黄金の虎   作:ぴよぴよひよこ

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第三十四話

 

* * *

 

 

 

 広範囲に(わた)り浮かぶ見えない円。まるで天体図のようなそれを嗅ぎ取り、ギリギリのタイミングで躱していく。

 大河はいくつもの線状に描かれる死をかいくぐりながら忠実に作戦を遂行していた。

 単に弄ばれているように見えるいまの状況も、そうする必要があるからこそ歯噛みしつつ身を投じているのだ。

 

「《焦らず、ゆっくりとだ。敵に感づかれるわけにはいかないからな》」

「《わーってるっつの》」

 

 二宮の通信に反駁することもせず剣の嵐を耐え続ける。弾き飛ばされたら終わり、首を落とされても終わりだ。暴風が如く振り回される剣撃の中、敵が予想通りに動くのをひたすらに待ち続けている。

 あの近界民がいまもっとも落としたいと思っているのは大河。それは作戦を立案した二宮も、大河自身も同様の認識を持っている。ゆえに彼は囮役を継続して引き受けた。ただ、変わったのは囮とまではいかずとも前衛陣が前のめり気味になっていることだ。

 この老兵は抑えるだけでも大河のみでは厳しいものがあるため、射手(シューター)銃手(ガンナー)以外は着かず寄らずで敵の意識を散らしている。

 

 上。右、下。左右同時。

 順番なようでいてほぼ一瞬の間に振り下ろされる鉄槌のような剣の一撃。

 その思考さえ許されない刹那の剣戟を匂いと直感でもって回避する。歴戦の経験と極限にまで高まった集中力が為せる(わざ)。眇めたまぶたの奥で、大河の瞳が獰猛に引き絞られている。

 

 位置にはつけた。あとは――

 

 遠距離攻撃陣の濃い弾幕に炸裂弾が紛れ込む。広い攻撃範囲は単に斬り潰すことはできず、爆風をかき消すにもいくつかの剣が要る。

 これは釣りだ。さあこの餌に敵はどう動くのか。

 失敗は許されない。いま発動している作戦は一度しか行えない、犠牲を無視した総力戦である。

 密林に潜む虎のように、大河の喉が鳴る。

 

「ふぅむ――」

 

 近界民が唸る声がする。動くか――それとも。

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 動きが変わった。

 相変わらず滝のように注がれる弾丸の塊を()ぎ斬りながら、ヴィザは敵兵の雰囲気が変わったことを敏感に感じ取っていた。

 

 『黄金の虎』が防御に徹して『星の杖(オルガノン)』の展開領域に居座っている。周囲には近接武器を装備した兵、少し離れた位置に射手たちが陣取る包囲戦。戦闘開始時からそう変わらない陣形ながら、そこにはたしかに"狙い"が感じられる。

 

(さすがに人数が多い。意識を割く者は厳選せねば)

 

 高く積み上げられた歴戦の経験から、ヴィザの戦闘勘はもはや人の域を超え多人数を同時に、完璧に警戒するという神業にまで達している。

 敵が隙をうかがう気配を察知し、展開する剣をいつでも差し向けられるように温存しつつ、なおかつ目の前の滝を削っているのである。

 それでもやはり限界はある。八方向、およそ八人が同時に向かってきて対処できる限界だ。

 無論、何も考えずに突っ込んでくる雑魚はその限りではない。熟練、ないし精鋭の兵でなければどれだけの数がいようと、今斬り潰している弾丸の如くその身を刻まれるであろう。

 

 今、彼を取り囲んでいるのは若くして精鋭の玄界(ミデン)の兵。一人一人が相応の力をもつと思しき戦士が十名以上。砦の屋上にも何人かの狙撃手が狙いを定め続けている。

 

(『黄金の虎』と二名の黒トリガー使いは最警戒として……、礼服の青年と防塵布(ぼうじんふ)をつけた少年。彼らは隙あらばいつでも刺せるもの(ヽヽヽヽヽ)を持っていると見ていいでしょうな)

 

 冷静に敵の戦力を見定める。

 その手に握るは祖国の国宝『星の杖(オルガノン)』。能力が知られているとはいえこれほどまでに耐えられるのはヴィザにとっても意外であった。

 先の時間稼ぎ(ヽヽヽヽ)の二人もそうだ。援護射撃の厚さに守られていたのを別としても虚を突かねば容易に討てぬ隙の無さは見事という他なかった。いまも寄らず離れず一定の距離を保たれ、その身を断つつもりの一撃もギリギリではあるが回避されている。

 

(やれやれ、老骨にはいささか厳しいですなぁ)

 

 内心でそうこぼしながらも、攻め手を緩めるようなことは一切しない。

 国のため。そのためだけに剣を振るう。国宝を担うその身こそ一振りの剣なのだ。使いこなすのは己でなく上官。アフトクラトル四大領主が一人、ハイレイン。

 すでに命令は下されている。全力で、敵を斬れと。

 

(じっくりと、一人ずつ削っていくとしましょう)

 

 『黄金の虎』は連携のためか火力に特化しすぎている武装を控えている。黒トリガー使いの二人は余力を残し、一刺しを狙っているようだ。狙撃は見てからでも対応可能。……ならば。

 いまもっとも厄介で潰しやすいのは、後方で炸裂弾を放っている巨漢の射手。

 

「まずは一人、――――っ!?」

 

 自らを剣の腹で弾き『星の杖(オルガノン)』と同等の速度で空を裂いたヴィザは、一人目の敵を斬ることに成功した。

 斬ることには。

 手に持った剣で仕留めるため接近したその足にあの重石のトリガーが作動した。弾丸は受けていないにも関わらず。

 

 ――罠か。

 

 恐らく姿を消した少女兵が辺りに設置して回っているのだろう、いつの間にか周囲にトリオン反応が増えていた。兵士ばかりに気を取られ、気配のないそれらにまでは対応しきれていなかったようだ。

 

(地面ごと刻むこともできましょうが、また(ヽヽ)重石をつけられてはかなわない)

 

 周囲にいる黒トリガー使いによってすでにやられたことがあった。展開した剣に重石をつけられると、単体相手でさえ攻撃を見切られる恐れがある。その愚は犯せない。

 迷いもなく瞬時に右の足先を斬り落とし、また己を弾いて距離を取る。そこへ薄緑色の気配が忍び寄っていたことを察知した。

 

 遠隔斬撃。空中へ回避。

 刹那の思考で逃れ、先の『黄金の虎』が砲撃を放った時と同じ構図となる。見るとやはり、狙っている。

 しかし恐れる必要はない。大砲は()の向きで攻撃がくる方向がわかってしまうのが弱みだ。右は威力重視の弾、左は炸裂する弾。どちらも威力はおかしいが、それさえ気を付けていれば防ぐ、ないし躱すことは造作もない。

 

(これは……)

 

 極光が突き抜けてくるような砲撃を弾いて逸らし、また屋上からも飛んでくる狙撃をも切り伏せたところへ、真下からうねる弾丸の群れが迫ってくる。追尾する性能をもった玄界の射撃トリガーのようだ。

 『星の杖(オルガノン)』に対し足元の死角を攻めるのは、これの性能を浅く(ヽヽ)知っている者ほど陥りやすい手。だが無意味なのは同じ攻め手を使った黒トリガー使いを擁する敵陣営なら承知のはず。

 すなわちこれも囮。

 

(槍兵が一人。剣士が三人。……伸びる斬撃)

 

 弾丸の群れに紛れて接近した敵兵が眼下から刀身を伸ばして攻撃してくる。しかしあの砲弾より遅ければ弾き飛ばすのになんの支障もない。軽く振り払おうと剣を差し向けようとし、

 

「ぬっ!?」

 

 突如放たれた本物の極光(ヽヽヽヽヽ)に目を焼かれた。

 

(これはいったい……!?)

 

 トリオン体は生身と比べ、肉体としての性能がずば抜けて優れている。膂力や瞬発力をはじめ、五感である聴力や視力も然りだ。だが目を焼くほどの光を受けようと、物理攻撃を無効化するトリオン体は光で実際に網膜を焼くことはできず、たとえ集束させた光線であろうと一時的に視界が奪われるだけですぐに回復する。

 されど今の光は違う。トリオン体の視力を奪うためのトリガーによって放たれたらしき光はヴィザの目を本当に焼き潰した。白く塗りつぶされたのは一瞬で、すぐに目を瞑った時のような幾何学模様が浮かび上がる。

 

 ――これはまずい。

 さすがのヴィザも視界がない状態でこの人数を相手にするのは容易いことではない。空中で食らったことで上下感覚も怪しいため、己を弾いて回避もままならない。

 危機に陥った彼は延びる斬撃も追尾する弾もまとめて防ぐべく、自身の周辺に剣を集め、最高速度で周回させ始めた。

 だがそこで突如剣が重くなる。あの重石を取りつける弾丸を今度こそ受けてしまったらしい。

 

「……ぬんっ!」

 

 目が見えなくとも『星の杖(オルガノン)』は身体の一部も同然。つけられた重石を薄く削いで落とし、再加速させる。

 アフトクラトルのトリオン体はトリガーと一体。武器を再生成するようにトリオン体の再構成もまた行える。回復とまではいかずとも、ごく一部に限定すれば似たようなことも可能。あと十秒もあれば視力も戻るだろう。それまでは重石を削ぎつつ全力で剣を回せば堪えきれるはずだ。

 

(さすがに……防ぎきれませんか)

 

 身体を擦過した弾丸が地面に穴を穿つ。

 足裏でその衝撃を確認したヴィザは何発かの攻撃は受けても仕方がないと諦めた。頭と胸さえ死守すれば立て直しは利く。砲撃だけは確実に避けるために『黄金の虎』の気配は厳密に追いかけなければならないが。もし放たれれば方向感覚が怪しかろうが強引にでも移動せねば。

 地に落ちても剣を酷使して防御に徹する。極光を受ける前の敵の配置、現在の気配。歴戦の経験から紡ぎ出される回避能力は目を奪われてなお敵の攻撃を掻い潜っていく。

 あと六秒。

 

(右前方、遠隔斬撃。左右からまた伸びる斬撃。通常弾、追尾弾多数)

 

 空中では平衡感覚も怪しかったが、地に足をつけてしまえばその程度察知するのはわけもない。地面に降り立ったならあの砲撃も飛んではこないだろう。

 気配から位置を割り出し、無傷(ヽヽ)の剣で斬り払う。

 手応えあり、二人落とした。剣士と射手の一人ずつ。

 あと三秒。

 

「――――ぐっ!」

 

 背後の剣士の攻撃。読み逃したか? いや違う、ただ伸びるだけではなく、妙な起動でうねってきた。この気配、防塵布の少年兵か。

 だが感じ取れた殺気が半分無意識のうちに身体を避けさせた。左足をかすめただけだ。

 お返しとばかりに振るった刃がその身を分かつ。

 あと一秒。

 

(っ!?)

 

 全身に巻き付く鎖の感触。また罠を踏んだか。これは黒トリガー使いの能力。

 目を開く。視力は戻った。眼前に迫る『黄金の虎』。

 

「――『星の杖(オルガノン)』!」

「さっきより(おせ)えよ!」

 

 広く展開した剣では間に合わず重石の欠けらが残る刃を左右からぶつけたが、驚くことに爪を纏った手で止められた。落としたはずの右手も輝く爪が代役を買って出ている。疑似的な回復能力まで有するとは厄介な。

 それをおいても恐るべき膂力、やはり彼のトリオン体は通常とは異なるらしい。

 けれども剣はそれだけではない。上下からも叩き込み、足の爪と盾で防がれても押し潰すように攻撃を加えていく。回避できない状態に追い込んでしまえば首を落として終いにできる。

 

「チッ!」

 

 焦れた虎の大砲が作動する。この距離で撃つか。周囲には味方もいるというのに。

 いや……これは陽動、気を散らすための誘い(ヽヽ)だ。虎が何か吐きだして足元に転がった。反射的に斬る。

 

「これ、はっ……!?」

 

 途端、撒き散らされる電光。これは――電撃。

 どうやらトリオン体の動きを封じる手投げ弾らしい。……慌てることはない。アフトクラトルのトリオン体はこの程度であれば即座に回復する。展開した剣も自在に動かせる。

 

「もらった!」

 

 背後に槍兵の声。奇襲に叫するとは精鋭といえども青さ(ヽヽ)が残るか。

 こちらの備えはまだまだある。狙撃を止めるための剣を除いても、この場の敵を切り伏せるだけのものは残っている。

 

「甘い」

 

 振り返りもせず槍兵の胴体を上下泣き別れにさせ、杖剣で鎖を解き放った。そこに仕込まれた重石の罠が発動しても、知ってさえいれば瞬時に剣を再生成すれば済む話。

 動けない『黄金の虎』をここで――

 

「――と、思うじゃん?」

 

 槍兵の負け惜しみのような言葉。しかし事実脅威は迫っていた。

 閃光のような残影、小柄な身体でどうやって動いているのか剣を持った少女がヴィザを切り刻んで通り抜けていく。

 

「……うそ」

 

 否、切り刻まれたのは少女の方だった。ヴィザは目にも止まらぬ速さの斬撃を、目に映さぬまま防ぎきって、かつ斬り返したのだ。

 

「面白いトリガーをお持ちのようですな」

 

 言いつつ、仕留めた少女を振り返りもせずに杖剣を持ちなおす。今度こそ『黄金の虎』を討つべくヴィザが無事な左足で踏み込もうとした瞬間、

 

「っ!?」

 

 突如何もなかった場所から斬撃が飛び出した。これは遠隔斬撃の黒トリガーが有する能力のはず。しかし攻撃の気配は感じられなかったのに。

 危うく両足を落とされるところだった。いったい何が、とヴィザが下に視線をやると、先の大爆撃で融解しかかった地面にはありえるはずもない石ころ(ヽヽヽ)

 

(斬撃を礫に込めて……面白いことを考える)

 

 おそらくは物体に伝播するのであろう斬撃を石に撃ちこみ、あの少女にばら撒かせた。即席の斬撃手投げ弾というわけだ。なるほど気配が感じられようはずもない。

 だがそのぶん石は小さく、狙いもつけられなかったらしい。ヴィザの脚についた傷は行動を阻害するほどには至らず終わった。

 

「……ごめんなさい、先に落ちます」

 

 少女の仲間に告げる謝罪と同時、槍兵ともども脱出機能が発動し、粉塵がヴィザと『黄金の虎』を包み込む。

 他の者より粉煙が大きい。これは煙幕か? 不審に思ったヴィザは再び奪われた視界で気配を頼りに敵の攻撃を読み始めた。

 周辺に弾丸、黒トリガーの気配、足元には遠隔斬撃が。

 回避は――動けない。

 叩き込んだ剣を全て受け止めた『黄金の虎』がその爪で握りしめて動きを封じている。二、三本程度なら円を広げればいいが、これほどまでに多くの()を掴まれては大きく動くことができないのだ。

 間合いは三歩。円を消すにも虎を斬るにも時間が足りぬ。

 

「まだまだ」

「マジか……!」

 

 ならば斬撃自体を斬り伏せればいい。

 遠くに使い手の驚く声が聞こえる。

 線上に伸びる遠隔斬撃は吹き出すように刃が出現するまで実体を持たない。いや斬撃自体にも実体などないだろう。が、練達の極みにいるヴィザにとって、杖剣で以て斬撃の飛び出す瞬間に狙いを定めてかき消すなど、羽虫をはたき落とすよりも容易いことだった。石に込められたものと違い、使い手から伸びてくる気配さえあれば。

 

 そろそろ決め手(ヽヽヽ)が来る。

 

 確信したヴィザの警戒度が上がる。

 玄界の兵にはがむしゃらに突っ込んでくるような無能はいない。彼らはここまでじっくりと積み上げてきたのだ。

 これまでの全てが布石。予想していたヴィザの反応は鋭かった。

 

『強』印( ブースト )(クア)――――」

 

 煙が晴れた背後で黒い装いをした黒トリガー使いの少年が微塵切りに細断される。素早い動きに多彩な能力。その存在は常に頭の隅に意識していた。接近されれば歴戦の経験が半ば無意識に身体を動かせる程度には。

 

「――――なんて、ね」

「な――」

 

 首に一閃。

 柔らかな声音とともに急所を裂かれたヴィザの顔に驚愕が浮かび上がる。凝然と見上げたそこに妙齢の女性が夜空に映える長い金髪をたなびかせていた。

 ……完全にノーマークだった。彼女はずっと弾丸の雨を降らせていたはず。射手ではなかったのか。

 いやそもそも、いつからそこにいたのか? 気配などまるでなかった。姿を消した程度では隠し切れない殺気や徴候は感じられなかったのに。

 おそらく『窓の影(スピラスキア)』のような空間転移のトリガーだろうか。

 

「…………!」

 

 一瞬遅れて敵の狙いに気づく。

 なるほど決め手をこの形にするために、無駄だと知りつつあえて下からの攻撃を集中させたらしい。常に周辺に気配を散らし、偽りの大砲に気を取らせて動きを封じ、背後から声をかけ(ヽヽヽヽ)奇襲、そして目にも止まらぬ剣閃と遠隔斬撃に剣を振るわせた。鳴りを潜めた狙撃も上を向かせないための沈黙か。

 そして最警戒していた黒トリガーこそが最大の囮。贅沢な餌にまんまと食らいつき、斬った瞬間僅かに気が緩んだようだ。月の隠れた宵闇は影も映さず、転移してきた女性は無音のまま首をかき切っていった。

 

「……見事」

 

 これだから戦いはやめられない。

 ヴィザにとって玄界の兵一人あたりは取るに足らない戦力であった。それは『黄金の虎』でさえ同様だ。一対一、いや数を揃えようとも、どんな相手だろうと負けるつもりなどなかった。

 きっと、あの激しい戦闘の中で策を練ったのだろう。高みへ手をかけるために誰もが奮起したのだろう。ゆえにこそ傲慢に見えた『黄金の虎』や強大な戦力である黒トリガー使いでさえ自らを囮とした。

 若者が切磋琢磨するさまは見ていて飽きぬ。それがたとえ敵であろうとも。

 

 ――だからこそ戦いは、楽しい。

 

 敗北を受けてなおヴィザは笑みを浮かべた。全力を出せと言われ、全力を出すつもりで臨んだ決戦。しかし彼はそれを出し切る前に詰んでしまった。

 斬った数で言えば(まさ)っていても、敵の消耗は一手ずつ迫るための必要な犠牲だった。

 

 いかな精鋭とはいえ、ここまで若き兵にやられるとは……この身も焼きが回ったか。

 ひびの入るトリオン体で静かに瞑目して、己の失態に苦笑する。

 久々の全力に力が入りすぎたのかもしれない。焦ることはなかった。引き気味に戦い、狩れる敵から潰して行けば勝てる戦いだったのかもしれない。

 だが現実として今敗北し、その身は砕けようとしている。

 

「――ですが、我々(ヽヽ)が負けたわけではない」

 

 その言葉とともにトリオン体が崩壊して辺りは白煙にまみれた。換装が解かれる直前、予めミラに連絡を入れて撤退の準備はできている。

 開かれた大窓に飛び込み、視界から消えゆく兵たちの姿を見ながら最後の笑みを浮かべた。

 

「さらばです、玄界の勇士たちよ」

 

 

 




 



ここでは黒江の『魔光』の能力をスタングレネード扱いしていますが公式にはまだ不明です。

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