第十五章 ~白狐と策士~
~ノワール キャンプシップ~
「ハァ・・・ハァ・・・。」
キャンプシップまで走り通しだったせいか、ラパンは息を切らしていた。
俺は既に抱えていたルナールを降ろし、アオも途中から合流して全員キャンプシップにいる。
「ッ!」
突然ラパンは俺の胸ぐらを掴んでくる。
「なんてことしてくれたのよッ!!」
「・・・。」
俺は答えない。
「おかげであたしお尋ね者よッ!!アークスシップに帰れないじゃないッ!!せっかく目立たないように行動してたのにッ!!あんたのせいで台無しよッ!!」
「・・・。」
「あんたがあんなのと戦うからッ!あんたがダーカー深追いするからッ!あんたが・・・あんたが・・・!」
「・・・気が済んだか?」
「うっ・・・うっ・・・!」
ラパンは反論もせず罵声を浴びせるのを止め、胸ぐらを掴んだ手を下ろして泣き始める。
そりゃそうだ。
俺もこいつもあんなことになるなんて思わなかったんだ。
それに、自分もこの一件に手を着けた時点で責任は自分にもある。
そんな状況で俺だけ責めるのはお門違いだ。
「・・・。」
次第にラパンは泣くことすらしなくなり、大人しくなる。
なんだか知らんが放っておいた方が・・・。
「あああああッ!もうッ!!」
「ッ!?」
突然叫び出す。
「もういいッ!!過ぎたことくよくよ考えんの馬鹿らしいッ!!」
「・・・。」
なんだこいつ・・・急に泣き止んだかと思えばこの切り替わりの早さ・・・!
「で?この船何処に向かってんのよ。」
「あ、あぁ・・・。」
いかん、動揺してる場合じゃないな。
「惑星ウォパルだ。」
「ウォパル?悪いけど洞窟に隠れてサバイバルとか・・・。」
「コネがひとつある。」
「え、コネ!?」
「・・・なんだよ、そんなに驚くことか?」
「いや、あんたにそんな交友関係があるとかありえないでしょ?」
「失礼な奴だな・・・まぁ、アークスシップにそんな奴いないのは否定せんが・・・いいさ、行けば分かる。」
「なによ、勿体振って・・・教えなさいよ!」
「もうすぐ着くぞ、話すよりついてきた方が早い。」
「なにそれ・・・ハァ、まあいいわよ。」
キャンプシップは目の前の惑星に吸い込まれるように入っていった。
~エスカ アークスシップ 訓練施設~
「・・・。」
「・・・。」
ネージュと男は、制止したまま動かない。
「あれぇ、装置の故障ですかねぇ~?ネージュさんはともかく、エネミーが動かないなんてことはぁ~・・・。」
「・・・迂闊に仕掛けられないんじゃないか?」
「仕掛けられない?」
「あのエネミーの男、さっきもネージュがテクニックを撃つまで仕掛けて来なかった。恐らく相当慎重なタイプのアークスだ、明らかにネージュの様子が変わったのを見て迂闊に仕掛けられないんだ、きっと・・・。」
「う~ん、彼のパラメーターをデータ見る限り、攻撃性と防御性のバランスはいいですが、防御の方が若干上擦ってますねぇ・・・それにしてもおかしい・・・なんで彼はいるのに・・・。」
「なんだ?」
「あ、いえいえ、こちらの話ですよ♪」
「・・・。」
怪しい・・・だが映像に集中した方がいいか。
「・・・?」
男はまた左手を上げている。
そして更に指を微妙に動かしている。
「・・・我、企て事を許さず。」
ネージュは手を前に翳すと、冷気らしき霧が集まり、杭のような氷が現れる。
氷の杭は、ネージュの意のままに前方に飛んでいく。
だがそれは男の横を通りすぎ、木に刺さる。
「外した・・・?」
「愚者に裁きを・・・。」
「!」
木に刺さった氷の杭が光始めたかと思うと、いきなり爆発した。
「!? なんだ!?」
爆発した木々の隙間に誰かいる!
赤と黒のカラーリングをした機械のような見た目の男、キャストだ。
「二人いたのか!?」
「はぁ!なるほどぉ、そういう事でしたかぁ!」
「・・・どういうことだ?」
「いやぁ、二人けしかけたのに一人しか現れなくて、故障でもあったかなぁって・・・いやぁ、良かった良かった♪」
「・・・。」
こいつ・・・。
何が『難易度を下げる』だ。
伏兵入りの敵との戦いとか実戦でもほとんどないぞ。
しかも・・・。
「・・・。」
敵二人は互いに左右に別れてネージュを囲み、先程の様に指先を動かしている。
キャストの方は何かを理解したのか頷き、持っていたライフルを転送してガンスラッシュに持ちかえる。
恐らく戦闘中に意志疎通をするためのサインだろう。
それにそれで会話できている様子から、かなり実戦慣れしている。
「けどこれで分かったな・・・さっきの奇妙な攻撃のトリックが・・・。」
「えぇ♪恐らく前衛のヒューマンさんが手を翳すのを合図に隠れていたキャストさんがサテライトカノンを撃ったんでしょう♪」
「だがネタが上がった以上、もう同じ攻撃は出来ないはずだ。」
「でも今作戦立てている辺り、まだ何かありそうですねぇ♪・・・っと、動きましたよぉ!」
敵二人が先に動き出した。
ヒューマンがソードで斬りかかりながら、キャストがガンスラッシュの銃撃をネージュの後方から放つ。
「我が氷壁は何人も通さず。」
ネージュの呟きと共に氷の壁が現れ、ネージュを護るように取り囲み、弾丸と斬撃を防ぐ。
「!」
キャストが壁が張られていないネージュの真上に何かを投げた。
「あれは・・・!」
ガンスラッシュに装填する弾丸の弾倉だ。
「まさかっ!?」
キャストはそれを撃った。
すると弾倉は爆発し、爆風がネージュを襲う。
「ネージュッ!」
氷の壁が粉々に砕かれ中身が露になる。
「!?」
ネージュの姿がない。
「汝らの健闘・・・称えよう。」
ネージュは爆発に巻き込まれた処か、敵の包囲を抜けて離れた場所に立っていた。
「なんで・・・?」
私が疑問に思っている間にヒューマンが斬りかかる。
「!?」
ネージュは身体が一瞬光ると共にヒューマンの背後に立っていた。
ヒューマンは振り向き様に剣を振るうがネージュは今度はヒューマンの右に瞬間移動する。
そこにキャストがガンスラッシュで狙い撃つが、今度はキャストの背後にネージュは瞬間移動したので慌ててキャストは離れる。
「完全に遊んでますねぇ♪仮想エネミーだからいいけど、実物のアークスだったら最高にイラつきますねぇこれ!」
「一体なんなんだ・・・あの動き・・・!」
「まるで光にでもなったかのように移動しますねぇ、しかも相当移動範囲広いですよ多分。」
「あれもテクニックなのか?・・・ん?」
カリンとのやり取りの途中、異変に気づく。
敵二人が突然ネージュから走り去り、それぞれ別の木々の間へと消えていく。
「逃げた!?」
「あれぇ?これまたおかしいですねぇ・・・操作してないのに撤退するなんて・・・。」
だがそのカリンの疑問もすぐ解決した。
ネージュの周りの木々が揺れたかと思うと、ヒューマンが斬りかかって来た。
「愚か・・・。」
ネージュは難なく瞬間移動で回避する。
しかし、ヒューマンはすぐにネージュの横を通りすぎてまた木々の間に消えていく。
そう思ったのも束の間、別方向から銃弾が数発飛んでくる。
「我が身に礫(つぶて)は無粋なり。」
ネージュは全て顔色も変えずに身体をずらして回避しつつ、先程の氷の杭を放って木を爆発させる。
だがキャストの姿はない。
移動しているようだ。
「おやおや、今度は木を使って地の利を活かしてきた感じです?」
確かに戦術としてセオリーなやり方だ。
まともにやり合って勝てる相手でない以上、極力安全に戦うのは基本だろう。
それにしても・・・。
「マズいな・・・防戦一方だ。」
ネージュは難なく攻撃を捌いているが、木に隠れて戦う相手に手が出しにくいようだ。
このままじゃ・・・。
「興の刻は既に過ぎ・・・。」
「・・・?」
ネージュは左手を天に掲げる。
これを好機と見たのか、ヒューマンが突っ込んでいく。
「我が魂は氷界を産み・・・。」
「!」
ネージュは左手をそのまま地面に降り下ろす。
ヒューマンは危険を察したのか、足を止めて一気に引き返す。
だがその判断は正しかった。
ネージュを中心に地面が凍り始め、周りの木々も全て凍ってしまう。
敵二人は木々に隠れていたため、この氷結に巻き込まれたのか分からない。
「氷界は無に帰す・・・。」
ネージュの言葉が合図だったのか、凍った木々は全て光り始める。
「まさか・・・!」
先程のキャストに飛ばした氷の杭の攻撃からして、このあとの展開が薄々分かってくる。
案の定、木々は全て爆発した。
その規模は凄まじく、半径数十メートルに及ぶ爆発だった。
「ネージュ・・・!」
こんな大爆発を起こして平気なのか!?
と思ったが、爆発の煙が晴れて来ると・・・。
「なっ!?」
いつの間に張っていたのか、ネージュのいた場所には人が二、三人入れそうなドーム状の氷の塊があった。
程なくして氷は砕け散り、平然としたネージュが姿を現す。
「・・・。」
「あの二人は~っと・・・。」
カリンがカメラを動かして敵二人を探す。
見つけた。
どうやら凍らされてはいなかったようだが、爆発によって飛び散った破片が身体の至るところに刺さったようで動かなくなっていた。
「終わったか・・・ん?」
カメラの角度のせいで見切れているが、ネージュのいた所から光が射しているのが見えた。
「カリン、カメラを・・・!」
「ハイハーイ♪」
カメラを戻すとネージュから光が放たれ、ネージュの姿が見えなくなる。
光が止むとネージュは元の姿に戻り、目を瞑ったまま倒れる。
「終わった・・・ってことだよな?」
「・・・。」
「・・・?」
なんだ?
カリンが何やら震えている。
「おい、カリ・・・。」
「よしよしよしよしとても良しッ!!素晴らしデータが取れましたぁ~!」
カリンは今までに無いほど嬉しそうな顔でうち震えていた。
その表情はまるで天国に行ったかのような至福さを帯びた笑みだった。
~ラパン 惑星ウォパル 海底エリア~
「・・・。」
こいつにコネがあるって聞いて普通の奴じゃないとは思っていた。
「・・・。」
「急にすまないな。」
いや、分かってたよ?
惑星ウォパルに住み込んでいるアークスなんていないってさ。
そんな話聞かないし?
でもさ、だからと言ってさ・・・。
「・・・。」
「ノワールはんやないか!久しぶりやな!」
目の前の珍生物は現地の訛りでノワールに親しげに挨拶する。
「ああ、あんたも相変わらずテンションが高そうだな。」
そう、今私達がいる場所・・・それは・・・。
「原生民の・・・住み処・・・!」
貝殻を屋根にした青い石造りの家々を前に私は只々白目を向いて苦笑いを浮かべていた。
「集落と言え、此処の奴等もちゃんと生活してんだからな。」
(ちょっとこんなの聞いてないわよッ!ていうか、あんた、どんだけ交友関係特殊なのよ!)
一応相手に失礼のないように小声で話す。
(ダーカー狩ってるついでに原生民助けることが多くてな・・・いつの間にか気に入られてた。)
(だからってこんなとこ滞在するつもり!?何食って何処で寝てるかも分からないような連中よ!?)
(飯はわりといけるし寝ようと思えば丁度いい場所もある、何か問題でもあるか?)
(ちょっと待ってよ・・・その口振り、まさか・・・!)
(ああ、泊めて貰ったことがあるがそれがなんだ?)
(あんたどんだけ恐い物知らずなのよッ!!)
「なんやなんや?さっきからヒソヒソヒソヒソ!人前で失礼やで!」
「そうやで!」
ヒソヒソ話しすぎたせいで原生民に怒られ・・・ってちょっと待って!?
「ちょっとルナール!?なんでナチュラルにそいつの横にいるのよ!!」
「ノリやで!!」
ルナールは原生民の横でふんぞり返る。
「嬢ちゃんいける口やな!」
「『考えるんじゃない!ハートで感じるんだ!!』ってやつだよね!」
ちょっとそれこの間一緒に読んでた小説の痛い主人公が言ってたセリフ!
恥ずかしいからやめて!!
「せやせや!分かっとるやないか!」
何故か原生民と意気投合しちゃっているルナール。
「よっしゃ、気に入ったで!嬢ちゃんには集落の施設色々案内したるわ!」
「おぉ!ありがとー!」
ルナールは原生民と一緒に集落の奥に進んでいく。
「あいつのお陰で交渉は上手くいきそうだが・・・。」
「・・・うん。」
恐らくノワールと私は同じ事を考えている。
「俺らしか使わん秘密の通路あってな、でも嬢ちゃんならそない背丈変わらんし、通れそうやな!」
「背が低いって得だねー!」
「せやろ!」
原生民とすっかり会話の弾んでいるルナール。
「「順応早すぎじゃね・・・?」」
~カリン アークスシップ~
「いやぁ、眼福眼福♪」
今日はいつぶりかのような素晴らしいデータが取れてすごく嬉しかったですね♪
エスカさんは・・・。
『上から命令されてももうこんな訓練やらないからな?』
とか言われちゃったけど、まぁ、いずれ圧力でも裏工作でも駆使して無理矢理来て貰うことになりそうですよ♪
まぁ、冗談は置いておくとして・・・。
「さっきの敵二人も面白い動きしてましたね~、古いデータから適当に引っ張り出した二人組だったのに・・・。」
名前くらいは覚えといても良さそうですね、ちょっとデータ見てみましょう。
「ふむふむ・・・ヒューマンさんが『セト』、キャストさんが『ノワール』・・・五年前のデータですか・・・今なにしてる人なんでしょうねぇ・・・まぁいっか!」
~ラパン アルクトゥス 市街地(七年前)~
あれからどれだけ時間が経ったか分からない。
依然としてファンジの檻は壊れず、ダーカーが私の周りに際限なく沸いてくる。
「ハァ・・・ハァ・・・。」
杖を使ってテクニックの負担が大きいのでかなり身体中がつらい。
もう限界・・・誰か・・・!
「ラパンッ!!」
「!!?」
声がする方を見るとルナールがいた。
「これがファンジ・・・!」
一瞬呆気に取られたルナールだったが、すぐに表情を強張らせ、持っていた剣を構える。
「待ってて!こんなもんすぐぶっ壊して助けるから!」
ルナールはファンジに斬りかかる。
ファンジは蔦のようなものが網目状に張られているので剣なら私のテクニックよりも効果はあるかも知れない。
だが・・・。
「わっ!痛・・・!思ったより硬い・・・!」
剣をぶつけるとゴンッといった感じの硬い物をぶつけた音が聞こえる。
斬れている音などと微塵も思えない。
「やっぱり・・・私たちなんかじゃ・・・。」
「ラパン、諦めないでよ!!それにほら!見て!」
「?」
ルナールが指差す方を見ると、さっき斬った場所の蔦が僅かに解れている。
「ちょっとだけど効いてる!」
「!」
本当に助かるかも・・・。
そう思った矢先だ。
「ッ!!ルナール!!」
ルナールの周りにダーカーが沸き始める。
「ッ!」
私の周りにもダーカーは沸いてくる。
「くっ、こんのぉ!」
ルナールは剣を振り回して切りつけ、ダーカーを凪ぎ払う。
「くぅ・・・!」
私も残り少ないフォトンを使ってテクニックで一掃する。
「ラパン、今助け・・・。」
ルナールがファンジの破壊に入ろうとするとまたダーカーが沸いてくる。
何がなんでもファンジを壊させないつもりだ。
「くっ、こんなんじゃ全然壊せない・・・!」
「・・・。」
・・・仕方ないよね。
「ルナール・・・お願い・・・。」
「分かってるよ、絶対助け・・・。」
「逃げて。」
「え・・・?」
ルナールは一瞬呆気に取られそうになってダーカーの攻撃を受けそうだったのをなんとか止める。
「逃げてッ!」
「なに冗談言ってるんだよ!!」
ダーカーを倒したが、ルナールは逃げてはくれない。
「このままじゃ消耗して二人ともやられる・・・だからルナールだけでも逃げてッ!!」
「そんなの無理に決まってるでしょ!?何のためにここまで来たと思って・・・。」
「言うこと聞きなさいよッ!バカルナールッ!!」
「ッ!!なっ!」
突然の罵倒にルナールは顔を真っ赤にさせる。
「ラパンの方がバカでしょ!?助けに来た私の気持ち踏みにじる気!?」
ルナールはムキになって言い返してくる。
「それが迷惑だって言ってんのよッ!!」
「あんたどんな神経してんのッ!?人の好意をなんだと・・・!」
「いらない!!そんなのッ!!もういいんだよッ!」
「もういいって・・・!」
「そうだよ・・・もういいんだよ・・・私はもう・・・ルナールには色んな大事なもの貰ったよ・・・!」
「貰ったって・・・何も・・・。」
「貰ったよ・・・ルナールは・・・私に『居場所』をくれた・・・『夢』をくれた・・・こんな不気味な影を背負ってる私なんかが手に入らないものいっぱいくれた・・・もう、それだけでいいから・・・だから・・・!」
「・・・。」
ルナールは黙ったまま立ちすくむ。
「だから逃げ・・・!」
必死にルナールを説得しようとしたが・・・。
「うわあああああああああああああぁ!!!」
ルナールは雄叫びを上げて剣でファンジを殴る。
「ルナールッ!!」
ルナールの周りにまたダーカーが沸くが、ルナールは完全に無視してファンジを殴る。
ダガンがそれを阻止しようと前足の爪でルナールの背中を切り裂く。
「ルナールッ!!」
「あああああああああああああああッ!!!」
切り裂かれた背中から大量の血が流れる。
でもルナールはファンジの破壊を止めない。
「ルナール、やめてッ!!」
「あああああああああああああああッ!!」
ルナールは全身をどんなに斬られ、殴られ、噛みつかれてもファンジに向かって剣を振るう。
「ルナールッ!!逃げてッ!!死んじゃうよッ!!」
「うわあああああああああああああッ!!」
もうルナールは全身血だらけで、顔や腕もアザだらけだった。
それでもルナールはただファンジに向かって剣を振るう。
「ルナールッ!!お願いッ!!もうやめてッ!!」
もう見ていられなかった。
涙で何も見えなくなりそうだった。
「うわあああああああああああああッ!!」
ルナールが雄叫びを上げて最後の力を振り絞ってファンジを殴り付けると、ファンジは霧が晴れるかのように消えていく。
「ッ!」
ルナールは今まで自分を散々殴り付けたダーカー達を睨み付ける。
その眼光はするどく、手負いの獣を彷彿させるような危険な威圧感があった。
ダーカー達は勝ち目が無いと悟ったのか、はたまたファンジを破壊されて襲う理由がなくなったからなのか、逃げていく。
「ルナール・・・!」
「ラ・・・パン・・・!」
ルナールは私に向かって虚ろな目で微笑むと、その場で前のめりに倒れた。