ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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つ、疲れた……。マジで疲れた。


第6話 ホウモン

~小咲side~

 

 凡矢理高校の屋上。屋上の手摺に寄り掛かりながら、わたしとるりちゃんは立っていた。

 

「ねぇ、小咲。あんたどうなのよ?」

 

「どうって?」

 

 次のるりちゃんの言葉で、頬を赤くしてしまう。

 

「いや、あんた一条君のこと好きでしょ?」

 

「な、なな、何で知ってるの」

 

 ば、バレてる~。な、何で、上手く隠してたつもりなのに……。

 そんなことを思っていたら、るりちゃんが溜息を吐く。

 

「いや、丸わかりだしね。早くくっつけっ、鬱陶しい。って感じだわ」

 

 しょ、正直に言いすぎだよ~。るりちゃん。

 でもね。と、るりちゃんは続ける。

 

「でも小咲。最近は、それ(好意)が薄まってきてないかしら?」

 

「薄まってる?」

 

「そうよ。ある男の子によってね。――桐崎蓮。違う?」

 

「そ、それは、……わからない」

 

 わたしは、蓮君をどのように見てるか、未だにわかっていない。

 

「でもあんた。蓮君と居る時は、かなり自然体よ。素が出せてるって言えばいいのかしら」

 

「そ、そうかな。でも、蓮君とは話しやすいけど」

 

 そうなのだ。蓮君は誰とでも分け隔だてなく接していて、クラスの女子の間でも人気が高い。それにプラスするように、相手を思いやる気持ちもある。好意を持つ女性が出てきても不思議じゃないってくらいかな。

 

「そう。なら、それを確かめる機会を作ってあげるわ」

 

 るりちゃんはそう言うと、わたしの手を引いて屋上の階段を下り、教室へ向かい扉を開く。

 

「一条君と桐崎蓮君はいるかしら?」

 

 る、るりちゃん~、何する気なの~……。

 

~小咲side out

 

 

「一条君と桐崎蓮君。今日勉強会しない?ちなみに、一条君のお家でね」

 

 宮本がそんなことを言ってきた。いや、その前に、俺が既に高校一年の学業を収めてることを知ってると思うんだけど。

 そう言おうと思い宮本の目を見たのだが、その瞳には『来ないと、わかってるわよね……』的な意味が込められているんですけど……。怖ぇよ、宮本さん。

 つか、楽はかなりテンションが上がってると窺える。まあ、好きな人と勉強会だしね。

 

「ああ、楽がいいなら、俺は構わないぞ」

 

「オレも、OKだ」

 

 とまあ、了承が得られたと言うことで、今日の放課後、楽の家で勉強会を開くことになった。

 ちなみにメンバーは、楽、集、俺、姉貴、小野寺、宮本だ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 と言うことで、再びやってきました集英組。

 はい、敵地のど真ん中ですね。俺、最初の印象あんまり良くないし、警戒されてないか心配だなぁ。

 

「お待ちしてやしたぜ、楽坊ちゃん!勉強会ですってねー!?」

 

 楽が家の玄関に入ると、大勢の部下たちが整列していた。その部下たちの手には、ボードを一人ずつ持ち、『おいでませ』の文字が映る。

 そんな時、俺のスマホが震える。スマホを取り出し、ディスプレイの名前を見て、俺はげんなりする。

 

「……悪い、楽。先に行ってくれないか。後で追いかける」

 

「そ、そうか。オレの部屋までの道は大丈夫か?」

 

「心配すんな。一回来てるんだから」

 

「了解だ」

 

 楽の言葉を聞いてから、俺は再び外に出てスマホの通話ボタンをタップし、通話口を右耳に当てる。

 

「もしもし、羽姉ちゃ――」

 

『久しぶりっ、蓮ちゃん!』

 

「蓮ちゃん言うな!てか、言葉を遮るな!バカ姉が。……はあ、まあいいや。そっちは順調なの?」

 

『うーん、組織を纏めるって大変なんだねぇ。こんなに大変とは思ってなかったよ』

 

 なるほど。俺に弱音を聞く役になれと。俺、羽姉ちゃんにいいように使われてるなぁ……。

 

「つっても、側近?にも手伝ってもらってるんだろ?」

 

(イエ)ちゃんのこと?』

 

「そそ。その夜ちゃん」

 

『どうなのかなぁ。夜ちゃんは、わたしの教育係みたいなものだから』

 

「ふーん、そういうもんか」

 

『そうそう。そういうものだよ』

 

 それから数分間話をしていたが、俺は今日の趣旨を思い出した。

 

「悪い、羽姉ちゃん。これから勉強会なんだわ。また今度でいいか?」

 

『もっと話してたいなぁ……』

 

 やめろっ。その悲しそうな声は。まあ、嘘声って言えばいいのか。たぶんそれだと思うけど。

 

『蓮君。そっちで女の子を落としてないでしょうね?』

 

「いや、そんなのないから。俺が恋愛に興味がないのは羽姉ちゃんがよく知ってるだろ?」

 

『……まあそうだけど。蓮君、天然ジゴロなんだもんっ』

 

 ぷんぷんって言う擬音が似合いそうな声を出すな、羽姉ちゃんや。

 

『お姉ちゃんが彼女になってあげようか』

 

「丁重にお断りします。てか俺、彼女を作る気とかないし。一生独身でいいし」

 

『ホント、蓮君のガードは固いよねぇ』

 

「そうなのか?自覚はないが。てか、そろそろ行かないと。不審がられるかも」

 

『そんなことはないと思うけど……。ま、そういうことなら仕方ないね。またね、蓮ちゃん!』

 

「だ、だから、蓮ちゃんじゃ――」

 

 俺が最後まで言い終える前に、プープーと通話が終了していた。ったく、何とも自由な姉である。

 俺はスマホをポケットに仕舞い、楽の部屋へ急ぎました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「悪い、遅れた」

 

 俺は襖を開け、部屋の中に入る。

 

「なんかあったのか?」

 

「まあな。我がまま人に捉まってた」

 

 ともあれ、楽の隣に腰を下ろし、鞄から教科書類を取り出す。

 ちなみに、教科は数学だ。あれだ。今週一週間の宿題を終わらせてしまおう。良い機会だしな。

 部屋には沈黙が流れ、勉強会特有の音が聞こえてくる。

 

「……るりちゃん、ここの問題解ける?」

 

「んー?」

 

 どうやら小野寺は、中盤の問題で突っかかってたらしい。

 まあ確かに、ここは予習をしとかないと難しい所でもあった。宮本はその問題をじっと見ていたが――、

 

「蓮君。この問題、小咲に教えてあげてほしいんだけど?」

 

「別にいいけど」

 

 小野寺は目を丸くして、宮本に詰め寄る。

 

「(るりちゃん!?何言ってるの!?)」

 

「(ほら、確かめてきなさい!)」

 

「(え、えー。るりちゃん、むちゃくちゃだよ~……)」

 

「(いいから行け。そして二度と戻ってくるな!)」

 

 何話してんすか。お二人さん。

 まあ、聞くとか無粋なことはしないけどさ。そんなこんながあり、俺の元へすり寄る小野寺。

 

「……よ、よろしくお願いします」

 

「ん、よろしく」

 

 俺は小野寺からプリントを受け取った。で、小野寺が指差した問題を見る。

 

「あー、これね。αを代入しないと出ないよ」

 

「な、なるほど。だから普通の計算じゃ解けなかったんだ……」

 

「ん、そゆことだな。だからまぁ、ここがテストに出たら完璧だな」

 

「そ、そうだね。と、ところで、蓮君は終わったの?」

 

 俺は解いた問題集を見せる。

 

「今週一週間分は終わらせた」

 

「す、凄いね」

 

「そうか?まああれだ。解んなかったら、いつでも聞いてよ。席も近いんだし」

 

「あ、ありがとう」

 

 とまあ、宿題も終わり、皆が寛ぐことになった。

 てか、初めて勉強会とかしたから、新鮮だったわ。

 

「そういえば、蓮。学校で好きな人見つかった?」

 

 なんつーことを聞くんだよ、姉貴は。てか、何で皆は耳を澄ましてるの?

 

「いや、俺が好きな人とかありえないから。最悪、一生好きな人はできないだろうなぁ。冗談抜きで」

 

「あんた、アメリカの学校でもそうだったわよね?――わたしは、素敵な恋がしてみたいけどねー」

 

 アホ姉貴。ここには宮本と集が居るんだぞ。てか、姉貴たちは小野寺が偽モノの恋人の件を知ってるってことを知らなかったけ。

 

「……ジョークよ、ジョーク!ダーリンに、ちょっとイタズラしてみたくなったの~~!」

 

「こ、こら!ひ、ひどいぞハニー!?僕という人がありながら」

 

 急にイチャイチャしだす、姉貴と楽。つーか、勘の鋭い集と宮本にはバレてんじゃね。的な感じでもある。と言うことは、この場にいる全員にバレてると言うことにもなるんだが。

 

「ねぇねぇ、楽、桐崎さん。ちょっち聞いていいかな?」

 

 まあうん。集の奴ろくでもないこと言おうとしてるわ。

 

「あ、ああ」

 

「い、いいわよ」

 

「お前らって、ぶっちゃけ、どこまで行ってんの?」

 

 ブー、と噴き出す姉貴と楽。

 で、楽に連行される集と俺。……てか、何で俺まで連行するの?たぶん、俺も関係者だからだと思うけどさ。




まだ、ヒロインは未定で。

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