君の名は、白き望み。   作:氷桜

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お気に入り30人越え記念。


<望み叶えて、それから。>
<ex01:細波の中、二人。>


ざあ、ざあ。

波の音が行ったり来たり。

少しずつ形を変え、決して同じ姿を表さない水の形。

生命の源、生物の始まり。

そんな、海の前。

 

「…………。」

 

妙に緊張して、待つのは俺だけ。

早く来ないだろうか。

もっとゆっくりでいい。

そんな、相反する感情を抱きながら。

建物の裏から現れるであろう、影を待つ。

 

「海水浴に行きませんか?」

 

そう、問い掛けられたのは。

全ての大会が済んだ後。

俺が記者に執拗に問い掛けられ。

何とか片付けた直後のことだった。

 

問い掛けてきたのは。

鹿児島代表、永水女子高校。

大会にも巫女服で出てくるという念入りっぷり。

それもそうだ、霧島神境と言えば姫巫女の住まう地。

古くから伝わる伝承や、あちこちの呪術などを取り入れ。

既に原型を持たない、ある意味オリジナルの形式を持つ特殊宗教。

 

……そんな、姫巫女が。

二回戦でシロさんと当たったあのぼんやりとした人だと聞いた時は。

失礼だけど、聞き直してしまった。

 

「良いね。 どうせ一日は空いてるんだから。」

 

「わーい、海ー!」

 

まあ、それ以降時折話していたらしく。

丁度夏休み、という点もあって。

宿泊を一日延長してもらった俺達は。

永水女子の持つ、ある種特殊な海へと案内されていた。

 

……無論、最初は唯一の男子ということで疑われたけど。

男子個人戦優勝、チャンプということ。

後は、4人が何かを話しかけたら生暖かい目で俺とシロさんを見てきた。

……絶対、余計なことを言ったんだと思う。

そのせいなのか、その御蔭なのか。

 

「シロが着替えて来るまで待ってなさいよ、京太郎くん。」

 

「えっ。」

 

「……最初に見たいでしょ? 水着姿。」

 

いや、あの。

何かを言おうとする前に立ち去られてしまって、今。

 

……水着?

確かに持ってきては、いなかったはずだし。

買い物の時は俺は最終調整中だった。

今履いてるのだって、慌てて買ってきた品だ。

いつ買ってきたんだろうか……正直気にしたら負けな気がしなくもない。

 

「…………京太郎?」

 

「あ、シロさ――――。」

 

普段の白い肌に、少しだけ朱を灯して。

白と水色の、胸を覆い隠すようなビキニ。

下には、若干の布が付いて傍目にはお洒落にも見える代物。

それを身に纏った、シロさん。

 

正直に言おう。

言葉に詰まった。

何を言おうとしても、陳腐になりそうで。

長い時間見ていることも、禁忌に触れているような。

そんな気持ちを、抱いた。

 

「…………あー、綺麗、です。」

 

「…………ありがと。」

 

話が進まない。

互いに顔が赤いのを実感する。

こんな綺麗な人が。

俺の、恋人なんだと思うと。

余計に、その感情は強くなる。

 

「おーい、二人共ー!」

 

其の言葉に、びくっと反応を示した俺達二人。

互いに顔を見合わせ、小さく笑った。

 

「……シロさん、手を。」

 

「……ん、京太郎。」

 

そっと差し出された、手を握り。

何よりも大事な人と、肩を並べ。

手を振る、先輩方へと歩き出した。

 




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