黄金の虎   作:ぴよぴよひよこ

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日間ランキングに載っててビビりました。
ありがとうございます。


 


第十三話

 

 

 

 どれだけ殺しただろうか。すでに市街地も無人の発電区域と同じく、いやそれ以上に見るも無残な更地へと成り果てている。整然と立ち並んでいた家屋も、細やかな装飾を施された街道も、いまや足を踏みしめるだけで塵となって霧散する。

 一応、未だ原型を保っている建物も彼方に見えてはいたものの、市街地を囲う防壁にこびりついた残滓に過ぎないそれらはむしろ、侘しさしか感じさせなかった。

 無人の荒野となった中、なんとか逃げ延びた一部の近界民(ネイバー)が侵入者の危険性を伝えたのか、送り込まれてくるのが再びトリオン兵ばかりになって、さらにそれも返り討ちにした大河はしばしの休憩を挟んでいた。

 

「んー、これは違う……」

《もうちょい前、前。そこら辺に転がってない?》

「お、あったあった」

 

 彼が探しているのは本来の遠征の成果。

 大河自身は殺戮をメインに楽しむ旅だと捉えているが、遠征自体はトリガー奪取が目的である。今は殲滅した自警団が残していったトリガーを瓦礫の山から探しているのだ。

 干し草の山から針を見つけるような作業だが、サイドエフェクトと遠征艇のトリオン探知を組み合わせればそこまでの苦労はない。

 

「これはさっきのと(おんな)じか。こっちはボロボロ、と」

 

 探し当てたトリガーの中からダブ(ヽヽ)りと破損したものを弾き、解析と再利用に使えそうなものを選りすぐる。どれもこれも血と煤に塗れていて、もはや技術ではなく怨念の塊のようにさえ見えるが、大河は起動さえできれば何も問題はないと言わんばかりに無感動に拾い集めていった。

 自警団が持っていた銃型トリガーにはあまり特殊な技術は見られなかったのだが、そもそも見せる前に殲滅してしまったので一応回収している。それと、大河はサイドエフェクトにてこの国のトリガーには妙な匂いが混じっていることに気付いていた。

 使用者のものでないトリオンの匂い。どうみても(ブラック)トリガーではないそれに付随していた匂いは、おそらく(くに)から供給される外部エネルギーによるものだ。

 発動中のトリガーに外部から遠隔でエネルギーを供給する――――

 触れた部分からトリガーを臨時接続することはボーダーでも可能だが、遠隔供給は未だ叶わない未知の技術。持ち帰る意義はある。

 

《んじゃ適当に置いといていいよ。ピヨちゃんに回収させっから》

「ういー、よろしくー」

 

 大河が集め終わったものを比較的平らな地面に置く。そこへすぐさま覆いかぶさるように影が差した。

 『ピヨちゃん』とはミサキがペット代わりに作ったものを流用した大河のサポート用鳥型トリオン兵だ。上空から大河を観測して『思考追跡』や通信の補助を行い、集めたトリガーを回収する役目も担う。

 

「落とすなよー」

 

 鷹ほどの大きさをしたそれがトリガーを回収して大空へ戻っていく。

 それが見えなくなったころ、大河の鼻が新たな敵の襲来を告げた。

 

「っと……お出ましか」

 

 牙を剥いて笑う大河の視線の先に黒い(ゲート)が開き、自警団の不揃いだったそれとは異なって白一色に染まる戦闘体を構築した一団が現れた。

 防衛軍、守護兵団……呼び方は国によってさまざまだが、要はその国の戦力の粋を集めた主力軍隊である。アクティナのものは白を基調とした軍服に白銀の飾りが拵えられた特徴的な格好で統一されているらしい。

 己を囲うようにして数百人が向かってくるのを、大河は笑って眺めつづける。

 遠距離から砲撃もできたが、とある思惑もあってこの国の人間と会話する必要があったのだ。

 

「よう。わざわざ殺されにご苦労なこったな」

 

 数十メートルを空けて足を止めた一団に挑発するようなことを言うと、一歩前に出た金髪の女性が憎しみを露わにして叫び返した。

 

「黙れ! よくも我らの国をこんなにも……! ……今すぐ殺してやりたいところだが、それでは収支が合わん。貴様を捕らえてこの国の()にするというのが上の決定だ。貴様が奪ったものは、文字通りその命で(あがな)ってもらうぞ!」

「はは、できるもんならやってみろ」

 

 アクティナの部隊長らしき女が言ったのは、大河をマザートリガーに捧げるという意味の言葉。

 強大なトリオン能力者を生贄にすればそれだけの国土が得られる。その点で言えば大河のそれは圧倒的だ。間違いなく近界一の大国になることは明白。

 そしてそういった目に見える利だけでなく、大河に踏みにじられた者は帰って来ずとも、祖国のために殉じたとあれば哀れな国民たちにも死んだ意味があっただろうとこの国の上層部は決断したらしい。

 並ぶ軍勢は間違いなくアクティナの主力兵団。こと国内においては無敵とも称される強力な部隊である。

 

「口が利けるうちに確認しておくが、貴様、どこの国の者だ?」

 

 最後に飛んできた問いに、大河は内心でほくそ笑んだ。

 近界民はとかく敵の所属を重要視する。どこの国が、どれだけの戦力を蓄えているかは近界(ネイバーフッド)の国々にとって重要な情報だ。惑星国家の軌道周期によっては数十年単位でしかすれ違わない国もあるし、近くとも敵対していれば内部情勢は遮断されてしまう。

 まずは情報を得て、向こうが劣っていれば人材を、(まさ)っていれば技術を吸収するべく軍の運用も変わっていく。

 どこぞの近界民から聞き出した(ヽヽヽヽヽ)大河はそれを知っている。だからこそ今この時点では存在すら知らないレプリカの有用性をのちに認めることになるのだ。

 とりわけアクティナは独自性の強い発展をしている背景から外交に関して閉鎖的な側面をもつ。余所の国から攻めてきた己に対し、必ずその質問をするだろうと読んでいたのだった。

 

 だから、答える。

 

「……ラフォーレ」

 

 嘘偽りをなんの戸惑いもなくするりと吐き出す。

 ラフォーレとは、ここアクティナと似たような軌道で近界を廻る国家である。

 この国とは対照的に緑豊かな肥沃の惑星であり、二つの国家は犬猿の仲でもあった。大河がその名を口にした理由は、軌道が近いからこそ頻繁にぶつかり合うラフォーレがここで稼いだ憎悪(ヘイト)を向けさせるスケープゴートとしてちょうどいいのと、もう一つ。

 つい先日まで、彼がその国を蹂躙していたからである。

 

 つまり、こういうことだ。

 ラフォーレで暴れてきた際にはアクティナの名を、アクティナで暴れている今はラフォーレの名を。それぞれにとっての鬼門である国を騙り食い潰し合わせるという悪辣な作戦の仕込み(ヽヽヽ)

 全ては玄界(ミデン)への目を誤魔化すために行われる隠蔽工作だ。

 

「やはり、貴様……!」

 

 そんな大河の企みにまんまと乗ってしまったアクティナの部隊長は、怒りに震えながら己の武装を解き放った。

 

「『光輝の針(スコーニィ)』!!」

 

 バチバチと音を立てて展開していくそれは、すでにトリオン体であったはずの部隊長の身体を半分飲み込んで顕現した。

 頭はフルフェイスメットのような防具がすっぽりと覆い隠し、背中には二つの筒が背負われる。もっとも特徴的なのは右手の甲から伸びる銀色の針。太い配線が背中の筒に接続された姿は、どこか除染作業員じみた奇怪な風体だ。

 

「……、変なカッコ」

 

 ぶっちゃけて言うと、ダサい。

 思わず声に出してしまった大河に、部隊長はメットに隠れた中で歯を食いしばったのだろう、ギリリと軋むような音を立ててから叫んだ。

 

「我が国のトリガー技術、甘く見るなよ……!」

「ハッ、せいぜい楽しませてくれよな」

 

 鼻で笑い飛ばしながら、しかし決して甘く見るようなことはしない。全てが未知の近界ではいつだって油断大敵。いつも飄々とした大河とて、相手を舐めるようなことはできないのだ。

 だから今もしっかりと見定めている。培ってきた戦闘考察力とサイドエフェクトを頼りに、目の前の近界民の脅威度を注意深く観察する。

 ――トリオン能力自体は上の中といったところ。武装からはこの国特有のトリオンと何かが混ざり合ったような匂い。おそらく外部から供給されるエネルギー。しかしそれだけでなく妙な匂いも存在している。金属……銅か。針の先端からは何やら焦げたような匂いがある。

 嗅ぎ取った情報から推察するに、

 

(電撃、か)

 

 そう結論付けた。

 電撃はトリオン体に対しても極めて有効な攻撃手段である。トリオンを介さないほぼ全ての物理攻撃を無効化する戦闘体にも、ある程度の打撃を与えることができる。

 それは電撃が与えるのが外的なダメージではなく、内部に対しての攻撃だからだ。

 トリオン体を制御するのは伝達脳とトリオン供給機関。それらを繋げる伝達系のシステムには電気的信号が使われている。そこに電撃を与えるとエラーが起こり、さながら痺れたかのようにしばらく行動不能にさせることができるのである。

 

 目的は大河の捕縛と宣言したアクティナの軍は、たしかにそのための装備を繰り出してきたらしい。

 だが先にわかってしまえば恐れるようなことはない。大河の超高コストな戦闘体は特殊な濃縮トリオンを使用した強化戦闘体。雷に打たれたところでびくともしない強靭さを誇っている。

 それに何より、

 

「先手必勝だ」

 

 部隊を展開させようとした部隊長に先んじてハイドラを作動させた大河は、暴力的なまでのトリオンを注ぎ込んで遠慮なしの連続掃射を敢行した。

 あのトリガーを装備しているのは隊長のみ。試作機か何か知らないが、他はおそらく全てサポートに回る算段らしい。

 ならばまずそいつをブチ殺してしまえばいい。シンプルに考えた大河は情け無用とばかりに必殺の砲弾を叩き込んだのだった。

 

「――――お?」

 

 およそ十秒。念には念を入れた殲滅射撃は隊長の後ろにいた部隊の数十人を同時に屠ったが、大河はハイドラを停止させたあと不思議そうに声をこぼした。

 地をどよもす砲撃の後には何も残らない、はずだった。

 

「――っ、驚異的な破壊力だな」

「へえ、……少しはやるみたいじゃねーか」

 

 目を眇めた大河の視線の先には粉塵の中で三角錐型の白いシールドを展開した隊長の姿。煙を上げながらも先の猛攻を防ぎ切った彼女に、大河は面白そうに歯を剥いた。

 

「どんな仕掛けだ、そりゃあ」

 

 地を蹴り急速接近して爪を叩きつける。狙いはシールドそのもの。

 己の大砲を真正面から防ぎ切ったそのシステムは、ボーダーにはない特殊な武装だ。できれば無傷で手に入れたいが、そういう手加減が苦手な彼は情報だけでも持ち帰るためにまずはと間近で破壊を試みた。

 

「ふんっ!」

「っ、と、お?」

 

 白い三角錐に爪が突き刺さる直前、分厚い盾の表面が細かに分割されて弾け飛ぶ。その勢いで大河はたたらを踏む結果となった。

 それ自体が攻撃手段にも使えそうな威力で爆裂して、大河の虎爪を押し返したのだ。

 そしてそんな大きすぎる隙を敵が見逃すはずもなく。

 

「くらえ!」

「っ! あぶ、――!?」

 

 千鳥が(いなな)くような音とともに針先から迸った電光を、脅威の反射速度で回避した大河がしかし直撃(ヽヽ)を受けて地を転がった。

 雷速に至る攻撃はたしかに目を瞠るものではあったものの、強化戦闘体と歴戦の経験が射線を読み回避を可能にしたはずだった。だが青白い光は空を切ると思われた弾道をほぼ百八十度曲げて帰ってきたのだ。

 これにはさすがの大河も反応しきれず、背中に直撃を受けて吹き飛んだのだった。

 

「って~……、やっべえな、今の」

《だいじょぶ?》

「《おう、問題ない》」

 

 転がりながら体勢を整え、挟撃してきた後方部隊に反撃しつつ通信で考察を練る。

 

「《ありゃただの電気じゃねーな。トリオンと混ざってるのかもしれん》」

《……なにそれ、そんなことできるの?》

「《知らねーよ、俺は技術者(エンジニア)じゃねえんだから》」

 

 深くは考えずに言い捨てる。

 しかし彼がサイドエフェクトで感じ取ったことを元に至った考えは、のちの解析でわかることだがその実、真に迫っていた。

 

 太陽の国の実験兵装『光輝の針(スコーニィ)』。

 これは背中に背負う二つの筒の中に本物の発電機とトリオンタービンをそれぞれ装着し、生まれたエネルギーを混ぜ合わせて射出するアクティナの試作トリガーである。

 (くに)から供給されるエネルギーを元に電気とトリオンを融合・増幅させ、両者の特性を持ちトリオン体にも破壊をもたらす驚異の電撃を撃ち出す。

 射撃として見た場合、弾速は雷に匹敵し、しかも自動でトリオン体を追撃する誘導性をも持ち合わせている。

 三角錐型のシールドには電磁装甲のようなシステムが搭載され、敵の攻撃を察知すると表面の薄いトリオン板がはじけ飛び、無効化、もしくは受け流す。本来ならば一度しか使えない電磁装甲であるが、トリガーであるこれはトリオンを供給する限り何度でもその役割を果たす。大河の猛攻を凌ぎきったのも、真正面から受け止めずに弾き飛ばしたことが功を奏したようだ。

 

「《うーん……、ライトニングより高い速度のくせにバイパー軌道で追っかけてくるハウンド、みたいな感じか》」

《なにそれずるい》

 

 描いた推論にミサキが身も蓋もない感想をこぼし、大河は苦笑をもらした。

 戦場に似合わぬ微笑の彼方ではハイドラカノン砲が炸裂してまた数十人が粉々になっている。

 

《ねぇ兄貴》

「ん?」

 

 激しい戦闘の中、耳に届く静かな声。

 降り注ぐ雷をシールドで防ぎながら、通信先に意識を割きすぎないよう注意してミサキの言葉を待つ。

 

《アレ欲しい》

「…………」

《絶対欲しい。壊さないで持って帰ってきてね》

「……了解」

 

 告げられたのはおねだりであった。

 大河はやや困ったように間を置いて頷く。彼も妹の趣味は熟知している。見たこともない技術となれば、彼女が今遠征艇の中で目を輝かせているだろうことは容易に想像がついた。

 

 大河が生き物を好むように、ミサキは機械類に興味を引かれるのである。

 

 元は実家で暮らしていたころ飼っていた犬やら猫やらが、大河のせいで長生きしなかったことに起因している。別に虐待したりしていたわけではない。ただじっと眺め続けていただけだ。

 しかし肉食獣のような視線に晒され続けたペットたちには多大なストレスが生じていたらしく、木場家で飼われる生き物はついぞ平均寿命を迎えることはできなかったのだった。

 

 そんな折りに両親に買ってもらったロボットの犬が、ミサキのメカ好きへの第一歩だった。

 しっかりとメンテナンスをすれば決して損なわれない無機物のペットたちに、「機械なら死なないし兄貴が興味もたないから」とどっぷりハマり込んでいった。それが長じて兄を追うついでにボーダーへ技術者(エンジニア)としての入隊を可能とさせたのであった。

 この遠征への参加も大河のサポートのためと同時に、最新技術をいち早く手に入れられるということに魅せられたもの大きい。

 

 そんな彼女の今の夢は『完璧な動物を再現したトリオン兵の製作』。トリガーを奪取するこの遠征の目的にひっそりと潜り込ませたミサキの野望である。

 玄界にはない技術を貪欲に呑み込むのは彼女も望むところ。他国にすらないあのトリガーはぜひとも欲しい。

 

「しっかし、壊さないで奪うとなると……」

 

 言いながら、有象無象のトリガー使いを切り刻んでいく。『スコーニィ』とやらはたしかに脅威だが、その射程は短いらしく大河の機動力であれば距離を取るのは難しいことではない。ゆえにまずは周辺の雑魚を、とこうして薙ぎ払っているわけである。

 妙な形のブレードを展開した敵を刃ごと細断。背後から迫った者を足の爪で掴み、そのまま握りつぶす。

 

「けっこう荷が重いな」

 

 時おり不意の一撃として隊長格の女にハイドラを撃ちこんでみたが、科学国家だけあってレーダーかトリオン感知能力か知れないが優れているようだ。あの三角錐のシールドできっちりと防がれている。

 狙ったトリガーを無傷で奪う。その条件はなかなかに厳しい、と彼は少し悩んでいた。

 

 木場兄妹のトリガー奪取の手順は主に

 殲滅→回収

 である。

 

 先ほど市街地に攻め込んだ時のように暴れ回ったあと、無事(ヽヽ)なトリガーを拾い集めるのが主な手段なのだ。大河の攻撃の余波で破損することは珍しくない、どころか完璧に無傷のトリガーを入手できることは稀ですらある。

 

《あのトリガーの攻撃はトリオン体を追尾するみたいだけど、たぶん敵味方の区別がついてないんだと思う》

 

 ミサキが解析した情報をまとめた考察を言い聞かせてくれる。

 ふむ、と心のうちで頷きつつ大河は敵を殺すその手を止めることはない。

 

《でなきゃ他の部隊とこんなに距離をとる陣形なんか組まないだろうし。誤射防止のために一定距離直進して、そこから一番近いトリオン体に追尾するんじゃないかな》

「《意外と万能ってわけじゃねーんだな》」

《だからたぶん試作型じゃない? あれ持ってるの一人だけだし、味方いるところにあんまり撃ってこないし》

 

 なるほど、と少し離れたところで命令を下しているのであろう耳に手を当てて叫んでいる隊長格を流し見る。

 

「《ま、やるだけやってみるか》」

 

 ――向こうも向こうで勝利条件に()がついている。

 心の中で断じた大河は周辺の近界民を切り刻みながら作戦を練り始めた。

 

 侵略者を殺すだけならあの新型を投入する意味はあまりない。たしかに初見殺しとも言える性能ではあるものの、殺害目的ならば単体で張り合うより弾幕を張った方が確実だ。

 しかし向こうの目的は無力化、ないしトリオン器官の奪取。

 濃すぎる弾幕は戦闘体を解除させた後の生身を傷つけてしまう。それがトリオン器官にでも当たればアクティナ軍の奮戦は骨折り損となってしまうのである。

 新型トリガーと己の身柄。全くつり合いは取れていないが、手加減しなければならないのはどうやらお互いさまらしい。

 

「ふーむ……」

 

 唸りながら考察を続ける。

 メテオラで広範囲爆撃すればあの盾ごと粉砕することも可能ではあるだろう。しかし炸裂弾(メテオラ)は攻撃の余波が残りやすい。直撃すればトリオン体の換装を強制解除させた上でさらに逆巻く爆炎が敵の身体を襲うのだ。トリガーがもろとも消滅してしまうため捕獲にはこれ以上ないほど向いていない。

 

「――となると」

 

 敵部隊最後の一人を八つ裂きにし、そしてトドメ(ヽヽヽ)を刺した大河が爪を差し向ける。

 血の滴るそれを向けられた女はびくりと身体を震わせた。

 

「直接引き裂くしかねーか」

 

 獣のように喉が鳴る。

 求めていたモノはもう充分堪能したし、場は整った(ヽヽヽヽヽ)。邪魔者がいなければいくらでもやりようはある。後は本来の遠征目的を果たすだけ。

 数百人を瞬く間に殺し尽くした大河は、返り血にまみれながら怜悧な眼光を煌めかせた。

 

 

 

 




 



オリジナルトリガー、光輝の針(スコーニィ)
たしかギリシャ語で「灰」だったかな?(うろ覚え)ちなみにアクティナは「光線」です。

トリオン体に対する電撃について。
原作ではラービットが使用し日佐人がくらってたやつですね。外傷無しで行動不能、のちにエネドラ戦に復帰、というところから「エラーを起こさせ疑似的に痺れさせる」と解釈しております。
ラービットのあれがトリオンと混ざってたからとか言われたら詰む。



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