やって来ました、集英組。
俺と楽は、集英組の玄関前で、姉貴たちの到着を待っていたが、待ち合わせ時間になっても、姉貴たちは姿を現さない。
「……なあ蓮。千棘の奴、ドタキャンとかねぇよな?オレ、親父に説明しちったぞ」
「……ドタキャンは無いと思うぞ。てか、説明済みかよ……」
既に楽は手を回してたのね。
うーむ。何で恋愛では、この行動力が発揮させないのかが不思議である。てか、俺の荷物等も、羽姉の自宅に郵送済みである。
「(……まだ未成年なのに、同棲するとはなぁ……。世の中、何が起こるか解らないわ)」
つーか、アレだ。間違いが起きるかもしれないって、メチャクチャ不安でもある。幼馴染の前に、先生と生徒なのだ。
てか、姉貴、遅すぎるな。何かあったのか。……野郎共は有り得ないから、考えられるとしたら、クロードか。
「もう、二時間も待ってるぞ。クラスのお別れ会もパーティーもあんのに、始まってちまうぞ」
楽は、お別れ会から、残留会に変更になると思うが。と付け加える。
その時、楽のスマートフォンに着信が入った。ディスプレイに表示された名前は、鶫誠士郎だ。
「――はあ!?盗聴、監禁。千棘を!?」
楽が、荒い声で叫んだ。
『監禁』『盗聴』の言葉で、俺は仮説を立てた。――あの時に盗聴器が仕掛けられ、クロードには、楽たちの会話が筒抜けになっていた。んで、姉貴を呼び出し監禁室に閉じ込めた。ってところか。
楽に確認した所、
俺は、通話を終えた楽に話しかける。
「んで、楽。これからどうすんだ?」
「ああ。千棘を助けに行く。蓮、力を貸してくれ」
「約束だからな。力を貸すよ」
「すまねぇ。恩に切る」
ともあれ、桐崎家に向かう俺たち。
作戦はシンプルだ。鶫がクロードを呼び寄せてる間に、監禁室の鍵を入手し、鍵を使って監禁室の扉を開け、姉貴を救出だ。
桐崎家に向かった所で、鶫と合流し、パスワードと鍵の絵が描いてある用紙を受け取る。
「一条楽、若。鍵を入手したら、お嬢の所まで行って、救出を」
「ああ、任せろ!」
「まあ俺は、楽の護衛に回るよ」
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
家に入り、鍵を入手して監禁室に向かうが――、
「楽、そこは
俺が右手で楽を自身の方へ引き寄せると、直後、楽の居た場所に、槍が通過し壁に刺さる。
「こ、殺す気満々じゃねぇか、あの眼鏡」
「まあクロードだからな」
「……蓮。それ答えになってねぇから」
その後も、楽は罠に引っ掛かりまくった。
まあ、直後に俺が回避させてるから問題はないんだが。
目的の部屋に到着し、楽が扉越しで、姉貴に呼びかける。
「千棘、助けに来たぞー」
数秒経過しても反応がない。
「おい、蓮。この部屋でいいんだよな」
「大丈夫だ。この部屋が監禁室で合ってる」
――すると、扉越しから、
『……楽、蓮。そこにいるの?』
「おう、助けに来たぞ。千棘」
「まあ、俺は楽の護衛だな。つーか、早く姉貴を出してやれ。クロードに見つかるのは、時間の問題だぞ」
鶫の時間稼ぎは、そんなに長く続かないと、俺は予想してる。
鍵を刺して、扉を開けようとするが、肝心の鍵が施錠口に入らない。
「……成程な。これは一杯食わされたわ」
「どういう事だよ、蓮?」
「その鍵は、
俺が顔を向けた先には、眼鏡をクイッと上げるクロードの姿が映った。
「さすが、蓮坊ちゃん。蓮坊ちゃんの仰る通り、その鍵ではなく、私が持っている鍵が正解です」
クロードは、懐から鍵を右手で取り出し、俺たちに見えるように掲げた。
俺は両手で、骨をパキパキと鳴らし、
「……楽は隙を見て、クロードから鍵を奪ってくれ。俺が隙を作ってやる」
「で、でもよ。眼鏡相手で、大丈夫なのかよ」
「まあ心配すんな。未だに、勝率は俺の方が上だし」
でもなぁ、クロードがあれから鍛えてたら、五分五分って所か。
得物がこの場にあれば、圧倒的に俺が有利に立てるんだが……。
俺とクロードは、同時に駆け出した。
俺の右ストレートは躱される。だが俺は、反射的に右回し蹴りを放つが、クロードは両手を前に突き出し、腕を上げて蹴りを防御する。
「……さすが、蓮坊ちゃん。やはり、先制攻撃の権利は、坊ちゃんにあるんですね」
俺はクロードに向き直り、
「……昔は、さっきの攻防で決まってたはずなんだけどな。てか、銃は使わないのか?」
「素手で挑まれたのに、銃を使うなんて外道がやる事。私は、外道に堕ちる事はありません」
「……そうかい。んじゃ、続きと行きますかッ」
俺とクロードは、急所を狙い、殴り、蹴りを放つが、上手く躱し躱されで、勝負が一向に付く気配がない。
両者とも、ジワジワと体力が奪われていく。
仕切り直す、俺とクロード。
「……ったく、強くなりすぎだろ、クロード」
「それを坊ちゃんが言いますか、私について来るんです。おそらく、隠れて鍛錬を欠かさなかったのでしょう」
「まあな。俺には護る者があるからな」
再び飛び出そうとした瞬間――、
「は~い、ストップ。蓮もクロードもそこまでだよ」
振り返ると、親父が立っていた。
「親父……。親父も、クロードとグルなのか?」
そうなった場合、俺の勝ち目はゼロになる。
だが親父は、違う違う。と首を左右に振る。
「君たちが争う理由がなくなったから、止めに来ただけだよ」
話によると、引越しは中止。
理由は、この屋敷にいる野郎共全員からの、嘆願書と誓約書だ。まあ、流石にここまでやられたら、親父が折れるしかないだろう。お袋も、姉貴の意見を尊重したいという事らしい。
この勝負、完全に姉貴の勝ちだ。
ここで、一つの疑問が生じる。
「(……俺と楽。屋敷に乗り込んだ意味あったの?)」
まあいいや、姉貴も助かった事だし、ミッションコンプリートという事で。
つーか、俺の荷物、羽姉の家にあるんだよね……。どうすっか……いや、マジで。
「俺は荷物を取りに、羽姉の家に行くわ」
とにかく、屋敷を出る俺。
羽姉に、今後は一緒に暮らそうって言われたらどうすっか?悩みの種である。
「(ま、流れに任せるか。どうにかなるだろ)」
とまあ、楽観的な俺でした。
ともあれ、このようにして、引越し騒動の幕が下りたのだった。
次回は、クリスマスイヴかな。
次回は、羽姉たちを出したいですね(^O^)
……蓮君、リア充やで(笑)
ではでは、次回もよろしくです!!