……うん、言ってて悲しくなってきた。
ある廃墟で、ビーハイブの幹部であるクロードが、とある人物を呼び出していた。
クロードは、眼鏡をくいっと上げて話し出す。
「……来たか。待ちわびていたぞ」
「はい。わたしがここに呼ばれた理由はなんでしょうか?」
クロードは、とある人物に写真を渡す。
「こいつがお前の次の任務――
「し、しかし、聞いた話によると、若が第三者であり、見届け人だと聞き及んでいますが……」
クロードはわなわな震えながら、
「わ、若も騙されているのだ、一条楽に――」
この言葉に鼓舞されるように、とある人物が握っている手に力が入り、写真がクシャクシャになる。
「ゆ、許せませんね。一条楽……」
「……私では直接動向を探ることはできない。だが、私が育てた優秀な部下のお前ならば――」
「そういうことならば、了解しました」
クロードは脂汗を、額に滲ませた。
「……い、言い忘れていた。わ、若を、絶対に怒らせてはならないからな……ビーハイブの剣舞が降臨したら……」
そう。蓮がキレると、ビーハイブの幹部以上の強さなのだ。クロードは、蓮を本気で怒られたことがあり、ボコボコにされた経歴があるのだ。
「わ、わかってます」
「そ、そうか。ならいい」
「で、では、失礼します」
とある人物は、廃墟を出て行った。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
俺はバックを右肩にかけながら廊下を歩いていた。ちなみに、姉貴と楽は登校初日から一緒に登校しているので、俺は基本一人で登校である。
教室に入ると、俺は自分の席に着く。つか、また転校生らしい。
「おはよう、小野寺。……あと宮本も」
俺は隣席の小野寺たちに挨拶をする。
「あ、蓮君。おはよう」
「ふんッ!」
「い、痛ぇよ、宮本。ちょっとした冗談じゃんか……」
はい、宮本に右足を踏まれました……。結構痛いかも。
「まったく……。おはよう、蓮君」
いや、宮本さん。溜息を吐いてから言わないでくれ……。まあいいけど。
「そういえば、蓮君。このクラスに転校生がくるらしいよ」
小野寺がそう言う。てか、やっぱりこのクラスなのね。
で、その後に集からの裏が取れました。
「蓮君。聞きたいことがあるんだけど。小咲もかなり気になってるらしいわ」
……なんか嫌な予感。
「……な、何かな」
「先週くらいかしら。蓮君、○○ショッピングモールにいなかった?」
マジかよ……。見られてたの?いや、まだ誤魔化せる範囲だ。
「……いや、行ってないけど。家で寝てたし」
何、この尋問展開は。てか、絶対に誤魔化す!
「そう、あの美人さんは誰かしら?」
「へ?……い、いや~、何のことか解らないなぁ……」
暫しの沈黙が流れる。てか、三人の中での沈黙って意味ね。
「……はあ、海外の姉ちゃんだよ。俺が幼いころから世話になってた。てか、ガッツリ見てたのかよ……」
「いえ、美人さんに関しては、カマをかけだけなんだけど。あの時は、蓮君が誰かと話してるのしか見えなかったし」
肩をがっくり落とす俺。
「……カマをかけたのかよ。つってもあれだぞ。ただの姉だからな。恋愛とか、そっち方向に持ってくなよ」
「わかってるわ。蓮君はそっち方面は興味ないんだったしね。でも、今後はどうなるか解らないわよ」
「俺の今後ねぇ。今と変わらないと思うけど」
何でこんな追求したの?いや、別に構わないけどさ。
てか、俺は本当に今後どうなるのだろうか?結構気になってたりする。そんな事を思っていたら、教室の前の扉が開き、キョーコ先生が入って来る。
「よーし、早く座れ。出席とるぞー」
キョーコ先生の言葉によって、生徒が各々の席に着く。キョーコ先生が教壇で出席を取り終わり、
「突然だけど、今日はみんなに転校生を紹介するぞー。鶫さん、入って来て」
「はい」
教室のドアを開けて入って来たのは、何処からどう見ても、海外で活動しているはずのビーハイブメンバーだった。つけられた異名は、
「はじめまして。鶫誠士郎と申します。どうぞ、よろしく」
自己紹介が終わると、凄まじい歓声が巻き起こる。……まあ、主に女子からだが。でもまあ、本当の性別は――、いや、止めておこう。
「(……クロードの差し金か?面倒なことにならなければいいけど)」
って、これってフラグじゃね……。それは置いといて。
キョーコ先生が空いている席に着いてと鶫に言い、鶫が楽の隣を通りながら、フッと微笑んだ。
だがまあ、姉貴が立ち上がり、鶫の名前を呼ぶ。
「鶫!?」
「お久しぶりです、お嬢――!」
俺の予想通り、鶫が姉貴に抱きつく。
で、クラスからは、
『転校生が桐崎さんに抱きついた!』
『なんだ、なんだ~~~!』
と声が上がる。
「ちょ、いきなり抱きつかないの!?みんなが見てるでしょ!?」
「ああ、お嬢……!お会いしとうございました……!ところでお嬢、若はどちらに?」
頭を抱える俺。
前から鶫には、“蓮”って呼べって言ってるんだが、“若”のままなんだよなぁ……。
「蓮なら、小咲ちゃんの隣よ」
姉貴の視線を追うように、鶫の視線が俺を見る。で、勢いよく俺の前に来ました。
「わ、若!お久しゅうございます!あれから連絡ができず、申し訳ありません!」
「いや、別に大丈夫だ。気にするな」
「うぅ……。若の優しさが身に沁みます……」
いや、どこがだよ……。
ともあれ、ビーハイブのヒットマンが凡矢理高校へ転校してきたのだった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
時は経過し放課後。
「蓮君は、千棘ちゃんの所に行かなくてよかったの?」
「そうね。昼休み話し合ってた時も行ってないし」
「俺はいいんだよ。……面倒くさいことになるの目に見えてるし。たぶん、鶫と楽は、『お嬢の恋人に相応しいか決闘だ!』的なことになってると思うけど」
十中八九なってるだろうな、この展開に。頑張れ、楽。
「てか、小野寺はいいのか?決闘を見に行かなくて?好きな人の晴れ舞台だぞ」
「うーん、ギャラリーが多そうだし。わたしはいいかな」
「いやいや、好きなんだろ?」
「ちょ、蓮君。声が大きいよっ」
俺の口を塞ぐ小野寺。
……うん、俺の心臓に悪いから止めようか。つか、結構強く塞がれたので、息ができん……。
「
「あ、ごめん。蓮君」
小野寺は、手を退かし解放してくれた。
俺はバックを開け、ウェットティッシュを渡取り出して、小野寺に手渡す。
「ん、これ使っていいぞ。なんか、色々と悪かった」
「き、気にしてないよ」
小野寺は、袋からシートを取り出し手を拭く。
「そか」
「う、うん」
これを見ていた宮本が、
「ふ~ん」
と、意味深な声を上げる。
……あれだ。突っ込んだらいけない『ふ~ん』だ。
「蓮君。わたし帰るから、小咲を送ってあげてくれないかしら?」
「ん?小野寺は、宮本と帰るんじゃないのか?」
「わたし、急用を思い出して」
「なるほど。小野寺が嫌じゃなかったら構わないけど……」
俺がそう言うと、小野寺と宮本は少し離れてしまった。はて、なんか悪いことでもしたのか、俺。
~小咲side~
「る、るりちゃん。どうゆうことなの……」
「あの時、確かめることができなかったでしょ?だから、もう一回機会を作ったのよ」
確かに、今日蓮君と帰れば、わたしが蓮君をどう思ってるのか解るような気もするけど……。
「で、でも――」
「いいから、蓮君と一緒に帰りなさい」
「……う、うん。わかった」
「なら、よし。後でどう思ってるか、聞かせてちょうだい」
わたしは、小さく頷き、るりちゃんは優しく微笑んでくれた。
~小咲side out~
「あ、あの~。小野寺さん、宮本さん?」
「ごめんね、蓮君。今後必要な物、小咲から聞いてたの」
ふむ。必要な物と言えば、林間学校で使う物だろう。
「じゃ、小咲をお願いね。またね」
そう言って、帰りの支度をした宮本は、教室を出て行ってしまった。
教室に残されたのは、俺と小野寺だけだ。
「俺らも帰るか」
「そうだね。帰ろっか」
俺と小野寺も帰りの支度をして、下校しました。でもまあ、下校中にあの場所に行こうと言うことになったので、秘密の場所へ向かった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「やっぱ、ここから見る景色は綺麗だなぁ。たぶん、今後も通うだろうなぁ」
この場所から見える夕焼けは、街全体がオレンジ色に包まれているようで幻想的であった。
小野寺は、ふふと笑ってから、
「気にいって貰えてなによりだよ。――蓮君、気になったんだけど。今日言ってた、もう一人のお姉ちゃんって?」
「そうだな。俺にとっての姉ちゃんは――」
俺は掻い摘んで、羽姉ちゃんとの関係を話した。まあ、裏事情までは話さなかったけど。
「まあこんな感じだ。だからまぁ、一番付き合いが長い人だな」
「そうなんだ。信頼してるんだね」
「もちろん、小野寺もしてるぞ」
「わ、わたしも?」
小野寺は、驚いたような顔をする。
てか、そこまで驚かなくても……。
「まあな。小野寺は、裏表もなさそうだし、優しいし、明るいし、包容力が――……あれ、俺、余計なこと言ってね?」
てか、あれだ。小野寺の顔が赤くなってる。夕陽のせいか?
~小咲side~
「(……蓮君が、わたしのこと、こんな風に見てたなんて知らなかったよ……。言葉は、無意識に出ちゃっただけだと思うけど)」
今なら言えるかな。よし、気分が乗ってる勢いで――、
「あの、蓮君」
「どったの?」
街の景色を見ていた蓮君振り向き、疑問符を上げる。
「……えっとね。わ、わたしも、名前呼びがいいかなぁって。ほ、ほら、わたしは、蓮君って呼んでるし……」
「確かに、一理ある。――んじゃ。よろしく、小咲」
「う、うん!よろしく、蓮君!」
わたし、小野寺小咲は、徐々に桐崎蓮君に惹かれているのが解った瞬間でもあった。
~小咲side out~
小咲も、徐々にきてますね(笑)