新学期が開始し、俺、楽、集は屋上で昼飯を食べていた。
いつもなら、小咲たちと俺は昼食を摂っているのだが、楽が重要な話があるという事で、男三人で屋上で昼食を摂ってるのだ。
昼食を食べ終わった所で、手摺の上で腕を組み体を預けた楽が口を開く。ちなみに、俺と集も手摺の上で腕を組み体を預けている。
「聞いてくれ、二人とも!千棘に好きな人がいるらしいんだ……!?」
楽の話によると、定期デートの時に“そういう話”になったらしい。
その時に姉貴が、楽の前で好きな人が居る。と宣言したらしい。で、楽はかなり動揺したとか。
「蓮は、千棘の義弟だろ。何か知らないか?」
「いや、恋愛話とかは、姉貴とした事はないな」
……まあうん、嘘だが。
つーか、集。『お前って、本当に面白い奴だな☆』って、楽に向けたドヤ顔を止めろ……。俺、笑っちゃうだろうが……。
「ち、ちきしょう……。どんな奴かだけでも知りてぇ……」
俺はアイコンタクトで、
「(どうする、集?このままじゃ、一向に進まんぞ)」
「(だよなぁ……。切っ掛け作りっていっても、楽に自覚してもらわないと、どうにもならないよな)」
「(……一つくらい、助言?でもしとくか。気持ちを気づかせる的な感じで)」
「(了解~。その役はオレにやらせてくれよ~)」
「(わったよ。頼むわ)」
すると、集が楽に向き直り、口を開く。
「相手の事はよく知ってるよ。オレたちの身近にいる人物だから」
「み、身近だと!?それ、マジかよ!?」
「そだよ。それにしても、楽は何でそんなに焦ってんだ。やっぱり、偽モノの恋人といえど、誰かに取られると思うと不安になるのかな?」
楽は、『なんねーよ!』と否定した。
てか、集、楽に煽りかけるのが完璧すぎる……。流石、クラスの参謀と呼ばれてるだけはある。
「……なあ楽。オレたちの身近にいる桐崎さんの好きな人……少しは真面目に考えたら答えが出るかもよ」
「……ゴリ沢のことか?」
「「……マジ?」」
俺と集の言葉が重なった。
いやね、身近っていっても、姉貴はゴリ沢と何の接点もないからね。
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学校が終わり、家に到着し、玄関で靴を脱ぎリビングに上がると、一つの書置きがテーブルの上に置いてあった。何でも、『蓮ちゃん、学校が終わったら、楽ちゃんの家まで来てね♪』という事だ。
「……うーむ、何で楽の家?」
俺は考え込み、一つの結論に至る。
「そうか。羽姉ちゃんの誕生日か」
俺は合点がいった。
羽姉ちゃんの誕生日会は大々的に行われる。そうすると、この家では狭いし、ビーハイブとはほぼ面識がない為、屋敷での開催は不可能だ。なので、ある意味育ての親である集英組の組長に場所の提供を頼んだのだろう。
俺は自室で私服に着替え貴重品を持ち、玄関の扉に鍵を閉め、集英組に向かったのだった。
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久しぶりに集英組の庭に足を踏み入れ、『お邪魔しまーす』と玄関の扉を開けると、廊下は何所もかしこも、龍の彫刻やら高そうな花瓶、天井からは紅白の提灯がぶら下げてある。
「……凄ぇな」
ともあれ、玄関で靴を脱ぎ、廊下を歩いて作業中の居間へ向かう。てか、居間の中も、飾り付けが凄ぇ……。
俺が呆気に取られていると、居間にいた羽姉が俺の到着に気付いた。
「あ、蓮ちゃん。お帰り~」
「おう」
返事をしてから、羽姉の元へ向かう俺。
そこには、楽の姿もあった。
「羽姉も20歳になるのか。……全然20歳に見えないけどな……。な、楽」
「ちょ、蓮。オレに振るなよ。……まあ、蓮の言う通りかも知れないけど」
頬を膨らませる羽姉。
「ちょっと2人とも~。お姉ちゃん傷付いちゃうよ~」
「……まあうん。羽姉、無理にぶりっ子しなくていいぞ。ま、可愛いけど」
俺の発言に目を丸くする楽。
……あー、そうだった。楽は、俺と羽姉の関係を知らなかったんだっけ。まあ、楽が感づくまで誤魔化す方向で。
「まああれだ。客観的意見だぞ、楽」
「あ、ああ。なるほど」
いやいや、納得しちゃうのかい。“あれ、2人の雰囲気がおかしくないか”くらい気づいてもいいと思うんだが……。
とまあ、話し合った結果、羽姉の誕生日会には、姉貴や小咲を招待する事に決まったのだった。てか、この誕生日会で、姉貴たちに何かの進展があったらな~。と思う俺でした。
楽が、自分の気持ちに気付いた?感じですね。
次回は、羽姉の誕生日回の話になりそうです。
ではでは、次回もよろしくです!!