ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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第51話 テンコウ

「修学旅行が終わって突然ですが、大切なお知らせがあります。――桐崎千棘さん、桐崎蓮さん、鶫誠士郎さんが、今週を最後に転校する事になりました。お家事情でアメリカに再び帰るとの事で」

 

 羽姉はこう言っているが、俺は絶対に日本から離れないけど。恋人を置いて遠くへ行くとか論外だし。

 まあ、家は羽姉の家に居候。一人暮らしでもOK。金は一人分の貯金はあるし、ビーハイブに居られなくなっても、叉焼会(チャーシューかい)に世話になればいい事。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~翌日昼休み、屋上~

 

 俺、小咲、春ちゃんは手摺に手をかけながら景色を眺めていた。

 

「蓮君は、引越しどうするの?」

 

「ん、ああ。行かないよ。一人暮らしか、羽姉の家に居候を考えてる」

 

 ホッとする彼女たち。つか、離れる訳ないじゃん。

 

「全然OKだよ。むしろ推奨だよっ」

 

 羽姉は、俺の居候に賛成らしい。……つか、今思った。俺、色々と大丈夫か?

 

「蓮さんは私が最初に好きになった人だから、離れたくない」

 

「大丈夫だ、春ちゃん。俺は三人の前から絶対に居なくならないから」

 

 まあうん、今の状況からしてイチャつきたいんだが、如何せん、此処は皆が勉学に励む学校である。放課後まで我慢我慢……。ともあれ、昼食は三人で摂りました。

 それからはまあ、羽姉とは時間差で、小咲と春ちゃんとは同じに屋上を後にしたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~桐崎家、書斎~

 

 俺がノックして親父の部屋に入ったら、姉貴が親父に喰ってかかっていた。

 状況から察するに、引っ越したくないんだろうなぁ。皆(特に楽)と離れ離れになっちゃうし。

 

「悪い、親父。俺、日本に残るわ」

 

「それは……」

 

 まあ、血が繋がってないとはいえ、俺、親父の息子だし、家族だから心配なんだろうなぁ。

 でもまあ――、

 

「警備等の心配しなくていいぞ。俺は叉焼会(チャーシューかい)に身を置くからさ。一人でやってける金もあるし、世話になる場所も叉焼会(チャーシューかい)の首領の所だし」

 

 うん、完璧。親父とクロードも、『……なるほど。それなら問題ないかも』的な感じだし。

 俺の方は何とかなりそうだけど、姉貴はどうなるか解らない。俺のように、強力な反撃材料がないのだ。

 

「(……ポーラも転校ってなるのか……。でも、今の俺じゃ自分の事で精一杯なんだよな……)」

 

 姉貴は、鶫が一緒に居れば何とかなると思ったが、鶫は本当の最終防衛ライン。組織が束になって襲って来たら多勢に無勢に落ちいるのは目に見えていた。なので、引越しの話は揺るがないのだ。

 それからも、姉貴は親父に喰ってかかっていたが、結果が覆る事はなかった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~翌日。屋上~

 

 翌日の学校は、クラスは桐崎家の引越しの話題で持ちきりだった。おそらく、春ちゃんのクラスもポーラが居るのでそうだろう。

 ともあれ、俺と楽は、屋上の手摺に腕を組みながら景色を眺めていた。

 

「で、楽。姉貴とはこのままでいいのか?」

 

「どうするもこうするもねぇよ。親父たちが決めた事なんだろ?てか、蓮も転校するんだろ?」

 

「俺はしないぞ。まあ、俺の場合はだが」

 

「え?まじ?じゃあ、千棘も?」

 

「それは解らん。俺の場合は、裏のパイプが結構あるから何とかなるんだよ」

 

 まあ色々とギリギリだったけど。

 

「俺にできる事があったら言ってくれ、協力するぞ」

 

 そう言ってから、俺は屋上を後にした。

 あれからも、姉貴は様々な手段を講じたが、クロードが首を縦に振る事はなかった。

そして、時は経過し数日後。てか、お別れパーティーも開かれるらしい。俺、違う高校に編入するかも知れんが、一生のお別れじゃないし、行かなくてもいいよね。って感じである。

 と、廊下を歩いていたその時、右ポケットに入れたスマホが震えた。手に取りディスプレイを見ると『姉貴』の文字。

 とにかく、窓際に移動し通話ボタンをタップし、右耳に当てる。

 

『蓮!私も居候する事にしたわ!』

 

 姉貴の開口一番がこれだった。つか、居候?何処に?

 まさかだと思うけど――、

 

「姉貴。もしかしてそれって、集英組にって事か?」

 

『ええ、そうよ。あの時、一人暮らしの時も、署名の件の時も、警備がどうのこうのって断られたでしょ。なら、私を守ってくれるよう集英組に居候すればいいだけの話なのよ。どう、名案じゃない?』

 

「……名案かも知れんが、俺も似たようなものだし。まあでも、資金面とか違う方向を指摘されたらどうすんだ?俺の場合は、其れなりに蓄えとか、身を守る術。叉焼会(チャーシューかい)に身を置くとか。それなりの反撃材料があったからいけたけどさ」

 

『うッ!そ、その時はその時よ!』

 

 ……うん、そこまで考えてなかったんだね、姉貴。

 んで、楽と電話を変わるらしい。

 

『もしもし、蓮か。今の話どうだ?』

 

「いや、いけると思うけど。その策だけじゃ穴が空きすぎじゃないか?まあ、現状ではそれしかないと思うけど……つーか、本気、なんだな……」

 

『……ああ、千棘は本気らしい。だから蓮、これが成り立つように協力してくれないか?』

 

「……まあ、あの時できる事は手伝うって言ったしな。協力するよ。てか、親父たちには伝えるのか?」

 

『いや、何も言わず、鶫と転がり込むらしい』

 

「……マジか。ほぼ家出同然じゃんか。まあいいか。そこまで本気って事だろ」

 

『ああ、頼む』

 

「了解だ」

 

 通話を終え、すぐさま行動に移す俺たちであった。




蓮君。反撃材料がかなり強力ですね(笑)
さて、次回も続きになりそうです。

ではでは、次回もよろしくです!!

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