翌日の学校風景。俺はいつも通り登校し教室に入ったのだが。何と言うか、お祭り騒ぎになっていた。何でも、彼女ができないと思った楽に、彼女ができたから。と言う事らしい。
「お前ら、付き合うことになったんだってな――!」
「末永くお幸せに――!」
とまあ、こんな感じに。
それで、楽がこのニセコイの真相を言おうとしたが、見張りの存在に気づき、ニセコイ続行に。……頑張れ、姉貴、楽。
そう思いながら、俺は席に着席し、隣の女の子に話しかける。
「おはよう、小野寺」
「おはよう。蓮君」
朝の挨拶を交わす、俺と小野寺。
俺は、あることを聞いてみる。
「小野寺は、楽たちの所に行かないのか?ほら、ニセの恋人って知ってるよって」
「うん、今はいいかな。皆、祝福モードって言えばいいのかな?そんな感じでしょ?」
「たしかに、否定はしない」
そのままチャイムが鳴り、一限目の授業に突入した。ちなみに、教材は届きました。
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時間は経過し昼休み。俺は教室から出て、いつものように購買でパンを購入してから屋上へ向かう。
そう、屋上の手摺に寄り掛かりながら飯を食うのが、俺のいつもの光景だ。
俺は、1年C組の窓際の木を見ながら嘆息する。
「……クロードの奴。まだ監視してんのか」
いやまあ、クロードの目から見ると、姉貴と楽はあからさまに怪しいけどさ。
今日聞いた話だと、午後の家庭科の授業は調理実習らしい。
「行きたくねー。リア充(笑)の行事じゃんかよ」
リア充には縁がない俺です。……なんか、自分で言ってて悲しくなってきたわ。
俺は盛大に溜息を吐いてから、教室へ戻った。
移動教室があり、五限目の調理実習の時間になった。……なるほどね、だから今日の姉貴の機嫌が高かったのか。クラスにも溶け込んでるし。
ともあれ、俺はエプロンを首から下げてから、ケーキ作りを始めるのであった。
「えーと、砂糖40gに卵が2つ」
そう言いながら、俺はボウルの中に入った材料を箸でかき混ぜる。で、型の中に流し込み、180度に設定してから、オブーンに入れ20分程度加熱。オーブンからケーキを取り出し、最後の仕上げをして完成。てか、何。かなりの人が集まってるんですが……。
「れ、蓮。お前ってケーキ作ったことあんの?プロ級のできだぞ」
「オレ、食ってみたいんだけど」
「オレもオレも」
そう言うクラスメイトたち。てか、ハイエナのように集るな!
「ああ、全部食っていいぞ。俺は食わねぇし」
そう言って、ケーキをハイエナたちの前に差し出す。
ハイエナたちは、ケーキをフォークで刺し、一口。
「「「う、うめぇ~~!!」」」
「てか、蓮。お前のケーキ、プロにも引けを取らないんじゃないか」
「オレ、金を出してもこのケーキは買うな」
「お気に召してなによりだよ」
とまあ、そんなこんながあり、俺は傍観することに決めたのだった。
何でも、姉貴のケーキは、見栄えが悪いのに旨いとか。まあ、姉貴は何でもできる人だしなぁ。ケーキ作りも例外じゃなかったってことだ。
で、楽に視線を向けると、その場でぶっ倒れていた。原因は、小野寺が作ったケーキらしいが。もしや、小野寺の料理って壊滅的だったりしちゃうの?
「(練習すれば上手く作れるようになると思うけど。努力家だしな。あいつ)」
学校が終わり、下校時間になった。
それはいいんだけど。人待ちなんだよね。その人は、ぜぇぜぇと息を吐きながら歩み寄って来る。
「れ、蓮君。待ったかな?」
「おう、かなり待ったぞ。待ちくたびれた」
普通なら、『全然待ってないよ。はは』的な感じだと思うけど。
「で、何だ」
「お礼をと思ってね。ほら、偽モノの恋人を教えてくれた件のこと」
「いや、別にお礼とかいらんけど」
まあ、秘密の場所を教えてくれるとかなんとか言ってたけど。てか、俺に教えたら秘密じゃなくなるんじゃね。
「もう、そこは『マジか。小野寺、サンキュー』って言うところだと思うんですけどっ」
「恋愛経験なし=年齢の俺に、そういうのは期待するな」
小野寺は、頬を膨らませて歩き出す。どうやら、機嫌を損ねてしまったらしい。あれだ。女の子の扱いは難しすぎる。俺にとっては、かなりの難易度だわ。
で、その場所に案内してもらいました。
「へぇ、あんな路地の奥に、こんな場所があるとはなぁ」
ここから見る街の風景は、かなりの絶景だ。
「この場所は、昔わたしが偶然見つけた秘密の場所。良い所でしょ」
「まあそうだけど。楽じゃなくて、俺で良かったのか?」
「もう、蓮君にお礼って言ったんだよ。あの事を教えてくれたのは、蓮君なんだから」
「あー、そうなのか。じゃああれだ。ありがとう?」
小野寺は苦笑した。
「なんで疑問形なの。蓮君らしいけど」
「……いや、俺らしいってなんだよ。まあいいけどさ」
小野寺も俺と同じく、手摺に手をかけた。
「蓮君ってさ。昔、どんな子だったの?」
「ガキ大将って所か。喧嘩早くてな、孤児院の院長さんに迷惑をかけっ放しだったよ。あ、俺が孤児院出身ってことは気にすんなよ」
頷く小野寺。
「そうなんだ。わたしはね、人見知りで引っ込み思案だったかな。今でも、それが抜けてないかもだけど」
「俺は否定はしない」
「ちょ、ひどいよぉ。これでも、頑張って治そうと思ってるんだよ」
「でも、一向に治る気配がないな。まあ、それが小野寺の良い所かも知れんけど……たぶんな」
「た、たぶんって。……そうなのかもしれないけど」
そう言って、小野寺はぐぐもった。
「悪い悪い。意地悪しすぎたかもな」
「蓮君のバカっ……」
「ちょ、理不尽すぎない」
まあ、この後も楽しく談笑しましたとさ。
そんな俺たちを、季節特有の風が頬を撫でた。
楽のヒロインは、千棘で決定かも。
でもまあ、原作通りではあるんですけどね。