PSO2 ~創造主の遺産~   作:野良犬タロ

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第十一章 ~夜の群像~

 

~セト マザーシップ ブリーフィングルーム~

 

ダークファルスが出現した事が確認され、アークスの最上層部、旧六芒均衡を招き、大規模な会議が開かれる。

「今回セトから報告されたことを纏めましょう。」

映像を開きながら進行をしているのはカスラ。

六芒均衡の『三』を務めていた人物であり、情報部の司令を務めている。

「ダークファルス【従者】、その能力は『幻覚操作』。目的は『神託のフォトン』継承者であるアークス、ネージュの抹殺。発見者達の証言から、七年前にアークスシップ第23番艦『アルクトゥス』襲撃の主犯であり、以前報告にあった『人型ダーカー』の筆頭と推測されます。」

映像には【従者】の顔が表示され、彼の抹殺対称であるネージュ、そして過去の外装の映像と思われる『アルクトゥス』の姿があった。

「神託のフォトン?聞かない名だね。」

最前席のキャストの女性が疑問をなげかける。

元六芒均衡の『二』、マリア。

現在は総務部の司令を務めている人物だ。

「ええ、そう言われると思い、情報部で事前に情報を集めていました。」

カスラが端末を操作して映像を切り替える。

するとその映像には奇妙な光を放つ、透明な狐の像だ。

「『アルクトゥス』にのみ存在する『テンプルエリア』にある『選定の神弧』、この像に触れた者の中で選ばれた者には『神託のフォトン』と呼ばれる特殊なフォトンを与えられ、強大な力を扱えるそうです。神託のフォトンは彼女の一族からのみ継承者を選ぶそうで、彼女の一族はこの像を奉る宮司の一族だったようです。」

「何故そのような強大な代物が今まで報告に無かったのだ?」

疑問を投げ掛けた男性キャストはレギアス。

六芒均衡の『一』を務めた、僕の部隊が傘下となって所属する教導部の司令であり、要は上司だ。

「『アルクトゥス』は他のシップと違い宗教的な考えが強く、また排他的な部分がありました。この『テンプルエリア』も、神々が住まう聖域とされ、宮司の一族以外は入れなかったそうです。さらに他のシップの者からの悪用される事を危険視し、情報を漏洩させないために所属する民間人のシップ間の移住を制限し、他シップからの交流も制限されていました。また違和感を持たせない為に、アークスを所属させてはいましたが彼等にも情報を漏洩させないよう、厳重な口止めをさせていたようです。」

「随分とセキュリティが厳重だな。でもルーサーの一件もあったからな。結果的にはそれが効を奏してたわけか。」

「ええ、皮肉にも、と言うべきでしょうか。」

相づちを打ったのはゼノ、旧六芒均衡の『四』。

レギアスと同じ教導部の次席だ。

今の内容はアークスの研究所の所長、『ルーサー』が実は『ダークファルス【敗者】』であり、アークスを裏から支配しており、オラクル船団の根源ともいえる存在、『シオン』の力を我が物としようとした事件だ。

幸いにもシオンは既に自分の後釜であるシャオを産み出しており、その力をシャオに譲渡することによりルーサーに悪用されることを阻止し、ルーサーは六芒均衡と英雄マトイともう一人のアークスにより打ち倒され、事件は幕を閉じている。

もし神託のフォトンの存在が露になっていれば、ルーサーの魔の手が伸びていなかった可能性の方が遥かに低いだろう。

「しかし当事者の証言によれば、既に神託のフォトンの存在は【従者】によって察知されており、七年前のアルクトゥス襲撃は、奴の計画的犯行であったものと思われます。しかも情報制限をかけていたことが仇となり、当時の襲撃は単なるダーカーの襲撃とされ、【従者】の存在も此方で掴むことができず、七年もの間、【従者】という存在を察知することも出来ずに泳がせていたという事になります。」

「なんてこった。」

マリアは頭を抱えて嘆く。

「同じオラクル船団に所属するシップだろう、何故手を取り合う道を選ばなかったんだろうね。そうしていれば、艦が無くなったとしても仇を撃ってやる為に色々手配出来ただろうに。」

「それにしてもなんで今頃になってそのネージュって奴を殺そうとするんだ?」

「そちらに関しては、ノワールからの報告にあった、不時着したアークスシップでの出来事が関係していそうですね。」

「ノワール・・・ああ、セトが昔組んでた奴か。」

ゼノはハッとして手をぽんと叩く。

「あの帰還命令無視の常習犯かい?」

マリアは目を細めて此方を見る。

「・・・。」

うわ、恥ずかしい・・・!

僕の席の近くからも視線が集まって来るのがわかる。

こう言う時に肩身が狭くなってくるんだよな。 

「話が脱線しているぞ、報告の内容を進めてくれんか。」

レギアスが一同を叱咤する。

「・・・。」

「!」

レギアスが一瞬だけ此方を見て視線を戻す。

・・・もしかしてフォローされた?

「ええ、彼はネージュと共にダーカーに侵食されたアークスシップに不時着した際、例の人型ダーカーに接触しました。その際に彼女が神託のフォトンらしき力を発動させ、アークスシップ脱出に成功したそうです。」

「その際に神託のフォトンの存在を察知されたってわけかい?」

マリアの指摘に、カスラは頷く。

「そして恐らく、それまでの間は彼女が神託のフォトンを継承していることを知らなかったと思われます。」

「確かに筋は通ってるな。既に知ってたなら血眼になってネージュを探していただろうから、もっと早く事が起こってただろうしな。」

「ええ、それにこれらの情報から、彼等が不時着したアークスシップは、十中八九【従者】の拠点であり、アルクトゥスとみて間違いないでしょう。」

「おお、それならそこに殴り込みに行って【従者】を倒したらいいんだな!?」

最前列の席から少女が勢いよく立ち上がる。

元六芒均衡の『五』、クラリスクレイス。

戦闘部の次席だ。

「バカね、それがすぐ出来れば苦労しないっての。」

横やりを入れたのはサラ、総務部の次席であり、クラリスクレイスの姉のような存在だ。

「ええ、現在アルクトゥスの探索を様々な手段で行ってはいますが、未だに発見の報告はありません。」

「相手はアークスシップ、移動も出来るからね。それに七年もうちらの目を逃れてた奴だ。そう簡単に見つかりゃしないだろうね。」

「ええ、それに今回の事が起きた以上、敵は彼女を狙って何かしら行動を起こしてくるはず、それらの対策も練らなくてはなりません。」

「後手に回らざるを得んか、歯痒いな。」

現状をレギアスは嘆く。

「彼女の監視は、今後、私の部下にさせましょう。何か事が起きれば情報も得られるでしょうからね。」

「今は地道に探索しつつタワーディフェンスって訳か。」

「ええ、敵は彼女をいぶり出す為に無関係の者を襲う危険も想定されます。戦闘部には極力出動は控えていただき、こう言った事態に備えて待機して貰いましょう。」

「えぇ!?じゃあ私はしばらく出撃しちゃダメなのか!?」

クラリスクレイスは驚いたようにまた立ち上がる。

「そうなります。」

「ちぇ、ちぇ、なんだよ、カスラのばーかばーか。」

「悲観する必要はないぞ、クラリスクレイス!!」

クラリスクレイスがぶーたれていると横にいた男が立ち上がり、ガッと彼女の肩を掴む。(何故いちいち立ち上がるかはこの際スルーして)

元六芒均衡(らしくない人)『六』、ヒューイ。

戦闘部の司令だ。

「俺達は言わば『秘密兵器』!秘密兵器がホイホイ表に出ちゃいけない!!そう言うことだろう、カスラ!!」

「まぁ・・・そう捉えてもらって結構です。あと私に振らないで下さい。」

「話は纏まったようだな。」

話に決着がついた事を確認すると、今度はレギアスが立ち上がり、カスラの横の皆の視線が集まる位置に立つ。

「諸君、深遠なる闇との戦いの最中、こう言った新たな敵に立ち向かわなくてはならない事は非常に困難を極める事だろう。」

レギアスの言葉に、参加者一同は表情を曇らせる。

アークスで恐らく一番長く戦ったと言える三英雄。

その言葉は重く、他のどんな人間よりも戦場を見た彼だからこそ現実味を帯びている。

「だが!」

レギアスが右手を翳すとレギアスの前に光の紋章が浮かぶ。

六芒均衡の紋章だ。

「困難があってこそ、我らは団結し、一丸となって戦わなければならない!この結束こそが我々人類が生き残る為に振るい、磨きあげてきた最大の武器であるからだ!!」

「おお・・・!」

一同はその光と、その言葉に先程の曇りがまるで黒い霧が晴れるかのように表情の明るさを取り戻す。

「諸君らの力、今一度この老いぼれに貸してほしい!!」

「「「オオオオ!!」」」

会議の参加者一同は立ち上がり、歓声を上げる。

「アークスの底力、今一度奴等に知らしめる時だ!!」

「「「オオオオオオオオ!!」」」

歓声は収まらなかった。

長年アークスを率いていた者のカリスマ性は伊達では無いと言うことを改めて知った。

 

 

~ラパン アークスシップ マイルーム~

 

報告と事務手続きを済ませて部屋に戻るとすぐシャワーを浴びる。

「・・・。」

結局、今日も手がかりがないまま終わった。

生きているのは分かってる。

でも何処にいるのか分からない。

「どうして・・・これだけ探してるのに。」

アークスになった理由はただひとつ。

先生を見つけること、ただそれだけ。

戦いなんて正直好きじゃない。

出来れば静かに暮らしたい。

でもそんな想いを押し退けてでも先生に会いたい。

これだけはどうしても、誰になんと言われようとも譲れないことだった。

候補生時代に『たかがそんなこと』とバカにされたこともあった。

でも私にとってはもうこの人生の中で残されたたった一つの望みなんだから・・・。

「先生・・・。」

ノズルをひねり、シャワーを止めてシャワールームを出る。

部屋着に着替えるとやることもないので本を読む。

「マスター!!!」

小さな足音と共に何かが部屋に入って走ってくる。

「ダーイブ!!」

「わっ!!」

勢いよく飛び込んできたそれは、私のお腹に勢いよく飛びつく。

「もうっ!」

それは少女だ。

金髪のポニーテール、赤目で浴衣姿が特徴的である。

しかし一回り小さい。

そう、サポートパートナーだ。

「マスターマスター!!頼まれてたフランカさんの食材!!集めてきたよー!!」

「うん、ありがと・・・。」

サポートパートナーの頭を撫でる。

「えへへ・・・。」

嬉しそうだ。

「・・・。」

これをすると必ずフラッシュバックする光景がある。

自分が逆に頭を撫でられているときだ。

「先生・・・。」

「マスター、先生ってひと、また見つからなかった?」

「うん・・・。」

サポートパートナーの少女は、心配そうに私を見上げる。

顔に出ちゃったかな。

「マスター元気だして!きっと見つかるよ!」

「うん・・・。」

「私も仕事してる傍らで、色々聞いてるから、何かあったらすぐ分かるよ!!それにこの間友達になった子がいてね!すごく目がいいの!だから任務の途中にその人いたら教えてくれるって言ってた!」

「また友達出来たの?ホントあんたは・・・。」

ホントに、『あの子』そっくりだ。

「ありがと・・・。」

サポートパートナーを抱き締める。

他の人間の前ではこんなことは絶対にしない。

この子の前でなら、私は素直になれる。

だって・・・。

 

 

「ありがとう・・・ルナール。」

 

 

 

~エスカ アークスシップ マイルーム~

 

オラクル船団にも『夜』はある。

とは言ってもシップ内の光の量と気温と、人工的な紫外線を調整しているだけなのだが、これは人間の生活リズムの為に行われている。

人間は一日にある程度の日光をうけ、ある程度は日光を受けないのが健康上必要なことだとされているからだ。

朝に起きて夜に寝る。

当たり前の事だが、これはオラクル船団が出来たときから、人間が元の星に居たときから伝えられた医学である。

「・・・寝るか。」

殺風景な部屋のなか、私はベッドの上で灯りを消し、シーツを体に被せる。

「・・・。」

ネージュに再び仲間として迎えられた。

そんな喜びも束の間、彼女の命を狙う【従者】が現れた。

色んな思いが渦巻くが、私のすることは決まっている。

ネージュを・・・。

「・・・?」

部屋の入り口のドアが開く音がする。

何かがゆっくりと歩いてくるのが足音で分かる。

「・・・。」

殺し屋時代、こう言う状況は何度もあった。

敢えて私は動かない。

此処は下手に動かず相手が自分の間合いまで近づくのを待つ方が得策だからだ。

ギリギリまで待つ。

すると足音は私のすぐ近くで止まる。

その瞬間・・・。

「ッ!」

すぐにシーツをその侵入者に投げつける。

「!!」

侵入者が怯んだ隙に即座に腕を掴んで背中に回り込む。

更にダガーを手元に転移させて侵入者の喉元に突きつけた。

「ヒィ!!」

「・・・寝首を掻くなら相手を間違えたな。」

「え、エスカ、わしじゃわし!!」

「・・・!」

聞き覚えのある声がして灯りを着ける。

「ネージュ・・・!」

確認するとすぐに拘束を解く。

「くはぁ、生きた心地がせんかった・・・!」

ネージュはその場で崩れるように座り込む。

「す、すまない。でも、どうしてここに・・・。」

「その・・・な・・・。」

ネージュは指を捏ねるように動かしながら言葉を詰まらせる。

「はっきり言え。」

「一緒に・・・寝ても、いいかの・・・。」

「は?」

「じゃから・・・。」

「はぁ・・・。」

そんなことの為に私の部屋にきたのかこいつ。

「なんだ、怖い夢でみたのか?」

「いや、その・・・【従者】が言ってたじゃろ・・・その・・・。」

「【従者】・・・ああ・・・。」

 

『わたくしが『殺す』と公言した以上、安眠出来る夜があると思われますな?』

 

あれか。

ウォパルで【従者】が最後に言った台詞だ。

「別に心配しなくてもいいだろ。夜だろうと、【従者】どころか、ダーカーが侵入したら直ぐに警報が鳴る。寝首をかかれることなんて・・・。」

「そういう問題じゃないのじゃ・・・。」

「なんだよ・・・。」

「寝ようと思ったらあやつの言葉が耳に何度も囁くように聞こえてきて眠れんのじゃ・・・。」

「なんだ、軽くトラウマになったのか?」

「分からん・・・けど、眠れんものは眠れんのじゃ・・・。」

そう言ってネージュは私の服の裾を掴む。

「ダメ、か・・・?」

「・・・ッ!」

うるうるとした涙目で見上げてくる顔が異様に可愛かった。

おそらく計算ではやっていないだろう。

こいつにはそんな頭があるわけがないからな。

「ハァ・・・。」

呆れ混じりにシーツを取ってベッドに戻って敷き直して横になる。

「ほら。」

「・・・!」

シーツを開けて誘うと、ネージュはちょっと嬉しそうに入ってきた。

「灯り消すぞ?」

「うむ!」

再び灯りを消すと、辺りは真っ暗になる。

「・・・。」

しばらく沈黙が続く。

ネージュはちゃんと寝ただろうか。

「エスカ・・・。」

・・・起きてたな。

「なんだ?」

「・・・。」

「!」

ネージュは急に抱きついてくる。

「ホントにどうした?なんか変だぞ、お前。」

「・・・怖かったのじゃ。」

「え・・・。」

「【従者】に襲われたときもそうだったんじゃが・・・いつもお主がいたから・・・一人は・・・心細かったのじゃ・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「なぁ、ネージュ。」

「なんじゃ・・・?」

「お前にとって・・・私って、なんだ?」

「どうしたんじゃ?急に。」

「いや、ちょっと、気になってな。」

少し気になっていた。

私はネージュに恨まれてもおかしくないことをしているのに、いつもこいつは私を仲間として迎え入れてくれる。

こいつに取って、私はどういう存在なのか。

そこに理由がある気がしたからだ。

「・・・仲間、なのじゃ。」

「そうか・・・。」

なんか、望んだ答えと違う。

だが、答えたくないのかもしれない。

だったら別に・・・。

「いや、違うかの。」

「・・・?」

なんだ?

「家族・・・みたいなもんかの。」

「家族・・・?」

「わしな・・・生まれ育ったアークスシップがダーカーに襲われて、もう家族がおらんかった。」

「・・・。」

話が急に重くなったな。

「お主のこと知ってな・・・お主、一人ぼっちみたいじゃったし、同じ似た者同士で寄り添えたらなって・・・。」

「それで私を誘ったのか・・・。」

「怒った・・・か?」

「いや・・・。」

正直、どんな理由があろうとこいつには色々借りがある。

どんな下心があろうと、こいつの仲間であろうと思った。

でも、なんだか嫌じゃなかった。

「お前は私がスレイヴデューマンだった頃・・・私が死にそうになったのを助け、仲間に引き入れ・・・生きる意思を奪われた私に、必死になって生きる希望を教えてくれた・・・お前は私にとって、色んな意味で『命の恩人』だ。」

「エスカ・・・その・・・大袈裟すぎるのじゃ・・・。」

「大袈裟なもんか・・・私はお前の仲間でいる限り、お前を守る。」

そうだ。

【従者】の件もある。

ネージュ一人では身を守ることすらできないだろう。

誰かが守ってやらなけれならない。

そんな役は、他の奴等に任せておけない。

私がネージュを守るんだ。

「頼りにしとるぞ・・・エスカ。」

ネージュは私の背中に顔を埋めて呟いた。

「・・・エスカ。」

「どうした?」

「今日会ったあやつ、また会えるかの・・・。」

「あいつ・・・?」

「フォースなのに剣持ってたあやつじゃ・・・。」

「ああ・・・。」

あの紫髪のアークスの少女。

「・・・気になるのか?」

「同じアルクトゥス出身みたいじゃから・・・故郷がもうないのに、そういう奴に合うと、なんだか昔のこと思い出せての・・・。」

「そうか・・・。」 

確かに、そう言うのはあるかもな。

「また・・・会えるかの。」

「会えるんじゃないか?同じアークスだ。シップが違ってても任務でバッタリ合うかもしれないしな。」

「そうかの・・・。」

「でもネージュ、忘れるなよ?」

「え、なんじゃ?」

「名前だよ。」

「そうじゃ、忘れてたのじゃ、えへへ・・・。」

「ふふ・・・。」

それから少し話をしていくうちにネージュはいつの間にか寝つき、私も寝た。

 

 

~ノワール 惑星ウォパル 海底エリア~

 

「・・・。」

目の前にダーカーがいた。

双剣と大剣をもった鳥頭のソルダ種だ。

だがすでに殺したあとで、断末魔と共に宙を待って地面に落ちる。

「やれやれだ・・・。」

寝込みを襲うつもりだったんだろうが、長期間帰らない身としては既に慣れきった事で、いくらでも冷静に対処出来る。

さて、もう一眠りするかと思った矢先だ。

『マスター。』

不意に通信機からアオの声がする。

「・・・珍しいな。お前から俺にかけてくるなんて。」

『ご就寝中でしたか?』

「まぁそうだけど、さっきダーカーが来て起きた。で、なんだ?」

『あの、報告・・・というかお知らせがありまして。』

「・・・なんだ?」

『友達が出来ました。』

「・・・そうか、どんなやつだ?」

『私と同じサポートパートナーで、活発な子で、その子のマスターの指令で人を探しているそうでした。マスターの命を受ける傍ら、手が空いていれば助力しようかと。』

「いいんじゃないか?お前はお前のやりたいようにやればいい。」

『感謝します、マスター。ご就寝の邪魔をしてはいけないので失礼致します。』

「ああ・・・。」

冷静に対処していたが正直驚いてはいた。

アオは感情を表に出さないような奴だから、俺同様、近づく奴も少ない。

それにあいつは『マスターの為に尽くすことが私の望みです。』と言うように、いまいち自分に対する願望がなかったので、友達が欲しいと思っていたのかという意外さもあった。

「・・・。」

周囲に敵影なし。

「・・・寝るか。」


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