ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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クリスマス、ボッチ決定の舞翼だぜ。
……うん、言ってて悲しくなってきた。


第9話 転校生と気持ち

 ある廃墟で、ビーハイブの幹部であるクロードが、とある人物を呼び出していた。

 クロードは、眼鏡をくいっと上げて話し出す。

 

「……来たか。待ちわびていたぞ」

 

「はい。わたしがここに呼ばれた理由はなんでしょうか?」

 

 クロードは、とある人物に写真を渡す。

 

「こいつがお前の次の任務――標的(ターゲット)の、一条楽。既に聞き及んでいると思うが、お嬢は今この男と恋人関係にある。しかし私は、お嬢はこの男に騙され利用されていると睨んでる。滑稽なガキだ……」

 

「し、しかし、聞いた話によると、若が第三者であり、見届け人だと聞き及んでいますが……」

 

 クロードはわなわな震えながら、

 

「わ、若も騙されているのだ、一条楽に――」

 

 この言葉に鼓舞されるように、とある人物が握っている手に力が入り、写真がクシャクシャになる。

 

「ゆ、許せませんね。一条楽……」

 

「……私では直接動向を探ることはできない。だが、私が育てた優秀な部下のお前ならば――」

 

「そういうことならば、了解しました」

 

 クロードは脂汗を、額に滲ませた。

 

「……い、言い忘れていた。わ、若を、絶対に怒らせてはならないからな……ビーハイブの剣舞が降臨したら……」

 

 そう。蓮がキレると、ビーハイブの幹部以上の強さなのだ。クロードは、蓮を本気で怒られたことがあり、ボコボコにされた経歴があるのだ。

 

「わ、わかってます」

 

「そ、そうか。ならいい」

 

「で、では、失礼します」

 

 とある人物は、廃墟を出て行った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 俺はバックを右肩にかけながら廊下を歩いていた。ちなみに、姉貴と楽は登校初日から一緒に登校しているので、俺は基本一人で登校である。

 教室に入ると、俺は自分の席に着く。つか、また転校生らしい。

 

「おはよう、小野寺。……あと宮本も」

 

 俺は隣席の小野寺たちに挨拶をする。

 

「あ、蓮君。おはよう」

 

「ふんッ!」

 

「い、痛ぇよ、宮本。ちょっとした冗談じゃんか……」

 

 はい、宮本に右足を踏まれました……。結構痛いかも。

 

「まったく……。おはよう、蓮君」

 

 いや、宮本さん。溜息を吐いてから言わないでくれ……。まあいいけど。

 

「そういえば、蓮君。このクラスに転校生がくるらしいよ」

 

 小野寺がそう言う。てか、やっぱりこのクラスなのね。

 で、その後に集からの裏が取れました。

 

「蓮君。聞きたいことがあるんだけど。小咲もかなり気になってるらしいわ」

 

 ……なんか嫌な予感。

 

「……な、何かな」

 

「先週くらいかしら。蓮君、○○ショッピングモールにいなかった?」

 

 マジかよ……。見られてたの?いや、まだ誤魔化せる範囲だ。

 

「……いや、行ってないけど。家で寝てたし」

 

 何、この尋問展開は。てか、絶対に誤魔化す!

 

「そう、あの美人さんは誰かしら?」

 

「へ?……い、いや~、何のことか解らないなぁ……」

 

 暫しの沈黙が流れる。てか、三人の中での沈黙って意味ね。

 

「……はあ、海外の姉ちゃんだよ。俺が幼いころから世話になってた。てか、ガッツリ見てたのかよ……」

 

「いえ、美人さんに関しては、カマをかけだけなんだけど。あの時は、蓮君が誰かと話してるのしか見えなかったし」

 

 肩をがっくり落とす俺。

 

「……カマをかけたのかよ。つってもあれだぞ。ただの姉だからな。恋愛とか、そっち方向に持ってくなよ」

 

「わかってるわ。蓮君はそっち方面は興味ないんだったしね。でも、今後はどうなるか解らないわよ」

 

「俺の今後ねぇ。今と変わらないと思うけど」

 

 何でこんな追求したの?いや、別に構わないけどさ。

 てか、俺は本当に今後どうなるのだろうか?結構気になってたりする。そんな事を思っていたら、教室の前の扉が開き、キョーコ先生が入って来る。

 

「よーし、早く座れ。出席とるぞー」

 

 キョーコ先生の言葉によって、生徒が各々の席に着く。キョーコ先生が教壇で出席を取り終わり、

 

「突然だけど、今日はみんなに転校生を紹介するぞー。鶫さん、入って来て」

 

「はい」

 

 教室のドアを開けて入って来たのは、何処からどう見ても、海外で活動しているはずのビーハイブメンバーだった。つけられた異名は、黒虎(ブラックタイガー)。ビーハイブでのトップのヒットマンである。狙った相手は逃がさないとかなんとか……。

 

「はじめまして。鶫誠士郎と申します。どうぞ、よろしく」

 

 自己紹介が終わると、凄まじい歓声が巻き起こる。……まあ、主に女子からだが。でもまあ、本当の性別は――、いや、止めておこう。

 

「(……クロードの差し金か?面倒なことにならなければいいけど)」

 

 って、これってフラグじゃね……。それは置いといて。

 キョーコ先生が空いている席に着いてと鶫に言い、鶫が楽の隣を通りながら、フッと微笑んだ。

 だがまあ、姉貴が立ち上がり、鶫の名前を呼ぶ。

 

「鶫!?」

 

「お久しぶりです、お嬢――!」

 

 俺の予想通り、鶫が姉貴に抱きつく。

 で、クラスからは、

 

『転校生が桐崎さんに抱きついた!』

 

『なんだ、なんだ~~~!』

 

 と声が上がる。

 

「ちょ、いきなり抱きつかないの!?みんなが見てるでしょ!?」

 

「ああ、お嬢……!お会いしとうございました……!ところでお嬢、若はどちらに?」

 

 頭を抱える俺。

 前から鶫には、“蓮”って呼べって言ってるんだが、“若”のままなんだよなぁ……。

 

「蓮なら、小咲ちゃんの隣よ」

 

 姉貴の視線を追うように、鶫の視線が俺を見る。で、勢いよく俺の前に来ました。

 

「わ、若!お久しゅうございます!あれから連絡ができず、申し訳ありません!」

 

「いや、別に大丈夫だ。気にするな」

 

「うぅ……。若の優しさが身に沁みます……」

 

 いや、どこがだよ……。

 ともあれ、ビーハイブのヒットマンが凡矢理高校へ転校してきたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 時は経過し放課後。

 

「蓮君は、千棘ちゃんの所に行かなくてよかったの?」

 

「そうね。昼休み話し合ってた時も行ってないし」

 

「俺はいいんだよ。……面倒くさいことになるの目に見えてるし。たぶん、鶫と楽は、『お嬢の恋人に相応しいか決闘だ!』的なことになってると思うけど」

 

 十中八九なってるだろうな、この展開に。頑張れ、楽。

 

「てか、小野寺はいいのか?決闘を見に行かなくて?好きな人の晴れ舞台だぞ」

 

「うーん、ギャラリーが多そうだし。わたしはいいかな」

 

「いやいや、好きなんだろ?」

 

「ちょ、蓮君。声が大きいよっ」

 

 俺の口を塞ぐ小野寺。

 ……うん、俺の心臓に悪いから止めようか。つか、結構強く塞がれたので、息ができん……。

 

んん(ギブ)……んん(ギブ)

 

「あ、ごめん。蓮君」

 

 小野寺は、手を退かし解放してくれた。

 俺はバックを開け、ウェットティッシュを渡取り出して、小野寺に手渡す。

 

「ん、これ使っていいぞ。なんか、色々と悪かった」

 

「き、気にしてないよ」

 

 小野寺は、袋からシートを取り出し手を拭く。

 

「そか」

 

「う、うん」

 

 これを見ていた宮本が、

 

「ふ~ん」

 

 と、意味深な声を上げる。

 ……あれだ。突っ込んだらいけない『ふ~ん』だ。

 

「蓮君。わたし帰るから、小咲を送ってあげてくれないかしら?」

 

「ん?小野寺は、宮本と帰るんじゃないのか?」

 

「わたし、急用を思い出して」

 

「なるほど。小野寺が嫌じゃなかったら構わないけど……」

 

 俺がそう言うと、小野寺と宮本は少し離れてしまった。はて、なんか悪いことでもしたのか、俺。

 

 

~小咲side~

 

「る、るりちゃん。どうゆうことなの……」

 

「あの時、確かめることができなかったでしょ?だから、もう一回機会を作ったのよ」

 

 確かに、今日蓮君と帰れば、わたしが蓮君をどう思ってるのか解るような気もするけど……。

 

「で、でも――」

 

「いいから、蓮君と一緒に帰りなさい」

 

「……う、うん。わかった」

 

「なら、よし。後でどう思ってるか、聞かせてちょうだい」

 

 わたしは、小さく頷き、るりちゃんは優しく微笑んでくれた。

 

~小咲side out~

 

 

「あ、あの~。小野寺さん、宮本さん?」

 

「ごめんね、蓮君。今後必要な物、小咲から聞いてたの」

 

 ふむ。必要な物と言えば、林間学校で使う物だろう。

 

「じゃ、小咲をお願いね。またね」

 

 そう言って、帰りの支度をした宮本は、教室を出て行ってしまった。

 教室に残されたのは、俺と小野寺だけだ。

 

「俺らも帰るか」

 

「そうだね。帰ろっか」

 

 俺と小野寺も帰りの支度をして、下校しました。でもまあ、下校中にあの場所に行こうと言うことになったので、秘密の場所へ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「やっぱ、ここから見る景色は綺麗だなぁ。たぶん、今後も通うだろうなぁ」

 

 この場所から見える夕焼けは、街全体がオレンジ色に包まれているようで幻想的であった。

 小野寺は、ふふと笑ってから、

 

「気にいって貰えてなによりだよ。――蓮君、気になったんだけど。今日言ってた、もう一人のお姉ちゃんって?」

 

「そうだな。俺にとっての姉ちゃんは――」

 

 俺は掻い摘んで、羽姉ちゃんとの関係を話した。まあ、裏事情までは話さなかったけど。

 

「まあこんな感じだ。だからまぁ、一番付き合いが長い人だな」

 

「そうなんだ。信頼してるんだね」

 

「もちろん、小野寺もしてるぞ」

 

「わ、わたしも?」

 

 小野寺は、驚いたような顔をする。

 てか、そこまで驚かなくても……。

 

「まあな。小野寺は、裏表もなさそうだし、優しいし、明るいし、包容力が――……あれ、俺、余計なこと言ってね?」

 

 てか、あれだ。小野寺の顔が赤くなってる。夕陽のせいか?

 

 

~小咲side~

 

「(……蓮君が、わたしのこと、こんな風に見てたなんて知らなかったよ……。言葉は、無意識に出ちゃっただけだと思うけど)」

 

 今なら言えるかな。よし、気分が乗ってる勢いで――、

 

「あの、蓮君」

 

「どったの?」

 

 街の景色を見ていた蓮君振り向き、疑問符を上げる。

 

「……えっとね。わ、わたしも、名前呼びがいいかなぁって。ほ、ほら、わたしは、蓮君って呼んでるし……」

 

「確かに、一理ある。――んじゃ。よろしく、小咲」

 

「う、うん!よろしく、蓮君!」

 

 わたし、小野寺小咲は、徐々に桐崎蓮君に惹かれているのが解った瞬間でもあった。

 

~小咲side out~




小咲も、徐々にきてますね(笑)

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