君の名は、白き望み。   作:氷桜

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<4:白望/京太郎>

<4:白望>

 

「はい、これで動きますかね。」 フキフキ

 

「うわ、すっご。 直せるんだ、自動卓。」

 

「なんか自然と。 あんまり金もありませんでしたからね。」

 

それから、大体一ヶ月くらいが経った。

自然と、少年――――京太郎は、ウチの部活に馴染んでいた。

元々、コミュニケーション能力は高いのか。

精力的に動いて、色んなフォローに回れる彼を嫌える人間は早々いない……ということなのかもしれない。

 

「……。」 ダルーン

 

「シロさん、相変わらずですね……。」

 

「……好きにしてていい時間、だよね?」 ゴロ

 

京太郎「確かにそうですけどね……。」 アハハ

 

ただ、私はどうにも仲良くしよう、という気持ちが湧いてこなかった。

それは、私の性質と反対の彼を無意識に遠ざけるためだったのかもしれないし。

或いは、それでも私に近付いてこようとすることへの反発だったのかもしれない。

 

「でも、放っとけないですよ。」

 

「…………そう。」 ダル

 

「ええ、ですから好きにします。」

 

邪魔。

迷惑。

そう言ってしまえれば、どれだけ楽なのかは分からない。

だけど。

その言葉だけは、どうしても自分からは言えなかった。

 

 

<4:京太郎>

 

がちゃり。

牌が挟まって、動かなくなっていた自動卓の蓋を閉める。

 

「はい、これで動きますかね。」 フキフキ

 

「うわ、すっご。 直せるんだ、自動卓。」

 

「なんか自然と。 あんまり金もありませんでしたからね。」

 

現状。

トシさんと二人暮らしをしている俺は、部活よりも家での勉強のほうが多くなりがちだ。

最低限の役やルールは身に付けたつもりだったけれど。

そんなものでは到底上は目指せない。

それを思い知ったから、俺は麻雀にどっぷり浸かっていた。

自分では、どうにも出来ない運。

自分で、どうにか出来る範囲の技術。

打っても打ってもやって来る不要牌。

ただ、それでも続けるうちに。

”最初の手牌にとって不要牌”だけがやってくるのだ、と気付かされて。

それを元に、練習中。

 

「……。」 ダルーン

 

直し終わった後、一人部屋の隅で休むシロさんを見る。

気付けば、何故か視界に入れてしまっている。

 

「シロさん、相変わらずですね……。」

 

「……好きにしてていい時間、だよね?」 ゴロ

 

「確かにそうですけどね……。」 アハハ

 

なんでだかは、自分でも良く分からないけど。

ただ、それでも目を離せずにいる。

 

「でも、放っとけないですよ。」

 

「…………そう。」 ダル

 

「ええ、ですから好きにします。」

 

スタイルがいいのは間違いない。

見た目も美少女なのは間違いない。

だけど。

こうして、見続けてしまうのは。

絶対に、それだけじゃないと。

それだけは、確実に言えることだった。


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