~ネージュ ???~
「・・・?」
気がつくとわしは変な場所にいた。
周りは青と緑が混ざり合った光に包まれ、まるで海の中にいるような状態じゃった。
じゃがこの場所を見たのは一度では無い。
前にノワールと一緒に不時着したアークスシップで気を失った時もこの空間にきた。
夢だと思っていた。
でも今は違うのか?
いや、これも夢なのか?
「また会えたな。」
「!」
声がすると、目の前に女が現れる。
白い白衣を着て眼鏡を掛けた、科学者のような女。
これも前に見た。
じゃがこの間はわしを見て優しく頬に触れてわしを見ているだけじゃった。
話しかけられるのは初めてじゃ。
「お主、誰じゃ?」
「・・・。」
わしの問いかけに女は応えず、ただわしをじっと見ていた。
「・・・?」
「シオン・・・いや、正確にはシオンのほんの一摘まみの砂の欠片のような存在だ。」
「シオン・・・で良いのかの?」
「・・・。」
シオンは黙って頷く。
「わしに、なんの用じゃ?」
「謝らせて欲しい。」
「へ?」
「重荷を背負わせた事を、謝らせて欲しい。」
「重荷・・・なんの事じゃ?」
「今は知らずとも、いずれ分かる。でも、私は申し訳なく思う。」
「なんで教えてくれんのじゃ!分からんものを謝られても困るのじゃ!」
「・・・そろそろ時間だな、また会えるだろう。それまでに・・・。」
「へ・・・な、えぇ!?」
女が消えて行く。
いや、視界の全てが消えて行く。
なんじゃ?
なんじゃ!?
「・・・ハッ!?」
気がつくとわしはアークスシップのショップエリアのベンチで眠っていた。
「どうした?魘されてたみたいだが。」
すぐ目の前にエスカの顔があった。
そういえば膝枕をさせておったな。
「変な夢みたのじゃ・・・。」
「ぷっ・・・またか。」
エスカは思わず吹き出しそうになって茶化すように言ってくる。
「なんじゃ?前にもそんなことあったのか?」
「ああ、昨日私の隣で寝てた時、変な寝言言ってたぞ?『弟ニューマン女装上手すぎるのじゃ、貴様ホントに男なのか?』ってな。」
「えぇ!?な、なんか恥ずかしいのじゃ・・・!」
思わず手で顔を覆ってしまう。
「いや・・・その、私のこの体勢の方が恥ずかしいんだが・・・。」
「いやじゃ!せっかくのんびり出来るのじゃ、甘えさせるのじゃー!」
「こ、こら!頭を膝にスリスリさせるな!くすぐったいだろ!」
「えへへ♪」
「全く・・・。」
エスカは溜め息を着きつつも笑っていた。
~ノワール 惑星リリーパ 採掘基地~
「くそが・・・!」
前にも戦ったが、相変わらず厄介な相手だ。
金切り声で指揮されたゴルドラータはかなり上手く連携が取れており、反撃出来る隙がほとんどない。
杖持ちが自身の周囲に引力の磁場を展開して足止めし、剣持ちが中距離から斬撃を飛ばしながら銃持ちが狙撃するといった連携だ。
だがこういう連携が取れる奴等には大抵共通して決定的な弱点がある。
それも連度が高い奴等ほどだ。
「くっ、この・・・!」
杖持ちがラパンを標的に集まっているようだ。
これなら行ける。
俺はグラビティボムをゴルドラータに投げた。
ボムが破裂すると引力が発生し、ゴルドラータをかき集める。
「キィアアアァァ!!」
人型ダーカーが金切り声で指示し、磁場から逃がそうとするが、ゴルドラータ達は動けない。
「死ね、害虫が・・・!」
逃げられないゴルドラータに対して容赦なくエルダーリベリオンの弾丸ラッシュをかまして仕留める。
「さぁて・・・。」
残りのゴルドラータに対して構える。
剣持ちが斬撃を放ってきたが、先ほどの杖持ちの磁場が無い分回避は容易い。
これがこいつらの弱点だ。
連携が強い奴等ほど、一人が倒れた時の戦力の崩れ方がデカいのだ。
敵は射撃や斬撃による中距離攻撃を繰り返すが、回避しながら近づけばすぐに仕留められた。
「よし。」
ゴルドラータは全て全滅した。
残るは人型ダーカーのみだ。
「取り巻きが居なくなったらどうするんだ?司令塔。」
こいつは初めて見たときから妙だった。
自ら攻撃してくる事もなく他のダーカーに指示を出しているだけ。
ひょっとすると『戦わない』のではなく『戦えない』のでは・・・。
「グ・・・ギギ・・・。」
「・・・。」
と思ったが違うみたいだ。
何やら口に手を突っ込んだかと思えば、そこから剣と銃を取り出した。
どう考えてもやる気だ。
「ク・・・キキ・・・。」
「・・・。」
変な声と共に口元を釣り上げる。
笑ってんのか?
不気味な奴だ。
「キ・・・キキッ!」
「!!」
一瞬で距離を詰め、俺の喉元を貫こうと、剣を突き出してきたが、なんとか紙一重でかわす。
「っの野郎!!」
即座に銃弾を放つが、あの時同様、簡単に回避され、さらに斬撃を放ってくる。
動きが早く、当たりそうだったが、なんとかかわす。
「!」
人型ダーカーの身体が怪しく光り始めた。
そしてその周囲に魔方陣の様な模様が浮かんでくる。
こいつ自身がやっている訳ではないだろう。
これは恐らく闇属性テクニック『ナメギド』だ。
まさかと思い、見てみると案の定ラパンがテクニックを練っていた。
このまま行けば人型ダーカーの内部からフォトンの爆発が起こり、人型ダーカーは内側から破壊される。
だがこのテクニックの弱点はチャージが非常に長く、発動までに時間がかかることだ。
「キアアァッ!」
人型ダーカーは察したのか、ラパンに襲いかかっていく。
「させないよッ!」
ルナールがラパンの前に現れ、人型ダーカーに対し、持っている剣を盾に構える。
ナメギドが完成するまで粘る気だ。
人型ダーカーはルナールを切り潰そうと、剣を降り下ろすが、ルナールはなんとか剣で止め、持ちこたえる。
こうしている間にも魔方陣は完成しつつある。
「ッ!?」
人型ダーカーはあり得ない行動に出る。
剣でルナールを押さえたまま、飛び上がり、ルナールを飛び越えてしまう。
「このッ!」
後ろを取られ、咄嗟に振り向き様に剣を横に振るうが、人型ダーカーは飛び上がって回避し、そのままの勢いでラパンに斬りかかる。
だが・・・。
「時間切れ・・・。」
人型ダーカーの魔方陣は急に圧縮し、人型ダーカーの身体の中心で、液体が破裂した音がする。
人型ダーカーは内部からの破壊に即死したのか、身体をビクンとさせて空中で脱力するが・・・。
「!?」
人型ダーカーの身体を覆っていた液体の様なコーティングが取れ、そのまま液状となってラパンにかかる。
「ケホッ・・・ウェッ!なにこれッ!?」
蒸せながら何気なく前をみると・・・。
「・・・ッ!?」
目の前にあったのは・・・。
~ロイド アルクトゥス 市街地(七年前)~
「くそッ!」
ダガンに対し銃弾を放つが、全く効いていない。
だが、銃弾に対し痛みはあるのか、足止めくらいにはなっている。
「ロイド!何してる!!フォトンを使え!!」
兄さんはダガンを倒しながら私を叱咤する。
そう、私はアークスの訓練を受けたことがあり、フォトンを扱った事がある。
しかし・・・。
「無理だ、兄さん・・・私には出来ない・・・!」
そう、私はフォトンを扱えなくなったのだ。
「くっ!」
兄さんは私が足止めしていたダガンを倒す。
「・・・お前は出来るだけ足止めしろ、全部俺が倒す。」
「あ、ああ・・・。」
兄さんに言われた通り、私はダガンの足止めに専念した。
役割がはっきりしているだけあってダガンはどんどん倒せているが、何度も何度も沸いてきて切りがない。
それでも私は銃弾を使って足止めした。
「・・・。」
そう、兄さんに任せておけばいい。
私は戦えないのだ。
だから倒すのは兄さんに任せておけばいい。
『あの時』だって・・・。
「・・・!」
銃弾が無くなったのに気付く。
「兄さ・・・ッ!!」
兄さんにこの事を教えようとした瞬間、ダガンの爪が目の前に迫っていた。
「あ・・・・!」
~エスカ アークスシップ~
「びゃああぁ!!む、無理!無理無理無理!!無理なのじゃああぁ!!」
ネージュはナベリウスの森のなかでダーカーと原生生物に追い回されていた。
私はと言うと・・・。
「逃げてちゃいつまでたっても終わらないぞ?」
それを映像越しに見てネージュを叱咤していた。
普通ならこんな光景を見れば私ならすぐ助けに行く光景だが、今はそんな必要はない。
今ネージュがいる場所は本当のナベリウスではなく、VR空間、つまりは映像化された仮想空間だ。
此処はアークスシップの訓練施設、ネージュは今訓練を受けている真っ最中だ。
任務に出られない間、復帰した際に鈍っていないよう、訓練している。
・・・と、ネージュには説明しているが、これを私に言い渡した上層部の狙いは別にあった。
それと私がいる場所、つまり映像を見ている側には私以外にもう一人いる。
「いいですよいいですよいいですよぉ♪もっと、もぉっと極限状態まで自分を追い込んで下さいねぇ?」
悪魔の様な笑みを浮かべ、映像を食い入る様に見ている女がいる。
髪は赤紫で、片目が隠れたロングヘアーの不気味な雰囲気の女だ。
彼女はカリン、このVR訓練施設を調整、管理している管理官だ。
だが見た目とこの様子からして普通じゃないと思うのは私だけじゃないはずだ。
彼女はこの訓練を受けているアークスをいつも楽しそうに観察しており、時折調整に失敗しては訓練者を本来の訓練よりも過酷な状況に陥れてしまうようだが、一部ではわざとやっているのではないかとも言われている。
いくら上からの命令とはいえ、こんな狂人にネージュの訓練を任せて良いのか些か疑問だ。
「うなああぁ!」
ネージュはがむしゃらにナグランツやらイルグランツやらを放つがVRのエネミー達はお構いなしに前進する。
「ちょっとこれヤシじゃろ!!攻撃すり抜けてるじゃろ!!」
「いえいえとんでもない♪このVR空間の再現度は折り紙つきです♪攻撃が当たれば敵は本物のように怯みます♪『当たれば』ね♪」
カリンの言葉の真偽は定かではないが言っている事はごもっともだ。
ネージュは滅茶苦茶にテクニックを撃つので一切狙いが定まっていないので当たる訳がない。
そうこうしている間にあっという間に囲まれてしまった。
「待って!!ちょっと待つのじゃ!!助けて!!お願いします!!ああああああああッ!!」
命乞いも虚しくネージュはエネミーにフルボッコにされた。
「あれぇ~?ちょっと難しすぎたのかなぁ~?まぁいっかぁ♪」
カリンは笑いながらエネミーをネージュの周りから消去する。
エネミーの群れが集まっていた場所にはぐったりと倒れていたネージュだけが残る。
「ふーむむ、どうにも追い込みが甘いんですかねぇ?彼女、情報によればかなりの潜在能力があるみたいなんですけどねぇ?」
「・・・。」
そう、上層部の狙いはこれだ。
ネージュが持つ神託のフォトンの能力を視るためだ。
ノワールの報告によればネージュはダーカーに一度やられて気を失った際に能力が発動したらしい。
恐らく神託のフォトンはネージュが命の危機に瀕した時の防衛装置のような役割を果たしているのだろうと上は推測したようだ。
確かに間違った線は行っていないだろうが、だからと言って意図的に危険に追い込むのは度が過ぎているのではないだろうか。
確かにVR空間なら敵が仮想の生命体である分調節は効くようだが、何せ調節する奴がこの狂人だ。
とても安全が保証される物ではない。
「うん、それじゃあ難易度下げちゃいましょうか♪ネージュさーん!行きますよぉ♪」
「ちょ、タンマ・・・休ませて・・・!」
「わあぁ!私の調整下手すぎぃ?もう出しちゃいましたぁ♪」
「わざとじゃろ貴様ぁ!!」
問答無用でネージュの前にエネミーが出現する。
出てきたのは・・・。
「へ・・・?」
出てきたのはアークスだ。
どうやらソード持ちの若い男のようでかなり身軽そうな格好をしている。
「なんじゃ?なんでアークスが・・・って、のわぁ!!」
男は容赦なくネージュに斬りかかる。
ネージュはフォース特有のミラージュステップで回避し、距離を取る。
咄嗟にやったが判断は悪くない。
ソードは遠距離の攻撃に乏しく、接近しなければほとんど戦う術がない。
「・・・?」
ネージュは男の様子に戸惑う。
男はネージュに距離を取るかと思えば距離を取ったまま此方の出方を伺うかのように動かない。
「なんか知らんがチャンスじゃのう!」
ネージュはテクニックを練り始める。
「・・・?」
「なんだ?」
ネージュを始めとして私も困惑する。
男は剣を持ったまま左手を天高く掲げる。
サブクラスの関係でテクニックを使う奴かと思ったが、あんなテクニックの練り方は見たことがない。
相手が妙な動きをしたときには迂闊に仕掛けないのは鉄則だが・・・。
「隙だらけじゃあ!!」
案の定ネージュは嬉々としてイルグランツを放つ。
「!?」
男は掲げた手をネージュに向けて降り下ろす。
だが何も起こらずイルグランツの光弾は今にも男に迫っていた。
しかし・・・。
「へ?」
ネージュの周囲が光り始めたとあいつを始め、私も気づいた頃には全て終わっていた。
「なああああああぁぁ!!?」
柱のような光が上空からネージュに襲いかかり、ネージュは間抜けな断末魔を上げる。
「・・・。」
ネージュはうつ伏せに倒れたままぴくりとも動かない。
「お、おい。ネージュは大丈夫なのか?これ・・・。」
カリンに確認するが、嫌な予感がする。
「あらぁ、ヤバイですかねぇ・・・仮想空間とは言え痛みは感じますしぃ、余りに酷いと精神的にも負荷がかかりますしぃ、理論上死ぬかも知れませんねぇ。」
「な!?」
死ぬのか!?
仮想空間の訓練で!?
「だーいじょぶ大丈夫♪空間調整上手くやって今までそんな事態はなかったですしぃ♪」
「だったらすぐ攻撃を止めさせろ!!」
「えぇ?これからが面白いところなのにですかぁ?」
「くっ!こいつ・・・!」
噂で狂人と聞いていたがここまでとは・・・!
「!!」
そうこうしている間に男が今にもネージュに止めを刺そうとソードを振り上げていた。
「ネージュッ!!」
もう駄目かと思ったその瞬間・・・。
「ッ!?」
急に映像が真っ白になる。
機械の故障ではない。
余りに強い光で見えなくなったからだ。
「・・・?」
映像を見てみると・・・。
「傀儡よ、我が宿主に仇なした事・・・懺悔し、甘んじて粛清を受けよ。」
「な!?」
なんだ・・・?
ネージュの姿が変わっている。
服が巫女のような服になり、狐のような耳が生え、何本もの狐の尾が生えていた。
「ネー・・・ジュ・・・?」
「あー、これですよこれッ!!ようやくお出ましですねぇ♪『神託のフォトン』ッ!!」
カリンは今までに無いくらい目を輝かせていた。
~ノワール 惑星リリーパ 採掘基地~
「これは・・・!」
ラパンが倒した人型ダーカーは液状のコーティングが取れて中身が露になる。
それはアークスのものと思われる服を着た男だった。
しかもそいつは白目を向いたまま動かない。
「・・・。」
念のため調べようと男に歩み寄る。
「ちょ、ちょっと・・・!」
「調べるだけだ。」
ラパンの制止を無視して口元に手を近づけて息をしているか確認・・・してないな。
手を持って脈を確認・・・動いてな・・・。
「ぎゃあああああッ!!」
「ッ!?」
悲鳴が聞こえて見てみると知らない顔のアークスが、恐怖に満ちた顔でこっちを見ていた。
「・・・。」
待て?
落ち着こう。
今の状況を確認しよう。
こいつの視線の先は俺たち。
そして俺は動かないアークスの男(ほぼ死体と断定)の腕を掴んでいる。
そして辺りには(先程の人型ダーカーのコーティングと思われる)赤黒い液体。
しかもラパンに至ってはその液体を返り血のように浴びまくっている。
あぁ、そっか。
そうだよな。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
「違うッ!!」
必死な第一声を発する。
「どうした!!何があった!!」
セトを始め、奴の部隊が駆けつけてくる。
「ッ!ノワール!?」
「おい、誤解すんなよ!これは・・・!」
状況を見て驚くセトを説得しようとするが・・・。
「た、隊長、こいつ!」
「アークスを・・・!」
隊員が続々と余計な事を言う。
「みんな、落ち着けッ!!」
セトが部下に制止をかける。
「・・・どうした。何があった。」
「あぁ、これは・・・。」
状況を説明しようとするが。
「うわ、なにやってるんだお前!!」
「ひ、人殺し!!」
「な!?」
不幸にもどんどん人が集まって惨状に悲鳴を上げる。
「セト・・・落ち着いて聞け、これは・・・。」
「ノワール、及びラパン。今からアークス殺害の容疑で拘束する!!」
「くっ・・・!」
「抵抗しなければ・・・ッ!」
セトが話しきる前に俺は距離を積めて銃で殴りかかっていたが、セトはすぐに反応して刀でそれを止める。
「するに決まってんだろうが・・・!」
そのままつばぜり合いになるがすぐに離れて互いに距離を取る。
「隊長!!援護します!!」
セトの部下のレンジャーがライフルを構える。
「いや、お前達は下がれ!」
「え!?」
セトの提案に部下達は困惑する。
「こいつの実力は僕が一番よく知っている。下手に手を出したらお前たちもただじゃすまない。」
「しかし・・・。」
「命令だ!!」
「は、了解・・・!」
そしてそのまま俺と距離を取ったままにらみ合いになる。
「良いのかよ、一騎討ちなんか挑んで・・・。」
「お前は油断ならないからな、昔から・・・。」
「・・・?」
会話の途中で違和感に気づく。
セトが片目をパチパチとさせている。
『話を合わせろ』?
どういうつもりだ。
しかも片手を刀から放したまま指を微妙に動かしている。
これは昔こいつと組んでいた時にやっていた口で話せない時のサインだ。
僅かな動きだが、内容は理解できた。
「・・・ハァ。」
分かったよ、やりゃいいんだろ?
「油断ならねぇんならよ・・・寧ろさ・・・。」
先程の会話を再開する。
「一騎討ちなんざ挑むんじゃなかったな!!」
俺は即座にアイテムを宙に放り投げる。
敵を光でスタンさせる手榴弾、『スタングレネード』だが、これはただのそれではない。
「やれッ!アオッ!」
『了解。』
アオに指示をだすとスタングレネードは狙撃され、起爆する。
すると、通常の光を遥かに上回る光量の光が発せられ、セトを始めとして周りの奴等全員がうめき声を上げながら怯む。
今投げたやつは俺が改造した特別製だ。
奴等が怯んだこの瞬間だ!!
「来い!」
即座にルナールを捕まえ、ラパンの腕を掴んで走り出す。
「ちょ、え、なにすんのよ!!」
「話は後だ!逃げるぞ!!」
「え、えぇ!?」
困惑するラパンを無視して全力でその場から撤退した。
先程のセトのサインの意味は・・・。
「ったく、『その子連れて逃げろ』って・・・それからどうしろってんだよ・・・!」