ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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久しぶりの更新です。


第52話 カイケツ

 やって来ました、集英組。

 俺と楽は、集英組の玄関前で、姉貴たちの到着を待っていたが、待ち合わせ時間になっても、姉貴たちは姿を現さない。

 

「……なあ蓮。千棘の奴、ドタキャンとかねぇよな?オレ、親父に説明しちったぞ」

 

「……ドタキャンは無いと思うぞ。てか、説明済みかよ……」

 

 既に楽は手を回してたのね。

 うーむ。何で恋愛では、この行動力が発揮させないのかが不思議である。てか、俺の荷物等も、羽姉の自宅に郵送済みである。

 

「(……まだ未成年なのに、同棲するとはなぁ……。世の中、何が起こるか解らないわ)」

 

 つーか、アレだ。間違いが起きるかもしれないって、メチャクチャ不安でもある。幼馴染の前に、先生と生徒なのだ。

 てか、姉貴、遅すぎるな。何かあったのか。……野郎共は有り得ないから、考えられるとしたら、クロードか。

 

「もう、二時間も待ってるぞ。クラスのお別れ会もパーティーもあんのに、始まってちまうぞ」

 

 楽は、お別れ会から、残留会に変更になると思うが。と付け加える。

 その時、楽のスマートフォンに着信が入った。ディスプレイに表示された名前は、鶫誠士郎だ。

 

「――はあ!?盗聴、監禁。千棘を!?」

 

 楽が、荒い声で叫んだ。

 『監禁』『盗聴』の言葉で、俺は仮説を立てた。――あの時に盗聴器が仕掛けられ、クロードには、楽たちの会話が筒抜けになっていた。んで、姉貴を呼び出し監禁室に閉じ込めた。ってところか。

 楽に確認した所、ビンゴ(当たり)だったらしい。てか、楽。通話越しでなら、恥ずかしい事が平然と言えんのかよ……。

 俺は、通話を終えた楽に話しかける。

 

「んで、楽。これからどうすんだ?」

 

「ああ。千棘を助けに行く。蓮、力を貸してくれ」

 

「約束だからな。力を貸すよ」

 

「すまねぇ。恩に切る」

 

 ともあれ、桐崎家に向かう俺たち。

 作戦はシンプルだ。鶫がクロードを呼び寄せてる間に、監禁室の鍵を入手し、鍵を使って監禁室の扉を開け、姉貴を救出だ。

 桐崎家に向かった所で、鶫と合流し、パスワードと鍵の絵が描いてある用紙を受け取る。

 

「一条楽、若。鍵を入手したら、お嬢の所まで行って、救出を」

 

「ああ、任せろ!」

 

「まあ俺は、楽の護衛に回るよ」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 家に入り、鍵を入手して監禁室に向かうが――、

 

「楽、そこは(トラップ)だ」

 

 俺が右手で楽を自身の方へ引き寄せると、直後、楽の居た場所に、槍が通過し壁に刺さる。

 

「こ、殺す気満々じゃねぇか、あの眼鏡」

 

「まあクロードだからな」

 

「……蓮。それ答えになってねぇから」

 

 その後も、楽は罠に引っ掛かりまくった。

 まあ、直後に俺が回避させてるから問題はないんだが。

 目的の部屋に到着し、楽が扉越しで、姉貴に呼びかける。

 

「千棘、助けに来たぞー」

 

 数秒経過しても反応がない。

 

「おい、蓮。この部屋でいいんだよな」

 

「大丈夫だ。この部屋が監禁室で合ってる」

 

 ――すると、扉越しから、

 

『……楽、蓮。そこにいるの?』

 

「おう、助けに来たぞ。千棘」

 

「まあ、俺は楽の護衛だな。つーか、早く姉貴を出してやれ。クロードに見つかるのは、時間の問題だぞ」

 

 鶫の時間稼ぎは、そんなに長く続かないと、俺は予想してる。

 鍵を刺して、扉を開けようとするが、肝心の鍵が施錠口に入らない。

 

「……成程な。これは一杯食わされたわ」

 

「どういう事だよ、蓮?」

 

「その鍵は、(フェイク)って事だよ。……だろ、クロード」

 

 俺が顔を向けた先には、眼鏡をクイッと上げるクロードの姿が映った。

 

「さすが、蓮坊ちゃん。蓮坊ちゃんの仰る通り、その鍵ではなく、私が持っている鍵が正解です」

 

 クロードは、懐から鍵を右手で取り出し、俺たちに見えるように掲げた。

 俺は両手で、骨をパキパキと鳴らし、

 

「……楽は隙を見て、クロードから鍵を奪ってくれ。俺が隙を作ってやる」

 

「で、でもよ。眼鏡相手で、大丈夫なのかよ」

 

「まあ心配すんな。未だに、勝率は俺の方が上だし」

 

 でもなぁ、クロードがあれから鍛えてたら、五分五分って所か。

 得物がこの場にあれば、圧倒的に俺が有利に立てるんだが……。

 俺とクロードは、同時に駆け出した。

 俺の右ストレートは躱される。だが俺は、反射的に右回し蹴りを放つが、クロードは両手を前に突き出し、腕を上げて蹴りを防御する。

 

「……さすが、蓮坊ちゃん。やはり、先制攻撃の権利は、坊ちゃんにあるんですね」

 

 俺はクロードに向き直り、

 

「……昔は、さっきの攻防で決まってたはずなんだけどな。てか、銃は使わないのか?」

 

「素手で挑まれたのに、銃を使うなんて外道がやる事。私は、外道に堕ちる事はありません」

 

「……そうかい。んじゃ、続きと行きますかッ」

 

 俺とクロードは、急所を狙い、殴り、蹴りを放つが、上手く躱し躱されで、勝負が一向に付く気配がない。

 両者とも、ジワジワと体力が奪われていく。

 仕切り直す、俺とクロード。

 

「……ったく、強くなりすぎだろ、クロード」

 

「それを坊ちゃんが言いますか、私について来るんです。おそらく、隠れて鍛錬を欠かさなかったのでしょう」

 

「まあな。俺には護る者があるからな」

 

 再び飛び出そうとした瞬間――、

 

「は~い、ストップ。蓮もクロードもそこまでだよ」

 

 振り返ると、親父が立っていた。

 

「親父……。親父も、クロードとグルなのか?」

 

 そうなった場合、俺の勝ち目はゼロになる。

 だが親父は、違う違う。と首を左右に振る。

 

「君たちが争う理由がなくなったから、止めに来ただけだよ」

 

 話によると、引越しは中止。

 理由は、この屋敷にいる野郎共全員からの、嘆願書と誓約書だ。まあ、流石にここまでやられたら、親父が折れるしかないだろう。お袋も、姉貴の意見を尊重したいという事らしい。

 この勝負、完全に姉貴の勝ちだ。

 ここで、一つの疑問が生じる。

 

「(……俺と楽。屋敷に乗り込んだ意味あったの?)」

 

 まあいいや、姉貴も助かった事だし、ミッションコンプリートという事で。

 つーか、俺の荷物、羽姉の家にあるんだよね……。どうすっか……いや、マジで。

 

「俺は荷物を取りに、羽姉の家に行くわ」

 

 とにかく、屋敷を出る俺。

 羽姉に、今後は一緒に暮らそうって言われたらどうすっか?悩みの種である。

 

「(ま、流れに任せるか。どうにかなるだろ)」

 

 とまあ、楽観的な俺でした。

 ともあれ、このようにして、引越し騒動の幕が下りたのだった。




次回は、クリスマスイヴかな。
次回は、羽姉たちを出したいですね(^O^)
……蓮君、リア充やで(笑)

ではでは、次回もよろしくです!!

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