~終業式~
「終業式になっちゃったね」
「だなぁ。姉貴、本当にどこに行ったんだよ」
やはり、海外に行った。という線が怪しいよなぁ。ならば、俺たちの手だけではどうしようもないので、親父たちの助力が必要になる。
「もうここからは、橘と楽に任せるか。ここからは俺たちができる事は、ほぼないし」
「うん、私たちは主役じゃなく、観客ってことだよね」
「……そうだけど。てか、小咲ってポエマーなの?」
小咲は、へっ。と声を上げる。
「ち、違うよ。私たちと千棘ちゃんたちは、そんな風に感じただけっ」
「まあ確かにな、この先は頼まれたら動くって感じか。ちょっと矛盾した感じでもあるが」
「それで大丈夫だと思うよ。それより、終業式サボって見ようよ。一回こういうのやって見たいんだ」
俺は目を丸くする。
「ま、まさか小咲からそんな事が聞けるなんて……。完全無欠のガチガチ女子。って感じだったのに……」
「そ、それは聞きづてならないよぉ……。私も、蓮君たちと出会った事で変わったっていうこと」
「まあうん。あの頃と比べると、小咲、かなり大人の女性になった気もするしな」
「……それ、口説いてるよね。鈍感蓮君」
『鈍感』の部分を強調する小咲。
「ひ、酷ぇな」
「ま、そんな君も好きだけどね」
「……まー、うん。サンキュ。てか、回りの視線が凄いから止めようか」
そう、さっきから(聞こえてる奴ら)からの暖かい視線や、殺気の視線が凄い。……九割方、殺気の視線が強いんだけど。
小咲は回りを見渡し、
「あ、ははは。そ、そうだね」
「まあ、そういう天然の所は直らないのな」
終業式が始まる為、クラスの皆は廊下に出て移動を始めるが、俺たちは皆に教室の後ろのドアから出て行き、屋上へ向かった。
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~屋上~
「それにしても、屋上を常に解放しておくとか、泥棒が入ったらどうすんだ?」
「け、警備さんが夜に閉めてるんだよ……たぶん」
小咲は自信無く呟く。
「そうだろうな。普通だったら、泥棒が入っても不思議じゃないしな」
「そ、それより、私たちは今後どうしよっか?」
「そうだなぁ。……とりあえず、デートするか?」
「私はいいけど、羽さんと春は大丈夫かなぁ」
まあ確かに、羽姉ちゃんは姉貴の件で大変そうだし、春ちゃんはクラスで行事があるらしので手が離せない状況かも知れん。
「今回は、俺たちだけで行くか。春ちゃんと羽姉にはメールを送っておくよ」
あれだ。羽姉ちゃんと春ちゃんで、個人で行く感じにしよう。……てか、俺の体持つかなぁ。ま、休みを挟めば余裕だ。ちなみにメールを送った所『その条件なら問題なし』という事だ。
「どうだった?」
「ん、大丈夫だってさ」
ちなみに、突然決まったデートなので、何処に行くか決まってない……。どうしよう……。
すると、小咲が閃いたように、
「じゃあ、明日千葉の幕張メッセに行こう。新しくプールが設立されたんだって」
「了解。そこに行ってみるか。プールとか、久しぶりだしな」
でもまぁ、小咲がナンパされたら、そいつを殺しそうで怖いわ……。まあ、その辺の自制はできているので、大丈夫だろうけど。ちなみに、水着は新調したものがあるらしい。
ともあれ、終業式をバレずに抜け出した俺たちは、終業式が終わったのを見計らって教室に戻ったのだった。