君の名は、白き望み。   作:氷桜

4 / 19
<5:白望/京太郎>

<5:白望>

 

時間は、妙に早く過ぎる。

今年で、私たちは高校生活最後。

その記念、というつもりではないけれど。

集大成のようなつもりで、私たちは大会に出ることになっていた。

 

「このメンバーなら、まあ間違いなく全国……ベスト8まではいけるだろうね。」

 

長年色んな人を教えて。

色んな場所に出ていた、トシさんの言うことだ。

先ず、間違いないし。

私達の自信も、それ以上に高い。

だけど、多分。

皆のやる気が高いのは、彼がいることも有ると思う。

 

「え、全国ベスト8間違い無し!? すっげえ……!」

 

眼をキラキラと輝かせる一年生、京太郎。

自ら進んで色んな雑務を熟して。

自ら進んで色々な技術を吸収する、彼。

彼を見ていたからこそ、全員の目標が固まっていたのだと思う。

 

「一緒に全国に。」

 

男子は、京太郎ただ一人。

仮に出られたとしても個人戦。 たった一人の戦い。

だからこそ、一緒に――――。

恐らくは、そう考えたのだと思う。

 

「…………。」

 

ただ、私は未だに戸惑っていた。

常日頃から精力的に動いている京太郎。

豊音も、塞も、胡桃も、エイスリンも。

皆が皆して、彼を信用して、信頼して。

たった一人の後輩として、大事に育てているように思える。

 

だけど。

彼の眼は、何故か私を見ている。

 

何故。

その理由が、どうしてもわからない。

分かってはいけない、と止められているように。

気付いてしまえば、止められないと感じるように。

だから。

その気持を押し殺すように。

 

「…………。」 ダルーン

 

「……シロさん? なんで俺に寄りかかるんです?」

 

「椅子代わり……。」

 

何となく。

彼に、触れるようになっていた。

 

 

<5:京太郎>

 

「このメンバーなら、まあ間違いなくベスト8まではいけるだろうね。」

 

そう、トシさんが呟いたのは。

地方大会も間近な、とある平日のことだった。

 

「え、全国ベスト8間違い無し!? すっげえ……!」

 

先輩方は、全員三年生。

言ってしまえば後がない、既に成長しきった姿を見せる立場。

一応、俺自身も大会――――個人戦には希望を出している。

新人戦でなく、いきなり地方大会。

本来は考えられない行動だけど、我が高校の場合は若干特殊だから。

 

「男子麻雀部員が、俺しかいない。」

 

その事実は、振り払っても変えようもない。

だから、やれることを全力でやるだけ。

幸いなことに、どの先輩も親身になって教えてくれている。

豊音さんも、塞さんも、胡桃さんも、エイスリンさんも。

全員が全員、得意なこと、駄目な点を褒めて、叱って。

育ててくれている。

 

だけど。

何故か、俺の目はシロさんに向いてしまう。

 

何となく。

そんな単純な理由で片付けられれば、済む話。

だけど、そんな単純ではないように感じている。

 

「…………。」 ダルーン

 

「……シロさん? なんで俺に寄りかかるんです?」

 

「椅子代わり……。」

 

俺に触れる、シロさん。

……目を向ける理由に気付いてしまえば。

多分、この関係も崩れてしまうのだと。

そんな風に、実感していた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。