる言葉がない。

「昔だってそうだった。僕はお前が居なかったら何も出来ない、口先だけの男だったよ。」

「らしくねぇ台詞吐くんじゃねぇよ。」

「ノワール・・・?」

「俺が居なくなってからエリート部隊の隊長になった奴は何処のどいつだ?こんな情けない台詞吐く奴が隊長だったら隊の奴等は命がいくつあっても足りねぇよ。」

「・・・。」

返す言葉も無いみたいだ。

付き合いが長かったから知っている。

なんだかんだでこいつは人に弱みを見せないやつだ。

多少辛い目に合っても飄々とふざけて誤魔化し、さも何でもない顔をしている。

こんな愚痴を言うときはかなり精神的に堪え、やりきれない時だ。

だがやりきれないのは俺だってそうだ。

こいつが戦っている時、俺もその場にいれば可能性が百パーセントで無くてもあるいは阻止出来たかもしれない。

しかし、一つ引っ掛かる事があった。

「なぁ。」

「なんだ?」

「俺があの時、人型ダーカーと戦ったのは、偶然なのか?」

「あの時か・・・。」

どうにも腑に落ちない。

人型ダーカーが爆散して中身の死体が出たとき、偶然にも人が現れ、俺は恰も人殺しのように仕立てあげられた。

思えば手下のダーカーを使って俺を誘き寄せた事もなにかしら意図があるように思える。

まるで俺を標的にこんな状況を作った気がしてならなかった。

「いや、今の話忘れてくれ。俺の考え過ぎかもしれん。」

考えてても仕方無い。

今は・・・。

「放せ!私はもう動ける!」

「駄目です!今立ってるのもやっとの状態でしょう!」

「!」

聞き覚えのある声が聞こえてそっちを見るとやはりだ。

身体中に包帯を巻かれた状態のエスカがスタッフに組み付かれながらもがいていた。

「!!」

エスカは此方に気づく。

「ノワール・・・!」

「・・・。」

目をカッと開いて固まるがすぐに事は起こった。

「うあああああああああああああああッ!!!」

「きゃぁッ!!」

医療スタッフを吹き飛ばすように払い除けると、俺に向かって走ってくる。

「ノワールッ!!お前ぇぇッ!!」

「ッ!!」

俺の胸ぐらを掴むと、そのまま押し倒してきた。

だが俺は抵抗しなかった。

「お前はダーカーを狩るのが仕事だろうッ!!なんでだッ!!なんでこんな被害が出ているのにお前は何もしなかったッ!!ネージュが連れ去られたのになんでお前はあの場に居なかったッ!!」

普段のこいつの顔から想像も着かないほど怒りに満ちた顔だった。

「・・・。」

俺は何も言わない。

いや、何も言えない。

「落ち着けエスカ!」

「放せッ!!」

セトは俺からエスカを引き剥がす。

「こいつは敵にありもしない罪を着せられて逃げてたんだ!だから・・・。」

「やめろッ!!」

「ッ!」

セトに制止を掛けて立ち上がる。

「そうだ、俺は逃げた。だから此処に居る奴等がこんなになっても身体に傷一つついて居ない。此処で怪我した奴等!!俺が卑怯者だと思う奴は存分に非難しろ!!」

「・・・!」

セトを始めとしてその場にいた奴等は全員固まる。

「なんだよ・・・謝りもしないのかよ・・・!」

怪我人の一人が俺に言葉を投げ掛ける。

「ふざけるなッ!!」

別の怪我人が俺に罵声を浴びせる。

 

「そうだ、謝れッ!」    「卑怯者ッ!!」

   「クズ野郎ッ!!」 「悪魔ッ!!」

  「恥知らずッ!!」

 

一人が火蓋を切れば他の奴等は一斉に俺に罵声を浴びせてきた。

「・・・。」

俺はその罵声を背にその場を後にする。

 

 

~アークスロビー ゲートエリア~

 

「・・・。」

窓際の外が良く見える位置から俺は外を眺めていた。

「ゼェ・・・ハァ・・・!」

「・・・。」

駆け込む足音が近くで止まり、息を切らす声が後ろから聞こえるが俺は敢えて振り向かない。

「・・・何しに来た。」

「お前・・・あれでいいのかよッ!」

セトは俺に向かって非難を投げ掛ける。

「・・・いいのかも何も、この状態が俺の在るべき姿だ。」

「そうやってカッコつけて、周りの人間突き放して、一匹狼気取って楽しいのかよッ!!」

「・・・。」

「答えろッ!!」

「・・・一つ聞いていいか?」

「なんだよ・・・!」

「あのアホの追跡の目処は立ってるのか?」

「ッ!!今はそんな話をしてるんじゃないッ!」

一瞬言葉が詰まった。

「・・・立ってるんだな?」

「だったらなんだよ・・・ッ!?まさかお前・・・!」

「ああ、奴等の拠点に殴り込む。」

「馬鹿かお前ッ!!あんな被害を出した奴だぞ!?一人でどうにかなるわけ・・・!」

「無謀は百も承知だ、だがこうしている間にもあのアホが生きている保証はない。動ける奴が向かうべきだ。」

「なんでそうまでして無茶するんだ!!まさかお前、さっきの件で・・・!」

「分かってるさ、こんな事した所で俺のやったことは変わらないって・・・だが落とし前は着けるのが筋だろ?」

「・・・。」

セトはしばらく俺を見て黙り込むと、目を閉じて俯き、歯痒そうに拳を握り締める。

「・・・分かったよ、拠点の座標・・・教えてやる。」

「やけに素直だな。」

「僕が言わなかったら・・・司令部や情報部を脅して無理矢理情報を引き出すつもりだろ・・・!」

「さすがだな。よく分かってるじゃねぇか。」

「だが条件がある。」

「なんだ?」

「僕も連れていけ・・・!」

「お前は関係ないだろ、それに怪我人だ、連れて行ける訳が・・・。」

「僕だって落とし前を着ける義務があるッ!!あれだけの被害を出しておきながらのんびり治療なんか受けられる訳がないッ!!」

「・・・。」

曇りもなく真っ直ぐに見るこの向こう見ずな馬鹿面・・・組んだばかりの頃の顔にそっくりだな。

「・・・お前、俺の『馬鹿』が伝染ったんじゃねえのか?」

「ははっ、そうかもね。」  

「ハッ・・・勝手にしろ。」

「言われなくても。」

早速その場を後にしようとした時だ。

「!」

目の前にラパンがいた。

「お前・・・!」

嫌な予感しかしない。

「話は聞いたよ。あたしも行く。」

「却下だ。」

即答だ。

「なんでよッ!成り行きとはいえ、あんたと立場一緒よ!?」

「馬鹿が、これは殆んど死にに行く様な戦いだ。只でさえ二人で定員オーバーなのに、これ以上増やせるか・・・。」

「あんた達の方が馬鹿じゃないッ!!」

「ノワール・・・駄目だろ?女の子に冷たくしちゃ。」

「なんだよ、お前はこのじゃじゃ馬の肩持つのか?」

「・・・!」

俺の反論にラパンは僅かばかり目を輝かせるが・・・。

「まさか、『もっとちゃんとした断り方があるだろ?』って話さ。」

「ッ!」

ラパンはずっこけそうになる。

「なんでよッ!上げておいて・・・!」

「まぁまぁ。それに、この根倉バカみたいに頭ごなしに何もするなって言う訳じゃない。」

「おい俺の呼び方。」

俺のツッコミを無視してセトはラパンの肩に手をおく。

「君はフォース、じゃあレスタが使えるだろ?此処ですぐに治療出来る奴をちゃっちゃと治療してくれれば、すぐに援軍を送れる。わざわざ君まで危険を冒す必要はないし、それも立派な償いだよ?」

「・・・それまであんた達が持ちこたえる保証なんてないじゃない。」

「『持ち堪える』?馬鹿いうな、援軍が来るまでにダーカー根こそぎ駆逐してやるよ。」

「・・・とまぁ、こんな出来もしなさそうな事を口走る大口馬鹿をいざとなったら歯止めをかける役も必要さ、だから僕も行くんだよ。僕以外適任も居なさそうだし・・・。」

「悪かったな大口馬鹿で。」

「じゃ、頼んだよ♪」

セトはラパンの肩を片手でポンと叩いて横を通りすぎていく。

「・・・。」

俺はラパンの前で立ち止まる。

「な、なによ・・・。」

「・・・。」

頭にそっと手を乗せて横を通りすぎる。

「なんであんたは頭なのよッ!」

「うるせぇ。」

そのままセトに続いていく。

「ホント知らないわよ!?馬鹿ァッ!!死んでも泣いてなんかやんないだからね!?」

ラパンは罵声を浴びせるが、俺達は聞く耳を持たなかった。


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