君の名は、白き望み。 作:氷桜
<5:白望>
時間は、妙に早く過ぎる。
今年で、私たちは高校生活最後。
その記念、というつもりではないけれど。
集大成のようなつもりで、私たちは大会に出ることになっていた。
「このメンバーなら、まあ間違いなく全国……ベスト8まではいけるだろうね。」
長年色んな人を教えて。
色んな場所に出ていた、トシさんの言うことだ。
先ず、間違いないし。
私達の自信も、それ以上に高い。
だけど、多分。
皆のやる気が高いのは、彼がいることも有ると思う。
「え、全国ベスト8間違い無し!? すっげえ……!」
眼をキラキラと輝かせる一年生、京太郎。
自ら進んで色んな雑務を熟して。
自ら進んで色々な技術を吸収する、彼。
彼を見ていたからこそ、全員の目標が固まっていたのだと思う。
「一緒に全国に。」
男子は、京太郎ただ一人。
仮に出られたとしても個人戦。 たった一人の戦い。
だからこそ、一緒に――――。
恐らくは、そう考えたのだと思う。
「…………。」
ただ、私は未だに戸惑っていた。
常日頃から精力的に動いている京太郎。
豊音も、塞も、胡桃も、エイスリンも。
皆が皆して、彼を信用して、信頼して。
たった一人の後輩として、大事に育てているように思える。
だけど。
彼の眼は、何故か私を見ている。
何故。
その理由が、どうしてもわからない。
分かってはいけない、と止められているように。
気付いてしまえば、止められないと感じるように。
だから。
その気持を押し殺すように。
「…………。」 ダルーン
「……シロさん? なんで俺に寄りかかるんです?」
「椅子代わり……。」
何となく。
彼に、触れるようになっていた。
<5:京太郎>
「このメンバーなら、まあ間違いなくベスト8まではいけるだろうね。」
そう、トシさんが呟いたのは。
地方大会も間近な、とある平日のことだった。
「え、全国ベスト8間違い無し!? すっげえ……!」
先輩方は、全員三年生。
言ってしまえば後がない、既に成長しきった姿を見せる立場。
一応、俺自身も大会――――個人戦には希望を出している。
新人戦でなく、いきなり地方大会。
本来は考えられない行動だけど、我が高校の場合は若干特殊だから。
「男子麻雀部員が、俺しかいない。」
その事実は、振り払っても変えようもない。
だから、やれることを全力でやるだけ。
幸いなことに、どの先輩も親身になって教えてくれている。
豊音さんも、塞さんも、胡桃さんも、エイスリンさんも。
全員が全員、得意なこと、駄目な点を褒めて、叱って。
育ててくれている。
だけど。
何故か、俺の目はシロさんに向いてしまう。
何となく。
そんな単純な理由で片付けられれば、済む話。
だけど、そんな単純ではないように感じている。
「…………。」 ダルーン
「……シロさん? なんで俺に寄りかかるんです?」
「椅子代わり……。」
俺に触れる、シロさん。
……目を向ける理由に気付いてしまえば。
多分、この関係も崩れてしまうのだと。
そんな風に、実感していた。