君の名は、白き望み。   作:氷桜

19 / 19
若干早いけどクリスマスイヴ記念です。
怜竜完結まで時間かかりそう……。
※exの時期は順不同です。


<ex05:佇むその時、彼等は。>

「クリスマス前、ですかー。」

 

「クリスマス前……だね。」

 

お茶を飲みながら身体を温める。

割と今年は雪が降った。

雪掻きが面倒な程には。

長野である程度経験してきてはいたけど、やはり結構違うもので。

特に、自分の家とシロさんの家の二件もやることになると。

それはそれは重労働。

 

「……でも、さ。」

 

「はい。」

 

「生誕祭……私達が祝って良いのかな。」

 

「それは日本人の一部を除けば言っちゃいけないことです。」

 

主に信仰してる人達。

大体正月に神社行ってバレンタイン祝って葬式は寺、なんてのもあるのだ。

そう言った、ある意味では混ぜ放題。

ある意味では、色々取り入れた日本独自の文化。

それが広まって、受け入れられている事は良い事だと思う。

 

「……ま、トシさん今日戻らないらしいもんね。」

 

「忘年会、らしいですけどね。」

 

なんでも、奈良の方のコーチの人がプロになることになったらしい。

その祝いを兼ねて、昔の知り合いと飲みながら打つとか。

……どんな知り合いなのか、凄い気になる。

後で紹介する、とは言ってたけど。

 

「……で、これ食べ切れる?」

 

「調子に乗りました?」

 

「……少し。」

 

そんなことも有り。

今、シロさんはうちにいる。

一人と一人でいても大した事はないし。

俺が雪掻きする代わりに、料理をしてみると。

……正直、腕前に疑問があったのは確かだったけど。

少しだけ味見させてもらえば、そんな疑問は氷解した。

ただ、明らかに量が多いけど。

 

「しかし……凄いですね、ここまで出来ませんよ俺。」

 

「最近……練習してる。」

 

「……え。 シロさん、が!?」

 

正直動揺する。

あの怠惰、を身体で表したような女性が。

料理の練習。

いや、一人暮らしな以上普通以上には出来てたんだろうけど。

それでも、練習!?

 

「……悪い?」

 

目を逸らして。

明らかに呟くように言葉を吐き出す。

最近、分かりやすく表現するようになっていた。

その一例が、これ。

 

「い、いえ……正直、びっくりして。」

 

「……全く。」

 

「…………はい?」

 

「……京太郎の、ためだよ?」

 

「……俺の?」

 

料理くらい、作ってあげたいから。

そう、途切れ途切れに呟かれて。

正直、顔が真っ赤に染まったと思う。

見ているシロさんも、頬が桃色に染まっている。

 

「え、と……あー。」

 

「……食べよ?」

 

「そう、です、ね。」

 

瞬間の沈黙。

けれど、そんなものはすぐに途切れた。

目の前のメイン、七面鳥。

小さく切り取られて。

フォークに刺されて、目の前に差し出された。

 

「……はい。」

 

「あ、はい。」

 

あーん、と言われた気がする。

だから、言い返して差し出した気がする。

正直、夢心地。

覚えているような、覚えていないような。

そんな曖昧の中を漂って。

 

「今日は……。」

 

「……え?」

 

一晩中一緒、だもんね。

そう、聞こえた気がする声も。

多分、夢だったのだろう。




メリークルシミマスイヴ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。