俺と集、楽は部屋を出て、縁側に座っていた。
「で、何で俺も呼び出されたんだ?」
「蓮は、この状況に一番詳しいだろ。だからだ」
まあ、俺は第三者だから、詳しいと言えば詳しいけど。んじゃ、俺が集に説明するとしますか。
俺は集に、一連のことを説明した。
「なーるほど。そういう理由で恋人の振りをしてたのか~~。まさか、そんなに大変なことになってるとは。ま、一番の驚きは、蓮がギャングの義弟ってことだけど」
「まあな。姉貴の親父が孤児院から連れ出してくれてな、そのまま義弟になったんだよ。で、今に至る。てか、集はいつから気づいてたんだ?」
「ん、楽の肩を揺らした時から」
それ、恋人の振りをした登校初日の時じゃん……。やっぱ、集は勘は鋭すぎだわ。
まあ、集は笑っていたが、『こんな面白いことに乗らない手はない』的な感じで。
「そういえば、楽。小野寺はこのことを知ってるから心配するな。俺がバラしといた。だからまぁ、誤解されることはないな。好きなんだろ、小野寺のこと」
「さ、サンキュー。蓮。……ん、何でオレが小野寺を好きってわかったんだ?」
「いや、楽の言動を見てれば一目瞭然だから。な、集」
集は腕を組みながら両目を閉じた。
「うむ。蓮の言う通りだ。もしかしたら、クラスメイトの殆どは気づいてるんじゃないか。それよりも蓮さんや。本当に好きな人は居ないのかい?」
ニヤニヤしながら、集にそう言われる俺。
「ニヤニヤしながら聞くな。さっきも言ったろ、居ないって」
「気になる人は居ないのかい?ほら、考えて一番に浮かんだ人とか」
「……集はグイグイくるな。てか、一番に思い浮かんだ人ねぇ」
そう言いながら、俺は思考を回してみる。……まあ、浮かんだっちゃ浮かんだが、却下の方向で。
「……俺のことはいいだろ。それよりも、楽のことだ」
ここは話を逸らそう。楽、すまん。
「ま、それは追々追求するとして。――楽。小野寺は、お前のこと好きだと思うぞ」
集の言葉を聞いて、顔を真っ赤にする楽。
「なっ……な!ば、バカヤロウ!そんなことあるわけねぇだろう!」
「いや、勝算はあると思うけど。今から告っちゃえば。行動は早め早めにだぞ。……取り返しがつかなくなったら、全部が水の泡だしな」
「れ、蓮もそう言うのかよ!」
俺の言葉にも声を上げる楽。まあ、いきなり言われたんだから、こうなるのは無理もないけど。
「も、もしオレの立場だったら、蓮はどうするんだ?」
「呼び出して、二人になってから告るな。……勝算があればだけど」
「蓮は、即断行動の奴なのな」
「まあな。ウジウジしてても始まらんし。時が過ぎてくだけだ」
てか、尊敬の眼差しで見ないでくれ、集と楽さんや。
ともあれ、俺たちは部屋に戻りましたとさ。つーか俺、宿題とか全部終わってんだよね。
「(帰るか。このまま帰るのは忍びないけど)」
俺は立ち上がり、
「すまん。俺は先にお暇するな。もし、『こいつの手が必要だ!』ってなったら呼んでくれ。上から目線になってすまないが」
とまあ、そう言うことなので、俺は帰りの支度をしてから集英組を後にした。ちなみに、皆から別れの挨拶がもらえました。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
それから数週間後。
まあ、この間にプール等の事件があったんだが、その辺はキンクリと言うことで。なんか申し訳ないが。
で、今日は日曜日と言うことで、俺は街をぶらぶらとしていた。ちなみに俺の恰好は、デニムに黒いVネックTシャツといったラフな格好だ。
そんなこんなで電信柱を過ぎた所だった。誰かに目隠しされたのだ。
「だーれだ」
……まさかだと思うけど……。いや、ありえないと思うけど。この声は――、
「ゆ、
「ピーンポーン。正解正解」
そう言って、俺の前に立つ羽姉ちゃん。
俺はあれである。混乱から立ち直れないでいる。
「来ちゃった♪」
「いやいや、『来ちゃった♪』じゃねぇから。何でここに居るんですかねぇ?羽姉ちゃん。てか、
「えっとね。部下の人たちにお休みが欲しいなー。って言ったら、何と二日もくれたの」
へぇ、部下に信頼されてるんだなぁ。羽姉ちゃんは。ちょっと、羨ましいかも。
そんなことより――、
「その休みを使って、日本に来たの?」
「そうそう。電話よりも、直接話したいじゃない」
いや、何。その為に日本に来るとか、意味が解らん。って感じなんですが……。
羽姉ちゃんの恰好は、膝までの藍色のフレアワンピースに、足丈までの茶色のブーツといった格好だ。あれだ、目のやり場に困る……。(俺はだけど)
「楽に会わなくていいのか?幼馴染なんだろ?」
唇に、右手差し指を当てる羽姉ちゃん。
「うーん、今はいいかな。楽ちゃんには、わたしより良い女の子が居ると思うから。後で大々的に驚かせたいしね」
「まあそういうことなら。で、どっか行くのか?」
「もちろん。蓮君も一緒にね」
……うん、こうなることは予想してました。まあいいけどさ。
「ふふ、蓮君とデートだ」
「デートじゃねぇから。ただの買い物だ」
「男女が一緒に買い物することは、列記としたデートだよ。蓮君」
首を傾げる羽姉ちゃん。『もう、何言ってるの』と言ってるようにも捉えられることができる。
「……いや、違ぇし。デートじゃねぇし」
最後まで否定する俺。
「ふふ、そういうことにしといてあげる♪」
そう、俺は口論勝負では、羽姉ちゃんに勝てたことがない。と言うことなので、この勝負は、俺の負けである。
俺は溜息を吐き、
「ショッピングモールでいいか。てか、俺にそういうのは期待するな」
「重々承知してるよ、蓮君♪」
「はあ、行くか」
再び溜息を吐く俺。てか、腕を絡めないでください……。胸が当たってるから、俺には究極難易度だから。
このように、俺の一日が始まった。
羽姉ちゃんの、ヒロイン力高っ。