てか、羽姉ちゃんの言葉使いとか難しい……。
所変わって、近場のショッピングモール。つーか、ショッピングモールってデカ過ぎだろ。同じ店がありすぎだし。
「来たのはいいけど。何買うんだ?行きあたりバッタリってやつになりそうだけど」
「うーん、服が見たいかなぁ」
「服ねぇ。今のままで十分可愛いと思うけど」
「お、今の言葉ポイント高いよ」
え、何。俺って採点されてんの?
何それ怖い……。でもまあ、女性の服を最初見たら褒めろって、羽姉ちゃんに教えられたんだよなぁ。
口には出さないけど、羽姉ちゃんって、モデル並みに可愛いです。はい。
取り敢えず、一階に点在する服屋へ向かった俺たち。
「これがいいかも」
羽姉ちゃんが手に取ったのは、藍色のノースリーブに白いボトム。黄色をラインと青を基調にしたチェックのシャツだ。おそらくこれは、腰に巻いてアクセントをつけるようだろう。ま、ノースリーブの上から重ね着もできるしね。
「似合うと思うけど、肩の露出度高くね」
「ノースリーブだもの、肩は露出するよ。……もしかして――」
「そ、それ以上言わないでください、羽姉ちゃん」
チッ、一瞬でも見られたらヤダって考えちゃったじゃねぇかよ。ま、付き合いが長い姉だし、こう考えるのも無理はないと思うけど。
「じゃ、ちょっと着替えてくるね」
そう言って、試着室に消えて行く羽姉ちゃん。まあ俺は、試着室の前にあるパイプ椅子に座った。
今思った。学校の奴らに見られたら、面倒なことになるんじゃね……。
そんなことを考えていると、試着室のカーテンが開いた。で、羽姉ちゃんは、その場で一回転。
「ど、どう?」
「……えーと、あの……」
何これ、かなり恥ずかしんですが。つか、何で感想を言う俺が恥ずかしいのだろうか?俺、おかしい奴じゃないよね?
「……かなり似合ってる。可愛いよ」
やっべ、メチャクチャ恥ずかしんですが。ほら、姉ちゃんの顔も真っ赤だし。
「そ、そう。じゃあ、これを買っていこうかな」
「へ?俺の感想だけでいいの。そんなにあっさり決めちゃって?」
「それが重要なのよ。蓮君はわかってないんだからっ」
「はあ、そうなのか」
うーむ。俺には今一わからん。てか、女心はわからんの方が適切か。
それから、姉ちゃんは元のワンピースに着替え、試着室から出て来た。右手で、先程の服が抱えられている。
「さて、これを買ったら次に行こうか」
「……次もあんのかよ」
「もちろん。荷物持ちお願いね、蓮君」
……うん、わかってた。俺が荷物持ちになることは。
それから、姉ちゃんが会計をして、店を出ました。で、俺の右手には、先程の買い物袋が提げられている。どうやら、荷物持ちのスタートらしい。
つーか、服屋何軒回るんスか。俺の両手が、2つずつの袋で埋まってるんですが……。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「買った買った」
「お、おう、そうだな」
俺と姉ちゃんは、休憩所のテーブルの椅子に座っていた。
やっと休めたわ。つか、女の子の買い物は長いって聞いてたけど、本当だとは。
「羽姉ちゃんは、今日帰るのか?」
「今日の夜の便で中国に帰るかな」
日本に来て、すぐに中国に帰る。正しく弾丸ツアーである。
「目的は達成できたから満足だけど」
「はあ、目的ね」
羽姉ちゃんの目的とは、日本での買い物だろうか?わからん。てか、深く考えると、ド壺嵌まりそうだから止そう。
「あ、そうそう。これ土産な」
俺が懐から取り出したのは、ちょっとだけ別行動した時に購入したものだ。
ちなみに、それは茶袋の中に入っている。
羽姉ちゃんは、『開けていいかな?』と俺の了承を得てから袋を開け、それを取り出した。
「黄色のシュシュだね。ありがとう」
「色の好みがわからんから、羽姉ちゃんが好きな色かな。って思うやつにした。い、嫌だったか?」
「ううん。黄色、わたしの好きな色だよ」
「なら良かった」
つーか、姉貴以外の女性に贈り物をしたのは、羽姉ちゃんが初めてじゃん。
「これはわたしから。はい」
羽姉ちゃんが俺に差し出したのは、細い銀色のチェーンに、小さなイルカが嵌め込まれたネックレスだ。……ネックレスは色々とマズイ気がするんだが。だけどまぁ、せっかくの好意を無駄にはできない。
俺はそれを受け取り、
「サンキュー。つっても、学校とかではつけないと思うけど。色々勘ぐられそうだし。出かける時くらいか」
羽姉ちゃんは苦笑し、
「気が向いたらでいいよ」
「おう、そうする」
「じゃあ、帰ろうか」
「そだな」
俺と羽姉ちゃんは立ち上がり、後一軒だけ店を回りショッピングモールを後にした。てか、俺の両手は荷物で完全に塞がったんだけど。いや、既に塞がってたけどさ。
そんなこんなで、時間帯もちょうど良くなり、空港へやって来た。羽姉ちゃんの見送りである。ちなみに荷物は、専用の箱に入れ、ターンテーブルに乗せ飛行機の中である。
「気をつけて帰れよ」
飛行機に乗るんだから、気をつけてもないんだけど。
「わかってます。それじゃあね。蓮ちゃん」
「だ、だから、蓮ちゃんじゃ――はあ、まあいいや。じゃあな」
「うん、またね」
手を振り、ゲートを潜る羽姉ちゃん。俺は、姉ちゃんの後ろ姿が見えなくなるまで見送り続けた。
これが、羽姉ちゃんとの買い物の一幕であった。
羽姉ちゃん。完全にヒロイン決定ですね。てか、ここからヒロインじゃなかったら、羽姉ちゃん不憫すぎる……。