君の名は、白き望み。 作:氷桜
『一回戦、圧倒的な強さで勝利をしたのは宮守高校です!』
何処か、一枚の幕を通して聞いている気がする。
全国大会、一回戦。
他校の持ち点を0にした上での、完全勝利。
其のはず、なのに。
迷いは、広がるばかり。
「……シロ、未だに迷ったままなのかい?」
勝ちに浮かれる、4人から距離を取った上で。
小さな一室で。
トシさんは、そう話しかけてきた。
正確には、塞や胡桃は私に気付いていたような気がするけれど。
それでも、トヨネやエイスリンの方に行ってくれたのは。
一重に、私の事を考えてくれたからだと思っている。
「……どう、なのかな。」
「ふぅむ。 これは根深い、ねえ。」
何に、迷っているのか。
何から、逃げようとしているのか。
それに気付け無いまま。
気付こうとしないまま。
私は、ずっと迷っている。
「……当ててみよう。 京太郎の事だろう?」
「…………。」
そう、なんだろうか。
本当に、彼のせいで悩み続けているのだろうか。
幾ら、悩んでも。
幾ら、知ろうとしても。
私には、分からない。
それ以外なら、悩めば答えが見えるというのに。
「これは重症だね……おい、京太郎!」
「……もう良いの?」
「お前じゃないとどうしようもないよ。」
隠れてたのだろうか。
京太郎が、トシさんの言葉に反応して襖から姿を見せる。
……小さく、胸が鳴る。
「……良いかい、シロ。」
「……ん?」
「それ自体は悪いことじゃないんだ。 ……しっかり、考えな。」
其の言葉を残して、トシさんは去ってしまう。
残されたのは、私と彼。
何に対しての助言なのかすら、伝えずに。
「……ねえ、京太郎。」
「……はい。」
「私……分からない。 考えても、何も。」
日々を過ごす度に、その迷いは広がっていく。
唯一緩むのは、京太郎といる時だけ。
たった一人、家で悩む時。
幾ら考えても分からなくて――――嫌になる。
「変、なのかな。」
「変、じゃないです。」
「…………変、だよ。」
こんな、迷い続けてるなんて。
他の皆が、目標に向かって頑張ってるのに。
私一人だけが、違う方を向いている。
そして、その先には京太郎がいる。
「……京太郎は、答え。 分かる?」
「……分かります。 俺も、考えましたから。」
「……それは。」
教えて貰えること?
自分で考えること?
……私の、こと?
其の言葉に続く言葉は、幾らでも浮かんだけれど。
私には、聞けなかった。
聞いてしまえば。
多分――――答えは、分かるけれど。
もう、止まれなくなる直感があったから。
「……シロさん、約束しましょう。」
「……やく、そく?」
「俺の個人戦。 若し、優勝できれば。」
――――俺は、貴女に悩んだ答えを告げようと思います。
そう言って、京太郎は去っていった。
……なんで、だろう。
悩み、迷いの形が変わった気がする。
……顔が、元に戻らない。
……多分。
気付いているのに。
私は、見ない振りをしているんだ。
それが。
能力でない、私が出した答えで。
向き合う、覚悟だった。