ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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この話はこれで終わりで、蓮君がメインになりますね。


第61話 キュウシュツ#2

 ~地下、牢獄内部~

 

「……どりゃあああぁぁぁああ!!」

 

 姉貴が全力で柵に蹴りを入れるが、柵はビクともしなかった。

 おそらく、俺たちが力を合わせても突破は難しいだろう。……てか、姉貴の全力蹴りで破壊されないとか、柵硬過ぎない?

 

「……姉貴、これ以上やっても柵はビクともしないと思う」

 

「そ、そうかもだけどっ。……でも、早くしないと万里花が」

 

「その辺りは、御影さんが如何にかしてくれるだろ。たぶんあの人、俺たちがこうなる事は見越してたと思うし」

 

 あの人、最悪のパターンまで考慮してそうだし。てか、あの人の性格上、かなり用心深そう。

 それから数分後、「牢屋の鍵はいらんかえ~」って御影さん登場である。でまあ、手錠と牢屋の鍵を開けてもらい、俺たちは自由になった。

 それからすぐに楽とも合流し、橘の母親の話を聞くと、俺が予想した人物像とほぼ一致だった。だからまあ、橘が反発する気持ちも分かる。

 とにかく、全員が輪になり座って、今後の話をする。

 

「で、楽これからのプランはどうすんの?」

 

「ああ。結婚式をぶち壊して、橘を力ずくで連れ戻そうと思う。……あの母親相手に話し合いは通じねぇ。とにかく一度、物理的に距離を開ける必要があると、オレは思う」

 

 楽は言葉を続ける。

 

「連れ出したら、とりあえず家に匿おうと思ってる」

 

 楽が言うには、ヤクザなら警察も手は出しにくいし、訳を話せば、集英組の皆も分かってくれるからだそうだ。

 まあ確かに、連れ出した後の策は、これがベストだと俺も思う。ビーハイブでもいいと思うが、親父は橘と面識がないので、却下の方向で。てか、結婚式ぶち壊しの後は、たぶん俺は手を引くだろうなぁ……。まあ助けを求めて来たら、手を貸すかも知れんが。

 ともあれ、今後の動きが決定した。てか、姉貴が言っていたように、「ここまで来たなら引き下がれない」っ言葉には共感した、うん。

 姉貴は、参加条件として、橘を家で預かる気らしいが。……まああれだ。俺、羽姉の家に居候してて良かったわ。色んな意味で。つか、小咲たちが城内部に潜入していたとは驚きである。

 

「そいじゃ!万里花救出作戦の概要ば説明するとよ!」

 

 作戦内容は、結婚式に乗り込み橘を連れ出し、事前に打ち合わせした通路から脱出って感じだ。重要なのは敷地内連れ去るタイミングらしい。まあ確かに、先程の一連で警備強化(特に結婚式会場前とか)されてるのは必須だ。

 ちなみに、結婚式開始の時間は、今日の正午過ぎかららしい。

 

「準備を考えたら、あまり時間が無か。すぐに取りかからんと」

 

「「「了解!」」」

 

 作戦会議が終了し、移動を開始した俺たち。……てか、この作戦。穴がありすぎなのは気のせいだよな。つーか、色んな場所に繋がりすぎだろ。御影さんが持ってる隠し通路……。

 

「……なあ、何か外が騒がしくないか?」

 

 俺が言うと全員が耳を澄ませ、飛び交う会話の中には『式が一時間早まった』って言う会話もあった。

 どうやら、橘の母親は俺たちの妨害をさせない為に、時間を早めたのだろう。

 

「……んで、楽。どうするよ?」

 

「ああ。こうなったら会場に直接乗り込むしかねぇ」

 

「いや、それしかないと思うが、警備が厳重すぎるぞ」

 

「んなこと分かってる。でも、オレは行く!」

 

 こうなったら、楽は止まる事はないだろう。そして俺は溜息を吐く。

 

「俺と楽で乗り込むから、姉貴たちはバックアップをお願いしたいんだが」

 

「ええ。そっちの方が動きやすいでしょうからね。鶫もいい?」

 

「私はお嬢の意思に従います」

 

「オレもそれでいいよ~」

 

「……あんたらは、ホント無茶ばかりするばい」

 

 どうやら姉貴たちはOKらしい。

 ともあれ、俺と楽は通路に飛び出し、会場の扉を開けた。所謂、乗り込みってやつだ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「その結婚式、待ったああぁぁあああッッ!!」

 

 扉を勢いよく開けた楽の第一声である。

 結婚式に出席していた来客も「何だなんだ?何が起こってるんだ?」「待ったって、この結婚式はどうなってんだ?」って言う声が飛び交う。

 万里花は楽の名前を呼ぼうとするが、何かに遮られるように口を結んだ。そして――、

 

「……何をしに来たんですか?一条さん?」

 

 それから、万里花は「誤解です。帰って下さい」「今でも私が一条さんのことを好きだとお思いで、だとしたら寒気がします」「邪魔をしないで下さい」と、冷たい言葉を楽に言う。

 だがそんな時、遅れて登場した蓮が――、

 

「……ったく。何で橘はそんな嘘をつくのかね。お前のその言葉、本心じゃないだろ?」

 

「あら。誰かと思いましたら、クラスメイトの桐崎蓮さんじゃありませんか」

 

 万里花は平然に言う。

 

「ああ。久しぶりだな、橘。つーかお前よ、ポーカフェイスって知ってか?目許に涙を溜め過ぎから」

 

 蓮の言葉は続く。

 

「お前のことだから、迷惑がかからないようにしたんだと思うけど。そうだと思うよな、楽?」

 

「ああ、蓮の言う通りだ。なあ橘、一人で抱え込むなよ。嫌なら嫌って断れよ、今後のことはオレたちと相談して決めればいいじゃねぇか」

 

 楽は『でも』と言葉を続ける。

 

「……オレはまだ、橘の想いに答えを出せない優柔不断な男だが、必ず答えを出す」

 

 答えは決まってると思うが、楽も蓮と同じ路線まっしぐらだろう。……世間一般でいう、ダメ男である。まあ当人たちは気にしないと思うが。

 

「だから橘、オレたちにお前を助けせちゃくれねぇか」

 

「お前はホント優柔不断だな。まあ振らないだけマシかも知れんが」

 

 楽はジト目で蓮を見ながら、

 

「いやいや、蓮もだろ。オレ知ってるぞ。蓮が、小野寺と春ちゃん、羽姉と付き合ってること」

 

 蓮は、うぐッ、と唸った。

 

「いやね、俺の場合、誰か一人を選ぶとか無理だから」

 

「だから、全員を選んだと」

 

「お、おう」

 

 珍しく、楽が蓮の上に立つ構図である。

 ともあれ、万里花が――、

 

「……楽様。私のこと攫ってくれますか?」

 

 万里花が目許に涙を溜めながら言った。

 楽が『おう』と同意し、後方の扉が開き全員集合である。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 出て来た衛兵たちが武器を向けるが、いきなり腹を押さえてどんどん倒れていく。

 

「成功ね。小咲」

 

「う、うん。でもまた作るとは思わなかったよ」

 

 話によると、内部に潜入した際、結婚式用に作った料理は、小咲の殺人料理らしい。

 それを先に衛兵たちに勧め、食べた衛兵が倒れたということだ。……何ともえげつない作戦である。

 

「この先は、本田さんが出てくるだろ。鶫」

 

「はい、若」

 

 鶫が取り出したのは、刀が一振りだ。

 蓮に必要になると思い、脱出のついでに盗み出したらしい。

 蓮は刀を受け取り、腰から吊り下げる。

 

「楽。ここから先では本田さんが出てくる。相手は俺に任せて先に行け。鶫は楽たちの護衛な」

 

「で、ですが、若」

 

 鶫は心配そうに声を上げるが、

 

「俺のことは気にすんな。鶫は、楽たちを橘の所まで導いてくれ」

 

「……わかりました」

 

 と、鶫は返事を返し、そして楽が「ここからが正念場だ。橘のこと取り戻すぞ!」と言ってから走り出すと、予想通り本田が楽たちの前に立つ。

 

「……楽。姉貴たちと先に行け。鶫、護衛は任せたぞ」

 

「お、おう。ここは任せた」

 

「了解しました、若」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「……まさか、貴方と戦う事になるとは思いませんでした。ビーハイブの剣舞」

 

「……その二つ名は好きじゃないんですけどね。本田さん」

 

 蓮が刀を抜くと、本田は懐から鎖分銅を取り出す。そして蓮は眉を顰める。刀とほぼ飛び道具では、蓮の分が悪い。

 まあでも、蓮の役目は本田をこの場での足止めである。

 すると、突然本田消えるが、後方からの本田の蹴りを蓮は右腕を上げ防御する。

 

「中々の反応速度ですね。……貴方、本当に高校生ですか?」

 

「……何と言われようと、俺は高校生ですよッと」

 

 蓮が右手で握った腕を上げ、力ずくで斬り上げると、本田は後方に飛びそれを回避。

 

「なぜ、貴方たちはお嬢様の結婚式を邪魔するのですか?」

 

「何でって言われても……。まあ友達の為って言っておきますよ」

 

「……そうですか」

 

 蓮は走り出し、本田の鎖を潜り抜け刀を振るうが、本田はそれを上手く鎖で迎撃。

 また、二人の回りの遮蔽物は粉々に粉砕されていく。

 蓮と本田は攻防をしながら、

 

「貴女は本当に、橘を裏切ったんですか?」

 

「……何を言ってるか解りません」

 

「いや、らな何で苦しそうな顔をしてるんですか?普通なら、橘の幸せを祝う顔をするでしょ」

 

「………………何が言いたいんですか?」

 

「本当は、この結婚には反対ってことですよッ」

 

 蓮が鎖を弾き、二人は一旦距離を取る。

 

「……貴方は情で行動しすぎです。裏に生きる者、そのようなものは障害になるだけです」

 

 本田は鎖振るうが、蓮は正面から刀を構え、

 

「……ホント、貴女は強がりすぎですねッ!」

 

 蓮は鎖を叩き落としたが、本田の姿は見当たらなかった。蓮が回りを見渡すと、橘救出ヘリの近くに本田の姿が――、

 

「クソッ!逃がしたか!――楽!本田さんがそっちに行った!気をつけろ!」

 

 だが、万里花は本田に捕まり、中央に着地した。そして、万里花を離し、再び蓮と向き合う。

 すると何かが到着した。――隠衛衆である。所謂、忍びの集団だ。だが、万里花を捕まえようとするが、それを鎖が薙ぎ払った。

 

「……成程。本田さん、貴女は俺と同等に私情を挟む人じゃん」

 

 そう、本田はいつも、万里花の為に行動していたのだ。今回の結婚騒動も、ここでまで見越していた。なので、騒動が起こるまで万里花を欺いていたのだろう。

 

「……桐崎蓮さん、鶫さん。私はこれからお嬢様をこの場から離脱させます。どうか助力願いませんか?」

 

 蓮と鶫は、本田の所まで飛んだ。

 

「今まで申し訳ありません」

 

「気にしないで下さい。貴女の本音が聞けて嬉しく思います」

 

「つーか、本田さん。最初からそのつもりなら、戦闘の最中に教えてくれればよかったのに。まあいいですけど」

 

「……では、参ります」

 

 蓮たちは飛び、迎撃に入ったのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「蓮!そこの壁壊して!」

 

 姉貴の声に従い、俺は指定された壁を壊すと、外にはヘリの姿が。

 吊り下げれた柱には、楽の姿がある。そして橘は走り出し、楽が抱きしめた。

 

「(成程な。正に、王子様がお姫様を連れ去るってことか)」

 

 ともあれ、今回の一件に終止符が打たれ、その後俺たちも、御影さんの先導の元、城から脱出したのだった。

 




……まあうん、戦闘とか銃刀法とか色々あると思うが、フィクションだしね(-_-;)
でまあ、原作ではアレだったけど、本作では楽は振りませんでしたね。てか、蓮君。楽に優柔不断と言われてしまった(笑)

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