君の名は、白き望み。   作:氷桜

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※大分適当な闘牌描写です。 そんな感じと軽く読み流して下さい。


<12:京太郎>

「リーチ。」

 

個人戦――――決勝戦。

シードなんて無い、只の岩手県個人三位。

ここまで上がってくるのに。

何人もの夢を潰してきた。

何人もの、涙を超えてきた。

其の果ての、戦い。

 

「(――――悪趣味、だな。)」

 

オーラス、現状は2位。

しかも相手の親番で、きっちり点差は13000点。

単純に流せば、それで勝ちなのに。

相手は、此方を見た上で笑顔でそう宣言していた。

 

「(…………。)」

 

手牌はいつもの通り最悪。

それを、技術と運の悪さと。

今までの教えで処理してきてイーシャンテン。

半ば祈るように引いてきた牌は――――五萬。

テンパイ成立。

残るは……何を切るか。

大物手は、望めない。

逆転するには、最低でも満貫が必須。

手元に残った牌で切れるのは、一筒のみ。

望めるのは、ほぼリーチのみの手。

右端の白二枚を、ちらりと見る。

 

「(――――今から、手を変えるべきなのか?)」

 

……テンパイしたのは8順。

初手の手牌から組み替えていって何とかこの状況。

手を変えるのならば、間に合うかどうか。

一旦断って、暫しの長考。

 

『――――――――。』

 

外野で何かを言っているのが、振動で聞こえる。

分かってしまう程に、集中している。

思考の沼。

もう少し、大きい手を。

直撃すれば、勝てる。

最悪二位でも誇れるんじゃないか。

迷っても、迷っても。

答えは、出ない。

 

「……チッ。」

 

相手は、焦れ始めたのか。

長考気味になっていた俺を急かすように、小さく舌打ちをする。

周囲の三位と四位は、既に点差で絶望的。

ある意味、諦観の表情を浮かべていた。

 

「……そう、だな。 じゃあ、こうする。」

 

長く、長く考えた後。

フッ、と考えが楽になった。

迷い続けても。

どれだけ、迷い続けても。

いつかは、自分の意志で決めなければいけないのだったら。

 

「――――リーチ。」

 

俺は、この手牌と心中する。

リーチのみ。

付いて一発、或いは海底摸月。

ドラには掠ってすらいないし、そもそもアガる牌は地獄待ちだ。

勝つのは絶望的、と言ってもいいだろう。

 

ただ。

俺は、信じていた。

いや、思い出した。

自分の運の悪さ、それを武器にしようと思った時のことを。

……あの時も、シロさんの小さな助言からだった。

だったら。

あの時と同じく、俺はシロさんの助言を信じる。

 

たん、たん、たん。

相手の一発は消えて。

俺の一発も消えて。

祈る牌も減っていく。

相手の笑顔が増していく。

 

優勝出来る、と信じて疑わないんだろうな。

何となく、そんな俯瞰をしていた。

目の前の、敵なのに。

そんな想いは、幻想になると思ってすら無いのだろうな、と。

憐れむような思いで。

俺の、ツモ番になった。

 

――――目の前に、小さな古ぼけた屋敷が見える。

戸を開け、中へと入り込み。

ただ、何となく目の前にあったものを拾った。

そんな、一瞬の幻覚と。

誰かの、笑顔が見えた気がした。

 

「――――ツモ。」

 

引いた牌は、白。

 

リーチ。

白。

裏ドラ……中。

3つ乗って、ドラ3。

5翻。 満貫。

 

「2000-4000。 ……リーチ棒だけ、逆転です。」

 

勝ちましたよ、シロさん。

そんな、奇跡を起こしてくれた。

勝利の女神に――――そう、思った。




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