~週末の日曜日~
手を繋いで入場するカップル、子供の手を引く家族連れなど、俺が待ち合わせをしている場所では賑わっていた。
「蓮さん、お待たせです」
待ち合わせ場所までパタパタと駆け寄りそう言ったのは、長袖のカットソーにモコモコのニットカーディガン、スカートにブーツを着こなした春ちゃんだ。ちなみに俺は、ジャケットにVネックTシャツ、デニムにスニーカーである。
「おう」
俺は左手を挙げる。
「春ちゃん、何か大人っぽいな。うん、可愛いよ」
春ちゃんは、頬を僅かに赤く染めた。
「そ、そうかな。…………ありがと、蓮さん。大好きです」
「おう。俺も大好きだぞ」
春ちゃんは目を丸くし「聞こえてたの……」と言いたい表情である。まあうん、俺は難聴主人公じゃないから、しっかりと聞き取れる。
「春ちゃん、行くか」
「そうだね、蓮さん」
俺と春ちゃんは歩き出し、入場口で切符購入し、ゲートを通ってから恋人繋ぎで手を握った。
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「さて、まずは何処に行きたい?」
「お化け屋敷とかどうかな?」
「いや、良いと思うけど、春ちゃんは大丈夫なのか?ほ、ほら、姉妹は似るっていうし」
ちょ、脇腹を抓ないで。痛い、痛いからね、春ちゃん。
「……先輩」
「ご、ごめん。今は、春ちゃんとデートだったよな」
「……先輩は、まったく」
溜息を吐く春ちゃん。
「と、とりあえず、お化け屋敷に行くか。う、うん、そうしよう」
春ちゃんが、「逃げたね」って小声で言ってたけど、スルーの方向で。
ともあれ、お化け屋敷に向かう俺たち。その間春ちゃんは、肩に体重を預けるように俺の手を組んでいました、はい。
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~廃墟、お化け屋敷内部~
俺と春ちゃんが入ったお化け屋敷は本格的なものだった。周りは薄暗く不気味である。すぐにでも何かが飛び出してきそうである。
「ちょ、春ちゃん。くっつきすぎだ。当たってる、当たってるからね。役特だけどさ」
「い、今は許してあげるから……。蓮さん、私の事離さないで……」
「私、作り物のお化け屋敷なんて怖くない」って意気込んでたけど、それは完全に崩れ去ったと窺える。でもまあ、これは男性でも怖がるお化け屋敷だろう。え、俺か?俺は血生臭い経験があるから、耐性がついたのかもなぁ。
「……れ、蓮さんは怖くないの?」
「おう、まったく怖くない。俺の場合は一度きりだけど修羅場に遭遇したからな。その賜物って所か」
「それって、蓮さん一人で組織を潰した時の事?」
「まあな。それで、剣舞っていう二つ名がつけられた」
「……もう、危ない事はしないでね」
その声音は、本当に俺を心配してるようだ。不謹慎かもしれないが、メチャクチャ嬉しい。
「まあ心配するな。ここ数年は小さな組織を潰す手伝いくらいだ。俺も裏の事は避けてるから大丈夫だ」
ちなみに、俺と張り合えるのは幹部クラスの奴だけだろう。そして俺は、殺傷はしないと決めている。まあ、峰打ちで気絶位は実行するけど。
「……それ、ホントに大丈夫なのかなぁ……。私、かなり心配なんだけど……」
「まああれだ。お前らに心配かける事はしない…………はずだ」
「むぅー、その間はなんなのさ」
「い、いや、もしもの保険だよ」
話していたら、いつの間にか前には光が差し込んでいた。
どうやら、ゴール地点に到着したらしい。
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「はあ、途中まで怖かったー」
「中盤からは、ずっと話してたしな」
「はい、蓮さんのお陰だね」
そう言って、春ちゃんは俺の頬にキスをした。……うーむ。付き合うようになってから、春ちゃん大胆になったよな。だけどまあ――、
「うぅ……。恥ずかしい……」
とまあ、このように顔を真っ赤にして自爆してしまうんだが。まあ、これも含めて可愛いけど。
「アホ。恥ずかしいならやんなければいいのに」
「う、うん。そうなんだけど。蓮さんをメロメロにしたくて」
俺は盛大に溜息を吐く。
それから、右手掌を春ちゃんの頭に優しく乗せた。
「まあなんだ、俺は春ちゃんにメロメロだぞ。俺は春ちゃんとずっと一緒に居たいとも思ってるし、一緒に歳を重ねたいとも思ってる」
「わ、私もそうだけど」
「だろ。思ってる事は同じなんだ。焦る事もないし、無理に大人ならなくてもいい。それぞれのペースがあるしな。…………あれ、話の趣旨が違うような……気のせいか?」
「ふふ、少しだけずれたかもね。でも、ありがとう」
春ちゃんは、俺の肩に体重を預け、右肩にコテンと頭を乗せた。……まあなんだ、かなり近いしメチャクチャ良いに匂いがするんだが……。
「今後はどうしようか?春ちゃんは、何か乗りたいアトラクションはあるか?」
「ジェットコースターとかどうかな?」
春ちゃんが言ったジェットコースターは、ここ最近リニューアルしたばかりでかなりの人気らしい。
「いいけど、春ちゃんは絶叫系いけるのか?」
「た、たぶん、大丈夫」
「お、おう。何か曖昧なのな」
と、いうことなので、俺たちは立ち上がりジェットコースター乗り場へ向かうのだった。
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結果からいうと、「きゃぁぁアアアあああっ!」と春ちゃんの絶叫が凄かった。まあ俺に関しては、「へぇ、かなり良く出来てるんだなぁ」という感想だったが。
そして、休憩してから乗ったコーヒーカップでは、ハンドルを回すぎて、2人とも気持ち悪くなりました、はい……。
まあ、そこからも様々なアトラクションに乗った。空中ブランコとかパレードラン?的なやつとかだ。
そして、遊園地の最後といえば――観覧車である。
「夕陽が綺麗だな」
「そうだね。空がオレンジ色の絨毯みたいに輝いてる」
観覧車に乗り、軽く笑い合いながら空を見ながらそう呟く。
「……蓮さん、今日はありがとう。とっても楽しかった」
「ああ、俺も楽しかったぞ」
今日の事を話している内に、――――観覧車は頂上へと到達した。
「……蓮さん、隣座ってもいい?」
「……ああ」
そして、俺たちは見つめ合い唇が重なった。――――長いソフトなキスだった。まるで、お互いの体温が伝わるように。
「……しちゃたね、キス。ちなみに、ファーストキスだよ」
「えっと、ありがとう?でいいのか?」
「その辺はお任せするよ」
春ちゃんは苦笑し、俺も釣られるように笑った。――――そして、再び唇が重なる。キスを終えると、俺たち互いの体温を感じるように抱き合った。
抱擁を解いた俺は、
「これからもよろしくな、春ちゃん」
「こちらこそ、蓮さん」
幸せを噛み締めるように、俺たちはそう呟く。――――今日という日は、俺たちの思い出に刻まれただろう。俺たちは、そう思う一日だった。
これで、羽姉、小咲、春ちゃんとのデート風景を書く事ができました。そろそろ、三人同時も書かなければ。(使命感)でも、かなり難しそうだが……。書かなかっただけで、普通にデートはしてるんですけどね(笑)
てか、原作はアレのアレのアレでしたからね……(-_-;)