君の名は、白き望み。   作:氷桜

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<10:白望>

『一回戦、圧倒的な強さで勝利をしたのは宮守高校です!』

 

何処か、一枚の幕を通して聞いている気がする。

全国大会、一回戦。

他校の持ち点を0にした上での、完全勝利。

其のはず、なのに。

迷いは、広がるばかり。

 

「……シロ、未だに迷ったままなのかい?」

 

勝ちに浮かれる、4人から距離を取った上で。

小さな一室で。

トシさんは、そう話しかけてきた。

正確には、塞や胡桃は私に気付いていたような気がするけれど。

それでも、トヨネやエイスリンの方に行ってくれたのは。

一重に、私の事を考えてくれたからだと思っている。

 

「……どう、なのかな。」

 

「ふぅむ。 これは根深い、ねえ。」

 

何に、迷っているのか。

何から、逃げようとしているのか。

それに気付け無いまま。

気付こうとしないまま。

私は、ずっと迷っている。

 

「……当ててみよう。 京太郎の事だろう?」

 

「…………。」

 

そう、なんだろうか。

本当に、彼のせいで悩み続けているのだろうか。

幾ら、悩んでも。

幾ら、知ろうとしても。

私には、分からない。

それ以外なら、悩めば答えが見えるというのに。

 

「これは重症だね……おい、京太郎!」

 

「……もう良いの?」

 

「お前じゃないとどうしようもないよ。」

 

隠れてたのだろうか。

京太郎が、トシさんの言葉に反応して襖から姿を見せる。

……小さく、胸が鳴る。

 

「……良いかい、シロ。」

 

「……ん?」

 

「それ自体は悪いことじゃないんだ。 ……しっかり、考えな。」

 

其の言葉を残して、トシさんは去ってしまう。

残されたのは、私と彼。

何に対しての助言なのかすら、伝えずに。

 

「……ねえ、京太郎。」

 

「……はい。」

 

「私……分からない。 考えても、何も。」

 

日々を過ごす度に、その迷いは広がっていく。

唯一緩むのは、京太郎といる時だけ。

たった一人、家で悩む時。

幾ら考えても分からなくて――――嫌になる。

 

「変、なのかな。」

 

「変、じゃないです。」

 

「…………変、だよ。」

 

こんな、迷い続けてるなんて。

他の皆が、目標に向かって頑張ってるのに。

私一人だけが、違う方を向いている。

そして、その先には京太郎がいる。

 

「……京太郎は、答え。 分かる?」

 

「……分かります。 俺も、考えましたから。」

 

「……それは。」

 

教えて貰えること?

自分で考えること?

……私の、こと?

 

其の言葉に続く言葉は、幾らでも浮かんだけれど。

私には、聞けなかった。

聞いてしまえば。

多分――――答えは、分かるけれど。

もう、止まれなくなる直感があったから。

 

「……シロさん、約束しましょう。」

 

「……やく、そく?」

 

「俺の個人戦。 若し、優勝できれば。」

 

――――俺は、貴女に悩んだ答えを告げようと思います。

 

そう言って、京太郎は去っていった。

……なんで、だろう。

悩み、迷いの形が変わった気がする。

……顔が、元に戻らない。

 

……多分。

気付いているのに。

私は、見ない振りをしているんだ。

それが。

能力でない、私が出した答えで。

向き合う、覚悟だった。


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